修斗 11.19 後楽園ホール(レポ):新井丈、山内渉に3R逆転KO勝ちしフライ級王座奪取、修斗史上初の2階級同時制覇達成。オーディン、宇野薫を2R KOし突如引退表明
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プロフェッショナル修斗公式戦 PROFESSIONAL SHOOTO 2023 Vol.7
2023年11月19日(日)後楽園ホール
レポート&写真:井原芳徳
新井丈、山内渉に3R逆転KO勝ちしフライ級王座奪取、修斗史上初の2階級同時制覇達成
第10試合 メインイベント 修斗世界フライ級チャンピオン決定戦 5分5R
×山内 渉(FIGHT FARM/世界1位)
○新井 丈(和術慧舟會HEARTS/世界暫定1位、ストロー級世界王者)
3R 2’55” KO (レフェリーストップ:右フック→グラウンドパンチ)
※新井が王者に
新井は昨年9月、猿丸ジュンジを1R 110秒 右フックでKOし、ストロー級王者となる。その後2試合は1階級上のフライ級で戦い、11月に大竹陽を1R KOすると、3月に当時フライ級世界1位の関口祐冬に判定勝ちした。5月には平良達郎がフライ級級世界王座を返上。7月の後楽園大会ではフライ級世界1位の山内渉が3位のヤックル真吾を70秒でKOすると「“実質フライ級1位”の新井丈選手、僕とベルト懸けてやりましょう」とアピール。その後の試合で新井も安芸柊斗を1R KOしストロー級王座を初防衛すると「山内君、フライ級タイトル、平良君返して空いてると思うんで、ストロー級チャンピオンとタイトル懸けて、俺とやろうよ、よろしく」「修斗30年の歴史で、2階級同時制覇した人いないんで、修斗史上初、歴史に名を刻む新井丈の姿見に来てください」とアピールしていた。
過去にマモルと扇久保博正が、修斗のフライ級とバンタム級の2階級制覇を成し遂げたが、同時ではなかった。新井の希望をかなえるには、修斗のルールを変えないといけない状況だった。このルール変更の前の9月24日の後楽園大会において、山内×新井丈のフライ級王者決定戦が発表され、10月31日に発表の最新ランキングで新井は世界暫定1位に入っていた。11月8日にようやく同時2階級制覇可能なルールに改正され、10日から施行された。(プロ修斗のルールは日本修斗協会公式サイト参照)
この決定後、新井はXにポストし「日本修斗協会、新井丈の新しい挑戦を可能にさせてくれてありがとうございます。ただ勝たない限りルールは変わっても歴史は変わらない。修斗の歴史に名前を刻む。自分を信じてチームを信じて闘う!」と記していた。
新井は9連敗後10連勝の超V字回復を見せているが、山内もデビュー2年で6戦全勝。今、修斗で特に勢いのある選手同士による一戦は、内容でも修斗史に刻まれそうな死闘となる。
1R、山内は開始すぐからプレッシャーをかけ、左前蹴りを放ちつつ、随所で右フックをヒットする。新井はある程度ブロックしているが、時折被弾し印象が悪い。だが中盤、山内の圧力が少し落ちると、新井は左フックを当て、さらに右ボディ、右フックを連続で当ててダウンを奪う。新井はグラウンドに付き合わずスタンドに戻す。終盤、山内もパンチを返すが、巻き返しの強打は打てず終わる。記者採点は新井。
2R、山内は息を吹き返し前に出て、新井のボディと顔面にパンチを当て優位に進める。中盤、またも山内の少し勢いが落ちると、新井が左フックを返すが、山内は下がってから左ミドルを連打し、新井を金網際に詰め、パンチを当て続ける。山内は度々ボディ、顔面にパンチを当てるが、新井は耐え続ける。新井は連打をもらっても、すぐステップで距離を取り、目も生きた状態が続いている。記者採点は山内。
3R、山内優位は変わらず、新井を金網に詰め、顔面とボディにパンチを当て続ける。だが新井も随所で左ボディ、左フックをお返しして、じわじわと山内を削る。一進一退の熾烈な消耗戦に、場内の両選手の応援団の声援が響き続ける。
すると中盤、新井は勢いの落ちて来た山内に対し、左フックをヒット。さらに右ストレートを当ててダウンを奪う。新井は座った状態で無防備になった山内に対し、立った状態から右のパウンドを一発当てる。山内は意識が飛んで後方に倒れ、すぐに福田レフェリーがストップ。新井がKO勝ちすると、場内は大歓声に包まれた。
新井は肩にストロー級のベルトをかけ、腰にはフライ級のベルトを巻いて、マイクを持つと「ネバーギブアップ」と叫び「この気持ち、一切ブレていないです。見てくれましたね?これが修斗の歴史に名を刻める、歴代初のチャンプ・チャンプです。2階級同時制覇はルール上無理とか否定してくれたアンチのみなさん…ありがとうございます 俺はどんな言葉もプラスに変えらるんで。皆さんもどんなに周りに否定されても、目標をかなえている自分を想像して生きていけば、いい結果につながると思います。ネバーギブアップ。以上」と力強くアピールした。
バックステージで新井は「最悪を想定していましたけど、まだ行けました。まだ行けると思いながら戦っていました。耐えて耐えて耐え続けていれば、いつか俺のタイムになるだろうと思っていました」と逆転KO勝ちについて語り「気持ちがあれば階級の壁を越えられることが証明できたと思います」とコメントした。
フライ級王者になったことで、国内外の他団体や、対戦相手の選択肢も広がる。今後の目標ついて聞かれると、少し考えてから「ヒーローになるのが一番だから。一番挑戦し甲斐のあるところ、一番キツいところで、一番キツい相手とやりたいです。新井でもさすがにこれはキツいだろ?と言われるような相手・団体に挑みたいです」と回答。具体的な話は無かったものの、さらなる過酷な挑戦に意欲を示し、目を輝かせた。
下写真はこの日出場したライダーHIROが、いつもつけているライダーベルトを腰に巻いている様子。「三冠です。これがやりたかったんです」と笑顔を浮かべていた。
オーディン、宇野薫を2R KOし突如引退表明
第9試合 セミファイナル フェザー級 5分3R
○オーディン(格闘DREAMERS/世界3位)
×宇野 薫(UNO DOJO/元ライト級世界王者)
2R 0’56” KO (レフェリーストップ:右飛び膝蹴り)
オーディンは27歳。柔道で強豪校の東海大学出身で、ABEMA「格闘DREAMERS」に出演し、番組中のプロ初戦ではわずか18秒でKO負けし、昨年4月のPOUND STORM両国大会ではマックス・ザ・ボディと戦い判定負け。ABEMAの海外武者修行プロジェクトの一環で米国で練習を積み、7月に修斗に初参戦すると、フェザー級世界3位の結城大樹を相手に打撃戦で優位に進め判定勝ちし、プロ3戦目で初勝利を飾った。
宇野は48歳。オーディンが生まれた96年にプロMMAデビュー。99年に佐藤ルミナを破り修斗王座を獲得し、ゼロ年代にはUFC、HERO’S、DREAMで活躍した。DREAM休止後の12年からは、UFC再出場を目指すため修斗で試合を重ね、一時は6連勝したが、15年に中村好史に敗れて以降は8戦2勝6敗と苦戦。19年11月にマーカス・ヘルドに勝利したが、以降は21年に内藤太尊と原口央相手に2連敗。その後の練習中の怪我の影響で休養していたが、今回2年ぶりに復帰する。今回は宇野が自ら新鋭のオーディンを相手に指名したという。オーディンのトレーナーの岡見勇信は宇野の和術慧舟會時代の後輩でもある。
1R、オーディンが右フック、首相撲からの右膝蹴り、顔面狙いの右前蹴りを随所でヒットし打撃で優位に進める。打撃をもらった宇野はタックル等から寝転んで猪木アリ状態となり、下からの蹴り上げを狙うが、ヒットにつながらず、スタンドに戻る展開が繰り返される。終盤、宇野も右フックを返し、場内を沸かせるが、有効打で差は大きい。記者採点はオーディン。
2R、オーディンが序盤から右フックを当て、またも猪木アリ状態になる。スタンドに戻ると、宇野は鼻血を出しており、ドクターチェックが入る。再開後、オーディンは右のバックハンドブローをヒットする。宇野がひるむと、やや苦し紛れにタックルを放ったところで、オーディンは右の飛び膝をヒットする。ダウンした宇野に、オーディンがパウンドを当てようとしたところでレフェリーがストップした。
宇野は大の字で倒れ、しばらくして起き上がり、退場時にはオーディンのセコンドの岡見が歩み寄り「ありがとうございました」と声をかけた。
するとこの後、オーディンが驚きのコメントを発する。マイクを持ったオーディンは「この試合を機に一回格闘技界に一区切りをつけます。どっかで名前を見た時は応援お願いします」と話し、突如、選手活動休止を表明し、場内をどよめかせた。
女子ストロー級リーグ、藤野恵実×杉本恵はドローで混とんとした展開に
第8試合 epsomsalt seacrystals Presents インフィニティリーグ2023 女子ストロー級 5分2R
△藤野恵実(JAPAN TOP TEAM/パンクラス3位・元王者/勝ち点6→7)※トライフォース赤坂から所属先名称変更
△杉本 恵(AACC/女子スーパーアトム級1位/勝ち点4→5)
判定1-0 (鍋久保20-18/橋本19-19/福田19-19)
元パンクラス王者で43歳のベテラン・藤野は今回のインフィニティリーグで修斗に初参戦。7月の初戦でエンゼル☆志穂に1R裸絞めで勝利し、9月の宝珠山桃花と激しい打撃戦の末判定2-0で勝利し勝ち点6とした。
杉本は20年にSARAMIに敗れた後は6戦5勝1分負け無し。5月のリーグ初戦で吉成はるかに判定勝ちし、9月の2戦目はエンゼルに判定勝ちした。
1R、杉本が左ジャブを当てる場面もあるが、藤野が圧力をかけ、時折パンチの連打を振るって脅かす展開が目立つように。中盤には藤野がパンチラッシュから杉本を倒す。最後は藤野がパンチラッシュから、杉本の背後に回ってオンブになり、グラウンドに引きずり込み、裸絞めを狙って終える。記者採点は藤野。
2R、藤野は攻め疲れたか?少し勢いが落ちると、杉本はパンチを振りつつタックルを仕掛け、テイクダウンを奪い、金網際で押さえる。だが藤野はその先を許さずスタンドに戻す。中盤、パンチの攻防が続き、藤野のヒットがやや上回る。終盤、杉本のタックルを藤野は切ると、最後はパンチを打ち合って終了する。記者採点は僅差だが藤野。合計20-18で藤野。ジャッジは1者が藤野を支持したが、2者はイーブンとし、ドローとなった。これで藤野も杉本も勝ち点1ずつ獲得した。
第7試合 epsomsalt seacrystals Presents インフィニティリーグ2023 女子ストロー級 5分2R
○吉成はるか(パラエストラ小岩/勝ち点0→3)※シューティング宇留野道場から所属変更
×エンゼル☆志穂(GSB多治見/勝ち点0)
2R 4’36” Vクロスアームロック
1R、吉成が左フックを当ててから組み付いて、エンゼルの背後から押し込む。吉成がテイクダウンを狙い続ける。中盤過ぎに離れるが、吉成がタックルで倒す。終盤、スタンドに戻ると、吉成が押し込んでから倒す。下からエンゼルが腕十字を狙うが、極まる前に吉成は対処する。記者採点は吉成。
2R、吉成が右フックを当て、首投げで倒すと、袈裟固めで押さえ続け、Vクロスアームロックを狙いつつ、パウンドと肘を当て続ける。最後は吉成がVクロスを極めてタップを奪った。
リーグ最終戦は来年1月28日のニューピアホール大会で行われ、藤野(勝ち点7)は吉成(勝ち点3)と、杉本(勝ち点5)は宝珠山(勝ち点6)と対戦する。優勝争いは混とんとしてきたが、果たして結末は?
フェザー級リーグ戦は竹原魁晟が優勝。上原平と環太平洋フェザー級王座決定戦
第6試合 epsomsalt seacrystals Presents インフィニティリーグ2023 フェザー級 5分2R
○竹原魁晟(パラエストラ松戸/勝ち点6→10)
×浜松ヤマト(T・GRIP TOKYO/勝ち点6)
1R 0’38” KO (右フック)
竹原と浜松は昨年4月対戦し、竹原が判定勝ちしている。竹原はデビュー以来無敗。3月のリーグ初戦は上原平と引き分け、5月は磯部鉄心に判定勝ちした。浜松はリーグ初戦のCHAN龍戦が不戦勝で、5月の上原戦は引き分け、7月に磯部に判定勝ちし、竹原と勝ち点6で並んでいる。既にリーグ全試合を終えた上原平が勝ち点7の状態で、竹原×浜松がドローとなり、上位3名が1勝1敗1分の7点で並んだ場合、優勝者なしとなる。
試合は1R、竹原が開始すぐからプレッシャーをかけてパンチを振るってると、右フックをヒット。ダウンした浜松にパウンドを当てる前に、すぐさまレフェリーがストップした。竹原は1Rフィニッシュの勝ち点4を獲得して10点とし、リーグ戦優勝となった。
これで優勝の竹原と準優勝の上原との来年の試合が、環太平洋フェザー級王座決定戦として行われることになった。
第5試合 バンタム級 5分2R
×ライダーHIRO(シューティング宇留野道場)
○川北晏生[はるき](TRIBE TOKYO MMA)
2R 3’34” フロントチョーク
ライダーはMMA 50戦以上のベテランで、9月の修斗初戦では平川智也に判定負けしている。川北は21年のパンクラス・ネオブラッドトーナメント・バンタム級で準優勝し、その後は修斗で4戦した。今年はパンクラスで2戦し1勝1敗で最近ではランカーの高城光弘に判定負けしている。
1R、ライダーが今回もグラウンドに持ち込むが、川北は対処しつつパウンドをヒット。終盤のスタンドの展開で、川北が右カーフキックをクリーンヒットすると、ライダーは顔をしかめてひるむようになる。記者採点は川北。
2Rも川北がカーフを効かせ、ライダーはグラウンドに持ち込むが、川北は対処してコントロールしバックに回ると、フロントチョークを極めタップを奪った。
第4試合 バンタム級 5分2R
△江口 諒(SAI-GYM)
△シモン・スズキ(和術慧舟會HEARTS/23年全日本アマ同級優勝)
判定0-0 (鍋久保19-19/出合19-19/橋本19-19)
第3試合 フライ級 5分2R
×本多“弥彦”直樹(SAI-GYM)
○中池武寛(パラエストラ小岩/23年全日本アマ同級優勝)
1R 1’32” KO (レフェリーストップ:グラウンドパンチ)
10月の全日本アマ修斗で優勝したばかりの16歳・中池が早速プロデビューし、序盤からテイクダウンを奪うと、パウンドでフィニッシュ。素質の高さを見せつけた。マイクを持つと「今度の試合はもっと強い相手を用意してもらって、もっといい試合を見せます」とアピールした。
第2試合 フライ級 5分2R
△大竹 陽(HAGANE GYM)
△杉本静弥[せいや](パラエストラ柏)
判定1-1 (鍋久保19-19/出合19-19/橋本19-19)
第1試合 ライト級 5分2R
○エフェヴィガ雄志 (TRIBE TOKYO MMA/2022ウェルター級新人王)
×後藤陽駆[ようく](シューティングジム大阪)
1R 0’21” KO (レフェリーストップ:グラウンドパンチ)
オープニングファイト バンタム級 5分2R
×Jセロウ若林(SAI-GYM)
○中野剛貴(KRAZY BEE)
判定0-3 (出合18-20/柴田18-20/橋本18-20)