細田昌志著「沢村忠に真空を飛ばせた男 昭和のプロモーター・野口修 評伝」が第43回講談社本田靖春ノンフィクション賞を受賞
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約50年前に「キックボクシング」を命名・創設し、沢村忠をスター選手にし、歌手の五木ひろしを世に送り出した野口修の生涯を描いた「沢村忠に真空を飛ばせた男―昭和のプロモーター・野口修 評伝―」(細田昌志著/新潮社)が、第43回講談社本田靖春ノンフィクション賞を受賞した。
「沢村忠に真空を飛ばせた男」は20年10月に刊行された2段組み560ページの大著。「水道橋博士のメルマ旬報」での連載をベースに、約10年の取材・執筆をかけて一冊の本にまとめ上げられた。1933年(昭和8年)に若槻礼次郎元首相暗殺未遂事件を起こしたプロボクサー・野口進の物語から始まり、戦後に父・進の跡を継ぎプロボクシングのプロモーターとなった野口修が、ボクシングをきっかけにしてできたタイのルートを頼り、ムエタイをベースにした「キックボクシング」を創設、一大ブームを巻き起こすも衰退していく姿を、著者の細田氏は緻密な取材・調査に基づき描き上げた。その陰にあるメディア戦争、八百長問題、右翼との関わりといったタブーにも踏み込み、単なるキックボクシング史に収まらない、広範な昭和史の記録としても非常に読み応えのある作品となっている。今年3月26日に沢村忠(本名・白羽秀樹)が肺がんのため死去したことで、改めて当時のキックブームが話題となっていた。

「沢村忠に真空を飛ばせた男」と著者・細田昌志氏。撮影場所はキックボクシング発祥のジム・目黒ジムの跡地の近くにある目黒雅叙園。現在、RIZINの会見で頻繁に使われる雅叙園は、目黒ジム創設に大きく関わる場所だ
「講談社本田靖春ノンフィクション賞(旧称:講談社ノンフィクション賞)」は1979年に創始され、1年に1~2作品が選ばれる。第1回は柳田邦男「ガン回廊の朝」、立花隆「日本共産党の研究」が受賞。以降も辺見庸「もの食う人びと」、溝口敦「食肉の帝王」、魚住昭「野中広務 差別と権力」等などが受賞し、スポーツ分野では関川夏央「海峡を越えたホームラン」、後藤正治「遠いリング」などが受賞している(参照:講談社HP)。
2021年の第43回は「沢村~」以外にも石井妙子「女帝 小池百合子」、大西康之「起業の天才! 江副浩正 8兆円企業リクルートをつくった男」、牧村康正「ヤクザと過激派が棲む街」、村山祐介「エクソダス アメリカ国境の狂気と祈り」が最終選考に残り、15日の選考の結果、「沢村~」と「エクソダス」が受賞した。選考委員は魚住昭、後藤正治、最相葉月、中沢新一の4氏。受賞者には賞状・記念品及び副賞各100万円が授与される。
受賞した細田氏は「感無量です。ありがとうございます。10年間の苦労が報われた気がします。天国の野口さんもきっと喜んでくれていると思います」とのコメントを版元の新潮社を通じ発表している。
以下は昨年12月に行った細田氏へのインタビュー。
沢村忠に真空を飛ばせた男―昭和のプロモーター・野口修 評伝― 著者・細田昌志インタビュー【Part1/3】「キックボクシング創始者・野口修を調べるうち、『これは完全なる戦後右翼史だ』と思ったんです。」
細田昌志著「沢村忠に真空を飛ばせた男―昭和のプロモーター・野口修 評伝―」紹介(新潮社の資料より)
◆内容
2016年3月31日に亡くなったプロモーター・野口修の生涯を描く。野口修の父野口進は「最高最大の豪傑ボクサー」と呼ばれた人気拳闘家。「元首相暗殺未遂事件」を起こした国士でもあったため、野口修は右翼人脈に囲まれた環境で育つ。
大学卒業後、家業のボクシングジムを継いで、プロモーター業に就いた修は、タイ式ボクシング(ムエタイ)からヒントを得た新しいスポーツ「キックボクシング」を創設。沢村忠を送り出し、巧みなメディア戦略で大ブームを巻き起こす。
さらに芸能界にも進出。無名のクラブ歌手をスカウトし「五木ひろし」と改名させ、日本レコード大賞を受賞。日本人歌手として初めてラスベガス公演まで行う。
数々の栄光とその裏で繰り広げられた葛藤を描きながら、野口修の数奇な人生と、共に刻まれた壮大な昭和裏面史を活写する。
◆目次
序章 日本初の格闘技プロモーター
第一章 最高最大の豪傑ボクサー
第二章 若槻礼次郎暗殺未遂事件
第三章 別れのブルース
第四章 新居浜
第五章 日本ボクシング使節団
第六章 幻の「パスカル・ペレス対三迫仁志」
第七章 プロモーター・野口修
第八章 散るべきときに散らざれば
第九章 死闘「ポーン・キングピッチ対野口恭」
第十章 弟
第十一章 佐郷屋留雄の戦後
第十二章 空手家・山田辰雄
第十三章 タイ式ボクシング対大山道場
第十四章 大山倍達との袂別
第十五章 日本初のキックボクシング興行
第十六章 沢村忠の真剣勝負
第十七章 真空飛び膝蹴り
第十八章 八百長
第十九章 山口洋子との出会い
第二十章 よこはま・たそがれ
第二十一章 野口ジム事件
第二十二章 一九七三年の賞レース
第二十三章 ラストマッチ
第二十四章 夢よもういちど
第二十五章 崩壊
終章 うそ
あとがき
参考文献
◆著者略歴
細田 昌志(ほそだ まさし) 1971年生まれ。CS・サムライTVの格闘技番組のキャスターをへて放送作家に転身。いくつかのTV、ラジオを担当し、雑誌やWebにも寄稿。著書に『坂本龍馬はいなかった』(彩図社・2012年)『ミュージシャンはなぜ糟糠の妻を捨てるのか』(イースト新書・2017年)。メールマガジン「水道橋博士のメルマ旬報」(博報堂ケトル)同人。
沢村忠に真空を飛ばせた男―昭和のプロモーター・野口修 評伝― 著者・細田昌志インタビュー【Part1/3】「キックボクシング創始者・野口修を調べるうち、『これは完全なる戦後右翼史だ』と思ったんです。」