Bellator 12.3 コネチカット(レポ):堀口恭司、バンタム級王者・セルジオ・ペティスの大逆転バックハンドブローで4R KO負け
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Bellator MMA 272
2021年12月3日(金/現地時間)米国コネチカット州アンカスビル:モヒガンサン・アリーナ
レポート:井原芳徳
第11試合 メインイベント ベラトール・バンタム級チャンピオンシップ 5分5R
○セルジオ・ペティス(米国/王者、元UFCフライ級1位)
×堀口恭司(アメリカン・トップチーム/挑戦者、元RIZIN・ベラトール・修斗世界同級王者、元UFCフライ級3位)
4R 3’24” KO (右バックハンドブロー)
※ペティスが初防衛
堀口は19年6月のベラトール・ニューヨーク大会でベラトール・バンタム級王者・ダリオン・コールドウェルに判定勝ちし、日本人初のベラトール王者となる。だがその後、右膝の状態が悪化し、2か月後の8月の朝倉海戦でキャリア初のKO負けを喫すると、10月の練習中に右膝の前十字靭帯を断裂し半月板も損傷し全治10か月と診断され、RIZINとベラトールのベルトを返上した。
昨年9月のベラトール王座決定戦でフアン・アーチュレッタがパトリック・ミックスに判定勝ちし王者となったが、今年5月の初防衛戦では、セルジオ・ペティスが判定勝ちした。ペティスは元UFCライト級王者・アンソニー・ペティスの弟。13年から19年にUFCに上がり、ブランドン・モレノ、ジョセフ・ベナビデスらに勝利し、フライ級1位まで上昇したことがある。昨年1月からベラトールに参戦し、バンタム級に階級を上げ、アルフレッド・カシャキャンとリッキー・バンデハスに連勝後、アーチュレッタを下し王者となった。試合後のインタビューでRIZIN王者・堀口とのダブルタイトルマッチを要求していた。
堀口は2本のベルトを返上後、昨年大晦日のRIZINで復帰し、RIZINバンタム級王者の朝倉海に1R TKO勝ちし王座を奪還した。コロナ禍の影響で居住する米国から日本に戻るのが難しいことから、米国で定期開催されるベラトールに本格参戦することを9月に発表。その際にも「RIZINからベラトールに単純に移籍するのではなく、RIZINのベルトを持ち、RIZINバンタム級王者としてベラトールに乗り込みたい」とコメントしていた。
なお、近年、日本ではYouTubeでベラトールが無料生配信されていたが、堀口出場の今回からU-NEXTでの有料生配信のみとなる。U-NEXTは10月のRIZIN LANDMARKも放送していた配信サービス。RIZINも通常のRIZINの大会同様の紹介映像を作成する等、日本市場向けのベラトールのアピールを強化している。
1R、プレッシャーをかけるペティスに対し、堀口が回って距離を取りつつ、細かくステップしてフェイントをかけ、時折パンチを振るって突っ込む。堀口は右のカーフキックを当てた後、片足タックルでテイクダウンに成功する。ペティスはすぐ立ち、金網際で堀口が背後からしがみつくが、テイクダウンにはつなげられない。中盤、離れると、ペティスがプレッシャーをかける構図に戻る。堀口のパンチをペティスは防御しているが、自分の攻撃も出せていない。記者採点は手数の多い堀口。
2R、堀口が右のカーフキックを当てると、足を刈られるような形でペティスはバランスを崩すが、すぐ持ち直す。1分過ぎ、堀口が片足タックルでテイクダウンに成功。金網際で上から押さえていると、ペティスはほどいて蹴り上げを当てる。堀口がパウンドを落とすと、ペティスは三角絞め、オモプラッタで捕まえようとするが、堀口は対処して外しハーフで押さえる。堀口は蹴り上げを被弾した影響で右目の下から出血している。堀口はサイドバックで押さえ、時折右のパウンドを当てる。終盤、スタンドに戻り、お互いあまり攻撃が出ないが、ペティスも右のカーフキックを当てる。記者採点は主導権を握る時間が長く、パウンドを当てた堀口。だが、蹴り上げによるカットはマイナス評価材料で、ダメージを重視すればペティスについても不思議ではない。
3R、堀口は最初、サウスポーに構え、ニータップ式のタックルを仕掛けるが、切られるとオーソドックスに戻す。堀口の出血は止まっている。お見合いが続くと、中盤、堀口はニータップのタックルを仕掛け、金網に詰めて倒す。堀口はハーフで押さえ、時折パウンドを当て、終盤にはバックに回ってしがみつく。ペティスは振り落としてスタンドに戻すが、堀口を詰め切れない。記者採点は堀口。
4Rもペティスは前に出るが、堀口はまたもニータップでテイクダウンに成功。序盤からトップを奪う。だが堀口が上体を上げた際、ペティスが蹴り上げを狙うと、堀口はカットの再発を警戒してか、すぐに立って防御し、スタンドに戻す。ペティスが左ジャブを当てていると、堀口は右目の下の傷口から再び出血するように。堀口は出血が激しくなることを警戒してか、タックルを仕掛けるも、踏み込みがやや浅くなってしまい、ペティスは軽々と切ることに成功する。するとペティスは踏み込んで左ボディフックをクリーンヒット。ようやく目立つパンチを当てること成功すると、一気に試合が動く。
堀口が左ジャブを当てると、ペティスはひるまず圧を強める。堀口は回って距離を取ってから、ニータップとの中間のような形で左フックを放つ。するとペティスもパンチを振りながら組み付き、突き放してからすぐに右ハイを放つ。堀口はかわしたが、ペティスはその勢いのまま回ると、右のバックハンドブローを堀口のアゴにクリーンヒット。堀口は大の字でマットに後頭部を打ち付けるように倒れ、ペティスが追い打ちの鉄槌を放ちかけたところでレフェリーがストップした。
@SergioPettis turns the tide with a spinning back fist KO out of NOWHERE!
The Bantamweight champ retains in spectacular fashion LIVE on @SHOsports. #Bellator272 pic.twitter.com/2KEQPRrlIR
— BellatorMMA (@BellatorMMA) December 4, 2021
終始、堀口の動きは良く、堀口ペースに見えた試合だったが、2Rのカットが伏線となり、4Rに一気に流れが変わる、衝撃的な展開だった。ペティスのハイからバックハンドのコンビネーションは明らかに練習していた動きで、決して偶然の勝利では無く、世界トップクラスの底力・怖さを示す一戦だった。
なお、ベラトールは今大会の放送中に、来年に優勝賞金100万ドル・8選手参加のバンタム級世界GP(トーナメント)を開催すると発表した。ペティスと堀口も出場予定選手として名を連ねており、このGPで再戦があるかどうかも注目ポイントとなるだろう。また、大晦日までRIZINで行われるバンタム級日本GPの優勝者は堀口のRIZIN王座挑戦権を獲得するため、日本GPとの連動があるかも気になるところだ。このベラトールのGPもU-NEXTで放送される。