GLORY 8.19 ロッテルダム(レポ):念願の海外進出の海人、体格で勝るGLORY王者ベスタティを詰められずフルマークの判定負け
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GLORY 87
2023年8月19日(土/現地時間)オランダ・ロッテルダム:アホイ・ロッテルダム
レポート:井原芳徳
第8試合 コーメインイベント GLORYライト級(70kg)チャンピオンシップ 3分5R
○ティジャニ・ベスタティ[Tyjani Beztati](モロッコ/王者)
×海人(TEAM F.O.D/挑戦者、シュートボクシング世界スーパーウェルター級(70kg)王者、RISEミドル級(70kg)王者、KNOCK OUT-BLACKスーパーウェルター級(70kg)王者、元SB日本スーパーライト級(65kg)王者)
判定5-0 (50-45/50-45/50-45/50-45)
※ベスタティが4度目の防衛
海人は1997年8月21日生まれの25歳。小学生から格闘技を習い、16歳でプロデビューし、立ち技戦績59戦52勝(22KO)6敗1無効試合。キャリア初期から安保瑠輝也、鈴木博昭といった新旧の実力者を下し、17年にSB日本スーパーライト級王者になり、18年にS-cup65kg世界トーナメントを制し、SBのエースに君臨。そこから少しずつ体重を上げ、海外勢との試合も増やす。チャド・コリンズ、ピンペットには判定負けしたが、イ・ソンヒョン、ベイノア、緑川創らを下し、21年に日菜太に判定勝ちしREBELS(後のKNOCK OUT)の王者となった。
昨年は4月にベイノアを41秒KOで返り討ちにすると、6月のTHE MATCH 2022のセミファイナルではK-1ウェルター級王者・野杁正明との延長戦を制し、年の後半もヨーロッパ勢相手に3連勝した。12月のRISE&SB両国大会ではGLORYライト級1位・ストーヤン・コプリヴレンスキーに判定2-1ながらも勝利をもぎ取った。
今年の海人は2月のNO KICK NO LIFEで緑川を肘で切り裂き3R KOすると、3月のRISE ELDORADOでイ・ソンヒョンに判定勝ちしRISEミドル級王者となり、6月25日のSB世界スーパーウェルター級王座決定戦ではサモ・ペティに判定勝ち。試合後には「KNOCK OUT、RISE、SBのベルトを世界一のベルトにします。次は日本を背負って世界に行って世界一になります」「今年の目標的にはGLORYのベルトを取らせてもらいたいです。向こうのリングで向こうのチャンピオンと戦わないと意味が無いので、やる時は向こうで取りたいです」と話し、早速その3日後にGLORY王者・ベスタティへのオランダでの挑戦が発表された。
12月のコプリヴレンスキー戦はRISEルールでの試合のため、海人はGLORYのランキング入りはしていないが、GLORYが海外勢との対抗戦で設けている「RIVALS」枠の試合のため、GLORYの公式サイトの海人のプロフィールにもこの結果が記載されている。海人は20年2月のピンペット戦で敗れて以降18連勝中。実績が認められ、GLORY初戦から王座に挑戦した。
王者・ベスタティは25歳。モロッコ出身で今大会の地元オランダ在住。キック戦績29戦24勝(9KO)5敗で、16年から上がり続けているGLORYでの戦績は17戦14勝(5KO)3敗。18年のシッティチャイ、19年のマラット・グレゴリアンとのGLORYライト級王座戦では判定負けしたが、21年9月にエルヴィス・ガシとの王座決定戦で判定勝ち。ジョシュ・ジョーンシー、コプリヴレンスキー、1階級下の王者のペットパノムルン相手に3度防衛に成功し、今回が4度目の防衛戦となる。
海人はオランダの地でも「力強く参上」の歌詞で始まるMEGARYUの「我竜伝説」をBGMに入場する。だがシュートボクシングや日本の他の大会でも認められていた、足全体が隠れるロングスパッツはGLORYでは認められず、一般的な股下までのショートスパッツを着用する。身長では海人が180cm、ベスタティが190cmと10cm高い。前日計量での体重はベスタティが69.8 kg(153.8ポンド)、海人が69.5kg(153.2ポンド)だった。試合は体格で勝るベスタティが終始距離を制して海人の攻めを封じ、手数で圧倒する内容となる。
1R、両者オーソドックス主体で、時折スイッチする構図。ベスタティはリーチ差を活かし、前手前足で距離を取りつつ、左右のミドル、ローを序盤から積極的に出して当てる。海人は自分の蹴りの距離に持ち込めず、時折右のロー、カーフを当てるが、数も力強さも乏しい。記者採点はベスタティ。GLORYの判定は5ジャッジ制、ラウンドマストで行われ、5ジャッジもベスタティを支持する。この採点システムのため、5R制ながらベスタティは1Rから積極的に攻めてポイントを取りに行っている。
2R、ベスタティは1R中盤以降同様にオーソドックスで固定し、左ジャブ、前蹴りの頻度を上げて海人に入らせず、自分の右のミドル、前蹴り、ストレートを何発も当てる。海人はベスタティのミドルを腕で受け続け、自身の右のカーフを当てる場面もあるが、単発で数発止まりで終わる。記者採点もジャッジもベスタティ。
3R、ベスタティは足を掛けての崩しを決めるが、反則のためレフェリーから注意される。少し距離が詰まり、海人はワンツーで右フックを当て、右のカーフのヒットを少し増やす。だがベスタティは左ジャブを当て続け、右ストレート、左ミドルを随所でヒット。左ミドルは減ったものの、手数で勝る状態は維持する。記者採点もジャッジもベスタティ。海人はここまで負ったダメージは小さく、ここ2試合の王座戦で5Rを経験していることもあり、スタミナは問題無さそうだが、以降も流れを変えることはできない。
4R、海人の右カーフを警戒してか?ベスタティはサウスポーで構える時間が増え、左ミドルを当て、詰められれば組んで膝を当てる。オーソドックスに戻しても左ミドル、ボディフックをヒット。海人は前に出続けるが、ベスタティは回って距離を取り続け、攻撃を当てさせない。終盤、ベスタティの左ハイをブロックした後、海人はすぐに前に出て、ベスタティをコーナーに詰めて、左右のフックを振り回してから左ハイを胸に当て返したものの、その先に持ち込めないまま終わる。記者採点もジャッジも手数で上回ったベスタティ。
5R、後の無い海人はKOを狙わないといけない状況だが、ベスタティが序盤から手数で先手を取る。ベスタティは距離を取りつつ、左ジャブ、ミドルを当てつつ、接近戦で右フック、アッパー、ストレートのヒットも増やし、場内を沸かせる。パンチを当てた後はすぐに回って距離を取り、攻守を総合したボクシング技術でも巧さを印象付ける。残り1分を切った終盤、海人が右ローを当てると、少しベスタティはひるむが、すぐにステップ、ジャブ、スイッチングで距離を取り、海人の追撃を許さない。海人は左ボディを当てるが、力が入りきらない。最後もベスタティが海人をロープに詰め、パンチを積極的に振るう。海人が右フックを振れば距離を取って、サウスポーからの左ミドルを当て、完璧な形で試合を終える。記者採点もジャッジもベスタティ。合計は記者もジャッジも50-45のフルマークでベスタティで、ベスタティが完勝で4度目の防衛を果たした。海人は今年に入りRISEとSBの世界タイトルを獲得したものの、海の外の現実は厳しく、完敗に終わり、連勝が18で止まった。
勝ったベスタティは「とてもテクニカルな戦いでした。本当はもっと楽しませたかったです。カーフキックも理由です。次回?相手は誰でもいいです」と勝利者インタビューでコメントした。