GLEAT MMA 12.14 後楽園ホール(レポ):プロレス団体GLEAT、初の格闘技大会でGLEAT勢5人全敗。47歳の近藤有己、22歳のプロレスラー・井土徹也をローで苦しめ判定勝ち。和田拓也、12年ぶりMMAで田中稔を1Rで粉砕
MARTIAL WORLD PRESENTS GYM VILLAGE
中野トイカツ道場
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リデットエンターテインメント主催「GLEAT MMA Ver.0」
2022年12月14日 (水) 後楽園ホール
レポート&写真:井原芳徳
「秒殺されてもいい。気持ちを見せて欲しい(田村潔司氏)」プロレス団体GLEAT、初の格闘技大会でGLEAT勢5人全敗
リングス、PRIDEなどで活躍した田村潔司氏がエグゼクティブディレクターを務めるプロレス団体「GLEAT(グレイト)」が、初のプロ格闘技大会「GLEAT MMA Ver.0」を開催した。
GLEATは一般的なプロレスだけでなく、リングスやパンクラスの源流である格闘技色の強いUWFスタイルのプロレスも行っている。GLEAT MMAはプロレスラーがMMA、キックボクシング、グラップリングに挑戦する大会。9月の開催発表会見で田村氏は「僕の考えるプロレスラー像は強さが必須という考えがありまして、その運びでGLEAT MMAを発足させていただきました」「GLEATの選手は技術では(普通の格闘技選手より)劣っているので、気持ちを見せて欲しい。現段階では白星を求めていなくて、自分をリングで表現して、お客さんに伝えることを期待しています。秒殺されてもいいので、短い時間でも何か表現してもらいたいです」と大会のコンセプトを説明していた。
GLEAT所属選手は5人とも敗れたが、特に若い選手たちが粗削りながらも、気持ちを前面に押し出す戦いで、GLEATのファンから度々拍手を浴びていた。ゼロ年代前半のPRIDEブームの頃まではプロレスと格闘技を両方見るファンも多かったが、以降のPRIDE休止と新日本プロレスの復興により、双方のファンの分離が進んだ感がある。現代のプロレスファンにとってもMMAファンにとっても、普段とは毛色の違う大会ということもあってか、今回のGLEAT MMA Ver.0は集客では苦戦した。だがGLEAT公式YouTubeチャンネルで無料生中継されたため、気軽な気持ちで試合を目にしたプロレス・格闘技ファンの数自体は少なくなかっただろう。Ver.1が行われるか自体まだ未定だが、Ver.0での選手たちの過酷な経験や試合までの練習の積み重ねが、普段のプロレスへの肥やしとしてフィードバックされることで、GLEAT自体の活性材料となりそうだ。
ルールはMMAは一般的な統一(ユニファイド)ルール。キックは肘無しでつかんでからの攻撃は1回認められるRISEと同じルールで、女子は顔面への膝蹴りが禁止。グラップリングはヒールフックと頸椎をひねる関節技は禁止。
47歳の近藤有己、22歳のプロレスラー・井土徹也をローで苦しめ判定勝ち
第7試合 メインイベント MMA 73kg契約 5分3R
×井土[いずち]徹也(GLEAT/Breaking Downミドル級(84kg)トーナメント(2021年11月)優勝)
○近藤有己(パンクラスイズム横浜/元パンクラス無差別級・ライトヘビー級・ミドル級王者)
判定0-3 (豊永27-30/大藪28-29/和田27-30)
井土は22歳。GLEAT所属のプロレスラーでありつつ、朝倉未来がスペシャルアドバイザーを務める1分1R制のアマチュア総合格闘技大会「Breaking Down」の昨年11月のミドル級(84kg)トーナメントで優勝している。
近藤は47歳。元パンクラス無差別級・ライトヘビー級・ミドル級王者。100戦以上のキャリアがあり、近年も年1~2試合ペースでパンクラスに出場し、最近では4月大会で鈴木一史と73kg契約で対戦し判定勝ちしている。
9月の会見で田村氏は「近藤選手は僕からすればプロレスラーであり格闘家でもあるハイブリッドレスラー。船木(誠勝)さんや鈴木(みのる)さんの血が受け継がれています。僕は前田(日明)さん、高田(延彦)さんの血を受け継ぎ、井土選手は僕の血をちょっと受け継いでいますので、Uつながりで近藤選手と格闘技で戦うことに意義があると思います」とマッチメイクの狙いを説明し、弟子筋の井土に対しては「実力差はかなりある。井土は近藤選手の胸をどれだけ借りれるか。負けっぷりに期待したい」と厳しくコメントしていた。
1R、両者サウスポーで構え、距離を取って前足の右ローを打ち合う。パンチが交錯すると、井土の左フック、右ジャブがさく裂。47歳の近藤はさすがに反応が落ちている感は否めないが、近藤も中盤以降は左ストレート等のパンチと左右のロー、右ミドルのヒットを増やして巻き返す。記者採点は近藤だが、井土につく可能性もある程度の僅差だ。
2Rも両者間合いを取り、近藤が度々ローを当て主導権。なかなか攻められない井土に対し、セコンドの田村氏は「行け」と声を出すと、井土は少しパンチを振るうが、ローのダメージもあってか、踏み込み切れない。記者採点は近藤。
3R、後のない井土は、ローをもらいつつも右フック、左ジャブを積極的に振るうように。クリーンヒットとまではならないが、手数で追い上げる。だがその時間は短く、近藤が執拗に左右のローを井土の前足に当て続ける、これまで同様の構図に戻り、それが長く続く。終盤に差し掛かり、近藤のローを連続でもらうと、井土は足が伸び、フラついてしまう。すると井土はようやく火がついた様子で、ローを嫌って圧力を強めて前に出てパンチを振るう。近藤は下がり、ローを打てなくなる。井土は近藤をロープに詰め、随所で左ストレートを当てると、GLEATファンからは声援代わりの拍手が続き、巻き返す内容で終了する。記者採点は井土。合計28-29で近藤。ジャッジは1者が記者と同じだが、2者がフルマークの27-30とし、3者とも近藤を支持し、近藤の判定勝ちとなった。
大会後のインタビューで近藤は井土について「戦う姿勢が良かった。前に出続け、いい意味で真っすぐだった。もっと強くなれると思います」と称えた。また、今回メインに起用した田村氏に関しては「うれしいですね。田村さんの前に行くと中学生の頃に戻りますね」と話し、笑顔を浮かべた。
敗れた井土は「もっと倒される覚悟で行くべきだった。この試合で終わらせたくないです。もう一回GLEAT MMAやらせてください。次はもっと攻めるんで、もう一度チャンスをください」とコメントした。
和田拓也、12年ぶりMMAで田中稔を1Rで粉砕
第6試合 セミファイナル MMA 体重無差別 5分3R
×田中 稔(GLEAT/71.55kg)
○和田拓也(フリー/元パンクラス・ウェルター級王者/82.5kg)
1R 1’37” TKO (レフェリーストップ:グラウンドでの右肘打ち)
田中は1972年11月29日生まれの50歳。90年代にバトラーツの一員としてリングスに上がっていたが、現在の形のMMAの試合は初挑戦で、GLEATではUWFルールテクニカルオフィサーを務める。今回はプロレスのリング上での抗争相手の和田とMMAで対戦した。
和田は44歳。99年に修斗でプロデビュー。池本誠知、大石幸史、北岡悟、井上克也、弘中邦佳、カーロス・コンディット、山田崇太郎らと対戦経験があり、08年にパンクラス・ウェルター級王者となり1度防衛。10年10月のSRCで中村K太郎に敗れたのを最後にMMAを引退し、競輪選手を目指したが試験で落ち断念し、15年からプロレスラーになり、サンボ仕込みの関節技を駆使していた。今回は1試合減点でのMMA復帰で、試合発表後は「MMAの試合はずっと出ていなくても、いつでも試合が出来るよう格闘技の練習は常に継続して来ました」とツイートしていた。
和田のセコンドにはSKアブソリュート時代からの盟友・竹内出がつく。体重は無差別だが、前日計量での参考体重は10kg以上・約2階級分の差があり、和田のほうが重い。1R、田中が右ローを放つと、和田は蹴り足をすくってタックルを仕掛けて倒し、トップポジションで押さえる。和田はスペースを作り、右肘を連続で当てる。セコンドの竹内から「肘にこだわらなくていいぞ」という声が飛ぶと、和田はパウンドに移行。田中は腕十字を狙うが対処され、パウンドを浴び続けて苦しむと背中を向ける。和田は続けてパウンドを連打。最後は和田がサイドで押さえながら、右肘を当て続け、和田良覚レフェリーがストップした。試合後、ダメージが残り座ったままの田中の元に和田が歩み寄り、田中を励ますと、場内は拍手に包まれた。
RIZIN出場の関根“シュレック”秀樹、中村大介が完勝
第5試合 グラップリングルール 体重無差別 10分1R
×田村男児[だん](全日本プロレス/88.1kg)
○関根“シュレック”秀樹(ボンサイブルテリア/118.8 kg)
判定0-3 (豊永9-10/大藪9-10/梅木9-10)
レスリングでインターハイに出場経験もあるプロレスラーの田村が、プロレス経験もある巨漢柔術家の関根から、度々タックルでテイクダウンを奪う。だが関根はその先の攻めを許さず、足関節技、アームロック、腕十字で度々チャンスを作り、主導権を維持する。田村は終盤は息が荒くなりスタミナが切れて終了。関根がジャッジ3者から支持され判定勝ちした。
第4試合 グラップリング 75kg契約 10分1R
×飯塚 優(GLEAT)
○中村大介(夕月堂本舗/元DEEPライト級王者)
6’06” 肩固め
中村は現在42歳。大学生時代に田村氏率いるU-FILE CAMPに入門し、PRIDEやDEEPに参戦。14年に自身のジム・夕月堂本舗をオープン。夕はUWFのUが由来。プロレスの試合もしつつ、18年からはチーム対抗グラップリング大会・QUINTETに上がり、ホベルト・サトシ・ソウザに裸絞めで一本負けしたが、斎藤裕には膝十字固めで一本勝ち。近年はRIZINとDEEPのフェザー級戦線で活躍し、牛久絢太郎とは1勝1敗。最近では11月12日のDEEP後楽園ホール大会で神田コウヤに判定負けしている。4日後のDEEP大阪大会でのMMAの試合を控えるが、今回はGLEATで田村氏から指導を受ける26歳の飯塚とグラップリングルールで対戦した。
試合は中村が飯塚を翻弄する内容に。立った状態の組み手争いで、飯塚が背後からしがみつけば、中村はアームロックを狙いつつ、潜り込んで足関を狙う。足を絡めて倒してグラウンドに持ち込めば、上やバックからコントロールを続け、腹固めやアームロックを狙いつつ、最後は肩固めを極めてタップを奪った。中村は試合後、飯塚のセコンドについた師匠の田村氏に頭を下げてリングを降りた。
第3試合 キックボクシング 女子46kg契約 3分3R
×福田茉耶(GLEAT)
○菊地美乃里(GONG-GYM 坂戸)
判定1-2 (梅木29-30/大藪30-29/和田28-29)
福田は伝統派空手の剛柔流の世界大会のジュニア部門の型で優勝、組手で2位と3位の実績があるプロレスラーで、キックボクシングに初挑戦した。菊地はRISEにも上がっている本職のキックボクサーだ。
1R、福田が右ストレート、ローを当てる場面もあるが、空手の名残かガードが低めで、菊地の右ストレートを度々もらい、終盤には右ローももらい、手数差をつけられる。記者採点は菊地。
2Rになると、福田もミドル、ロー、パンチの応酬の中で互角に打ち合うようになり挽回。まだ菊地の攻撃が少し多いものの、福田がひるむこともない。記者採点はイーブン。
3R、福田は右フックで菊地をスリップさせたり、左ジャブを当てる場面もあるが、次第に疲れて来た様子で力が入りきらない。菊地も疲れているが、中盤以降はやや手数上で終える。記者採点はイーブン。
合計29-30で菊地。大藪ジャッジのみ意外にも福田につけたものの、キックのジャッジ経験豊富な梅木氏と和田氏は順当に菊地を支持し、菊地の判定勝ちとなった。福田はキックデビュー戦で敗れはしたものの空手仕込みのパンチスキルには可能性を感じた。
第2試合 キックボクシング 75kg契約 3分3R
×渡辺壮馬(GLEAT)
○有村脩也(U-FILE CAMP)
判定0-3 (大藪25-30/梅木25-30/和田24-30)
1R、プロレスラーの渡辺が思い切りよく前に出て右フックをフルスイングし続けるが、有村はかわしつつ、右フックをカウンターで当ててダウンを奪う。その後もパンチを当て続け渡辺を圧倒する。
2R、有村が距離を取りつつジャブ、ボディを的確に当て続け主導権。1Rは前に出る元気のあった渡辺だが、ダメージが溜まり攻撃が出せず、サンドバッグ状態に陥る。
3R、序盤こそ渡辺は必死にパンチを振り回すが、有村は落ち着いて防御し、右ボディを度々強打して渡辺を苦しめ、パンチの連打をまとめると、豊永レフェリーがスタンディングダウンを宣告する。その後もパンチを当て続け、渡辺は最後まで持ちこたえたものの、終了のゴングが鳴ると倒れこみ、嘔吐して苦しんでいた。
負けが告げられ、勝った有村の記念撮影が終わると、渡辺はセコンドの田村氏に促され、四方の客に頭を下げると、場内は拍手に包まれた。大会後のインタビューで渡辺は「練習したことができなかったです。またやりたいです」と話した。
第1試合 オープニングファイト MMAルール 52.2kg契約(ストロー級相当) 5分2R
○榊原 徹(U-FILE CAMP)
×長谷川暢哉(T-Pleasure)
1R 1’10” 三角絞め