ONE Championship 9.3 シンガポール:女子アトム級GP開幕戦。平田樹、ピンチ乗り越え判定勝ち。ハム・ソヒ辛勝。V.V Meiはリザーブ戦で判定負け
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ONE Championship「ONE: EMPOWER」
2021年9月3日(金) シンガポール・インドアスタジアム
レポート:井原芳徳 写真:(C)ONE Championship
ONE MMA女子アトム級(52.2kg)ワールドGP
2011年9月3日にシンガポールで第1回大会が開催されたONE Championship。10年の節目となる今大会はONE初の女子だけの大会で、8選手参加による女子アトム級トーナメント一回戦4試合が行われた。元々は5月28日に予定されていたが、シンガポールで新型コロナウイルスの感染が拡大し、ロックダウン期間に入ったため、9月に延期となっていた。準決勝と決勝のスケジュールは未発表で、優勝者はONE MMA女子アトム級王者・アンジェラ・リーへの挑戦権を獲得する。出場メンバーはONEのランカーが主体で、日本からはトーナメント本戦に平田樹、リザーブファイト相当の交替試合にV.V Meiが出場した。また、韓国からは元RIZIN女子スーパーアトム級(49kg)王者のハム・ソヒも参戦した。ソヒはONE初参戦だ。
第1試合 交替試合(リザーブファイト) 5分3R
×V.V Mei[山口芽生](日本/フリー)
○ジュリー・メザバルバ[Julie Mezabarba](ブラジル)
判定0-3
38歳のベテラン・Meiは18年5月にアンジェラの王座に挑戦するも判定負け。その後4連勝したが、昨年2月にデニス・ザンボアンガに判定負けし、試合はそれ以来1年7カ月ぶりとなる。
対するメザバルバはTapologyのデータによるとMMA 8勝2敗1分の28歳。ブラジルの大会で6連勝中でONEには初参戦する。
1R、リーチで勝るメザバルバが右アッパーを序盤から2度当て、右アッパーを空振りさせてから右ストレートを当てる場面も。中盤、Meiが組もうとするが、メザバルバは突き放す。メザバルバがプレッシャーをかけ続け、終盤、Meiもパンチを振るうが、メザバルバはさっと距離を取ってかわす。終了間際にはメザバルバがパンチと膝をまとめ、いい形で終える。
2R、メザバルバが圧を掛け続けるが、お互いなかなかパンチのヒットが増えない状態が続く。終盤、Meiが押し込んでテイクダウンを狙うが、メザバルバは耐えると、終了間際にボディに左膝、顔面に右肘を当てて、このラウンドもきっちり好印象を残して終える。
3R、1分過ぎにMeiが組み付き、メザバルバを金網に押し込む。だが倒せずにいると、メザバルバが右の突き刺す用な膝を連打してから離れる。終盤にもMeiが押し込むが、メザバルバは耐え、最後も左膝を当てて突き放す。
記者採点はパンチと膝を的確に当て続けたメザバルバ。ジャッジ3者も順当にメザバルバを支持し、メザバルバの勝利となった。Meiは大きなダメージは負わなかったが、やりたいことを封じられる試合となってしまった。メザバルバは要所の鋭い打撃で好印象を残し、キャリアは浅いがMMAでの試合運びを熟知している印象だった。
第4試合 一回戦 5分3R
○平田 樹(日本/フリー)
×アリース・アンダーソン(米国)
判定3-0
平田は2月のRoad to ONEの中村未来戦で勝利して以来の試合。ONE 4戦4勝と経験は少ないながら、まだ22歳で素質の高さと将来性を評価されGPに抜擢された。対するアンダーソンは米国の女子大会・インヴィクタで2連勝中で今回ONEに初参戦する。
平田のセコンドには山本アーセンがつく。1R、平田がプレッシャーをかけ、8センチ背の高いアンダーソンが時折伸びのある右ストレートを放つ。アンダーソンから組んで来るが、平田は押し込むと、崩して上になる。アンダーソンは金網際で足を登らせて三角絞めを狙い続ける。形に入りそうになりながらも、平田は防御を続けるが、少ししかパウンドを当てさせてもらえない。最後、平田が立ち、猪木アリ状態で終える。
2R、平田が右の前蹴りを当てて、アンダーソンが下がると、平田が金網に押し込み、腰投げで倒し、今度はそのままサイドで押さえることに成功する。アンダーソンは足を登らせて、腕十字を狙う。平田は対処し、アンダーソンは立ち上がるが、がぶりで押さえ、頭に膝蹴りを当てる。そこから平田は再び倒し、サイドで押さえ、時折右の肘を当て、主導権を維持する。
ここまで好印象を残し続けた平田だが、3Rはピンチに。平田は胴タックルを仕掛けるが、アンダーソンは切って突き放す。中盤、アンダーソンが右のバックハンドブローを空振りさせてから近づくと、平田の右ローをすくってから、右フックをクリーンヒット。平田はダウンしてしまう。平田はアンダーソンに追撃をさせず、すぐに立ち、金網に押し込み、首投げで倒す。だが今度はすぐアンダーソンは立ち上がる。以降、両者が金網際で押し合う展開が続き、残り1分、平田が腰投げでようやくテイクダウンに成功し、サイドで押さえ続け終了する。
記者採点はアンダーソン。トータルコントロールの長かった平田よりも、3Rにきっちりダウンを取ってフィニッシュに近づいたアンダーソンを評価したが、ダウンの後に平田がすぐ立ったため、採点に悩んだ。ジャッジは3者とも平田を支持し、平田が勝利。すぐさまアンダーソンは拍手し敗戦を認めたが、平田は悔しそうな表情のままケージを後にした。
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第5試合 一回戦 5分3R
×メン・ボー(中国/ONE MMA女子アトム級2位)
○リトゥ・フォガット(インド)
判定0-3
1R、体格で勝るメンがプレッシャーをかけ、フォガットのタックルを切り続けると、終盤、右ストレートを当ててひるませる。メンはパンチラッシュから倒し、マウントを奪う。そのままパウンドでフィニッシュに持ち込むと思いきや、腕十字を仕掛けるが、両足のロックが緩く失敗。フォガットはメンの判断ミスと荒い寝技に救われる。
2R、フォガットが序盤からテイクダウンに成功すると、メンの腕十字を防御し、パスガードしてサイドで押さえる。メンが立とうとすればサイドバックで押さえ続け、ハーフに戻り、右のパウンド、右膝を当て猛反撃する。メンはもがき、終盤に脱出しスタンドに戻す。フォガットはお見合いの後、右のオーバーハンドフックを当て、1Rから一転、終始好印象を残す。
3R、メンは序盤から右の前蹴りをボディにヒット。フォガットは少し苦しむが、押し込んでからテイクダウンを奪い、またもサイドで押さえ、右肘をボディに当て続ける。終盤にはハーフで押さえ、左のパウンドも連打。メンは防戦一方で終える。
記者採点は2R以降コントロールを続けダメージを与えたフォガット。ジャッジ3者もフォガットを支持し、フォガットの判定勝ちとなった。
第6試合 一回戦 5分3R
×アリヨナ・ラソヒナ(ウクライナ/ONE MMA女子アトム級3位)
○スタンプ・フェアテックス(タイ/ONE MMA女子アトム級4位)
判定1-2
ラソヒナは2月にスタンプにフロントチョークで一本勝ちしたが、スタンプはタップを否定しており、再戦がGP一回戦で組まれた。
1R、スタンドの展開の後、ラソヒナがタックルで倒し、立とうとしたスタンプにギロチンを仕掛ける。スタンプは脱出するが、ラソヒナは腰投げで倒し、サイドで押さえ、立たれてもギロチンを狙う。だが終盤、スタンプはバックを奪い返すと、裸絞めを仕掛ける。とはいえムエタイベースのスタンプは寝技に関しては発展途上な感が否めず、極まりは浅く、ラソヒナは対処する。
2R、スタンプがスタンドで左右のミドル、左ジャブを随所でヒットし主導権。ラソヒナはなかなか触らせてもらえない。終盤、ラソヒナはタックルを仕掛けるが、スタンプは切って上をキープして終える。スタンプがムエタイスキルを活かしたラウンドに。
3R、ラソヒナは開始すぐにタックルを仕掛けるが、これもスタンプが切り、ハーフで押さえる。流れはスタンプだったが、ラソヒナは下から腕十字を仕掛け、上になってクラッチを切る。だが女子ならではの関節の柔らかさが活き、スタンプはタップせず、もがいて脱出に成功する。スタンプがまたも上になり、右の肘を当て好印象を残す。終盤はスタンドに戻り、スタンプが反撃を封じ終了する。
記者採点はスタンプ。1Rのスタンプの裸絞め、3Rのラソヒナの腕十字のニアフィニッシュを等価と考え、全体のコントロールが長かったスタンプを支持した。ジャッジは割れたが、スタンプが2者に支持され、リベンジと準決勝進出を果たした。
第7試合 一回戦 5分3R
×デニス・ザンボアンガ(フィリピン/ONE MMA女子アトム級1位)
○ハム・ソヒ(韓国/ONE MMA女子アトム級5位、元RIZIN女子スーパーアトム級(49kg)王者)
判定1-2
RIZINのベルトを返上しONEに乗り込むハム・ソヒは、いきなりONE 1位のザンボアンガとの試合が用意された。ザンボアンガはMMA 8戦全勝、ONEには19年2月から上がり3戦全勝の24歳。昨年2月にはMeiに判定勝ちしているが、ソヒは過去最強の相手と言って間違いないだろう。
1R、ソヒがサウスポーに構え、左ストレートを序盤からヒット。プレッシャーをかけ続けると、ザンボアンガが右ストレートを放ちながら組み付き、金網に押し込む。ソヒは倒されないが、押し込まれ続け印象が悪い。レフェリーはブレイクをかけずに続行していると、終了間際にザンボアンガが倒して上になって終える。
2R、ソヒがサウスポーでプレッシャーをかけ、時折左ストレートを放つが、ザンボアンガはかわし続ける。中盤にはザンボアンガも右フックをお返し。すると数秒後、ザンボアンガが胴タックルでテイクダウンに成功する。ソヒは立つが、またも金網に押し込まれ続ける。残り30秒、ブレイクがかかり、ソヒがプレッシャーをかけて終える。
3Rもソヒが圧を掛け続けるが、ザンボアンガが左に回り続け対処する。すると中盤、ザンボアンガが右フックを振るって頭から突っ込むと、ソヒも左ストレートをカウンターで放ったためバッティングとなり、ザンボアンガは額が大きく割れて出血してしまう。ドクターチェックが入り、規定の5分時間いっぱいの止血作業の後に再開すると、体力も回復したザンボアンガは待ってましたとばかりに突進し、タックルから抱え上げて倒して上になる。ザンボアンガはまた大量に出血するがレフェリーは続行。ソヒの黄色いコスチュームが赤く染まるが、ザンボアンガはトップキープして終える。
記者採点はザンボアンガ。ザンボアンガのテイクダウンと、押し込んでやグラウンドでのコントロールを評価した。ジャッジは割れ、2者がスタンドでプレッシャーをかけ続けたソヒを支持し、ソヒが苦戦も準決勝に駒を進めた。
これで準決勝に残ったのは平田樹、リトゥ・フォガット、スタンプ・フェアテックス、ハム・ソヒに。ザンボアンガとソヒは当初、3位のラソヒナと4位のスタンプと同じランカー揃いの激戦ブロックに分けられていたが、大会前日、ONEは準決勝の組み合わせをファン投票により決めると発表した。投票はONE公式サイトにて10日まで受け付け、24日の大会の放送中に発表される。
その他のカード
第8試合 メインイベント ONE MMA女子ストロー級(56.7kg)タイトルマッチ 5分5R
○ション・ジンナン(中国/王者)
×ミッシェル・ニコリニ(ブラジル/2位)
判定3-0
※ジンナンが5度目の防衛
18年1月から長期政権を築くジンナンが5度目の防衛戦。1R、ブラジリアン柔術の世界大会で度々優勝しているニコリニが、再三片足タックルを仕掛け、テイクダウンが無理でも下になり、サブミッションをひたすら狙う展開。だがジンナンは防御を続けると、中盤過ぎ、左手のフェイントからの右ストレートをクリーンヒットしてダウンを奪う。ニコリニはピンチに陥るが、追撃を許さず、スタンドに戻す。
以降もジンナンの打、ニコリニの組の構図。2R、ジンナンが右ストレート、右ローでニコリニにダメージを与えるが、ニコリニは足をつかんで関節技を仕掛けて追い詰める場面を作る。
3R、ニコリニは抱っこの状態で飛びついて組み付き、引き込んで下になる。下からオモプラッタを狙い極めかけるがタイムアップとなる。
4Rも基本的に同じ構図だが、ジンナンはパンチを思うように当てられず、ニコリニは組みの展開に持ち込めず、膠着状態に。とはいえジンナンはこのまま守り切れば1Rに奪ったダウンが評価され、判定勝ちできる流れだ。
5R、ジンナンは序盤から積極的に左右のパンチを振るい、ニコリニの反撃を封じる。中盤、ニコリニは引き込んで下になり、足を登らせるが、ジンナンは脱出し、グラウンドでも反撃を許さない。スタンドに戻ると、チャンスを逃し気持ちが切れつつあるニコリニに、ジンナンが左右のフックを連打し追い詰める。最後はジンナンが打撃を出し続け終了。記者採点はジンナン。ジャッジ3者もジンナンを支持し、ジンナンの王座防衛となった。
第3試合 キックボクシング 女子アトム級 3分3R
○アニッサ・メクセン(フランス/元GLORY女子スーパーバンタム級(60kg)王者)
×クリスティーナ・モラレス(スペイン)
2R 2’27” TKO (レフェリーストップ:左フックでダウン後)
元GLORY王者・メクセンがONE初登場。モラレスが声を上げてパンチを振り回すが、メクセンは落ち着いてかわし、右のミドル、ロー、左ジャブを的確に当てる。2R、メクセンが左ハイを効かせると、パンチラッシュから左フックをクリーンヒットしダウンを奪う。モラレスは足がフラつきながらも何とか立ち上がるが、ファイティングポーズを取れず、レフェリーがストップした。
第2試合 ムエタイ 女子ストロー級 3分3R
○ジャッキー・ブンタン(米国)
×ダニエラ・ロペス(アルゼンチン)
判定3-0