BLACK COMBAT 1.20 ソウル(レポ):須田萌里、パク・シユンとの女子アトム級王座戦で判定負けも陣営&DEEPがレフェリングに抗議。駒杵嵩大、フライ級王座戦は計量オーバーのキム・ソンウンにKO負け。大原樹理・中村大介も黒星。山本聖悟が判定勝ち
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BLACK COMBAT 10
2024年1月20日(土)韓国・ソウル・コリョ大学ファジョン体育館
レポート&写真:井原芳徳
BLACK COMBAT(ブラックコンバット)はYoutubeチャンネル主体のプロモーション活動が韓国で人気のMMA大会。韓国の若手選手同士の試合が主体だが、ここ1年間、日本のDEEPとトップ選手同士の対抗戦を繰り広げ、主要な話題の一つとなっている。
昨年2月に韓国のBLACK COMBATの大会の中で、DEEPとの初の対抗戦が組まれ、DEEP側の大島沙緒里、大原樹理が勝利したが、山本聖悟、中村大介、赤沢幸典が敗れ、2勝3敗の負け越しで終わった。
9月のDEEP後楽園ホール大会での2回目の対抗戦では、大島、大原、石司晃一が敗れ、BLACK COMBAT勢にDEEPのベルトを奪われ、対抗戦全体もDEEPが2勝5敗と完敗した。DEEP側は駒杵嵩大、青井人が勝利した。
11月のBLACK COMBATインチョン大会には大原が乗り込み2R KO勝ち。DEEPメガトン級王者のロッキー・マルティネスも勝利した。
年が明け1月の今大会には、DEEPから5選手が乗り込んだ。駒杵、須田萌里がBLACK COMBATのタイトルに挑み、大原がまたも出場し、山本、中村は1年前のリベンジを目指し再出場した。
結果、DEEP側は山本のみ勝利し1勝4敗。少人数だった11月の2試合を除けば、本格的な対抗戦では3度続けてDEEP側が負け越しとなる。
とはいえBLACK COMBAT側はフライ級王者のキム・ソンウンが駒杵との防衛戦で計量オーバーし、女子アトム級王者・パク・シユンは終盤のピンチに須田のグローブをつかむ等の反則があり、須田陣営とDEEPはBLACK COMBAT側に抗議し、両団体の遺恨が残る結末となった。
BLACK COMBAT女子アトム級チャンピオンシップ 5分3R
○パク・シユン[Park Siyoon](韓国/王者、DEEP JEWELS同級王者)
×須田萌里(Scorpion Gym/挑戦者)
判定3-0 (30-26/30-27/29-28)
※パクが防衛
シユンは25歳。昨年7月、ONEに参戦経験のあるキム・ナムヒに勝利しBLACK COMBAT初代アトム級王座を獲得。9月のDEEPではDEEP JEWELS同級王者・大島沙緒里とのダブルタイトルマッチで、大島の得意の寝技を封じて判定勝ちし2冠となった。今回はBLACK COMBATのベルトを懸け、DEEP JEWELSの主力・須田を迎えた。
須田は19歳。柔術家の父の智行氏の影響で小学生時代から始めたブラジリアン柔術が最大の武器で、昨年3月のDEEPではアトム級で桐生祐子に2R裸絞めで一本勝ち。5月のDEEP JEWELSでは49kgに戻し、パク・ジョンウン(韓国)に1R TKO負けしたが、9月大会ではケイト・ロータスに判定勝ち、11月大会では彩綺に下からの腕十字でわずか49秒で一本勝ちしている。
1R、スタンドの打撃戦で、サウスポーのシユンが左ボディを当てるが、お互いヒットは乏しい状態が続く。須田は時折組みに行くが、シユンは突き放し続ける。中盤過ぎからシユンが須田を金網に押し込み、須田は引き込む形で下になり、足を登らせ腕十字を仕掛け、最後は膝十字固めも狙うが、いずれもシユンが対処し、少しパウンドを当て、やや好印象を作って終える。記者採点はシユン。
2R、須田は序盤から両脇を差してシユンを押し込み、またも引き込んで下からの仕掛けを狙う。だがシユンは押さえ続け、須田は背中をマットにつけ続けてしまい、印象を悪くする。終盤、スタンドに戻ると、シユンが押し込む。須田は足を掛けて倒そうとしたが、シユンは対処して上を取って終える。記者採点はシユン。
3R、シユンは序盤から左フックをヒットする。シユンが須田を金網に押し込み、またも須田は引き込むようにして下になる。須田は下からギロチンを狙うが、シユンは対処する。お互い上下からパウンドを当て、須田が下からシユンの後頭部にパウンドを1発当てる反則を犯した後、すぐに耳へのパウンドを切り替えたが、すぐさまレフェリーはブレイクして立たせ、須田の後頭部打撃を注意する。一発の軽い反則でのブレイクは厳しい感が否めない。レフェリーは膠着ブレイクも兼ねた判断をした可能性もあるが、それまで両者にアクションを促していた様子は、少なくとも試合映像からは確認できなかった。
スタンドで再開すると、シユンが押し込むが、膠着ブレイクがかかる。終盤に差し掛かり、須田が引き込んで、すぐさま膝十字を狙うと、場内はどよめく。シユンは須田のグローブを長時間つかみ続けて防御する反則を犯しているが、レフェリーは注意しない。須田は困った様子の表情を見せ、セコンドについた父の智行氏も「グローブつかんでるよ」と日本語で叫ぶが、レフェリーはそのまま続行し、シユンもグローブをつかみ続け、須田は極めに至ることができないまま終了する。記者採点は須田。合計29-28でシユン。
一発逆転の大チャンスを潰されてしまった須田と父の智行氏は、終了のゴング直後もレフェリーに抗議したが、聞き入れられず裁定に移り、ジャッジ3者ともシユンを支持し、シユンが判定勝ちで王座防衛を果たした。なお、大会後には反則について、須田陣営とDEEP事務局が揃って競技陣に抗議した。一方でDEEP事務局はこの試合の3日後、DEEP JEWELS 3月24日 ニューピアホール大会でシユンのDEEP JEWELS王座に伊澤星花が挑戦することを発表している。
BLACK COMBATは大会数日後から1日1試合ペースで順次、Youtubeチャンネルに試合映像をアップしていくのが恒例となっており、25日にシユン×須田の映像もアップされた。映像の最後にBLACK代表のコメント映像も添えられた。
BLACK氏は須田にもケージに足の指を引っかける行為やバッティングといった反則があったことを指摘し、シユンのグローブつかみ含め、いずれも故意では無く、無効試合にしたり勝敗を覆す要素とはならないと説明した。また、この試合のレフェリーはキャリアの浅いレフェリーだったようで、韓国では大規模な大会が減り、ベテランのレフェリーに任せるのではなく、新人のレフェリーに経験を積ませ育成する必要があることもBLACK氏はアピールした。
コメント欄の韓国のファンの多くは「バッティングとグローブつかみ等価にするのはおかしい」「タイトルマッチは初心者のレフェリーの経験の場ではない」等と記し、今回のレフェリングとBLACK氏の釈明に批判的で、須田に対しては「レベルの高いグラップリングを見せてくれてありがとう」「また韓国で見たいです」と同情を寄せている。
また、BLACK氏は3月のシユン×伊澤以降、シユンと須田のBLACK COMBATのタイトルマッチの再戦を組みたい考えも示している。
BLACK COMBATフライ級チャンピオンシップ 5分3R
○キム・ソンウン[Kim Sungwoong](韓国/王者)
×駒杵嵩大[こまきね たかひろ](Fight Base都立大/挑戦者、元Fighting Nexus同級王者)
1R 1’31” KO (蹴り上げ)
※キムは計量で56.7kgのリミットを600gオーバーし王座はく奪。駒杵が勝った場合のみ王者認定で試合実施。上記の結果のため王座は空位に
昨年9月のDEEPでの対抗戦の先鋒戦で、駒杵は1R、下からの腕十字を極めて一本勝ちし、DEEP側に貴重な勝利をもたらした。今回、ソンウンのホームで、ソンウンがベルトを懸けての防衛戦が組まれたが、上記のとおりソンウンが計量オーバーしてしまい、変則のチャンピオンシップとなった。
試合開始直前、ソンウンの計量オーバーと、1Rごとに1点減点されることがアナウンスされると、観客からソンウンに対してブーイングが飛ぶ。試合は短時間決着に。1R、距離を取ってステップを取る長身にソンウンに対し、開始すぐから駒杵はタックルを仕掛けて押し込み、脇を差しながら足を掛けて倒すと、場内はどよめく。駒杵はそのままサイドポジションを奪って押さえ、時折パウンドを当てる。するとソンウンは足を引いて駒杵の胸元に差し入れつつ、駒杵の片腕もつかみ、素早く腕十字の体勢に。駒杵は立ち上がって引き抜こうとしたが、ソンウンは下から左足で駒杵の顔面を蹴り上げると、駒杵は意識を失って真後ろに倒れる。ソンウンが立ち上がってパウンドを落とそうとしたところで、レフェリーがストップ。ソンウンのKO勝ちとなったが、計量オーバーしたため喜びの笑顔は無く、座り込む駒杵に頭を下げた。
ライト級 5分3R
×大原樹理(KIBAマーシャルアーツクラブ/元DEEPライト級王者)
○ファン・ドユン(韓国)
1R 2’03” TKO (レフェリーストップ:右アッパー)
1R、長身の大原が中央付近で構え、ドユンは距離を取りつつ、右ローを序盤から度々当てる。次第に大原の左ジャブ、右ストレート、左ミドル、右前蹴りも当たり出す。ドユンは次第にパンチ主体に切り替わり、中央側に立つ時間が長くなり、右フック、左ジャブを多用するように。すると中盤、大原の右フックのカウンターで、ドユンが右フックをヒット。大原はフラつきながら後退し、ドユンが追いかけて右アッパーを当て、大原が前のめりで倒れると、すぐさまレフェリーがストップし、ドユンのTKO勝ちとなった。大原は意識が飛んだのは一瞬だった様子で、ストップ直後からレフェリーに抗議した。
フェザー級 5分3R
○パク・チャンス[Park Chansoo](韓国)
×中村大介(夕月堂本舗/元DEEPライト級王者)
判定3-0 (29-27/29-28/28-27)
1R、中村は開始早々に下から腕十字を狙うが、ダメージの無いチャンスは対処する。中盤からは離れての打撃戦で、チャンスが時折右のストレートを当て、中村をふらつかせ好印象を作る。だが終盤、チャンスが右ローを連打した後、中村が右ストレートを当てると、チャンスはダウンする。チャンスはタックルで押し込んで難を逃れる。
2R、中村は口が開き早くも疲れ気味で、チャンスが押し込む時間が長くなり、倒してはパウンドを当てる場面も。中村はバックを取られてから腕をつかんでアームロックを狙うが、チャンスは対処を続ける。
3R、チャンスは序盤からテイクダウンを奪い、バックを奪う等グラウンドコントロールを続け、パウンドも随所で当て主導権を維持し、点差を広げ判定勝ちした。
バンタム級 5分3R
○山本聖悟(チームクラウド)
×イ・ソンウォン[Lee SungWon](韓国)
判定3-0 (29-28/29-28/29-27)
山本は昨年2月のBLACK COMBAで敗れた後、引退を表明したが、今回復帰戦に臨んだ。セコンドには芦澤竜誠がつく。
1R、スタンドの打撃戦で、ソンウォンがパンチで少し山本をふらつかせる場面を作り、最後はテイクダウンも奪い、若干だが優位に。
2R、山本がパンチや膝や右カーフを少しずつ当てていると、ソンウォンは勢いが落ちる。終盤には山本が首投げで倒し、パウンドと膝を当て好印象を作る。
五分で迎えた3R、山本が右カーフを当てると、ソンウォンはスリップする。金網際で組み合う展開が増え、中盤にばブレイクが懸かる場面も。その中で山本が随所でテイクダウンを奪う等、やや優位で終了。3R目のポイントを取り判定勝ちすると、涙を流して喜んだ。