青木真也×二重作拓也 格闘技医学トーク (4) 全てはこの、格闘技の文化を守るため

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青木真也Youtubeチャンネルで、青木と“格闘技ドクター”二重作拓也氏との対談が実現した。採録記事の全4回の第3回をお届けする。
・第1回 格闘技は社会的に徳俵ギリギリのところで成り立っている
・第2回 たとえ周りから「青木、面倒くせえ」と思われても
・第3回 脳細胞は痛みを感じないから怖い
・第4回 全てはこの、格闘技の文化を守るため
青木 先生、試合はまだいいんです。ドクターもいるし。
二重作 ドクターがいて、まだお膳立ては整っているから。
青木 みんなスパーリングをめちゃくちゃやっていますよね。SNSに上げてアテンションを稼ぐためなのか、ガッチンガッチンやり合っていて「大丈夫ですか?」と思うような動画があるじゃないですか。
二重作 青木さんから見て、あれはどうですか。
青木 僕は「空手文化」の影響だと思っています。失礼かもしれませんが。
二重作 いや、その通りかもしれません(苦笑)。(※二重作氏は極真空手出身)
青木 K-1などの空手カルチャーでは、精神性も含めて「耐える」ことが美学になっている。あれが格好いいという文化があると思うんです。
二重作 まさにその通りです。
青木 気持ちよさそうだな~って俺は思ってる。
二重作 空手の合宿などでも、こちらがライトスパーで気を遣っているのに、向こうは一方的にガチで来る、といった道場によるカルチャーの違いがすごくあります。
青木 スパーで倒された動画を出すとか、僕には「これ載せちゃダメなやつでしょ」と思えるんです。
二重作 フルコンタクト空手ができて、大会が始まって50~60年ぐらいかと思います。僕も昔、世界大会を目指して練習していました。でも(極真空手の)創始者の大山倍達総裁は「子供には試合をさせるべきではない」という思想を持っていました。社会的な影響も考えていたんです。(1994年に)総裁が亡くなってからジュニア大会が普及しました。昔は選ばれた大人だけが出ていて、遺書を書いて出ている選手もいました。
青木 ちゃんと気が狂っていますね。いいとは思わないけど。
二重作 当時は選ばれた人たちが腹をくくって出るものでした。
青木 エクストリームスポーツとして、認められた人だけがやるものでしたね。
二重作 当時はそういう文化でしたが、それが下のジュニアや上のシニアの年齢層まで広がった。道場内で当たり前に真剣勝負をやるようになってしまった。YouTube撮影などで、ドクターもレフェリーもいないところでやっている。危ないですよね。
青木 本当にそう思います。自分が歳を取ったせいなのかもしれないけれど(自分が関わって)「責任を取りたくない」と思ってしまう。自分が「格闘代理戦争」という番組のコーチをやっていた時、減量している子がいたら、「落ちないと思ったら一本電話をくれ。意地でやるのはやめてくれ。救急車に乗っていいし、試合もしなくていい。バッシングは俺が全部背負うから、とにかく命を優先してくれ」と言っていました。それくらい、責任を負いたくないんです。何かあればすぐに救急車に乗ってほしい。
二重作 青木さんが「責任を負いたくない」と言うのは、重さを知っているからですよ。格闘技に関わる多くの人は「放っておくと死んでしまう」という重さを知らない。普通に生きていて、人が目の前で亡くなる経験なんてまずありませんから。でも、ドクターや消防、警察、機動隊、自衛隊などの人間は、人が亡くなっていく現場を知っている。だから、ストップをかけたりタオルを入れたりすることの重要性が、理屈ではなく実感として分かっているんです。選手を守ることは自分自身を守ることでもある。どれだけバッシングされたりしても、目の前の現象が大事ですから。青木さんは命の大事さをわかっている。
青木 いや、死んじゃうと終わっちゃいますからね。
二重作 そこですよね。みんな一生懸命作って来た格闘技の文化が終わっちゃう。
青木 ボクシング業界はまた違って、歴史として積み上げてきたものが違う。人が亡くなってもまた再開できる。僕は良いことだとは思いませんが。
二重作 それだけボクシングというものが世の中に認められているのでしょうね。
青木 社会と握り合えていますよね。ボクシングの医療システムは政治ともがっちり食い込んでいます。救急医療の第一人者を顧問にしたり、格闘技には真似できない。「ボクシング強いな」と思わされます。
二重作 社会的な意味で強いですよね。なおかつボクシングは事故のたびにルールを細かく変え、脳出血があれば即引退させるなど、厳格な決まりで自分たちを守っています。ただ、ボクシング界は「ボクシング」を守れていますけど、網膜剥離でボクシングはダメになった選手がキックに来たりもします。
青木 地方の格闘技の大会に行くとヒヤッとすることもあります。西島洋介選手の時はまさにそうでした。最近亡くなった甘井もとゆきさんのチャクリキという大会でした。愛媛の工事現場で試合をしたんですよ。プロレスラーの将軍岡本と西島のキックボクシングの試合があって、面白そうだと思ってリングサイドで見ようとしたら、外から西日が窓から入って何も見えない。ジャッジの人に「これ見えるの?」と聞いたら「見えるわけないでしょ」って(笑)。どうやって判定するのか聞いたら「できないなあ」とか言っている間に、西島さんが(パンチをもらって)バカーンと倒れた。レフェリーが和田良覚さんで(リングを挟んで)向こう側のジャッジが平直行さんだったんですよ。お医者さんは町医者の方で「意識が戻ったから大丈夫でしょう」という雰囲気でした。でも和田さんと平さんは責任があるから、ヤバいなって雰囲気でした。尋常じゃない空気を感じ、和田さんに「こっそり救急車を呼んじゃおう」って言って、呼んで運んでくれたんですよ。そしたら(脳に)出血があって一週間入院になった。そういうことが実は全国の知らないところでたぶん結構起きているんでしょうね。
二重作 僕もSNSで発信していますが、フラッシュダウンとかも含めて、「一瞬でも意識が飛んだら必ずCTを撮る。医療機関へ行く」というのは絶対条件にしたい。帰りの車の運転やアルコールもやめる。そういう格闘技業界でのガイドラインを有識者で作っていきたいですね。何かが起きた時の基準がバラバラです。選手の命や後遺障害を守り切れていない。アメフトなど他のコンタクトスポーツの良いところを取り入れながら、少なくともこうするとか、ガイドラインが必要でしょうね。
青木 僕は失礼かもしれないけど、リングドクターとして来ている先生をあまり信用していないところがあるんです。普段は何科の先生なの?と思ってしまう。リングドクター個人の能力が分からないから、僕は「とにかく病院へ行こう」という判断になる。
二重作 僕も空手の試合に出ている時、ドクターを信頼していなかった。
青木 あと、カットした時の縫合。今は運任せなところがありますよね。形成外科の先生がいれば綺麗ですが、とりあえず縫っておこうというパターンもあります。
二重作 試合会場で縫う目的の一つは止血なので、現場ではとりあえず応急処置として縫い、翌日以降に専門の形成外科に整えてもらうのが理想的です。会場で選手に「なんで縫わないの」と思われても、応急処置に留めることもあります。リングドクターの責任範囲が明確に伝わっていないのも問題です。一番の役割は命を守ること。出血を止める応急処置はするけど、傷の処置は医療機関で本来やることです。
青木 会場で傷を縫ってもらうのはあくまで応急処置で、ちゃんとした病院へ行けよということですよね。
二重作 そういうことです。そもそも頭を打っていれば脳も揺れていますから医療機関に行くべきです。ちゃんと傷を縫うにしても、試合会場は病院ほど清潔ではないですしね。
青木 腎臓内科の友人に会場で「縫って」と言ったら「上手に縫えないから嫌だ」と言われたことがあってから、全員が縫えるわけではないと気づきました。
二重作 リングドクターの責任の範囲は、まずは命を守ること。治療ではなく判断をすることだと、ある程度明確化し、伝えたほうがいいのかもと思いますね。◆◆◆
(対談は以上です。ぜひとも青木選手のYoutubeチャンネルの対談動画もご覧の上、「いいね」と感想の投稿をお願いします!)


