RISE 1.28 後楽園ホール(レポ):チャンヒョン、常陸飛雄馬に苦戦も6Rの死闘制し60kg王座防衛。大﨑一貴&田丸辰、タイ勢撃破し3.26 有アリ参戦志願
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RISE 164
2023年1月28日(土)後楽園ホール
レポート&写真:井原芳徳
チャンヒョン、常陸飛雄馬に苦戦も6Rの死闘制し60kg王座防衛
第9試合 メインイベント RISEスーパーフェザー級(60kg)タイトルマッチ 3分5R(無制限延長R)
○チャンヒョン・リー[イ・チャンヒョン](韓国/RAON/王者)
×常陸飛雄馬[ひたち ひゅうま](TARGET SHIBUYA/2位)
6R 判定3-0 (豊永10-9/和田10-9/長瀬10-9)
5R 判定1-0 (豊永49-48/和田48-48/長瀬48-48)
※リーが2度目の防衛
チャンヒョンは17年に野辺広大を破りRISEスーパーフェザー級王者に。19年の-61kgトーナメントでは裕樹に勝利し、準決勝で梅野源治に敗れた。コロナ禍の影響で約2年間試合から遠ざかっていたが、昨年7月のRISEで復帰し、スーパーフェザー級暫定王者の一馬を4R KOし、王座統一と初防衛を果たした。昨年10月の大田大会では実質1階級上の62.5kg契約でライト級(63kg)3位の中村寛と対戦し2R TKO勝ちしている。41戦28勝(15KO)12敗1分の30歳。
常陸はテコンドーをベースとし学生キックでも2度王座を獲得している24歳。12戦9勝(7KO)2敗1分で19年7月から8勝1分で9戦負けなし。昨年はRISEで岩郷泰成、石月祐作をKOすると、9月にはシュートボクシングのリングSB日本スーパーフェザー級王者の笠原友希を2R KOし、今回初めてタイトルに挑戦する。セコンドにはYA-MANがつく。
1R、チャンヒョンが前に出て、常陸をコーナー、ロープに詰め続ける。だがパンチが交錯すると、常陸が左右のフックを的確にヒットしやや優位で終える。記者採点は僅差だが常陸。なお、今回からタイトルマッチではオープンスコアシステムが採用された。ジャッジは和田良覚氏と長瀬達郎氏の2者が常陸、豊永稔氏がイーブンとつける。また、政府のコロナ対策の緩和により、今大会からRISEでも声援が解禁され、常陸には多数の声援が飛び、常陸にとっては力強い後押しとなっている様子だ。
2R、チャンヒョンも右ストレートを中盤に強打する場面はあったが、常陸のヒットが1R同様上回り、コーナー、ロープを背負いつつも、左右のフックを的確に当て、チャンヒョンを苦しめる。記者採点もジャッジ3者も常陸。
だが3R、試合の流れが変わる。チャンヒョンが前に出続けながら、右ローのヒットをじわじわ増やすと、常陸は攻撃が減り、チャンヒョンは右ストレートのヒットも増やし優勢に。記者採点もジャッジ3者もチャンヒョン。
4Rもチャンヒョンが執拗に右ローを強打し、パンチも当て優勢。終盤、耐えた常陸も左右のストレートのヒットを増やし巻き返すが、最後はチャンヒョンが右ローを連打して終える。ジャッジは豊永氏と長瀬氏がチャンヒョン、和田氏がイーブン。記者採点はチャンヒョン。
5R、常陸陣営から「打ち合っていいよ」という声が飛び、常陸は前に出てボディにパンチと膝を返すように。チャンヒョンは勢いが落ちる。それでもチャンヒョンは右ロー、右ストレートを随所で当て、一歩も引かず、最後まで激しい打ち合いを繰り広げて終える。記者採点はイーブン。合計48-48でイーブン。ジャッジは豊永氏が49-48でチャンヒョンを支持したが、2者は記者と同じ採点で延長へ。
すると6R、チャンヒョンは圧をかけ続け、右ローを絡めつつ、左右のストレート、ジャブ、アッパー等を細かく当て続ける。一発一発はさすがに力が入りきらないが、常陸は攻撃が返せなくなる。終盤こそ常陸も必死にパンチを振って返すようになるが、チャンヒョンはその分攻撃を返し、反撃を封じ終了する。記者採点はチャンヒョン。ジャッジ3者も同様で、チャンヒョンが延長判定勝ちで2度目の防衛を果たした。
マイクを持ったチャンヒョンは「相手の攻撃が強かったです。これからは1個上の階級に挑戦したいです」と話した。バックステージでチャンヒョンは「常陸選手が3Rよりも長く戦ったことがないので、後半反撃することは作戦でした」と話した。敗れた常陸は「(チャンヒョンの)ローは嫌でしたけど、印象が良くなかったと反省しないといけないです」「後半のああいう場面も想定して練習していたんですけど、そこで行けずに負けました」「声援も聞こえていました。期待に応えられず、自分が弱くて悔しいです」等と話しながら涙を流した。
RISEの伊藤隆代表は「チャンヒョンはRISEが誇る名チャンピオンでした。負けた常陸も恥じることはないと思います。勝負の部分では差がなく、競技の部分で負けたのかなと思います」と話し、健闘した常陸のことも称えた。オープンスコアシステムについて「オープンスコアでわかりやすくなって良かったです。今後も5Rの試合(=タイトルマッチ)には取り入れたいです」と話した。
大﨑一貴&田丸辰、タイ勢撃破し3.26 有アリ参戦志願
第8試合 セミファイナル スーパーフライ級(53kg)(ノンタイトル戦) 3分3R(延長1R)
○大﨑一貴(OISHI GYM/RISEスーパーフライ級王者、元WMC日本&LPNJフライ級王者)
×ムァンコーン・ブームデックシーン[Mangkon Boomdeksean](タイ/ブームデックシーンジム/チョンロム・ムエイサーン・ライトフライ級&ミニマム級王者)
2R 2’20” KO (3ダウン:パンチ連打)
大会終盤では、大﨑一貴&田丸辰の軽量級RISE王者2名が、初来日のタイの地方王者と対戦した。大﨑兄弟の兄・一貴は20年2月のRISE初戦で風音に判定勝ち。同年9月に田丸辰を下しスーパーフライ級王者に。その後も川上叶、一航、石井一成、田渕神太、サンチャイを下し、昨年10月の大田大会のメインイベントでは風音を返り討ちにし初防衛を果たし、RISE参戦以降の連勝を9に伸ばした。
対するムァンコーンはタイのチョンロム・ムエイサーンの47.6kgと49kgの王座獲得実績があり、戦績は120戦80勝34敗6分の21歳。RISEのプレスリリースでは「フックとローでガンガン前に出る攻撃的なムエタイスタイルが特徴。ロッタンを彷彿とさせ、日本の格闘技界でも評価されるであろうムエタイファイターだ」と紹介されていた
1R、ムァンコーンはボクシング寄りの前傾姿勢で、左の前手を突き続け、左ボディ、右ローを当てる。一貴も近い姿勢で、右ストレートを当てつつ、左インロー、右ローを返していると、終盤には右ローが効き目を発揮し、終了間際に右ローでダウンを奪う。
2R、ムァンコーンも途中まで打ち合っていたが、一貴が右ローを効かせると、ボディへの膝、顔面とボディへのパンチも当て続け、中盤に右ローでまたもダウンを奪う。さらにラッシュからの右ストレートでダウンを奪うと、最後はコーナーに詰めてのパンチの連打でムァンコーンを防戦一方にしたところでレフェリーがストップした。
完勝の一貴は「2023年一発目、いいKOができて良かったです。今年も全勝します。志朗選手がタイ人との(RISE世界バンタム級)タイトルマッチが決まりましたけど、僕もそれ目指してやってきているし、倒せると見せることができたので、3月(26日のRISE ELDORADO有明アリーナ大会での)、タイトルマッチお願いします」とアピールした。
RISEの伊藤代表は大会後の総括で「3月26日に出てもらうことになっていますけど、タイトルマッチは難しいです。タイトルマッチがあと1試合組まれると、5Rが3試合になるので。今年は海外で。7月2日からWORLD SERIESを(大阪で)やるので、そこにまずは出てもらいたいと思います」と話し、一貴の3月26日の有明大会出場は認めつつも、世界王座に向けての本格的な道筋は7月以降に見据えていることを明かしている。
第7試合 スーパーフライ級(53kg) 3分3R(延長1R)
○田丸 辰(TRY HARD GYM/RISEフライ級(51.5kg)王者・元スーパーフライ級王者)
×クンスックノーイ・ブームデックシーン[Khunsuknoy Boomdeksean](タイ/ブームデックシーンジム/ラジャダムナン認定フライ級2位、チョンロム・ムエイサーン同級王者)
判定2-0 (和田30-29/秋谷29-29/小川30-28)
田丸は20年9月に大﨑一貴に敗れスーパーフライ級王座から陥落し、21年7月のRISE DoA 53kgトーナメントでは一回戦で政所仁に敗れた。昨年は新設のフライ級に階級を下げ、10月の初代同級王座決定戦で数島大陸に判定勝ちした。現在20歳で戦績16戦12勝(2KO)3敗1無効試合で、今回初めて海外の選手と対戦する。対するクンスックノーイは戦績92勝69勝19敗4分の17歳で、ラジャダムナン認定フライ級(50.8kg)2位まで上がってきた新鋭だ。
1R、サウスポーの田丸に対し、オーソドックスのクンスックノーイが度々右ミドル、膝を当てる。だが体格で勝る田丸はひるまず、随所で重みで上回る左ミドル、左右のストレートを返す。記者採点はイーブン。
2R、田丸は圧力を強め、随所でボディと顔面にパンチを強打するが、クンスックノーイは耐え、左ミドルも散らしつつ、右ミドルを度々ヒットし、攻撃数で上回る。田丸は度々自分左腕を叩いて打ってこいとばかりにアピールするが、逆に効いていると示してしまっているようにも見えてしまう。記者採点はクンスックノーイだが、強打重視で田丸につける解釈もありうるだろう。
3Rも同じような構図だが、さすがにクンスックノーイはダメージが溜まってきた様子で蹴りの頻度が下がり、逆に田丸の左ストレート、ボディのヒットが若干だが目立つように。記者採点は田丸。合計29-29でイーブン。ジャッジは1者が同じだったが、2者は田丸を支持し、田丸の判定勝ちとなった。
マイクを持った田丸は「僕は今年、スーパースターになりたいです。10代の頃は天心二世とかちやほやされて、どん底に落ちたこともあるんですけど、もっと上にいける存在だと思っています。そのためにも今年はもっと試合数をハイペースにこなしたいので、3月の有明大会にも出させてください。有名になるには数字も大事なので、インスタとツイッターのフォローお願いします」とアピールした。
第6試合 ミドル級(70kg) 3分3R(延長1R)
○宮城寛克(赤雲会/RISE 11位、元TENKAICHIウェルター級&ミドル級王者)
×蛇鬼[じゃき]将矢(チーム天野鰹節店/元NKBウェルター級王者)※テツジムから所属変更
4R 判定3-0 (小川10-9/秋谷10-9/長瀬10-9)
3R 判定1-1 (小川29-30/秋谷29-28/長瀬29-29)
宮城は昨年3月に元RISEミドル級王者・森田崇文に判定負けして以来となるRISE登場。7月に地元・沖縄で開催されたRIZINではKNOCK OUTを主戦場とする吉野友規から1Rにダウンを奪い判定勝ちしている。蛇鬼は21年11月にRISEに初参戦し現RISEウェルター級王者の中野椋太に2R KO負け。昨年3月の地元大阪でのRIZINではこうたに1R KO勝ちし、8月のRISE大阪大会でのオープンフィンガーグローブマッチでは萩本将次と引き分けている。
1R、お互い慎重なファイトが続いたが、終盤、宮城の膝がローブローになり中断し、再開した後、蛇鬼がパンチの連打で宮城を下がらせやや優位に。記者採点は蛇鬼だがまだイーブンもありうる。
2R、均衡状態が続くが、終盤、宮城が右カーフを効かせ、右ストレートでも蛇鬼をフラつかせやや優位に。蛇鬼も右ストレートで宮城をスリップさせたがダウンとはみなされない。記者採点は宮城。
3R、宮城が右カーフを当てつつ、左右の膝、右ストレート等を当てる。蛇鬼も攻撃を返すが手数で劣り終了する。記者採点は宮城。合計29-28で宮城。ジャッジは三者三様となり延長へ。
延長Rも宮城優勢は変わらず。蛇鬼が右ストレートを当てる場面もあるが、宮城が右ロー、膝を効かせつつ、顔面に右ストレートを随所で当てて手数で上回り、はっきり差を示し判定勝ちした。記者採点は宮城。
第5試合 スーパーフェザー級(60kg) 3分3R(延長1R)
×SEIDO(LARA TOKYO/RISE 6位)
○藤井重綺(Team +1/RISE 9位、Stand Up King of Rookie 2021 -60kg級優勝)
判定0-3 (大沢27-30/長瀬27-30/秋谷26-30)
38歳・40戦15勝(4KO)23敗2分のベテラン・SEIDOは21年10月に常陸飛雄馬に、昨年10月に小野幹晃に判定負けし2連敗中。藤井は7戦5勝2敗(1KO)の27歳。ボクシングでインターハイ出場経験があり、昨年のRISEでは2月に嶋田将典に判定勝ちしたが、7月に奥平将太に延長判定負けしている。
1R、お互いパンチやミドルを当てつつ、右ローにつなげるが、まだ均衡状態。すると2R、藤井が右ローを効かせると、中盤には組まずに顔面へ右膝蹴りを当ててダウンを奪う。その後もパンチラッシュで追い詰める。3Rも藤井がパンチと膝を随所で的確に当てて、SEIDOの反撃を封じ判定勝ちした。
第4試合 フェザー級(57.5kg) 3分3R
×竹内賢一(Ten Clover Gym世田谷/元Bigbangフェザー級王者)
○久津輪[くつわ]将充(TBF/9+ nine plus lab./DEEP☆KICK −55kg級6位)
判定0-3 (豊永27-30/長瀬27-30/大沢27-30)
竹内は41戦28勝11敗2分の25歳。14年10月以来8年ぶりのRISE参戦。近年はKNOCK OUTで安本晴翔にKO負けしているが、Bigbangでは桝本翔也、龍斗といったK-1・Krush勢にに判定勝ちしている。久津輪は11戦6勝(2KO)5敗の25歳。ホーストカップ、DEEP☆KICKで山川敏弘、力哉らに勝利。21年4月のRISE大阪大会で翔磨にKO負けして以来のRISE登場。
1R、低い構えの竹内に対し、久津輪が次第に左ストレートのヒットを増やし、中盤に過ぎに左ストレートでダウンを奪う。竹内も終盤には右ストレートをお返しする。記者採点は8-10で久津輪。
2R、竹内がボディへの左右の膝、右ストレートを増やし巻き返すが、久津輪も右ストレート、ロー等を返し、ほぼ五分をキープする。記者採点はイーブン。
3R、竹内も右ストレートを当てるが、久津輪がカウンターで左ストレートを随所で返し、反撃を封じて終了する。記者採点は久津輪につけるか迷ったがイーブン。合計28-30で久津輪。ダウンを奪った久津輪が判定勝ちした。
第3試合 87kg契約 3分3R
×滝上正太(聖空会館/ACCELヘビー級王者)
○アティ・フェロージム[Artty Fellowgym](タイ/FELLOW GYM)
判定1-2 (豊永30-29/小川28-30/大沢28-29)
両者ともRISE初登場。滝上はフルコン空手をベースとしキック5戦5勝(2KO)の27歳。大阪で行われているACCELで楠ジャイロ、内田ノボルといったベテラン勢を1R KOしている。アティは60戦40勝17負3分の27歳。昨年9月の大阪でのAJKNで勝利している。
1R、お互いロー、カーフを当て、アティが中盤からボディ、顔面へのパンチを増やすが、滝上も左ボディや前蹴りを返す。滝上若干優位となるがまだ五分か。
2R、中盤まで滝上も右ローや左ボディを当てるが、以降はアティが押しながら左右の膝をボディに当て続けやや優位に。ポイントがつくかは判断が分かれそうだ。
3R、滝上が左ハイを当てる場面もあったが、大半の時間はアティが2R同様に押しながら膝を当て続け、随所で顔面へのパンチも絡め主導権を維持する。記者採点3Rはアティにつけ29-30でアティ。ジャッジは解釈が割れたが、2者が順当にアティを支持し、アティの判定勝ちとなった。
注目の17歳・野村勇人は5戦目でKO負け
第2試合 フェザー級(57.5kg) 3分3R
×野村勇人(GONG-GYM坂戸/Stand upアマチュアvol.4 一般部Aクラストーナメント-60kg優勝)
○白鳥光希(正道会館KCIEL)
2R 1’30” KO (右ストレート)
野村は極真空手をベースとし、プロ4戦全てKO勝ちの17歳。昨年11月のRISE新宿大会では松永隆を開始わずか15秒、右フックでKOし、大きなインパクトを残し、後楽園の本戦シリーズに初登場した。対する白鳥は元スーパーライト級王者の山田光誓氏の弟子。4戦3勝1敗(3KO)の19歳でRISE初参戦。
1R、野村がサウスポーからの右のサイドキックを連打して先手を取り、右ストレートでダウンを奪う。その後もパンチを振り回すが、振りが大きく、じわじわ勢いが落ちる。すると終盤、白鳥が右の膝蹴りを効かせ、右ストレートでフラつかせ挽回する。
2R、野村も右膝を当て挽回する場面もあったが、次第に失速し、白鳥が野村をコーナーに詰めて、パンチの連打で棒立ちにさせ、スタンディングダウンを奪う。野村は顔面への右前蹴りを当てて場内を沸かせるが、反撃はここまでで、白鳥が再び右ストレートでダウンを奪ったところで秋谷レフェリーがストップ。白鳥が野村に黒星をつけた。
第1試合 バンタム級(55kg) 3分3R
○若原 聖[つばさ](TEAM TEPPEN)
×竹内龍馬(新宿レフティージム)
判定2-0 (小川30-28/和田29-29/秋谷30-29)
両者ともRISE初登場。1R、終盤に若原の左飛び膝で竹内は右まぶたを切られ出血する。2R開始直後にドクターチェックが入る。2R、若原がじわじわパンチのヒットを増やし、飛び膝も絡めやや優位に。竹内は出血が続く。3Rは若原が竹内の反撃を封じ判定勝ちした。