K-1 3.28 日本武道館:判定基準を“若干変更”、「倒しに行く姿勢」をより評価。しかしそれ以上に大事なのは審判技術の向上・ルールの共通理解では
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K-1の中村拓己プロデューサーは3月27日、28日のK’FESTA.4 Day.2日本武道館大会の前日会見で、K-1の判定基準について発表を行い、「明日の日本武道館大会から、判定基準を若干変更いたします。K-1はKOを狙って戦う競技です。お互いに相手を殴って蹴って倒す、それを一番の上位概念として行っております。ですので、これからはKOを狙う選手の姿勢であったり、ダメージを伴う攻撃、倒しに行く攻撃、倒しに行くスタイル、倒しに行く姿勢というのを、より評価して判定して行きたいと思っております」と話した。(文・井原芳徳)
3月21日のK’FESTA.4 Day.1では、江川優生(王者) vs. 椿原龍矢(挑戦者)のフェザー級タイトルマッチと、村越優汰 vs. 芦澤竜誠において、プレッシャーをかけ常に攻撃を当てに行く姿勢を見せた江川と芦澤よりも、ステップワークを駆使して随所で攻撃を当てるスタイルを貫いた椿原と村越が多数のジャッジから支持された。
第13試合 K-1 WORLD GPフェザー級(57.5kg)タイトルマッチ 3分3R(延長1R)
×江川優生(POWER OF DREAM/王者、元Krush王者)※初防衛戦
○椿原龍矢(月心会チーム侍/挑戦者、K-1甲子園2017 -55kg優勝)
4R 判定1-2 (岡田9-10/梅木10-9/水谷9-10)
3R 判定0-1 (岡田29-30/梅木30-30/水谷29-29)
※椿原が王者に
第11試合 スーパー・フェザー級(60kg) 3分3R(延長1R)
○村越優汰(湘南格闘クラブ/元K-1 WORLD GPフェザー級(57.5kg)王者、元RISEバンタム級(55kg)王者)
×芦澤竜誠(PURGE TOKYO/元INNOVATIONフェザー級王者)
判定3-0 (岡田30-28/三浦30-29/梅木30-29)
敗者の江川「何がチャンピオンとしてふさわしい戦いなのか」、芦澤「ジャッジ基準を変えないと、K-1が終わる」
この採点について、王座から陥落した江川は大会後の会見で「さんざん自分が追っかけ回して、当ててたと思うし、あれで負けるんだったら、倒せなかった自分が悪いですけど、わからないです。何がチャンピオンとしてふさわしい戦いなのか。逃げ回ってチョンチョン出して勝てるんだったら、あのチャンピオンでいいんですかって話だし、悔しいっていうか、あきれましたよ」とコメントした。
芦澤は試合翌日に上げた自身のYouTubeチャンネルの動画で「俺が負けていましたよ、あの試合は。でも、あの選手(=村越)が上に行くのは、K-1が潰れる。ああいう選手を倒せなくて判定にした俺が良くない。でもファイターなのにああいう試合をするなら、格闘技はやめたほうがいいと思いますね。お客さん第一で考えないといけないと思いますね」「椿原選手は技術的には凄いけど、どっちの試合が見たいかじゃないですか。俺の試合のジャッジは正当です。でもメインイベント(=江川×椿原)のジャッジはどうなんですかって思います。お客さんはアグレッシブでファイターらしい試合が見たくて、逃げ回っている試合は見たくないんですよ。ジャッジ基準を変えないと、K-1が終わると思います。このジャッジをしていくなら、この団体にいる気はないです。伸びないから。K-1を潰さないために、アグレッシブを一番に取るべきだと思います」等と話した。
中村氏の判定基準に関する説明
K’FESTA.4 Day.2の前日会見で中村氏はK-1の判定基準の“若干変更”の内容・理由を以下の通り説明した。明言しなかったが、おそらくDay.1の上記2試合の判定に関する議論を念頭に置いたものとみられる。
◆中村氏の判定基準に関する発言箇所の書き起こし
「K-1の判定基準について皆様にご報告があります。K-1 JAPAN GROUPは2014年からスタートし、アマチュアを含めて大会を開催し、技術レベルも上がり、色んなファイトスタイルで戦う選手たちが増えてきました。そういった中で、僅差の勝負も増えた中で、改めてどういう判定基準かお伝えしたいです。
明日の日本武道館大会から、判定基準を若干変更いたします。K-1はKOを狙って戦う競技です。お互いに相手を殴って蹴って倒す、それを一番の上位概念として行っております。ですので、これからはKOを狙う選手の姿勢であったり、ダメージを伴う攻撃、倒しに行く攻撃、倒しに行くスタイル、倒しに行く姿勢というのを、より評価して判定して行きたいと思っております。
今、長くK-1をやってきて、ここでK-1がどういう競技かを改めて明確にすべきかと思っていて、やはりK-1は、KOを狙う、倒し合う、打ち合う競技です。選手の皆様にも、そういったファイトが求められると思いますし、そういった戦いをすることが勝利に一番近づく競技だと思っています。
K-1は立ち技の格闘技で、キックボクシングでもないですし、ムエタイでもないです。そしてもちろんボクシングでもないです。K-1はK-1という一つの独立した競技だと思っています。そしてそのK-1がどういった競技かと言われれば、KOを狙う競技、倒し合う競技だと思っています。ファンの皆様にも、選手の皆様にも、K-1はそういった戦いを見せるものだと、理解していただいた上で、(選手には)試合をして欲しいですし、(ファンには)試合も見ていただきたいなと思っております。
これに関しては、出場選手の皆様、審判団にも、共通の理解として、お伝えしております。明日の試合からは、改めて、K-1がそういったスポーツ、競技だということをわかった上で見ていただきたいなと思います。やはり、我々K-1は、選手、ジムの皆様、そして、ファンの皆様あってのものです。K-1が、K-1であるために、K-1がK-1という競技であるために、今日はこういった記者会見という場で、改めてK-1がどういう競技かをお伝えさせていただきました。より一層、我々のK-1という競技を楽しんでいただきたいなと思います。」
K-1公式ルールの変更箇所はまだ不明。しかしそれ以上に大事なのは審判技術の向上・ルールの共通理解の維持では
K-1公式サイトのK-1ルールには、「第11条【採点基準】第2項 採点の優先順位は、1. ダウン数 2. 相手に与えたダメージの有無 3. クリーンヒットの数 4. アグレッシブ度(攻撃点) とする」と記載されている。「2020年7月11日改正」となっており、大会開始1時間前の現時点で更新されていないが、中村氏の発言に沿うと、「3. クリーンヒットの数」「4. アグレッシブ度(攻撃点)」の順番が入れ替わるか、同等になる可能性がある。
ここからは記者の主観が入るが、仮に上記の条文のままだとしても、これまでのK-1の採点の前例に沿えば、江川、芦澤の攻めが、もう少し判断されても良かったのではないか。BOUTREVIEWの記者採点は、久保与志記者の採点した江川×椿原は本戦29-29、延長10-9で江川、井原芳徳記者の採点した村越×芦澤は29-29のイーブンだった(井原の江川×椿原の採点は本戦30-30、延長10-9で江川)。
むしろ、選手の目つき・口の開きから足の踏ん張り具合まで、セコンドや観客の声に流されずにダメージの軽重をよく見極める能力といった、審判個人の採点技術向上や、審判団全体で割れた採点について議論しルールについての共通理解を保つことが、条文やルール解釈の変更以上に大事なのではないかと感じた。これはK-1に限らず、MMAを含めた他の団体の競技運営でも同様に抱える問題だろう。
延長ラウンドの甲乙をつけ難ければ、本戦の微差も評価に
ちなみに、K-1ルールの延長ラウンドの採点については、以下の記述がある。
第11条【採点基準】第3項
. 延長最終ラウンド(第4条第1項参照)については、マストシステムの観点から、例えどれだけ僅かな差であっても優劣を判定する。もし最終ラウンドの内容も甲乙つけ難い全くのイーブンであると判断された場合には、第1ラウンドから遡り、全体を通し、最終ラウンドまでにスコアリング上は反映されなかった微差もこの時点で考慮に入れ、最終判断を下すものとする。例えば、双方の間に微差はあるが、1ポイントまでの差は無いだろうと判断し10-10がついたようなラウンドがあった場合、こうした表面上は露呈しなかった微差が、最終ラウンドでは反映される。
そのため、江川×椿原の延長で椿原を指示したジャッジ2名は「甲乙つけ難い全くのイーブン」と判断し、本戦3Rまで遡って評価した可能性がある。ただし、ジャッジ3者のうち江川をただ一人支持した梅木良則氏は、マスト判定が通例のMMAでも採点経験が豊富なため、江川に点を振った可能性も考えられる。また、梅木氏が今のK-1の審判部長のため、審判団でK-1ルールに最も精通している人物と考えて良いだろう。
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