ONE 1.14 バンコク(レポ):元K-1王者アラゾフ、スーパーボンを2R KOしONE 70kgの頂点に。佐藤将光、僅差の打撃戦制し連敗2でストップ。ロッタン、計量オーバーも完勝
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ONE Fight Night 6: Superbon vs. Allazov
2023年1月14日(土)タイ・バンコク・インパクトアリーナ
レポート:井原芳徳 写真:(C)ONE Championship
元K-1王者アラゾフ、スーパーボンを2R KOしONEでもキック70kgの頂点に
第8試合 メインイベント ONEキックボクシング・フェザー級チャンピオンシップ 3分5R
×スーパーボン・シンハーマウィン[Superbon Singha Mawynn](王者)※2度目の防衛戦
○チンギス・アラゾフ(1位・GP優勝、元K-1スーパー・ウェルター級王者)
2R 1’03” KO (3ダウン:右ストレート)
※アラゾフが王者に
スーパーボンは21年10月にジョルジオ・ペトロシアンの王座に挑戦し2R右ハイでKO勝ちし王者に。3月のONE Xではマラット・グレゴリアンに判定勝ちし初防衛を果たした。これで3試合連続、元K-1スーパー・ウェルター級(70kg)王者を相手に王座戦を行う形となる。
アラゾフは21年10月から昨年3月にかけて行われたフェザー級GPでサミー・サナとジョー・ナタウットを1RでKOし、決勝でもシッティチャイを判定で下し、王座挑戦権を獲得した。10月の王座挑戦はアラゾフ自身の怪我で流れており、満を持してスーパーボンに挑む。
1R、アラゾフはスイッチを繰り返し、左右のローを散らしつつ、変則的な軌道の左ハイを放ち、スーパーボンを脅かす。中盤にはカウンターの右フック、ストレートも当て、終盤には左ボディも強打する。スーパーボンが前に出れば距離を取り、反撃を許さない。スーパーボンは攻めにくそうだ。記者採点はアラゾフ。
2R、スーパーボンは右ミドルを連打して先手を取ろうとするが、アラゾフは圧をかけると、左ハイの後に右のスーパーマンパンチをヒットする。不意を打たれたスーパーボンはひるむと、アラゾフはパンチラッシュからの右フックでダウンを奪う。スーパーボンはダメージが大きく、アラゾフは右アッパーからの右フックであっさりと2ダウン目を奪取する。最後はアラゾフがパンチの連打でスーパーボンを金網際に詰めてから、右ストレートをクリーヒット。スーパーボンは伸びた状態でダウンし、アラゾフが完勝で70kgのベルト奪取を果たした。
アラゾフは「6か月タイに滞在し毎日練習して試合に備えました。ありがとうタイランド。僕がパウンドフォーパウンド最強です」等とアピールした。アラゾフにはファイトマネー以外にONEから5万ドル(約650万円)のボーナスが支給された。
佐藤将光、僅差の打撃戦制し連敗2でストップ「いい年にしましょう」
第1試合 MMA キャッチウェイト 150ポンド(68.03kg)契約 5分3R
×キム・ジェウォン
○佐藤将光(FIGHT BASE都立大/坂口道場一族/元修斗世界バンタム級王者)
判定0-3
佐藤は修斗の試合も並行しつつONEに上がり、ONEで3連勝後、ファブリシオ・アンドラージとステファン・ロマンに連敗している。ONE MMAバンタム級王座は空位で、今は1位にアンドラージ、3位にロマンがおり、アンドラージと2位のリネカーで2月25日に王座決定戦が行われる。現在の上位勢に苦戦したが、この一戦をきっかけに巻き返しを図りたい。今回は2週間前の試合オファーで、正月返上で準備した。セコンドには出稽古先のKRAZY BEEの高橋遼伍がつく。
対戦相手のジェウォンは29歳。キャリア初期にマッハ祭りやVTJ参戦で来日経験があり、韓国の大会での経験を経て、19年からONEに参戦している。山田哲也、ケビン・ベリンゴンにTKO勝ちしているが、タン・カイ、シャミル・ガサノフといった新鋭には1Rで敗れている。
1R、ジェウォンがプレッシャーをかけつつ、佐藤の攻撃のカウンターで右フックをヒットする。佐藤は細かく動くが、攻撃がなかなか出ないでいると、中盤にはヴィトー・シャオリン・ヒベイル・レフェリーから、攻撃するよう注意される。ジェウォンも攻撃が少ないが、右のカーフキック、左インローを随所で当てる。終盤、佐藤は左ジャブを当てるが、その直後、シャオリン・レフェリーが突如試合を止めると、ケージサイドの他の競技陣に確認した後、両者にイエローカードを出す。新年に入り、カウンター狙いの動きへの規制が強化されたか?2R開始直前にもレフェリーが両者に「アグレッシブに攻めましょう」と口頭で注意する。
すると2R、佐藤が右フックを当ててから、タックルを仕掛けてジェウォンを押し込む。間もなくして離れ、佐藤はさらに左ジャブを当てるが、ジェウォンも左ボディ、右フック、左インローを返して巻き返す。だが佐藤のパンチでジェウォンは鼻血を出すようになり、少し動きが落ちると、佐藤は右のカーフキック、右ストレートを当て、さらにダメージを与える。終盤、ジェウォンは持ち直すと、左ジャブをヒットをお返し。佐藤も右フック、カーフを当てるが、お互いひるまず、ほぼ五分の状態を保つ。
3Rもお互い単発の攻撃を当てるが、なかなか均衡は崩れない。ジェウォンの右ローのタイミングで、佐藤は片足タックルを仕掛けるが、ジェウォンは倒れず突き放す。中盤、ジェウォンが右フックを当てると、佐藤はのけぞってしまい印象を悪くする。すると佐藤は組み付いて押し込むが、ジェウォンも押し返す場面を作り、佐藤の動きの印象を帳消しにする。だが佐藤もセコンドの髙橋の「前に出ろ」という声に押されるようにして前に出て右フックを当てると、ジェウォンが左まぶたから出血しドクターチェックが入る。再開後、終盤に入り、お互いひるまなかったが、ジェウォンが右フックを当てると、手を広げアピールし、佐藤は攻撃を返せず終了する。
記者採点は迷ったがジェウォン。ダメージは変わらず、有効打と積極性で若干だがジェウォンが上だったと判断した。ジャッジは3者とも佐藤を支持し、佐藤の判定勝ちとなった。下のジャッジペーパーを見ると、ジェウォンの2Rの鼻血や、3Rの左まぶたのカットが有効打による明確なダメージとして評価されたようで、その基準での採点の運用なら佐藤の勝利は納得できる。タックルや押し込みの展開での積極性で上回った点を評価しているジャッジもいた。第1試合はインタビューは無いせいもあってか、佐藤は勝利を告げられた直後、カメラに向かって「2023年一発目、勝利飾ることができました。いい年にしましょう」と日本のファンにアピールした。
スーパーレック、ピュータスに手を焼くも判定勝ちしキック・フライ級王者に
第7試合 コーメインイベント ONEキックボクシング・フライ級王者決定戦 3分5R
○スーパーレック・ギャットムーカオ(2位、ムエタイ1位)
×ダニエル・ピュータス[プエルタス](5位)
判定3-0
※スーパーレックが王者に
キックボクシング・フライ級(61.2kg)では、イリアス・エナッシが減量が厳しくなり王座を返上し、エナッシと戦う予定だった同級3位のスーパーレックが、武尊とも対戦経験のある5位のピュータスと王座決定戦を行った
1R、スーパーレックが右ミドル、ローを当てるが、ピュータスも伸びのある右フック、左ボディをお返しする。中盤にはピュータスが右のカーフキック、ローキックを当てるように。前に出続けると、スーパーレックは右テンカオを合わせ出す。それでもピュータスは前に出続け、左アッパーを当てる。記者採点は圧をかけ続けたピュータスだが割れる可能性もある。
2R、前に出るピュータスに、スーパーレックは右ミドル、ロー、テンカオを執拗に当てる。ピュータスも左ボディを随所でヒットする。どちらも譲らない削り合いとなる。すると終了間際、ピュータスがスーパーレックを金網に詰め、ワンツーでの左右のストレートを連続でヒット。スーパーレックは一瞬腰が落ちる。記者採点はピュータス。
3R、詰めてきたピュータスに対し、すぐスーパーレックが組み付くと、イリアス・ドラプシス・レフェリーは注意する。だがスーパーレックは右テンカオから組み付き、そこからピュータスを押し返すと、右ストレートを立て続けに当て、ピュータスをひるませ形勢逆転する。するとスーパーレックがピュータスを金網に詰め、パンチを連打する構図に転換する。だがスーパーレックも疲労とダメージが溜まり、最後は手数が落ち、終了のゴングが鳴った後はフラつきながらコーナーに戻る。記者採点はスーパーレック。
4Rに入ると、3R序盤までのようにピュータスが圧をかける側に戻り、右ロー、左ボディを当て、スーパーレックを追い詰める。スーパーレックも右ミドル、膝を当てるが、力が入りきらない。クリンチも増え、またもレフェリーから注意される。終盤、ピュータスが手数多く攻め優勢を維持する。スーパーレックが渾身の右ハイを当てるが、ピュータスはひるまない。記者採点はピュータス。
5R、序盤にスーパーレックがクリンチすると、レフェリーはリングサイドの他の審判に確認してからイエローカードを出す(スコアカードを見ると減点とはなっていない)。スーパーレックのミドル、ハイをもらっても、ピュータスは前に出て、顔面とボディへのパンチ、膝を当て続け、主導権を維持する。最後、さすがに疲れたピュータスに対し、スーパーレックが左右のテンカオを連打し巻き返すが、倒せず終える。記者採点はスーパーレック。
記者採点合計は47-48でピュータス。ジャッジは3者ともスーパーレックを支持し、スーパーレックが判定勝ちで王者となった。ジャッジはスーパーレックのミドルと膝を重視したようで、ジャッジ2者は5Rともスーパーレックにつけていたが、苦戦であることは明らかで、ピュータスとはいずれ再戦する可能性が高いだろう。
なお、会場には同級4位の内藤大樹も観戦に訪れ、スーパーレックの退場時には握手していた。昨年5月のムエタイフライ級GP一回戦ではスーパーレックが圧倒し判定勝ちしたが、キックルールでの再戦はあるだろうか。
マイキー・ムスメシ、一本は取れずも完勝でグラップリング王座初防衛
第6試合 コーメインイベント ONEサブミッショングラップリング・フライ級チャンピオンシップ 10分1R
○マイキー・ムスメシ(王者)
×ガントゥルム・バヤンドゥレン(挑戦者)
判定3-0
※ムスメシが初防衛
ガントゥルムはモンゴルの選手。試合が始まると、ムスメシがガントゥルムと腕をつかむと、引き込んで金網際で下になる。1分ほど膠着していると、シャオリン・レフェリーがブレイクをかける。これまでよりもブレイクが早い感もあるが、ムスメシは同じようにすぐ引き込むと、今度は仕掛けを早めて足関節技を仕掛ける。ムスメシは左足にヒールフックを極める。ガントゥルムは時折顔をしかめつつ、もがいて極めを緩めるが、ムスメシはその都度、極めた状態に戻す。シャオリン・レフェリーは時折「キャッチ」とコールするが、ストップせず試合は続く。
残り1分半、ムスメシは足関を解き、ギロチンに切り替えてから、またも足関を狙い、カーフスライサー、バックマウントからの裸絞め狙いに移行する。ガントゥルムは防御して終えるが、足を引きずりながらコーナーに戻っており、ダメージが大きかったことがわかる。ジャッジは3者ともムスメシを支持し、ムスメシが判定勝ちで防衛を果たした。
アウンランサン、ONE米国初大会向けアピールする快勝
第5試合 MMA 215ポンド(97.52kg)契約 5分3R
○アウンランサン(元ミドル級&ライトヘビー級)
×ジルベルト・ガルバォン
1R 1’29” TKO (レフェリーストップ:グラウンドパンチ)
1R、ガルバォンがパンチを振うが、アウンランサンはブロックし、右アッパーを当ててダウンを奪う。アウンランサンはスタンド勝負を望んで立たせる。ガルバォンは前に出てアウンランサンを金網に押し込むが、アウンランサンは耐えると、右肘を当ててから倒し、すぐさま右の鉄槌を連打する。ガルバォンは防戦一方で、アウンランサンが当て続けたところでレフェリーがストップした。
試合後のインタビューでアウンランサンは、5月6日のONE初の米国大会(コロラド州)への出場を希望し、母国ミャンマーの国民の平和を願うメッセージを残した。米国で中継された試合のため、米国に向けてのアピールとなる勝ちっぷりだった。アウンランサンにはONEから5万ドルのファイトボーナスが支給された。
ロッタン、計量オーバーも完勝
第4試合 キックボクシング 136.5ポンド契約 3分3R
○ロッタン・ジットムアンノン(1位、ムエタイ王者)
×ジドゥオ・イブ
判定3-0
ムエタイルールの同級王者・ロッタンは、肘無し・ボクシンググローブ着用のキックルールで今回出場し、中国出身のイブと対戦した。だが計量でフライ級(135ポンド)のリミットを1.5ポンド(0.68kg)オーバーしてしまう。ロッタンのファイトマネーの25%がイブに譲渡される。
1R、サウスポーのイブに対し、ロッタンはプレッシャーをかけ、右ボディ等をヒットする。中盤、イブのローブローで一時中断すると、再開後、ロッタンは圧を強め、パンチと蹴りの手数を一気に上げる。終盤、サウスポーに切り替えると、イブの左ローのカウンターで右フックを当てダウンを奪う。イブは右まぶたから出血する。
2Rもロッタンが圧をかけ続け、パンチ、ミドルを当ててイブを圧倒する。イブは打たれ強いが、攻撃を返せず防戦一方だ。
3R、ロッタンはイブの攻撃をもらってから攻撃を返し、中盤からはジャブの連打でイブを翻弄する。最後はイブの攻撃をかわし終了する。ロッタンが地元タイでの2023年初ファイトを白星で飾った。
スタンプ、急きょの体重差マッチで苦戦も判定勝ち
第3試合 キックボクシング 女子ストロー級 3分3R
○スタンプ・フェアテックス(MMA女子アトム級1位・GP優勝、元キック&ムエタイ同級王者)
דスーパーガール”アンナ・ジャルンサック
判定2-1
当初、MMA&立ち技兼業のスタンプ・フェアテックスと立ち技専業のアニッサ・メクセン(元GLORY女子スーパーバンタム級王者)がムエタイとMMAルールのミックスルールで戦う予定だったが、メクセンが計量を欠席し失格となり試合が中止となった。スタンプは115ポンドのアトム級リミットをジャストでクリアした。
また、ムエタイルールでのストロー級(125ポンド)、アンナ・ジャルーンサック vs. エカテリーナ・ヴァンダリーバで、ヴァンダリーバが計量で0.5ポンドオーバーした。124.5ポンドでクリアしたアンナは、ヴァンダリーバとの試合を承諾しなかった。
そのため、余った状態のアンナとスタンプが対戦に合意し、この顔合わせとなった。スタンプは1階級上での試合となる(通常のムエタイなら約2階級分差がある)。ルールはムエタイではなく肘無し・ボクシンググローブ着用のキックボクシングルールとなっている。
カードが変わったが、タイでアイドル的な人気の高い選手同士のカードとなり、会場は入場時から盛り上がる。1R、体格で大きく勝るアンナが先手を取る。アンナは開始すぐから前に出て威勢よく右フックを連続で放つ。スタンプはガードやスウェーでクリーンヒットは免れる。スタンプは攻撃は少ないが、随所で右フック、右ローを返す。しかし最後までアンナが圧をかけ続け好印象を残す。記者採点はアンナ。ジャッジは1者が的確な攻撃のあったスタンプを支持する。
2R、開始すぐにアンナが右フックでスタンプを倒す。一瞬オリヴィエ・コスト・レフェリーは手を上げダウンと判断したが、すぐにスタンプが立ったため取り消す。とはいえアンナの有効打なのは確かだ。スタンプは笑顔を浮かべ、己を鼓舞する。アンナは変わらず圧をかけ、随所で右フックをヒット。スタンプはひるまないが、圧を跳ね返すことができない。記者採点はアンナ。ジャッジは意外にも1者がスタンプを支持する。
3R、アンナの勢いが落ちると、スタンプは右ミドル、右フックを強打するように。だがアンナは負けじと圧をかけ、右ミドルをお返しする。最後、スタンプが右のバックハンドを当てるが、アンナはひるまず終える。記者採点はスタンプ。ジャッジ3者もスタンプを支持する。
記者採点の合計は28-29でアンナ。ジャッジは割れ1者はアンナを支持したが、2者はスタンプを支持し、スタンプの判定勝ちとなった。勝ったスタンプは「カード変更は問題ありませんでした。アンナは素晴らしい選手でした」とコメントした。インタビュー中、5万ドルのファイトボーナスが支給されると発表されると、涙を流して喜んだ。
第2試合 MMA フェザー級 5分3R
○ゲイリー・トノン
×ジョニー・ヌネス
1R 1’53” アームロック
1R序盤からヌネスが押し込むが、その状態からトノンがヌネスの左腕を抱えてキムラロックを仕掛け、そのままグラウンドに引きずり込むと、サイドで押さえながらガッチリと極めてタップを奪った。