極真会館 11.17-19 東京体育館(レポ):ロシアのアレクサンダー・イエロメンコ、西村界人を決勝で下し男子初優勝。女子は佐藤七海が鵜澤菜南との決勝制し初優勝
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極真会館(松井章奎館長)「日本赤十字社 災害義援金チャリティー 第13回オープントーナメント全世界空手道選手権大会」
2023年11月17日(金)18日(土)19日(日)東京体育館
レポート&写真:井原芳徳
極真会館の全世界空手道選手権は4年に一度の体重無差別での世界大会。前回19年の世界大会の男子では上田幹雄が準々決勝以降、コンスタンティン・コバレンコ、アンドレイ・ルジン、アレクサンダー・イエロメンコらロシアの強豪を下して優勝し、日本の選手としては2003年第8回大会以来16年ぶりとなる優勝を果たした。その後、上田はMMAに転向し、RIZINやK-1で勝利。19年の女子は永吉美優が佐藤七海を決勝で下して優勝した。イエロメンコと佐藤は4年後の今回も出場し、悲願の初優勝を果たすことになる。
今回2023年は極真会館の創設者・大山倍達総裁の生誕100年の記念大会となる。男子166人、女子50人が3日間のトーナメント形式で優勝を争う。男子は最大8試合、女子は最大6試合勝たないと優勝できない過酷なトーナメントだ。日本から男子22人・女子10人が参加するが、それ上回る男子26人・女子11人がエントリーしているのがロシア。上位入賞候補にもロシア勢が多く、松井館長も海外勢について「相変わらずロシアが代表的だと思います」と大会前の記者会見で話していた。イスラエルからは参加しないが、ロシアに侵攻されているウクライナの選手も参加した。
今回は最終日(19日)のレポートをお届けする。上写真は最終日冒頭に行われた試割り。再延長戦と体重差判定でも決着がつかない場合、試割りの枚数で勝敗が決するが、最終日で体重差と試割りで決着となる試合は無かった。
(編集部注:極真会館の外国人選手の公式表記は「姓・名」の順ですが、当サイトでは一般的な「名・姓」にしています)
男子
※試合時間は3回戦まで本戦2分、延長2分。4回戦から本戦3分、延長2分、再延長2分
4回戦
[Aブロック]
○西村界人 (東京城北支部/2022(秋)(春)全日本優勝)
×エフゲニー・イウラソフ(ロシア)
本戦5-0
○佐藤拓海(東京城西支部/2022(春)全日本6位)
×長澤大和(北大阪支部/2022全日本体重別重量級2位)
本戦5-0
○エフゲニー・ティコノフ(ロシア)
×マキシム・シュシェルビナ(ロシア)
本戦5-0
×谷川蒼哉(総本部道場/2023全日本体重別中量級4位)
○マキシム・エキモフ(ロシア/2021・2023ロシア優勝、2022ロシア準優勝)
本戦0-4
[Bブロック]
○イゴール・ザガイノフ(ロシア/2023ロシア5位、2022ロシア優勝、2019全世界7位)
×山上大輝(東京城北支部/2022(秋)全日本8位)
本戦5-0
○パトリック・シピエン(ポーランド/2022・2023ヨーロッパ体重別重量級準優勝)
×エゴール・ソロべフ(ロシア)
本戦5-0
○ニキータ・シャブロフ(ロシア)
×ゴデルジ・カパナーゼ(ロシア/2023全日本体重別重量級3位)
×ソウタ・ナカノ(米国/2023米国体重別重量級優勝)
○アンドレイ・ルジン(ロシア/2023ロシア重量級準優勝、2019全世界3位)
本戦0-5
[Cブロック]
○コンスタンティン・コバレンコ(ロシア/総本部道場/2023全日本体重別重量級2位、2022(秋)全日本2位、2022(春)全日本4位、2022全日本体重別重量級優勝、2020全日本優勝)
×ボゴミル・コストフ(ブルガリア/2023ヨーロッパ体重別軽重量級準優勝)
本戦5-0
○ダニル・ゴリウシキン (ロシア)
×ディミティリ・オグリー(ロシア)
本戦5-0
○アントニオ・トゥセウ(フランス/2022・2023ヨーロッパ体重別重量級優勝)
×西村大河(東京城北支部/2023全日本体重別軽重量級4位、2022全日本体重別軽重量級3位)
一本 (右ミドルキック)
○イリヤ・ポリアコフ(ロシア)
×大秦稜司(京都支部/2022(秋)全日本3位、2022全日本体重別中量級優勝)
延長3-0 本戦2-0
[Dブロック]
○荒田昇毅(千葉海浜支部/2022(秋)全日本4位、2019全世界8位、2017年全世界ウェイト制重量級3位)
×アスルホマン・マモウディ(イラン)
延長3-0 本戦2-0
×アラン・モレイラ(ブラジル)
○アレクセイ・フェドシーブ(ロシア)
本戦0-5
×山川竜馬(東京城北支部/2023全日本体重別重量級4位、2022(春)全日本2位)
○ブラディスラフ・グィンスキク(ロシア)
延長0-3 本戦1-0
×岡部慎太郎(東京城西支部/2023関東重量級優勝、2022年(春)全日本新人賞)
○アレクサンダー・イエロメンコ(ロシア/2023全日本体重別重量級優勝、2019全世界2位)
本戦0-4
5回戦
[Aブロック]
○西村界人 (東京城北支部/2022(秋)(春)全日本優勝)
×佐藤拓海(東京城西支部/2022(春)全日本6位)
本戦5-0
日本のエース・西村が体格差を活かして圧力をかけ続け、右膝、ミドル、ハイを的確に当て、順当にベスト8に残った。
×エフゲニー・ティコノフ(ロシア)
○マキシム・エキモフ(ロシア/2021・2023ロシア優勝、2022ロシア準優勝)
本戦0-5
[Bブロック]
○イゴール・ザガイノフ(ロシア/2023ロシア5位、2022ロシア優勝、2019全世界7位)
×パトリック・シピエン(ポーランド/2022・2023ヨーロッパ体重別重量級準優勝)
本戦4-0
×ニキータ・シャブロフ(ロシア)
○アンドレイ・ルジン(ロシア/2023ロシア重量級準優勝、2019全世界3位)
本戦0-5
[Cブロック]
○コンスタンティン・コバレンコ(ロシア/総本部道場/2023全日本体重別重量級2位、2022(秋)全日本2位、2022(春)全日本4位、2022全日本体重別重量級優勝、2020全日本優勝)
×ダニル・ゴリウシキン (ロシア)
延長4-0 本戦0-1
○アントニオ・トゥセウ(フランス/2022・2023ヨーロッパ体重別重量級優勝)
×イリヤ・ポリアコフ(ロシア)
本戦4-0
[Dブロック]
×荒田昇毅(千葉海浜支部/2022(秋)全日本4位、2019全世界8位、2017年全世界ウェイト制重量級3位)
○アレクセイ・フェドシーブ(ロシア)
本戦0-5
35歳のベテラン・荒田がやや積極的に攻めるが、フェドシーブもパンチとローを返し続け、ほぼ互角に渡り合う。すると終盤、フェドシーブが荒田の右膝蹴りの際に足をつかんで倒し、突きを決めて有効を取る。結局これが決め手となり、フェドシーブが勝利。荒田はベスト8入りに前に敗退してしまった。
×ブラディスラフ・グィンスキク(ロシア)
○アレクサンダー・イエロメンコ(ロシア/2023全日本体重別重量級優勝、2019全世界2位)
本戦0-5
準々決勝
○西村界人 (東京城北支部/2022(秋)(春)全日本優勝)
×マキシム・エキモフ(ロシア/2021・2023ロシア優勝、2022ロシア準優勝)
本戦5-0
荒田が敗退し、日本勢最後に残った西村が、中盤までやや左ローで優位に進める。途中エキモフが巻き返し、右の顔面狙いの前蹴りを当てるが、終盤、西村が右膝蹴り、左ロー等を度々当ててエキモフを下がらせ、本戦で勝負を決めた。
×イゴール・ザガイノフ(ロシア/2023ロシア5位、2022ロシア優勝、2019全世界7位)
○アンドレイ・ルジン(ロシア/2023ロシア体重別重量級準優勝、2019全世界3位)
再延長0-5 延長1-0 本戦0-0
ほぼ互角の攻防が続き、削り合う展開となったが、再延長でルジンが手数多く攻め続け、ザガイノフを追い詰めなんとか勝利をもぎ取った。
×コンスタンティン・コバレンコ(ロシア/総本部道場/2023全日本体重別重量級2位、2022(秋)全日本2位、2022(春)全日本4位、2022全日本体重別重量級優勝、2020全日本優勝)
○アントニオ・トゥセウ(フランス/2022・2023ヨーロッパ体重別重量級優勝)
本戦0-5
代官山の総本部道場での内弟子生活の長いコバレンコが、トゥセウの前足に左右のローを集中するが、中盤、トゥセウが左の顔面狙いの膝蹴りをクリーンヒットし、技有りを奪う。その後もトゥセウはコバレンコのローに苦しむが、耐え切り判定勝ちした。
×アレクセイ・フェドシーブ(ロシア)
○アレクサンダー・イエロメンコ(ロシア/2023全日本体重別重量級優勝、2019全世界2位)
本戦0-5
イエロメンコが序盤からパンチ、ローを随所で的確に当て、中盤以降、左ローを効かせ、ミドルも絡めてフェドシーブを圧倒し本戦で判定勝ちした。
準決勝
○西村界人 (東京城北支部/2022(秋)(春)全日本優勝)
×アンドレイ・ルジン(ロシア/2023ロシア体重別重量級準優勝、2019全世界3位)
本戦5-0
西村が序盤から左のローを連打し続け、ルジンを追い詰める。ルジンは接近して密着する場面が増え、2度注意を受ける。ルジンは反撃に持ち込めず、西村が決勝に駒を進めた。
×アントニオ・トゥセウ(フランス/2022・2023ヨーロッパ体重別重量級優勝)
○アレクサンダー・イエロメンコ(ロシア/2023全日本体重別重量級優勝、2019全世界2位)
本戦0-5
イエロメンコが左右のローを効かせると、トゥセウは後退が続き、イエロメンコが左ミドル、突きも当て続け圧倒する。終盤にはイエロメンコの左膝蹴りをもらった後、押されて場外に落ちる場面も。最後、イエロメンコが右の内廻し蹴りをクリーンヒットして技有りを奪い、そのまま時間切れとなり勝利した。
3位決定戦
○アンドレイ・ルジン(ロシア/2023ロシア体重別重量級準優勝、2019全世界3位)
×アントニオ・トゥセウ(フランス/2022・2023ヨーロッパ体重別重量級優勝)
不戦勝 (トゥセウのドクターストップ)
決勝
×西村界人 (東京城北支部/2022(秋)(春)全日本優勝)
○アレクサンダー・イエロメンコ(ロシア/2023全日本体重別重量級優勝、2019全世界2位)
延長0-3 本戦0-0
※イエロメンコが優勝
西村は29歳。全日本を2連覇した勢いで世界大会でも決勝へ。イエロメンコは35歳。今回4度目の世界大会で、前回は決勝で上田幹雄に敗れたが、今回も決勝まで勝ち残った。
本戦はお互いローの蹴り合い主体に。イエロメンコのインローで足が流れる場面もあるが、西村もローを返し、最後のパンチの打ち合いでもほぼ五分で延長へ。
延長もローの打ち合いとなるが、イエロメンコは左ミドルも絡めつつ蹴り数を上げる。少し西村は下がり気味だが、それでもローを返し抵抗する。判定の結果、5名の審判のうち副審2名と主審1名の計3名の過半数がイエロメンコを支持し、やや優位だったイエロメンコが勝利した。前回準優勝で今回優勝のイエロメンコは、ロシアから来た選手や応援団からスタンディングオベーションを受けるとうれし涙を流した。
入賞者・各賞受賞者
優勝/アレクサンダー・イエロメンコ(ロシア)
準優勝/西村界人(日本)
3位/アンドレイ・ルジン(ロシア)
4位/アントニオ・トゥセウ(フランス)
5位/イゴール・ザガイノフ(ロシア)
6位/コンスタンティン・コバレンコ(ロシア)
7位/マキシム・エキモフ(ロシア)
8位/アレクセイ・フェドシーブ(ロシア)
敢闘賞/岡部慎太郎(日本)
技能賞/佐藤拓海(日本)、山上大輝(日本)
試割賞/ダニル・ゴリウシキン(ロシア)28枚
若獅子賞/ボゴミル・コストフ(ブルガリア)
女子
※試合時間は3回戦まで本戦2分、延長2分。準々決勝から本戦2分、延長2分、再延長2分
準々決勝
○鵜澤菜南(千葉下総支部/2022(秋)全日本女子優勝、2022全日本体重別女子重量級優勝、2020全日本女子2位)
×シャイネス・エルハイモワ(フランス/2022ヨーロッパ体重別中量級優勝、2019世界3位)
延長4-0 本戦1-0
本戦はパンチと蹴りともに互角の攻防が続き延長へ。すると鵜澤が左インローのヒットを増やし、やや優位に進め判定勝ちした。
×エリザベータ・メルニコワ(ロシア)
○エカテリーナ・コズロワ(ロシア)
本戦0-3
○エリザベータ・ザベリナ(ロシア/2023全日本体重別女子重量級3位)
×アレクサンドラ・カザリアン(ロシア)
本戦5-0
×クセニア・ザソリナ(ロシア)
○佐藤七海(東京城西国分寺支部/2022(秋)全日本女子2位、2022(春) 2020全日本女子優勝、2019世界2位)
本戦0-4
佐藤が積極的に仕掛け、右の顔面狙いの前蹴りもクリーンヒットする。技ありとはならなかったが、終盤はザソリナの巻き返しをしのぎ判定勝ちした。
準決勝
○鵜澤菜南(千葉下総支部/2022(秋)全日本女子優勝、2022全日本体重別女子重量級優勝、2020全日本女子2位)
×エカテリーナ・コズロワ(ロシア)
本戦5-0
鵜澤が序盤から積極的に攻め、ローを効かせコズロワを少しフラつかせる。少し攻撃が減る場面もあったが、コズロワの反撃を許さず本戦で勝利し、決勝に駒を進めた。
×エリザベータ・ザベリナ(ロシア/2023全日本体重別女子重量級3位)
○佐藤七海(東京城西国分寺支部/2022(秋)全日本女子2位、2022(春) 2020全日本女子優勝、2019世界2位)
本戦0-4
体格で勝るザベリナが開始すぐから圧力をかけて連打し、右ボディをまとめる場面も。佐藤は下がり続けるが、終盤、パンチとローの数を増やし、巻き返して終える。審判は佐藤の終盤の的確な攻撃の数を評価したか?4者が佐藤を支持し、佐藤が鵜澤の待つ決勝に進んだ。
3位決定戦
×エカテリーナ・コズロワ(ロシア)
○エリザベータ・ザベリナ(ロシア/2023全日本体重別女子重量級3位)
本戦0-5
ザベリナが積極的にパンチとローを当て続ける展開が続く。終盤にコズロワのインローが少し増えたが、ザベリナは耐え本戦で勝利した。
決勝
×鵜澤菜南(千葉下総支部/2022(秋)全日本女子優勝、2022全日本体重別女子重量級優勝、2020全日本女子2位)
○佐藤七海(東京城西国分寺支部/2022(秋)全日本女子2位、2022(春) 2020全日本女子優勝、2019世界2位)
再延長2-3 延長1-0 本戦0-0
※佐藤が優勝
世界大会女子もロシア勢が猛威を振るったが、決勝は昨年秋の全日本決勝と同じ組み合わせの日本人対決となった。
本戦、両者距離を取り、時折近づいては激しく打ち合い、また離れて蹴りを打ち合う攻防が繰り返される。最後残り30秒は足を止めて打ち合うが差がつかず延長へ。
延長もほぼ互角な状態から始まるが、次第に鵜澤のローと突きのヒットがやや目立つ展開に。とはいえ佐藤もひるまず動き続けて終わる。審判は1名のみ鵜澤を支持しイーブンとなり再延長へ。
すると本部席の松井館長が審判団を呼び寄せて、2分ほど裁定について何かを注意する。鵜澤が的確に攻撃を当て続けたことへの評価の低さを指摘したようだが、注意内容の選手への伝達や観客へのアナウンスは無く、再延長に進む。
再延長、鵜澤は左ロー、右ボディを度々ヒットする。佐藤は足を引きずるが、随所で右ミドルを返す。鵜澤が若干優位に見えるが、つかみで2度注意を受けてしまい、終了間際にもつかみで副審2名が注意を促す旗を上げる。結局、この鵜澤のつかみが悪印象となったようで、採点は割れたが、2-3で佐藤が勝利し、鵜澤に昨年のリベンジを果たすとともに初優勝を果たした。これでイエロメンコと共に、前回2019年の準優勝者が4年後の今大会で優勝した形となった。
入賞者・各賞受賞者
優勝/佐藤七海(日本)
準優勝/鵜沢菜南(日本)
3位/・エリザベータ・ザベリナ(ロシア)
4位/カテリーナ・コズロワ(ロシア)
敢闘賞/アレクサンドラ・カザリアン(ロシア)
技能賞/佐藤七海(日本)
若獅子賞/エカテリーナ・スベトロワ(ロシア)、マリナ・イッサ(ブラジル)、森岡優海(日本)、小木戸琉奈(日本)、所羽奈(日本)
大山倍達生誕100年記念演武も実施
3位決定戦と決勝の前には、極真会館の創設者・大山倍達総裁の生誕100年を記念した演武が、松井館長主導の元で行われた。
なお、会場には大会名誉顧問の一人でもある衆議院議員の小沢一郎氏、極真会館で空手を習うタレントの長嶋一茂氏らも来場した。