青木真也×二重作拓也 格闘技医学トーク (2) たとえ周りから「青木、面倒くせえ」と思われても。医学的に正しい対処法・手順を知ることの重要性

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青木真也Youtubeチャンネルで、青木と“格闘技ドクター”二重作拓也氏との対談が実現した。採録記事の全4回の第2回をお届けする。(第1回はこちら)(第3回・第4回は後日公開します)
二重作 今回、青木さんからお声掛けいただいて「ぜひ」と思った一番の理由は、青木さんが日本人MMAファイターの中でも、たぶんトップクラスに安全を意識されていると思って共鳴したからです。最初に話された大会で、青木選手がセコンドについていた際、倒れた選手のために救急車を呼びましたよね。
青木 選手と言っていいかわからないけど(苦笑)。
二重作 その方(=クリエイティブディレクターの三浦崇宏氏)とは僕も「ファイト&ライフ」で対談していまして。SNSとかでは、なんで青木真也がセコンドについていて、彼の試合をOKしたのかという声もありましたが。
青木 彼は青木真也に憧れて、青木真也みたいなことをやりたくて試合をしている以上、かわいそうだったなって思うところもあって。ただ、「俺がいればなんとかなるか」という思いもありました。
二重作 ストッパーとしての役割も含めてですね。
青木 何かあった時に、周りと調和せずに「この野郎」と喧嘩できるのは俺しかいないという気持ちは常に持っています。実際(相手が強すぎる)ミスマッチでノックアウトされました。倒れて意識が戻って来なくて、かなりダメージが深いと感じたんです。当然リングに入ったんですけど、僕にできることは正直ないんですよ。やっちゃいけない立場じゃないですか。その時、ドクターが来て、「ヘッドギアを外せ」と言われたんですよけど、嫌だなあと思って。
二重作 危ないですよね。
青木 「ふざけんなよ」という気持ちもありましたけど、それだけ外しました。意識は戻っていましたが「ストレッチャーか担架で下ろしてくれ」と頼みました。歩いて帰したくなかったんです。現場には(主催者の用意した担架が)無いと言われたけど(会場の)八芳園のがあったので、持ってきてもらいました。その時も首を触るのが怖くて、幸い、友人の医者が客席に数人いたので、彼らを呼びました。周りの格闘技関係者からは「なんでお前がやらないんだ」という雰囲気を感じましたが、友人の医者に「ごめん、僕は首を触りたくないし、技術もないからやってくれ」と。その後も、現場にいた他のお医者さんたちが「意識も戻ったし、調子が悪ければ後で病院へ行く形でいいんじゃないか」という合意が取られそうな雰囲気だったんです。でも、僕は何かあったら嫌だったので、安全のハンコを押してもらうために、念のために救急車に乗ってもらいました。そうしたら、まさかの顎が折れていたんです。僕もそこまでは思わず「脳に異常がなければいいな」という確認ぐらいのつもりでしたが、行かせて本当によかったです。
二重作 その判断はめちゃくちゃ重要です。資料を持ってきたんですが、格闘技の試合で選手が倒れている状況を見て、「これは脳震盪(のうしんとう)ですか?」と聞くと、20人中20人が「脳震盪です」と答えてしまいます。
青木 僕もそう思いました。
二重作 実は「答えは分からない」が正解なんです。意識消失している状態では、頭の中で何が起きているか外からは見えません。脳震盪の可能性もありますが、硬膜外血種、硬膜下血種、外傷性くも膜下出血、脳挫傷、びまん性軸索損傷の可能性もある。この状況で「脳震盪だ」とは断定できません。すぐに病院へ行って、CTやMRIで器質的な異常がないことを「今のところ確認できそうだ」ということをクリアして「脳震盪だったのかもしれない」と言えるんです。脳震盪は機能異常に対する病名であって、メカニカルに壊れているかどうかの評価ではないんですよ。「KO=脳震盪」という思い込みが、選手の命を奪ってきました。三浦さんも脳震盪は間違いないですが、あの短い試合の中で3、4回は頭を打っています。意識が飛んでいる中で、顎が折れている。医学的には一番激しいものを主病名にするので「下顎骨折プラス脳震盪」でした。青木さんが「ちゃんと今検査しなきゃダメだ」と言ってくれたから、CT検査によって硬膜下血種などが否定された。
青木 めちゃくちゃ嫌がられましたけどね。周りから「面倒くせえなこいつ、大事(おおごと)にしやがって」という顔をされました。
二重作 青木さんのその時の心境は、僕もよく分かります。「自分だけが医学的に正しい判断を知っている」という孤独な状況が僕にも何度もありました。例えば、肩が外れた選手を見て、周りは「早く入れて(整復して)やれ」と言いますが、脱臼ではなく、実は上腕骨が折れている可能性もある。レントゲンも撮らずに無理に整復したら、神経麻痺を起こして手が動かなくなるかもしれない。医者として守るべき順番があるのに、空手の会場だったんですけど、「なんであの先生は整復しないんだ」って、民衆の敵のように言われてしまう。青木さんの行動は本当に正しかったですし、SNSで騒動を知ったドクター陣も「よく首を固定した」と評価していました。
青木 リングドクターだった先生も気の毒ですよね。先輩のコネクションで「ちょっと行ってこい」と呼ばれたような雰囲気で。
二重作 「座っていればいいから」と言われていたのかもしれません(笑)。
青木 お医者さんの上下関係も厳しいでしょうし。でも、僕は引けなかったので、三浦を救急車に乗せた後、その先生に(肩を組んで)「悪かったな」って。謎の友情が芽生えましたけど(笑)。でもやっぱり、怖いんですよね。
二重作 結果論なんですよ。もし、三浦さんのような会社の責任ある立場の人間が、あのまま植物状態にでもなっていたら…。
(第3回は後日アップします。下の動画で続きをご覧いただけます。)


