修斗 7.25 後楽園ホール:中村倫也、プロデビュー戦は2R左ハイでKO勝ち「俺のオリンピックが始まる」。SASUKE、世界フェザー級王者となるも強気アピール封印。SARAMI、黒部三奈との3度目の対戦へ
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プロフェッショナル修斗公式戦 PROFESSIONAL SHOOTO 2021 Vol.5 Supported by ONE Championship
2021年7月25日(日)後楽園ホール
レポート&写真:井原芳徳
レスリングU-23世界選手権優勝・中村倫也、注目のプロデビュー戦は2R左ハイでKO勝ち「俺のオリンピックが始まる」
第6試合 バンタム級 5分2R
×論田愛空隆[ろんだ あくり](心技館)
○中村倫也[りんや](EX FIGHT)
2R 0’20” KO (左ハイキック)
ABEMA「格闘DREAMERS」で放送され、EXILEの所属事務所・LDHが主催したオーディションを勝ち抜き、LDHとの専属プロ契約を勝ち取った中村が、論田を相手にプロデビュー戦。レスリング全日本選手権16~17年2連覇、17年U-23世界選手権優勝を果たし、東京五輪にも出ていて不思議ではなかった中村が、ABEMA中継のバナーのキャッチコピー通り「モノが違う」姿を見せるのか注目を集めた。
1R、開始すぐから中村はサウスポーからの左ローをヒット。論田の右ミドルをつかんで倒すと、グラウンドでコントロールを続ける。時折パウンドを当て、終盤には裸絞め、腕十字を狙う。同じレスリング出身のセコンド・石田光洋氏が細かく指示を出すが、まだ中村のグラウンドでの詰めは甘く、フィニッシュには持ち込めない。ジャッジは2者が10-8とつける。
すると2R開始間もなく、打撃戦で決着がつくことに。中村はサウスポーから左ロー、右ジャブを当て、左フックで突進。首を抱えると、論田は下がって離れるが、すぐさま中村は左ハイをクリーンヒット。意識の飛んだ論田をそのままなぎ倒すと、右のパウンドを追撃し、すぐさまレフェリーがストップした。
見事KO勝ちでデビュー戦を白星で飾った中村は「いやあ、プレッシャー半端ないっすよ、マジで。『モノが違う』と盛り上げてたけど、モノは違うくない。運動能力高くないんで、もっと頑張ります」と謙虚に語りつつ「でも、始めて1年ちょいにしてはいいんじゃないですか」とも話し、一定の手応えはあった様子だった。続けて「(試合前の紹介の)Vにもある通り、ここが『地獄の入り口』だと思っているので、目一杯精進します」と宣言し、最後は「お父さんありがとう」と、90年代の修斗の運営会社の親会社の代表だった父に感謝の言葉を述べた。
- 21年7月の修斗でのプロデビュー戦で勝利後の中村倫也。左がEXFIGHTの髙谷裕之代表、右が石田光洋トレーナー
◆中村
(フィニッシュの左ハイについて)狙っていた技です。ローを散らし、当てるために動いてハマった感じです。(1R目について)ひどいラウンドですね。雑だし。納得行っていないです。丁寧に極めまで持っていきたかったです。(プロデビューした感想は?)よっしゃという気持ちもなく、これからという気持ちでした。(自己採点は?)60点。ギリ単位取得です。
(金曜に開幕した東京五輪は意識した?)意識しました。俺のオリンピックが始まるって。(レスリングの日本)代表の方からも凄いメッセージをもらって。『俺たちを勢いづけてくれ』『レスリングの強さ見せてくれ』とか言われました。
SASUKE、世界王者となるも強気アピール封印「これじゃ言っても笑われる」
第8試合 メインイベント 修斗世界フェザー級チャンピオン決定戦 5分5R
○SASUKE(マスタージャパン東京/世界1位、環太平洋王者)
×工藤諒司(TRIBE TOKYO MMA/世界7位、環太平洋2位)
判定2-0 (片岡48-47/田澤47-47/福田48-47)
※SASUKEが王者に
現RIZINフェザー級王者である斎藤裕が返上した修斗世界フェザー級王座を懸け、SASUKEと工藤諒司が対戦した。
SASUKEは怪我に泣かされた時期もあったが、19年の復帰後は6連勝。昨年9月に仲山貴志に2R TKO勝ちし同級環太平洋王者になると、今年1月の初防衛戦で内藤太尊に裸絞めで2R一本勝ちし初防衛。その2試合とも、試合後のマイクでは斎藤戦を熱望しており、今回斎藤も巻いたベルトを巻きアピールしたいところ。
対する工藤はONE Championshipのトライアウトで3連勝したが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で本戦への道が途絶え、昨年9月から修斗に戻り2連続1R KO勝ちし7連勝中。以前から評価されてきたポテンシャルを開花させ、攻守共に安定感を増しており、SASUKEにとっては手強い相手となる。
試合は両者とも最近の相手の豪快な勝ちっぷりを警戒してか?終始慎重なファイトに。1R開始すぐ、SASUKEが右のカーフキックをヒット。工藤もSASUKEのローに合わせ右フックを返す。その後はお見合いが続くがが、終了間際、SASUKEが右フックの連打で工藤をダウンさせ、好印象で終える。記者採点はSASUKE。ジャッジ3者も同様で、田澤サブレフェリーは10-8と付ける。
2R、序盤こそお互い手を出したが、すぐに1R同様、工藤が回り、お互い距離を取りお見合いの状態に戻る。中盤過ぎから工藤の右ローのヒットが目立ち始めるが、まだSASUKEもひるまず、左フックを返し、はっきりした差はつけさせない。記者採点は僅差だが攻撃が少し多い工藤。ジャッジ3者も同様だ。
3Rもお互い慎重ではあるが、SASUKEが開始すぐに右のカーフキックを当て、中盤から関節蹴りのヒットを増やし、じわじわ工藤の左足にダメージを与える。すると終盤、SASUKEがタックルや首相撲で3度倒し、組んでの膝や左フックも当て好印象の攻めを見せる。記者採点はSASUKE。ジャッジ3者も同様だ。
4Rも慎重な展開。SASUKEが圧力をかけ続けるが、なかなかお互い手が出ない。終盤、工藤のパンチのヒットが増え、SASUKEが少し下がってしまうが、最後は圧をかけて終える。記者採点は僅差だがヒットの多い工藤。ジャッジは福田サブレフェリーが工藤につけ、片岡・田澤両氏はSASUKEにつける。
5R、ようやくお互い手が出るようになるが、見合う時間も決して短くなく、どちらも踏み込めない。工藤はパンチを当てるが、SASUKEは工藤の左ミドルをつかみながらテイクダウンを奪い、関節蹴りとローを当て、少し工藤がバランスを崩す場面もあり、僅差とはいえややSASUKEが好印象か。記者採点はSASUKE。ジャッジは割れ、片岡氏のみSASUKE、他2人は工藤につける。
記者採点の合計48-47でSASUKE。ジャッジは1者が47-47のイーブンだったが、2者が記者と同じ合計点で、SASUKEが判定勝ちで世界王者となった。
SASUKEは「試合は勝ったんですけど、弱い自分が出ました。口では強がっても、強敵相手に初めての5Rで、少し慎重になり過ぎました。この試合では修斗のチャンピオンがナメられます。ただ運よく勝ちを拾っただけです。今日は反省だけです。ゼロから出直してきます。今日は遅くまで応援ありがとうございました。以上です」と謙虚にコメント。いつものような強気のアピールは封印し、世界王者のベルトはセコンドに渡し、四方に頭を下げてから退場した。
◆SASUKE
(慎重になったとのことだが、工藤の動きは想定外だった?)想像を下回って、意外にもろいんだなってのがあったんですけど、不気味な選手というか、必要以上に警戒してしまいました。(事前に考えていたことはマイクアピールでは言わなかった?)言いませんでした。この内容じゃ言ってもみんなに笑われると思いました。
(下写真は記者に求められて2本のベルトで記念撮影したSASUKE。規約により、世界王座獲得に伴い環太平洋王座は返上となる)
SARAMI、中村未来に完勝。黒部三奈との3度目の対戦&王座挑戦へ
第7試合 セミファイナル 修斗女子世界スーパーアトム級(50kg)次期挑戦者決定戦 5分3R
○SARAMI(パンクラスイズム横浜/世界2位)
×中村未来(マルスジム/世界4位)
2R 2’48” KO (レフェリーストップ:グラウンドパンチ)
王者・黒部三奈への挑戦権を懸け、過去黒部に2度敗れているSARAMIと、新鋭の中村が激突した。SARAMIも工藤同様、ONEへの道が途切れ、修斗に主戦場を移し、昨年11月の初戦では杉本恵を1R腕十字で仕留めた。中村は5月の試合では北野きゅうの鼻を左フックで破壊し勝利しているが、経験豊富なSARAMIとは差が大きかった。
1R、サウスポーの中村が右の前蹴りを出すと、SARAMIは足をつかみ、そのまま金網に押し込み、テイクダウンを奪う。ギロチンを狙い、立たれても金網に押し込んでコントロールを続ける。離れれば右の前蹴りで吹き飛ばす。
2RもSARAMIが序盤からテイクダウンを奪うと、金網際でコントロールし、マウントを奪い、最後はバックマウントからパウンドを連打したところでレフェリーがストップ。SARAMIの完勝だった。
試合後、王者の黒部がケージに入り、黒部は「このベルトが欲しい?あげない。私は鉄の女です。ハニートラップを仕掛けられたら気が抜けるかもしれないけど」と冗談を飛ばしたが、その後は真面目に「SARAMIちゃんとは3回目の試合ですけど、お互いレベルが上がっているので、チャンピオンシップではいい試合しましょう。ぶっ飛ばしに行きます」と呼びかけた。
SARAMIは「黒部さんのベルトを特別に狙って修斗に来たわけじゃないんですけど、それぐらい気楽に戦ったほうがいい試合ができると思います」と話した後、「黒部さんはベルトがあるから彼氏ができないんですよね?」と挑発。黒部は「格闘技の神様は嫉妬深いんでね。一途な私が好きなんですよ」といなしたが、SARAMIが「私は彼氏もいて私生活も充実したチャンピオンになりたいです」と挑発を続けると、黒部は「マジでぶっ飛ばす」と答え、場内は笑いに包まれた。
両者は練習仲間ということもあり、殺伐とした空気はなく和気あいあいとしたやりとりに。今回の試合に向けての練習も、SARAMIは「黒部さんと毎週日曜、試合2週間前ぐらいまでやっていました」といい、「決まったんでやるしかないです」とバックステージでコメント。今のところ黒部との王座戦の時期は未定。ONE本戦出場の目標は「変わりません。チャンスがあれば出たいです」とのことだった。
第5試合 ライト級 5分2R
×エドモンド金子(BRAVE)
○岡澤弘太(佐山道場)
判定0-3 (田澤18-20/長瀬18-20/豊永18-20)
かつてZST、パンクラス等に上がっていた、元ノヴァ・ウニオン・ジャパンの35歳・岡澤が、修斗創始者・佐山聡氏の主催する佐山道場の一員として修斗に登場した。MMAは4年ぶりだ。
1R、金子がプレッシャーをかけ、左フックで岡澤をダウンさせる。中盤、岡澤は金子のパンチに合わせてタックルで倒し、マウントを奪うと、腕十字を狙って追い詰め反撃する。
2R、金子が左ハイで岡澤をひるませ、猪木アリ状態に。金子はレフェリーのブレイクを待たず、ローを打ち続けるが、これが裏目となり、岡澤が蹴り足をすくって倒して上になる。終盤はマウントを奪い、パウンドも当てて追い詰めて終える。ジャッジは3者とも両ラウンドの後半に攻め込んだ岡澤を支持し、岡澤の判定勝ちとなった。
元環太平洋王者・仲山貴志、ノーランカーと結城大樹とドロー
第4試合 フェザー級 5分2R
△仲山貴志(総合格闘技津田沼道場/世界2位、環太平洋4位、元環太平洋王者)
△結城大樹(マスタージャパン福岡)
判定0-1 (片岡18-20/長瀬19-19/田澤19-19)
1R、結城が開始すぐに金網に押し込んでから倒すと、バックマウントを最後までキープし、裸絞めを狙い続ける。終了間際には腕十字も狙って圧倒する。
2R、序盤こそ仲山が先に押し込むが、離れると、中盤に結城が片足タックルでテイクダウンを奪ってトップをキープする。スタンドに戻り、結城はテイクダウンを狙うが、随所で仲山もパンチと膝を返し抵抗して終える。仲山が打撃で与えたダメージは乏しいが、これが印象を良くした模様で、ジャッジ2者から支持され、合計19-19が2人となりドローに持ち込んだものの、大苦戦の仲山に笑顔は無かった。
第3試合 バンタム級 5分2R
×齋藤 翼(総合格闘技津田沼道場/FIGHT FARM)
○野瀬翔平(マスタージャパン福岡)
判定0-3 (田澤18-20/片岡18-20/長瀬17-20)
1R、序盤から野瀬がテイクダウンを奪いバックをキープすると、再三裸絞め等を狙って追い詰める。下になって肘を当てる場面も。終了間際に齋藤がパウンドを少し当て抵抗するが印象は弱い。
2R、齋藤が飛び膝に失敗して尻餅をつき、下になってから足関を狙うが、野瀬は対処すると、パウンドを当て、齋藤に背中を向けさせ、またもバックを奪いキープする。最後はまたも齋藤がパウンドを当てる
第2試合 フライ級 5分2R
○山内 渉(FIGHT FARM)
×植木“令和”新(シューティング宇留野道場)※植木新 改め。総合格闘技宇留野道場から所属先名称変更
2R 4’35” 三角絞め
1R、スタンドの打撃とテイクダウンでは山内がやや優位。終盤、植木がギロチンでチャンスを作るが、山内も肩固めで挽回し、いい形で終える。
2R、山内が上になり、パウンド、肘を当て、足関も狙う。植木も抵抗を続けたが、最後は山内が下から三角絞めを極めタップを奪った。
第1試合 トライアウト フェザー級 3分2R
○村山大介(マスタージャパン東京)
×スソン(KRAZY BEE)
判定3-0 (長瀬20-18/豊永20-17/福田20-17)
1R、スソンが開始すぐこそ右のカーフキックを当てたものの、村山がグラウンドに持ち込むと、腕十字で追い詰める。2Rも三角絞めで追い詰め完勝した。