Krush 7.22 後楽園ホール(レポ):璃明武、永坂吏羅からダウン奪い判定勝ちしスーパー・バンタム級王座初防衛。璃久、K-1 GROUP初戦で森田奈男樹をKO。佐々木洵樹が引退式
MARTIAL WORLD PRESENTS GYM VILLAGE
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AZABU PRESENTS Krush.151
2023年7月22日(土)後楽園ホール
レポート&写真:井原芳徳
璃明武、永坂吏羅からダウン奪い判定勝ちしスーパー・バンタム級王座初防衛
第9試合 メインイベント Krushスーパー・バンタム級(55kg)タイトルマッチ 3分3R(延長1R)
○璃明武[りあむ](K-1ジム総本部チームペガサス/王者)
×永坂吏羅[りら](K-1 GYM SAGAMI-ONO KREST/挑戦者)
判定3-0 (豊永30-28/西村30-28/梅木30-27)
※璃明武が初防衛
璃明武は21年8~10月に行われたスーパー・バンタム級王者決定トーナメントで元Krushバンタム級王者の吉岡ビギン、黒田勇斗、鬼山桃太朗を下してベルトを獲得し、今回が初防衛戦となる。王者になってからの昨年は、2月のK-1同級王座決定トーナメント一回戦で一航を下すも、準決勝で優勝者の金子晃大にKO負けし、6月のTHE MATCHでは江幡睦に延長判定負けした。昨年11月、永坂相手にKrush王座の防衛戦を予定していたが、璃明武の拳の怪我により中止となり、璃明武は手術を経ての復帰戦で永坂と仕切り直しの防衛戦を行う。
永坂はテコンドーをベースとするが、次第にK-1ルールにアジャストしパンチに磨きをかけ、昨年5月大会で吉岡ビギンを、7月大会で内田晶をKOし、4連続KO勝ちとし、王座挑戦にたどり着いた。昨年の王座戦が流れた後も試合をしていなかったため、1年ぶりの試合となる。璃明武にはプロ2戦目の19年3月に判定負けしている。
1R、璃明武がオーソドックス、永坂がサウスポーで構え、璃明武がプレッシャーをかける構図。永坂は両膝にがっちりとテーピングをしており、足を痛めているか?ややステップがぎこちなく、回って距離を取り続ける。とはいえ璃明武も瞬発力のある永坂の飛び込みに警戒してか、慎重な試合運びだ。璃明武は右ローを度々放つが、ローブローとなり一時中断する場面も。記者採点はイーブン。
だが2R、序盤に試合が一気に動く。璃明武が右ミドルを当ててから、すぐに左フックにつなげると、不意を突かれた永坂はダウンする。永坂はすぐ立ち、ダメージは小さい様子で、スイッチを繰り返しながらパンチを増やすものの、璃明武はかわし、パンチ、右テンカオ、ロー等を的確に当て続け優位を維持する。記者採点は璃明武。
3R、永坂は必死にパンチを振るい反撃を狙う。だが足を痛めているせいか、テコンドー仕込みの蹴りを絡めることは無く、距離も遠いため、パンチの空振りが多い。璃明武はかわしつつ、自分のロー、膝等を随所で当て、反撃を封じ終了する。記者採点はイーブン。合計30-28で璃明武。ジャッジ3者も璃明武を支持し、璃明武が判定勝ちで初防衛に成功した。
ベルトを巻いた璃明武は「連敗して、チャンピオンになってからいい姿を見せられていなくて、勝つ姿を見せることができてうれしいです。相手はさんざん煽って来て嫌いだったんですけど、強かったし、彼のおかげで強くなれたと思います。ありがとうございます。Krushで一番強い永坂吏羅選手に勝ったんで、あとはK-1のトップです」とK-1王座奪取を新たな目標に掲げた。
なお、大会4日前にK-1の新プロデューサー就任の発表されたカルロス菊田氏は、海外出張中のため来場しなかった。これまでのKrush・K-1でのタイトルマッチでは、プロデューサーが王者にベルトを巻き、レフェリーと共に両手を上げるのが慣例だったが、今回はレフェリー一人で片手を上げるスタイルとなっていた。
インタビュースペースで璃明武は「負けたら本当に終わりだと思っていました。1(R)から来ると思ったら結構見てきて、2で来てくれて狙い通りでした。足も腹も効かせられたと思います。ダウンを取れて盛り上がったと思います」と振り返り、今後のK-1上位戦線進出については「強い選手を圧倒できたんで期待してください」と自信を示した。復帰後3連続KO勝ちで快進撃を続ける岩尾力について聞かれると「やっている選手がちょっと…。1R秒殺KOばかりなんで、もうちょっと見たいです」と話し、今の段階では挑戦を受ける気持ちは薄い様子だった。
敗れた永坂は「全然動けていなかったのが敗因です。距離が想定よりも遠くて、入りが単調だったりデカくて、そこで合わされました」とコメントした。インタビュースペースに来る時に足を引きずっていたことを聞かれると「(試合前に)自分で怪我した感じです」と話した。
髙橋直輝、西元也史に判定勝ち。中島千博との王座戦熱望
第8試合 セミファイナル スーパー・フェザー級(60kg) 3分3R(延長1R)
×西元也史[なりふみ](K-1 GYM SAGAMI-ONO KREST)
○髙橋直輝(若獅子会館)
判定0-3 (箱崎29-30/岡田29-30/梅木29-30)
1R、西元がプレッシャーをかけ続け、随所でパンチを当てるが、まだ髙橋を詰め切れない。髙橋はロープを背負う時間が長く、攻撃が少ないが、終盤には右ボディを強打するように。記者採点はイーブン。
2R、西元が前に出るが、髙橋は右ロー、左ボディを的確に当てる。その後も西元が前に出る構図は変わらないが、お互い明確に差を示す攻撃にはつなげられない。記者採点はイーブン。
3R、ひたすら前に出る西元に対し、髙橋はようやく左ボディフックを強打する頻度が増え、やや好印象に。西元はパンチの空振りが多く印象が悪い。記者採点は僅差だが髙橋。合計29-30で髙橋。ジャッジ3者も同じ採点で、髙橋が判定勝ちした。
高橋は昨年5月から、遠藤信玄、友尊、斎藤祐斗、西元相手に4連勝に。バックステージのインタビューで髙橋は「4連勝したんで、もう僕しかいないでしょ、次やるなら中島千博チャンピオンでしょ。させてもらえなかったら困ります。面白い試合できたかというと微妙ですけど、チャンピオンなら面白い試合ができると思います」と話した。
璃久、K-1 GROUP初戦で森田奈男樹をKO。K-1王者・和島大海に宣戦布告
第7試合 スーパー・ウェルター級(70kg) 3分3R(延長1R)
×森田奈男樹(エイワスポーツジム/JFKO全日本フルコンタクト空手道選手権2017軽重量級(85kg)優勝)
○璃久[りく](HIGHSPEED GYM/シュートボクシング日本スーパーウェルター級2位)
3R 1’46” KO (右フック)
森田は昨年12月のK-1でジョムトーンにKO負けし、プロ5戦目で初黒星を喫したが、3月のKrushでの再起戦で山崎陽一に判定勝ちしている。
璃久はK-1 GROUP初参戦。立ち技戦績10戦7勝(4KO)2敗1分の24歳。昨年1月のNO KICK NO LIFEで喜多村誠と引き分け、9月のシュートボクシングで村田義光に判定勝ちし、SBのランキングに今も入っている。以前から大阪のジムの垣根を越えて実力者が集まる「チーム吉鷹」で練習し、今年からHIGHSPEED GYMに加入。1月のGLADIATOR大阪大会では、昨年8月に森田にKO負けしているイゴール・シウバと対戦し、2R右ボディでKO勝ちしている。
1R、フルコンタクト空手出身の森田は得意の蹴り主体で攻めようとするが、璃久は顔面へパンチ主体で攻略し、距離を縮めて左ストレート、右のクロスを当て、やや好印象で進める。記者採点は璃久。
2R、中盤まで璃久がパンチを当て優位に進めるが、森田が左のテンカオ、三日月蹴りを効かせると、璃久は下がり。終盤は森田が蹴りとパンチで璃久を追い詰め終える。記者採点は森田。
3R、森田がテンカオを当てるが、璃久も負けじとテンカオを返しつつパンチを当てると、次第に森田は口が開いて苦しそうな様子に。すると中盤、森田が左ミドルを2連打すると、3発目のタイミングで、璃久が右フックをクリーンヒット。ダウンした森田はダメージが大きく、すぐに西村レフェリーがストップした。
璃久は「12月K-1大阪で使ってください。面白い試合するんで」とアピールし「和島さん、絶対俺ベルト取るから」と、客席にいるK-1スーパー・ウェルター王者・和島大海に対して呼びかけると、和島も両手をクロスするワジマックスポーズで笑顔を浮かべた。和島とはアマ時代からの顔なじみで、チーム吉鷹で週1回一緒に練習する間柄だという。
バックステージでのインタビューで璃久は、念願のKrush初参戦の感想を聞かれ「スマホの待ち受け画面も武尊選手で、ミーハーなんですけど、ここで喜んでいたら次行けないんで、次に向けて練習します」と話した。和島については「大阪大会で勝って和島選手につなげたいです。今は無理やけど、いつかは超えるから、いつか見とけよと思うので、それまで負けんといてください」と話した。
佐々木洵樹引退式「これからも格闘技の素晴らしさを伝えたいです」
佐々木洵樹(POWER OF DREAM/元Krushバンタム級王者)引退セレモニーが第6試合終了後に行われた。引退式ではジムメイト、ボクシングジム時代に所属した帝拳ジムのトレーナー勢、家族らが花束を贈呈した。
佐々木は「15歳から北海道からK-1チャンピオンになりたくて上京し、プロボクサーとして10年、日本ランカーにもなりましたが、夢を追いかけたくてK-1に来ました。色んな方と出会えて、普通の人に味わえない世界に立てて良かったです。今日は帝拳ジムのトレーナーの皆さんも二つ返事で上がってくれました。ボクシング界とキックボクシング界、一緒にやるというのも出てきているので、これからも格闘技の素晴らしさを伝えたいです。息子も夢の力で何でもいいですけどやってほしいですし、僕も夢の力で頑張ります」と話し、最後は10カウントゴングを聞いた。
目黒翔大、KNOCK OUTからの刺客・新田宗一朗に判定勝ち
第6試合 スーパー・フェザー級(60kg) 3分3R(延長1R)
○目黒翔大(優弥道場)
×新田[あらた]宗一朗(クロスポイント吉祥寺/INNOVATIONスーパーフェザー級王者)
判定3-0 (豊永30-29/岡田30-29/三浦30-29)
目黒は昨年11月の松本和樹戦で勝利し連敗を3で止め、4月の赤田功輝戦でも判定勝ちし2連勝中だ。
新田はK-1 GROUP初参戦。立ち技戦績17戦10勝(4KO) 3敗4分の27歳。KNOCK OUTを主戦場としつつ、INNOVATIONで王座を獲得し、これまで主に肘有り・キャッチ制限無しのルールで戦ってきた。22年7月には故郷沖縄でのRIZINに上がり、大雅に3ダウンを奪われ判定負け。最近では4月のINNOVATIONでの防衛戦で紀州のマルちゃんと引き分けている。
1R、目黒はサウスポーからの左のカーフキックを当てると、新田は少しバランスを崩す。新田も右ミドルを随所で返すが、やや後手に回る展開に。記者採点はイーブン。
2R、新田が右テンカオを返すものの、目黒が新田をコーナーに詰め、パンチを当てる展開が目立つように。新田は背中を向けたり、顔をそむけるように。だが目黒のバッティングが2度発生し、有効打で与えたダメージか曖昧になってしまう。終了間際には新田も右テンカオがローブローとなってしまう。記者採点は目黒につけるか迷ったがイーブン。
3Rはこれまでの目黒優位の流れがより明白になり、長時間新田をロープに詰め、パンチを当て続け圧倒する。記者採点は目黒。合計30-29で目黒。ジャッジ3者も同じ採点で、目黒がKNOCK OUTからの刺客を退けた。
倉田永輝、“狂拳”迅の猛反撃封じ勝利
第5試合 スーパー・バンタム級(55kg) 3分3R(延長1R)
○倉田永輝(K-1 GYM SAGAMI-ONO KREST)
ד狂拳”迅(WIZARDキックボクシングジム)
判定3-0 (豊永29-28/岡田28-28/梅木29-28)
1R、倉田がプレッシャーをかけ続け、左ジャブを当てると迅は鼻血を出す。迅も左ボディやバックスピンキックを返す。だが終了間際、倉田が迅をロープに詰め、右ボディ、左ストレートを当ててから、迅の右膝蹴りのタイミングで右ストレートを当ててダウンを奪う。
2R、倉田が随所で右ローを当てるが、パンチの強打は減る。迅は中盤から前に出て、終盤にパンチと蹴りをまとめる場面もあったが、ひるませるほどにはならない。
3R、右カーフキックの応酬となり、中盤、倉田の勢いが落ち、迅がパンチも効かせやや攻勢に。だが倉田は耐え終了。1Rのダウン分の点差を守り切り、何とか判定勝ちした。迅も追い上げえで印象を残す試合だった。
悠斗、9秒KO勝ち。K-1フライ級王座設立を熱望
第4試合 フライ級(51kg) 3分3R(延長1R)
×松葉斗哉(昇龍會)
○悠斗(HUNGRY GYM/WMC日本ライトフライ級王者、元プロボクシング日本同級王者)※東京町田金子ジムから所属変更
1R 0’09” KO (左フック)
1R、開始すぐに悠斗が前に出て、両者が右のカーフキックをほぼ同時に蹴り合った直後、悠斗がさらに左フックを振るうと、不意を突かれた松葉はダウン。ダメージが大きく、すぐさま梅田レフェリーがストップした。
マイクを持った悠斗は「ボクシング、ムエタイ、いろいろやってきた中、Krushに上がるため色んな人が協力してくれました。30になるんですけど、目標があります。ベルトはもちろんですけど、K-1フライ級を作りたいです。身長が僕みたいに小さくても、今日の相手のような若い子でも、しっかり感動させられると僕が伝えていきます」とアピールした。
第3試合 フライ級(51kg) 3分3R(延長1R)
×橋本裕也(K-1ジム五反田チームキングス)
○宗一郎(朝久道場/KPKBバンタム級王者)
4R 判定0-3 (西村8-10/箱崎8-10/梅田8-10)
3R 判定0-1 (西村29-30/箱崎30-30/梅田30-30)
1R、お互いパンチ主体で当てるが、まだ均衡状態。2R、橋本がサウスポーからの左テンカオを随所で当てるが、宗一郎もパンチを返す。だが頭から突っ込みがちで、終盤にはバッティングとなり、橋本はドクターチェックを受ける。再開後も均衡状態は崩れない。だが3R、宗一郎がプレッシャーを強め、パンチの手数を上げやや優位に。だが橋本も随所で攻撃を返し、大差をつけさせず終了。ジャッジ1者は橋本を支持したが延長へ。
すると延長R序盤、両者サウスポーで構え、宗一郎がカウンターの右フックをクリーンヒットしダウンを奪う。その後は攻めあぐねたが、反撃を封じ判定勝ちした。
第2試合 女子ミニマム級(48kg) 3分3R(延長1R)
○ケイト・ウィラサクレック(ウィラサクレック・フェアテックス三ノ輪/M-1 JAPAN女子ライトフライ級王者)
×青木 繭(SHINE沖縄)
判定3-0 (太田30-26/箱崎30-27/梅田30-27)
1R、ケイトが蹴り、青木がパンチ主体の攻防で、どちらも当てるがまだ均衡状態。
すると2R開始すぐ、ケイトが左ミドルを空振りすると、パンチを振って詰めて来た青木に対し、カウンターの右ストレートを当ててダウンを奪う。その後も左ジャブ、顔面狙いの左前蹴りを当て、青木は鼻血を出し苦しむ。
3R、必死に前に出てパンチを振るう青木をケイトはかわしつつ、右ハイや左三日月蹴りや左ジャブを当て優位を維持し判定勝ちした。
第1試合 スーパー・フェザー級(60kg) 3分3R(延長1R)
×南雲大輝(スタースポーツクラブ)
○松本和樹(T-GYM)
判定0-3 (太田28-30/豊永28-30/29-30)
1R、両者サウスポーで構え、お互い顔面とボディにパンチを当て、ローも蹴り合うが、まだ均衡状態。2Rも似たような攻防で、終盤、松本のカーフが効いてきたか?南雲がスイッチしたが、まだ大崩れはしない。3R、南雲はオーソドックスの状態が続き、松本がパンチとローの手数でやや上回る。南雲もパンチを返すが、流れは変えられず終了。ジャッジ3者とも僅差だが松本につけ、松本が判定勝ちした。
プレリミナリーファイト第3試合 スーパー・フェザー級(60kg) 3分3R
○天野颯大[そうた](キング・ムエ/K-1甲子園2021 -60kg優勝)
×上垣内[うえがいと]一成(月心会ラスカルジム)
3R 1’10” KO (パンチ連打)
プレリミナリーファイト第2試合 バンタム級(53kg) 3分3R
×紀空[きら](K-1ジム五反田チームキングス)
○坂本寿希(リーブルロア/元KROSS×OVERスーパーバンタム級王者)
判定0-2 (29-30/30-30/28-30)
プレリミナリーファイト第1試合 フェザー級(57.5kg) 3分3R
×夏気(TEAM RHAPSODY)※水越夏気 改め
○関口功誠(ALONZA ABLAZE)
不戦勝
※夏気が前日公式計量前に脱水症状となりドクターストップがかかり欠場。計量をクリアした関口が不戦勝