LFA 8.5 オクラホマ(レポ):UFCへの登竜門で日本勢全敗。田中路教、ブラジル人選手の寝技に苦しむ。広島出身・河名マスト、打撃で圧倒される。二宮城光の三男・二宮城太は1Rタップアウト負け
MARTIAL WORLD PRESENTS GYM VILLAGE
大阪梅田中津 キックボクシング ジョウジム
キックボクシングで楽しく運動!燃焼!ストレス発散!初心者でも経験者でもしっかり指導。見学・体験大歓迎!
LFA (Legacy Fighting Alliance) 138 : FARIAS VS. TANAKA
2022年8月5日(金/現地時間) 米国オクラホマ州ショーニー:グランドホテル・カジノ&リゾート
レポート:井原芳徳 中継:ABEMA格闘チャンネル
メインイベント バンタム級 5分3R
×田中路教[みちのり](チーム・アルファメール)
○アリ・ファリアス[Ary Farias](ブラジル)
判定1-2 (29-28/28-29/28-29)
UFCに数多くの選手送り込んでいる米国のMMA大会・LFA (Legacy Fighting Alliance) に、日本から田中路教、河名マスト、二宮城太が出場した。
田中は2010年に修斗でデビューし、グアムのPXCでバンタム級王座を奪取後、14~17年にUFCに上がり5戦2勝3敗で2連敗した後に、UFCとの契約が切れた。17年10月のGRANDSLAMのホジェリオ・ボントリン戦、19年3月のパンクラスのウラジミール・レオンティブ戦、昨年11月のLFAのヒカルド・ディアス戦と3連勝中。サクラメントの名門MMAジム・アルファメールで長年練習している。現在31歳。今回も前回に続きメインイベントに登場し、MMA 14戦11勝3敗のブラジル人・ファリアスと対戦する。ファリアスはブラジリアン柔術をベースとし、彼も31歳だ。
1R、田中は手のひらを広げ両手を高く上げるような構えでプレッシャーをかけ、ファリアスの左ミドルをつかんで倒し、中央付近でトップをキープする。田中がパスガードを狙うと、ファリアスは足をつかみつつ脱出し、金網際で田中を背後から押さえ、バックマウントを奪うことに成功する。ファリアスは足4の字でガッチリ固め、裸絞めの狙い続ける。ファリアスは足の組み方も変えつつ田中を動かし、終了間際には腕十字を狙い、田中は腕をロックし時間いっぱいまで耐える。記者採点はファリアス。
2R、パンチを振う田中に対し、ファリアスは両足タックルから金網に押し込んで倒し、すぐさまバックマウントを奪い再び主導権を握る。ファリアスは裸絞めを狙い、田中はまたも防戦一方に。中盤過ぎ、田中が体をひねって上になることに成功するが、ファリアスは金網を背にして両足でガードを締めつつ密着し、田中に反撃を許さない。終了間際には足関節技を狙いながらリバースし、最後は上で押さえ、いい形で終える。記者採点はファリアス。
3R、田中は開始すぐから左右のフックを振い反撃を狙うが、空振りが続く。自らタックルを仕掛けるが、これは裏目となり、簡単に切られ、またもファリアスがバックを取り、裸絞めを狙い続ける。中盤、またも田中が体をひねって上になるが、今度はファリアスが足を登らせ腕十字を狙う。田中は防御し上からパウンドを落とし、必死に逆転を狙う。ポイント差を考えればフィニッシュするしかない状況だが、ファリアスはビッグヒットをもらわず耐え続け終了する。記者採点は田中。合計28-29でファリアス。ジャッジは1者が意外にも田中を支持したが、2者が順当にファリアスを支持し、ファリアスが判定勝ちした。田中のUFC復帰の道のりに黄信号が灯った。勝ったファリアスは「田中はタフガイだった。サムライだ」と称えつつ「(空位のバンタム級王座の)ベルトが欲しい」とアピールした。
フェザー級 5分3R
×河名マスト(ロータス世田谷)
○アライジャ・ジョンズ[Elijah Johns](米国)
判定0-3 (27-30/27-30/26-30)
河名は広島出身。4歳からレスリングを習い、これまで専修大学、クリナップといった名門に在籍し、U-23世界選手権2017グレコローマン59kg級で優勝。昨年春にMMAに転向し、7月のFighting NEXUSでのデビュー戦では敗れたものの、以降のRoad to ONE、NEXUS、石渡伸太郎引退興行、EXFIGHT、POUND STORMで5連勝。最近ではパンクラスの狩野優、修斗の山本健斗デリカットといったランカーに連勝している(上写真は4月の山本戦)。ロータス世田谷に在籍し青木真也・北岡悟・矢地祐介らと練習しており、レスリングを活かしたグラウンドコントロール力の高さが持ち味。現在27歳。以前からUFCを目指すと口にしており、LFAには初登場。今回は10戦8勝2敗の米国人・ジョンズと対戦する。
試合は日本時間8月6日。1945年、米軍が原子爆弾を広島に落とした日で、広島出身の河名にとって「特別な日」で「僕自身が被爆三世。今、自分は好きなことやって生きていられることに、改めて感謝する気持ちを忘れずに戦いたい」と事前インタビューで話していた。
1R開始すぐ、パンチが交錯してから、すぐに河名が組み付く。脇差しの展開で、体格で勝るジョンズが押し込み続ける。中盤離れると、河名が胴タックルで倒すが、すぐにジョンズは立ち、再び脇を差して金網に押し込む。終盤、離れると、ジョンズは得意の左ハイを2連続で放つ。河名は防御したが、ジョンズの左ミドルがクリーンヒットし、攻撃を分散すると、その後は左ハイが当たり続け、河名は鼻血を出し防戦一方に。ジョンズは左ストレートも効かせ、ダウン寸前まで追い詰める。10-8となっても不思議ではない。
2R、ジョンズはプレッシャーをかけ、左ハイをヒット。河名は蹴り足をすくって倒そうとするが、ダメージが溜まっており力が入りきらず、ジョンズは耐えて押し込み、離れ際には左膝を顔面に当てる。するとジョンズはまたも左ハイを当てるが、今度は河名が力を振り絞ってテイクダウンに成功し、グラウンドに持ち込むことに成功する。しかしジョンズは対処し、背中をつけずすぐにスタンドに戻し、河名の逆転のチャンスをきっちり潰す。ジョンズは左の三日月蹴り、右フックを当て、左ハイ、左ストレートを効かせ、河名は回って必死に耐える。このラウンドも10-8となっても不思議ではない。
3R、河名は序盤にタックルで倒しかけるが、ジョンズはすぐ立ち、押し込み、離れればパンチ、三日月蹴りを当て、主導権を維持する。終盤もジョンズの左ハイを河名がつかんで押し込み、終了間際にはジャーマンスープレックスで投げようとするが、不完全で終わり終了する。ジャッジ3者とも当然ジョンズを支持し、1者は26-30とつけ、ジョンズの判定勝ちとなった。
河名はお得意のレスリングも、レスリングの本場・米国の選手には対処され、自身の打撃の防御でも未成熟さを見せる完敗だった。だが最後まで倒れず耐え、あきらめず反撃のチャンスを探り続け、不屈の闘志と体の強さを印象付けた。UFCを目指すには足りない部分がはっきりわかった試合となったはずで、8月6日の敗戦は河名のMMAキャリアにおいても「特別な日」となったのではないだろうか。
フェザー級 5分3R
×二宮城太(円心会館)
○ニック・タラベラ(米国)
1R 2’41” 裸絞め
二宮城太は極真会館第10回全日本大会(1978)優勝・二宮城光(現・円心会館館長)の三男で29歳。米国で生まれ育ち、3歳から空手をはじめ、コロラド州デンバーの円心会館総本部で練習・指導しつつ、アマチュアのMMAの試合にも出場。19年からLFAのアマ部門で4連勝すると、今年6月のプロデビュー戦では、サウスポーからの左フックからのパウンド連打で34秒TKO勝ちしている。アマの試合ではタックルを切ってからのギロチンで一本勝ちもしており、打撃以外の動きも見ものだ。今回はプロ2戦目。3戦2勝1敗の米国人・Nick Talaveraと対戦する。今回ABEMAで試合が放送されることで、二宮の認知が日本のファンにも広がることだろう。事前のABEMAのインタビューでは「日本にまた二宮の名前を持って帰りたい。RIZINにも出たい」とも話していた。
1R、二宮がサウスポー主体にしつつ時折スイッチし、左右のローをヒット。サウスポーからの左ローは重みがある。するとタラベラはタックルから金網に押し込み、しばらくして倒す。二宮は倒れ際にタラベラの首を抱えギロチンを狙うが、タラベラは外す。二宮が立って脱出しかけるが、タラベラはすぐさま金網際でオンブになり、裸絞めを狙う。しばらく対処していたが、少しずつ絞まりが深くなるとガッチリと絞まり、二宮はタップした。二宮は空手仕込みの打撃技術の高さを印象付けたが、組技では課題を示す内容となった。