ONE 6.8 バンコク:シッティチャイ「若い頃ならグレゴリアンのボディフックは問題なかった」「野杁正明戦は私の蹴りの嵐になるでしょう」
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ONE 167(6月8日(土)タイ・バンコク・インパクトアリーナ)で野杁正明と対戦する、シッティチャイ・シッソンピーノンのインタビューがONEから届いた。(写真 (C) ONE Championship)
キック フェザー級(70.3kg) 3分3R
シッティチャイ・シッソンピーノン(タイ/シッソンピーノンジム/ONEキック・フェザー級(70.3kg)3位、ONEムエタイ同級2位、元GLORYライト級(70kg)王者、元ルンピニー認定ウェルター級(66.68kg)王者)
野杁正明(team VASILEUS/元K-1ウェルター級(67.5kg)&スーパー・ライト級(65kg)王者、元Krushウェルター級(67kg)王者、元Nuit Des champions 66kg級王者、元WBCムエタイ日本スーパーライト級(63.5kg)王者、K-1甲子園2009 -62kg優勝)※K-1 GYM SAGAMI-ONO KRESTから所属変更
野杁は31歳。戦績60戦49勝(25KO)11敗。高校1年生の09年にK-1甲子園優勝。13年のGLORY -65kg Slamでは裕樹らを破って日本代表となり、世界大会では決勝で久保優太に敗れたが、4カ月後に久保にリベンジし、Krush -67kg王座を獲得した。14年にOISHI GYMからK-1ジムEBISU小比類巻道場へ移籍。新生K-1ではスーパー・ライト級(65kg)の主力として活躍し、17年にはゲーオに勝利し同級王者になる。18年に同王座を返上しウェルター級(67.5kg)に階級を上げ、KRESTに移籍。21年9月のK-1ウェルター級王座決定トーナメントでは安保瑠輝也らをKOし王座獲得。22年6月のTHE MATCH 2022ではシュートボクシングの海人と68.5kg契約で対戦し延長判定負けした。昨年7月のK-1でアマンシオ・パラスキフを1R KOすると「これから世界のトップとしかやりたくないんで、世界に挑戦する姿を応援して下さい」とアピールした。
この大会を最後に、K-1は中村拓己氏からカルロス菊田氏にプロデューサーが変わり“開国”路線に移行したが、野杁は新体制で試合せず、3月にK-1を離脱し、4月にONEと独占複数試合契約を結んだと発表された。5月18日には武尊率いるteam VASILEUS加入を発表し、武尊と共にONEの頂点を目指す。
ONEで野杁が戦うのはキックルール(肘無し・組んでの攻撃禁止)のフェザー級(70.3kg)。王者・チンギス・アラゾフを筆頭に、マラット・グレゴリアン、ジョルジオ・ペトロシアンといった歴代K-1王者が参戦し、暫定王者・スーパーボンや、シッティチャイ、タワンチャイといったタイの強豪もしのぎを削る。
野杁のONE初戦の相手に決まったシッティチャイは3位。14年にルンピニー王者、16年にGLORYの70kgの王者となり、GLORYでは6度王座防衛。20年からONEに上がり、22年3月のキック・フェザー級GP決勝でチンギス・アラゾフに敗れ準優勝。その後は2勝2敗・2連敗中で、昨年9月にムエタイルールでモハメド・シアサラニに判定負けし、今年1月の有明大会ではグレゴリアンと4年半ぶり6度目の対戦を行い、サウスポーからの左ミドルで1Rは主導権を握ったが、2Rからグレゴリアンの圧力に押され、3Rに右テンカオをもらいKO負けしている。現在32歳。
―― グレゴリアン戦で1Rは優位に立てたものの、2Rで動きが鈍くなったのは何かあったのですか。
シッティチャイ「あの試合でKOで負けてしまい、本当に残念でした。準備は万全でしたが、相手のパワーに耐えられませんでした。キックボクシングでは初めてのKO負けでした。1Rでは自分の足さばきでマラットよりも動きの方が有利を取れましたが、2Rで相手のボディーフックを腹に受け、激しい痛みが走り、動けなくなってしまいました。それがKO負けの決め手になってしまったのです。」
―― 若い頃ならあのボディーも耐えられたと思いますか。
シッティチャイ「若い頃だったら、あのボディーフックは問題なかったですね。間違いなく耐え抜いて、普通に戦いを続けられたはずです。心は戦いたかったのですが、身体が言うことを聞かなくなり、起き上がることができませんでした。」
―― かなりがっかりしたと思いますが、どのように乗り越えましたか。
シッティチャイ「キックボクシングで初めてのKO負けだったので、本当にがっかりしました。しかし、家族や子供たちに会うと、また頑張ろうという気持ちになれました。」
―― 体力的に限界だと言われていますが、それについてどう思いますか。
シッティチャイ「年齢を重ねたので、体力的に限界だと指摘されても、否定することはできません。しかし、そういった指摘から自分の欠点が見えてくるので、何を改善すべきかも分かります。そのアドバイスを活かして、自分を磨いていきます。自分の体力は把握しているつもりで、このキャリアを続けられると考えています。」
―― 前の敗戦から何を学びましたか。
シッティチャイ「試合の映像を見返すと欠点が分かります。年齢を重ねるにつれ、若い頃のような身体能力はなくなってきています。動きが鈍くなっているのです。この階級のエリート級と渡り合うには、その分を補うため、体力作りに専念しなければなりません。そうしないと生き残れません。技術的なスタイルは変えられませんので、相手の攻撃に合わせて守りを固める必要があります。」
―― 目標は変わりませんか。
シッティチャイ「世界タイトル獲得が目標です。ただし、一日一日を大切にしていかなければなりません。夢ばかり空高く描きすぎれば、失敗した時の落胆も大きくなります。」
―― 最後のキャリアをONEで走ろうと決めた理由は何ですか。
シッティチャイ「私にとってONEは一番の団体です。ここにいるファイターたちは最強の“チャンピオン”ばかりですから、ONEの一員としてキャリアに終止符を打ちたいのです。」
―― 家族からはどんなサポートを受けていますか。
シッティチャイ「ONEでチャンピオンになる夢を追うにあたり、家族は大きな支えとなってくれています。妻と2人の子供の顔を見ると、彼らのためにも頑張らなければと思うのです。豊かな生活が送れるように。私自身が経験したようなつらい思いをさせたくありません。子供に「パパ疲れた?」と聞かれても、その顔を見れば疲れも吹き飛びます。」
―― この3ヶ月はどんな生活でしたか。
シッティチャイ「この3ヶ月は自身のシッティチャイボクシングジムの運営と、1.5ヶ月になる次男のペーパーの育児に勤しんでいました。空いた時間は練習に費やしていました。」
―― 2人の子供がいる父親としての生活はどんな感じですか。
シッティチャイ「親になれば当然疲れることもあります。両親が私を育ててくれた大変さが分かります。子育ては大変ですが、それは幸せな疲れなのです。子供が増えれば養う口も増えますが、私自身も成長してきています。子供たちと共に成長し、前へ進み続けていきます。家族のためにも、最後のキャリアで全力を尽くす原動力ともなっています。時間は限られていますが、最後までやり遂げたいと考えています。」
―― 子供たちに大きな試合があると話しますか。
シッティチャイ「「パパが仕事に行くからね」と伝えています。うちでは仕事のことを「戦い」と言うのです。「パパが仕事に行ってからおもちゃを買ってくるよ」と。子供たちはそれを理解しており、「パパ、仕事に行く?」と聞いてきます。試合後におもちゃを買ってもらえることを知っているからです。」
―― 野杁正明戦が決まった時の気持ちを教えてください。
シッティチャイ「ONEに日本人ファイターが参戦すると聞いて、すごく興奮しました。彼が武尊のような日本のスーパースターだと知りました。彼のことをよく知らなかったのですが、レベルの高い実力者だと思いました。しかし、デビュー戦で私が対戦相手になるとは当時は考えていませんでした。彼と対戦することになり、私は『わお!』と驚きました。彼が初めての日本人の相手だったからです。今までのキャリアで日本人と戦う機会がなかったので。しかも彼は日本のスーパースターなのですから、さらに興奮しました。」
―― この試合は復帰、そして勝利の道へと返り咲く大きなチャンスだと思いますか。
シッティチャイ「間違いなく絶好の機会です。彼はとてもメジャーな選手なので、勝てば自信を取り戻せると確信しています。」
―― 大舞台のインパクトアリーナで戦えることについてどう思いますか?
シッティチャイ「インパクトアリーナでの試合は初めてです。しかも相手は日本のスーパースターです。このグローバルな大舞台で戦えることを言葉で表せないほど嬉しく思っています。団体から求められていると感じ、私への期待を裏付けていると感じます。」
―― 野杁選手の長所・短所はどう見ていますか。
シッティチャイ「野杁選手はトップ級のキックボクサーです。スタイルはピュアなキックボクシングです。パンチ、キック、そして危険なハイキックが武器です。攻撃力と防御力のどちらも優れています。簡単な試合にはならないでしょう。でも、私も長く活躍してきたファイターだと自負しています。彼の欠点は、攻撃を防御するより受け止める傾向があることです。カウンターを狙うためでしょう。だから自らを守ることはあまりしません。私はパワーのある武器で、リングで彼と対決します。」
―― 彼に対してどこに有利があると思いますか。
シッティチャイ「私の経験値と、サウスポーの構えが彼の防御を困難にすると思います。彼がゲーオ・フェアテックス戦で2度敗れたのを見て、サウスポーの相手には弱いと気付きました。」
―― ファンには何を期待していてほしいですか。
シッティチャイ「左の回し蹴りです。彼は左蹴りの防御が苦手なので、当日は私の蹴りの嵐になるでしょうね。」
―― 体力的にこの試合に備えられていますか。
シッティチャイ「2ヶ月以上かけて身体を万全にしてきました。いつも全力を尽くしています。前のマラット戦よりも体力的に絶好調です。あの試合は急なオファーではあったので1ヶ月しか準備できなかったですが、今回はしっかり準備でき、ハードな練習を行えました。だから体調は極めて良好です。」
―― 試合はどのような結果になると思いますか。
シッティチャイ「リングの中で何が起こるか分かりません。でも、ファンを熱く盛り上がる試合になるよう全力を尽くします。」
―― この試合は自分にとってどれくらい重要ですか。
シッティチャイ「この試合は私にとって本当に重要です。再び勝利への道に返り咲くためには勝利することは欠かせません。しかも彼のようなスーパースターと戦えるのですから、全力で倒したいと思っています。なぜなら、再び世界最高レベルのファイターになりたいからです。」