ONE Championship:不撓不屈の若松佑弥「王者になった瞬間、家族をリングに、自分の世界を見せたい」
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「オメデトウ!君は将来、絶対にチャンピオンになれるよ!」
ONEチャンピオンシップのチャトリ・シットヨートンCEOが、若松佑弥の肩を叩いて激励した。
2019年8月2日のフィリピン・マニラ大会、若松は元ONEフライ級世界王者ジェヘ・ユスターキオを1R右ストレートの一発でノックアウト。地元の英雄の勝利を信じた大観衆を一瞬の内に静まりかえらせた。同3月の日本大会でデメトリアス・ジョンソン(以下、DJ)に善戦するもONE参戦から2連敗と苦境に立たされた中、完全アウェーで格上の強敵と対戦。非の打ち所のない完璧な勝利に、自身も格闘家であるチャトリ代表の心が大きく揺さぶられたのかもしれない。
続く10月の日本大会で、試合途中に右拳脱臼のアクシンデントがある中、韓国の強豪キム・デファンから判定勝利をもぎ取り、現在ONE2連勝中。 “不撓(ふとう)不屈”の精神で逆境を乗り越え、“日本格闘技界の次世代エース”の呼び名を証明した若松は、新型コロナウィルス感染拡大で世の中が暗澹たるムードの中、何を想うのか。(記事提供:ONE Championship)
家族と離れて生活している、練習はいつも通り
――コロナ感染拡大を受けて、私生活の変化はありましたか?
「コロナのことがあるので、2-3週間前から家族と離れて生活しています。小さい子供(昨年12月に長男が誕生)がいるので、奥さんと話し合いました。毎日、LINEで顔は見ていますが、正直寂しいですね」
――生活はどうですか?
「今は練習して、家に帰って、寝ての繰り返しの毎日。料理の8割は自炊しています。簡単なものですが、色々と作りますよ。腕前は上がりました。得意料理はカレーです」
――フィジカルコーチの堀江登志幸さんからは何かアドバイスを?
「追い込み過ぎず、栄養とって、免疫を上げれば大丈夫と言われています。日常は消毒とかマスクとかしっかりやって、練習は練習でいつも通りやれと。適切な身体の使い方やスタミナの配分など、堀江さんには色々と教えてもらっています。去年の1月から付いてもらっていますが、とても助かっています。フィジカル、メンタル、食事の面、すべて堀江さんに相談して決めている感じですね」
自分も試合がしたい、チームの結束が強まった
――4月17日開催の「Road to ONE:2nd」に出場した同じTRIBE TOKYO M.M.Aの工藤諒司(椿飛鳥に1RTKO勝利)と後藤丈治(祖根寿麻に1R一本勝ち)が素晴らしい勝ち方をしました。
「本当に刺激になりました。観ていて自分も試合がしたいという気持ちになった。純粋に羨ましかったですね」
――長南代表が大会後のTwitterで「弟子達に教えている事は間違っていないと再確認できた」と2人を賞賛していました。
「仲間が長南さんにそう言われていると、次は自分も!って気持ちになりました。チームを引っ張る長南さんがいて、悪いところをちゃんとアドバイスしてくれて、堀江さんが良いところを褒めてくれる。堀江さんがジムに入ってから、チームの結束がより強まった様に感じます」
(クルーズ、セフードと対戦)いつやっても負ける気はしない
――最近の練習は?
「最近、寝技をよくやっています。スパーで決まる様になってきて楽しくなった。前は、寝技はディフェンスの面でしか意識していなかったが、映像を見ながら研究したり、ロータス世田谷代表の八隅(孝平)さんや青木(真也)さんに学びながら、前以上に取り組んでいます」
――今月のUFC 249は見た?
「はい、メインイベント出場のトニー・ファーガソンを注目していました。あと、同じ階級なのでドミニク・クルーズとヘンリー・セフードも注目していた」
――彼ら(クルーズやセフード)と戦う自分を想像した?
「そうですね。もしやったとして、いつやっても、今でも別に負ける気はしないです」
ONEが背伸びをさせて、育ててくれた
――ONEのこれまでを振り返ると、対戦相手(キンガッド、DJ、ユスターキオ、デファン)は錚々たる面々。これまでの流れは、荷が重かった?
「正直に言うと、最初は荷が重かった。自分より“格上”でしたから。でも、ONEが自分に期待してくれて、育ててくれている。背伸びをさせて、チカラをつけさせてくれている、そう思いながら戦ってきました。キツイと思う時もあったが、結果、問題ないし、むしろ、感謝しています」
――常に進化し続けないといけない。ターニングポイントになった試合は?
「全ての試合に意味がありました。振り返ると全てに反省すべき改善点がある。キンガッド戦は動きが固すぎて、思ったように力が発揮できなかった。DJ戦はもっと自信を持って行くべきだった。8月のユスターキオ戦は最高な勝ち方。10月はアクシデントがあり、こう言う時もあると勉強になった。全てがあって今の自分がある。なんか、山を登っている様な気持ちですね」
――ユスターキオ戦、最高の勝ち方でした。
「当初、(リース)マクラーレンとの試合を組まれていて。変更でのカードだったが、自分は正直ジェへの方が相性が悪いと思っていた。早くKOしなければ、アウェーだし判定だと危ないと思っていた。当日、体調は万全で、あの時点での自分のあの勝ち方は100点だと思いました」
――試合後、チャトリ代表から「将来、王者になれる」と激励されました。
「本当に嬉しかったです。(チャトリ代表が)お世辞でも、誰にでも、言っているとは思えなかった。その言葉を信じて、頑張ろうと思いました」
レベルが拮抗している、DJを倒してチャンピオンになりたい
――4月27日発表の公式ランキングで4位でした。印象は?
「世界で4番目に強いと言う意味で、4位は嬉しかったです。このランキングに入った選手は、皆強くてレベルが拮抗している。例えば、自分の一つ上のカイラット(アクメトフ)は、世界的にもUFCでも十分通用すると思う」
――次に対戦したい相手として、アクメトフ(同3位)とマクラーレン(同5位)の名前を挙げていました。
「カイラットは元世界チャンピオンだし、自分はマクラーレンの方がキンガッド(同2位)より強いと思う。マクラーレンを倒せば、キンガッドを倒せる。そうなると、(現世界王者の)アドリアーノ(モラエス)と同じレベルに立てる。まず2人を倒したい」
――世界タイトル戦は?
「自分はアドリアーノとDJが戦えば、DJが勝つと思う。そうなれば、もしタイトル戦ができるなら、すぐにでもしたい。DJを倒してチャンピオンになる。でも、自分の流れで言えば、あと2、3戦して、それを蹴散らしてDJにリベンジ。ファンもその方が喜びますよね」
家族をリングに上げたい、自分が見ている“世界”を見せたい
――好きな漫画は「キングダム」だと聞いたが。
「はい、『キングダム』はずっと読んでいます。主人公の李信と今の自分を重ねています。彼は何もないところから、独学で研究し、強い奴らと戦い、挫折もあるが、最後は大将軍になる。自分に似ている気がするんです」
――印象的な場面は?
「まだ国も統一できてないくらい小さいのに、毎回、将軍クラスの強敵を倒すんです。その部分に惹かれます。今、57巻くらいまで進んでいるのですが、今の自分とちょうど同じ様な感じですね」
――李信と一緒に世界の頂点を目指すのですね。若松選手が王者になった瞬間、すぐ何をしたい?
「家族を、妻と息子をリングに上げたい。自分が見ている“世界”を見せたいです」