【コラム】“ヒーローのチャレンジ”こそが、プロスポーツコンテンツの基本。超RIZIN.4に集まった若者たちの熱気、K-1に対するファンの反感を見て思ったこと

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K-1 9月7日 代々木競技場第二体育館大会の-70kg世界トーナメントに木村“フィリップ”ミノルがエントリーし、新生K-1初となるMMAの試合としてシナ・カリミアンの試合が組まれたことに、多くのファンが反感を持っています。その反感の根幹は、現状のK-1が、“ヒーローのチャレンジ”という、プロスポーツコンテンツの基本、王道の魅力を伝えきれず、悪名ばかりが目立っていることにあるのではないかと思い、ちょっとコラムを書いてみました。(井原芳徳)
K-1側の事情・歴史を考慮すれば、木村とカリミアンの起用自体は、それなりに理由があるのはわかります。K-1の-70kg世界トーナメントに木村がエントリーしましたが、ゼロ年代のK-1 WGP・MAX同様、16人による開幕戦という「予選」的位置づけの試合からの出場です。本戦の8選手による1DAYトーナメントの前段階の試合ですから、いちおうワンクッションは置かれています。ドーピング検査も行われるとのことです。
シナ・カリミアンのMMAの試合も、選手のニーズに応じたK-1側の柔軟な対応といえます。90年代には田村潔司らのMMAの試合を組み、ゼロ年代にはHERO”S、DREAMを並行し、旧K-1時代はMMAにも積極的でしたから、これもK-1 ReBIRTHの原点回帰路線の一環とも解釈できます。K-1を離れる選手を引き留める抑止策という点では、PRIDEに対抗して作られたHERO”Sの役目にも近いかもしれません。
ただ、それらはあくまで“枠組み”にすぎず、軸となる選手の輝きがないと、仏作って魂入れず状態になってしまう。ファンは枠組みというパッケージに熱狂するんじゃなく、やっぱり基本は人・選手です。
木村もカリミアンも、ドーピング問題や前科や反則騒動が積み重なり、ヒーローと言い難い状態で、その禊が足りないと感じるファンが大多数です。金子晃大も不起訴になったとはいえ、もやもやした感覚が拭えないファンが多いでしょう。正直、ファンの共感を得るヒーローに彼らがなっていない。「悪名は無名に勝る」というのは、前プロデューサーのカルロス菊田氏が好んで使っていた言葉ですけど、あくまで相対的に無名より勝っているというだけで、話題にはなっても、共感を生むかは別問題で、反感が強いと逆にブランドイメージが低下しかねません。
野球での大谷翔平、ボクシングでの井上尚弥は、“ヒーローのチャレンジ”という、プロスポーツコンテンツの基本を明快に提示し成功している好例です。那須川天心、武尊は育った団体を離れてからもチャレンジしているからこそファンがたくさんついてくる。朝倉未来もデビュー前は喧嘩に明け暮れ少年院にいた時代もありましたが、格闘家になってからは真面目に格闘技に取り組み、挫折を繰り返しつつも鍛錬・改善して成長して這い上がり、4万人ものファンを集める存在になりました。東京ドームやさいたまスーパーアリーナに行くと、彼が10~20代の一般的な男子にとって、いかにヒーローなのかというのを痛感します。超RIZIN.4でクレベル・コイケにリベンジした未来を見て、努力の大事さを実感した若者は多いでしょう。
未来ほどではなくても、鈴木千裕や征矢貴も、そういう存在として共感を得ていると、会場で見ていて感じました。千裕は体がボロボロでも未来戦を引き受けるチャレンジをしたこと未来ファンからも賞賛されました。征矢も榊原信行CEOからの事実上のタックル禁止令に逆らって開始早々タックルを仕掛け、ファンの喝采を浴び、強豪アリベク・ガジャマトフに対しても果敢に前に出続けました。YA-MANと金原正徳の一戦も、チャレンジとチャレンジのぶつかり合いといった感じでした。そういった、たくさんのチャレンジエピソードの集合体であり、これまでのエピソードが点で終わらず線になっていることが、今のRIZINの人気の理由なのでしょう。そしてドーピング騒動等、悪名的なエピソードがありつつも、それらを抑止できるぐらい、正統派なチャレンジエピソードがいくつも輝いている。
K-1に今出ている選手たちも、彼らに負けず劣らずのチャレンジスピリットを持っている選手がたくさんいますし、アスリートとしての能力・技術も総じて高い。それはK-1を離れた選手たちも示していますし、K-1アマチュアやKrushの選手育成基盤もしっかりしています。今度の-70kg世界トーナメントも、オウヤン・フェン筆頭にK-1 ReBIRTH世代で海外の選手が揃っていますし、ダゲスタン、キルギスからも初参戦の選手を招き、今の格闘技界のトレンドを意識しているのがわかります。
ただ、そういった可能性のある選手達のポテンシャルをしっかり引き出せているか、ファンに伝えられているかとなると、なかなか厳しいものがある。そしてそこそこ伝えられている選手がいても、一部選手の悪名のインパクトによってかき消されてしまう…。「悪名は無名に勝る」としても、無名には“有名の芽”も含まれていて、「悪名は“有名の芽”を潰す」状態になってしまってはいないだろうか。
正味の選手層、試合のクオリティで、K-1はRIZINに決して負けず劣らずのものがあるはずだから、何とかならないものかと思います。魔裟斗、武尊というスターを生んだK-1なら、新たな“ヒーローのチャレンジ”を描けると信じています。
ベタといえばベタな話ですが、基本中の基本であり、長年格闘技を見ているとスレてしまい、知らず知らずのうちに忘れてしまったり、照れくさくて素直に楽しめなくなっているんじゃないかという思いを、“アサシン”世代の純な若者であふれかえり熱狂するRIZINの会場でも感じましたので、今回書いてみた次第でした。木村とカリミアンも、試合が決まった以上、これからの試合で“ヒーローのチャレンジ”をしっかり示していくしかないのかなあと思います。



