新日本キック 2.19 後楽園ホール(レポ):重森陽太、ラジャダムナン王座に初挑戦も判定負け。重森「取れる位置にはいるなとわかった。どんどん挑戦したい。積極的に、守りに入らないで」
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新日本キックボクシング協会 伊原道場主催「MAGNUM 57」
2023年2月19日(日)後楽園ホール
レポート&写真:井原芳徳
重森陽太、ラジャダムナン王座に初挑戦し判定負けも「取れる位置にはいるなとわかった」
第12試合 スペシャルメインイベント ラジャダムナンスタジアム認定ライト級タイトルマッチ 3分5R(インターバル2分)
○ジョーム・パランチャイ[Jom Paranchai](タイ/王者)
×重森陽太(伊原道場稲城支部/10位、WKBA世界&KNOCK OUT-REDライト級王者、元新日本フェザー級&バンタム級王者)
判定3-0 (チャルーンプラヤサップ49-48/ポンメートチャスラック49-48/椎名49-48)
※ジョームが防衛
新日本キックのエースでKNOCK OUTの王者でもある重森陽太が、ジョーム・パランチャイの持つラジャダムナンスタジアム認定ライト級王座に挑戦した。
1978年3月18日、藤原敏男氏が日本人として初めてムエタイ2大王座(ラジャダムナン、ルンピニー)を獲得したが、その時の階級は今回の重森と同じライト級だった。16年には梅野源治もラジャのライト級王座を獲得しており、重森が今回王者となれば日本人としては10人目のラジャ王者となる(ルンピニー王者となった日本人は吉成名高のみ)。20年のコロナ禍突入以降、ムエタイ2大王座への日本人の挑戦は途絶えていたが、日本発祥のキックボクシングの原点である“打倒ムエタイ”の本流とも言えるこの挑戦がようやく戻ってきた。
重森は27歳。12年1月にプロデビューし47戦37勝(17KO)4敗6分と50戦近く戦ってきたが、ムエタイ2大王座への挑戦は今回が初となる。これまで新日本キックで日本バンタム級、日本フェザー級、WKBA世界ライト級の3本のベルトを獲得し、並行参戦しているKNOCK OUTでも21年7月にはラジャの元ランカーでもあるスアレック・ルークカムイに判定勝ちしKNOCK OUT-REDライト級(62.5kg)王座を獲得している。
昨年は新日本キックのメインイベンターを務め続け、3月に大谷翔司に判定勝ちし、5月に元タイ7ch.スーパーフェザー級王者・テーパブットとドロー、7月に真吾YAMATOに肘で切られTKO負けと2連続で勝ち星から遠ざかったものの、10月には過去に梅野源治と1勝1敗のキヨソンセン・フライスカイジムに判定勝ちしている。戦績では順風満帆とはいかなかった1年だったが、これらの経験を今回の大一番に活かしたい。
王座挑戦決定直後、重森はTwitterに「決して裕福な家庭ではありませんでしたが、小学2年生から毎年タイに練習や試合の遠征費を出してくれた母に対して最大の親孝行をしたいです。そして私がラジャのチャンピオンになり新日本キックを完全に復活させます」との意気込みを記していた。
王者・ジョームは72戦62勝10敗の19歳。両者ともワイクルー(=タイでのムエタイの試合前に行われる、師に捧げる踊り)を踊ってから、ゴングが鳴る。1Rはお互い慎重な戦い。ジョームが中央で構えてじりじり前に出て、重森が回る構図で、お互い蹴りはまだ少ない。終盤、重森がジョームの右ミドルに合わせて左の前蹴りで吹き飛ばす。ジョームも左ミドル、右ローのヒットも少し増やし印象を残す。記者採点はイーブン。
2Rに入るとジョームは圧力を強め、パンチを振るい、右ミドル、ローを増やし、組めば膝を連打し、主導権を握る。重森も前蹴り、ミドルを時折的確に返し印象を残すが、下がる時間が続いてしまう。記者採点はジョーム。ジャッジは2人がラジャから来たタイ人で、1名は日本の大会のレフェリーで有名な椎名利一氏という編成で、タイ人2名は重森、椎名氏はジョームにつける。タイ人ジャッジは重森のテクニックを高く評価したようだ。
3R、重森は開始すぐから右の前蹴りでジョームを吹き飛ばし先手を取り、左右のハイも当てる。だが中盤から、ジョームはより一層圧力を強め、重森の左膝に合わせ、執拗に左ボディをヒットするように。終盤には重森は蹴りを返せなくなり、ジョームが左ボディを何発も当てて重森を苦しめる。記者採点はジョーム。タイ人ジャッジ2名はジョームにつけ、椎名氏は重森につける。これで合計ではジャッジ3者とも29-29のイーブンとなる。
勝負所の4R、ジョームが序盤から組んで膝を連打し先手を取る。ジョームは中盤からパンチ主体に戻り、左ボディを当てつつ、度々顔面にも右フックを当て、重森を追い詰める。重森も前蹴りを時折返すが、ジョームの圧力に押され、力が入りきらない。記者採点はジョーム。ジャッジ3者もジョームにつける。
5Rもジョームが前に出て右フック、ボディを随所で当て、組めば膝を当て崩しも絡め優位を維持する。重森は下がり続け、攻撃が返せない。終盤、左ハイを当てるが、わずかにズレる。30秒を切りジョームが距離を取って流しに入り、重森は攻められず終了する。記者採点はイーブンでジャッジ3者もイーブン。合計50-47でジョーム。ジャッジは3者とも49-48でジョームを支持し、ジョームの判定勝ちとなった。4Rのジョームの取ったポイントが決め手になり、5Rは守り切られた形だ。
敗れた重森は1Rに割れた右スネを縫う手術を終えてから取材に応じた。重森は「今日、チャンピオンになれるなって凄く思って、3Rまでは自分でやりたいようにできていた感じがして。相手は僕の前蹴りで転びたくないんで、パンチに切り替えて来て、膝で対応したんですけど、そこの対応力で負けましたね。相手は本当は首(=首相撲が得意)の選手なんですよ。組まれたら勝ち目ないと思って、組まれないための前蹴りと膝蹴りだったんですけど、圧力は凄かったです。ダメージは正直そんなに無いんですけど、ポイント取られてるなって。(相手の)力があるんでこっちの体が起きちゃうんで、攻撃のバランスが崩れちゃうんで印象が悪かったですね。セコンドからはハイキックと肘を言われ、ハイは何度か当てたんですけど、圧力が来てうまく力が入りきらなかったです。1R目で3発目ぐらいの蹴りで(右の)スネが割れて、思いっきり骨出てて。カットの上を蹴りましたね」と試合を振り返った。
敗戦という結果に対しては「勝たないと意味ないとは思うんですけど、ただ、取れる位置にはいるなとはっきりわかりました。世界相手にもやっていけると思ったので、どんどん挑戦したいですね。積極的に、守りに入らないで。負けることは怖くないんで、いい選手とどんどん試合していきたいです」「本当はここで決めて一区切りつけたくて、これで最後のつもりで試合しました。満足して辞めるならここしかないと思って今日は来ましたけど、幸い、まだやることがいっぱいあるんで。やりますよ。勝たないと辞めれないわかりました。ズルズル長引かないように、いい所まで行って、自分の中で満足して辞めれるように探していきたいです」と、時折笑顔も浮かべつつ前向きにコメントした。
髙橋亨汰、WKBA世界王座獲得「これからどんどん外に出て新日本キック最強、伊原道場最強を証明したい」
第11試合 メインイベント 初代WKBA世界62kg王座決定戦 3分5R(延長1R)
○髙橋亨汰(伊原道場本部/新日本ライト級王者)
×ラット(タイ/シッムンチャイジム/元ルンピニー認定フェザー級6位)
2R 0’39” TKO (ドクターストップ:左縦肘打ちによる頭部のカット)
※髙橋が王者に
髙橋は昨年10月大会でNJKFのランカー・吉田凛汰朗に勝利し、1試合の引き分けを挟んで15連勝中。今回は実質新日本キックの管轄下にあるWKBA(世界キックボクシング協会)のタイトルに挑んだ。WKBA世界ライト級王座は重森が保持しており、それよりも800g程度重い62kgのリミットで新しいタイトルが創設された。対戦相手のラットは今大会の第9試合でKO負けしている木下竜輔(伊原道場本部)を肘で切り裂きTKO勝ちしている選手。年齢は39歳。
1R、髙橋がサウスポーで構え、体格差を活かしてプレッシャーをかけ、左ミドル、ローを的確に当て続け、終盤、左のアッパーでダウンを奪う。立ち上がったラットは前に出て右フックを連打し、終了間際に髙橋をダウン気味に倒すが、少レフェリーはダウンとみなさない。
2R、開始すぐからお互い距離を詰めて打ち合う中で、高橋が左の縦肘を連打すると、ラットはダウンする。ラットは頭部から大量に出血し、ドクターチェックの結果ストップがかかった。
ベルトを巻いた髙橋は「これで新日本キックを背負える存在になれたと思います。これからどんどん外に出て新日本キック最強、伊原道場最強を証明したいです」とアピールした。
志賀将大、NJKFとWKBA日本王座の2冠に
第10試合 WKBA日本バンタム級王座決定戦 3分5R
○志賀将大(エスジム/NJKF王者)
×No-Ri-(ワイルドシーサー・コザ/元TENKAICHI王者)
判定3-0 (仲50-46/宮沢50-46/少50-45)
※志賀が王者に
新日本キックには沢村忠のキックボクシング草創期から伝統の日本王座があるが、こちらは新日本キック所属選手が巻くことができるベルトで、WKBA日本王座は他団体やフリーの選手にも門戸が開放されている。バンタム級は佐野佑馬(創心會)が21年10月の初代王座決定戦で当時新日本バンタム級1位の泰史に判定勝ちし王者となった。今回、佐野が志賀を相手に初防衛戦を行う予定だったが、佐野が負傷欠場し、王座を返上し、志賀とNo-Ri-による王座決定戦に変更となった。志賀は昨年2月に甲斐元太郎に判定勝ちしNJKFバンタム級王者となっている。No-Ri-への変更に関するプレスリリースは新日本キックからは出されておらず、急な変更だった模様だ。
1R、志賀が右ミドルを時折強打し、組めば肘や膝を当て崩しも絡め主導権を握る。No-Ri-は組まれると背中を向けがちでレフェリーからも注意される。記者採点は志賀。オープンスコアのジャッジ2名が志賀、1名がイーブンとつける。
2Rも志賀が組んで膝を当て主導権。No-Ri-は組まれると相変わらず背中を向け続ける。記者採点は志賀。ジャッジ2名が志賀、1名がイーブンとつける。3Rも志賀が膝を当て続ける。記者採点は志賀、ジャッジ3者もようやくそろって志賀につける。
4Rも同様で、No-Ri-は腰投げを2度放ち、レフェリーから注意される。記者採点は志賀。5R、志賀は膝を当てつつ、左右のミドル、右ローでの崩しも絡めて巧さを印象付け判定勝ちした。記者採点は50-45で志賀。志賀が大差をつけ判定勝ちした。
第9試合 57kg契約 3分3R
×木下竜輔(伊原道場本部)
○湯本剣二郎(Kick Life)
2R 3’00” KO (右ストレート)
第8試合 58.5kg契約 3分3R
○ジョニー・オリベイラ (ブラジル/トーエルジム)
×国崇(拳之会/WKAムエタイ世界フェザー級王者)
判定3-0
第7試合 58.5kg契約 3分3R
×仁琉丸(富山ウルブズスクワッド道場)
○小林勇人(伊原道場本部)
1R KO (右ストレート)
第6試合 エキシビションマッチ 2分2R
―マルコ(イタリア/伊原道場本部)
―斗吾(伊原道場本部/元新日本ミドル級王者)
勝敗無し
※マルコと対戦予定だった江原陸人(GOD SIDE GYM)が欠場
第5試合 スーパーライト級(肘無し) 3分2R
―勇生(富山ウルブズスクワッド道場)
―山田青空(GOD SIDE GYM)
中止 (勇生の欠場)
第4試合 女子51kg契約(肘無し) 2分3R
×オンドラム(モンゴル/伊原道場本部)
○青木 繭(SHINE沖縄)
判定0-3
第3試合 フェザー級 3分2R
○呉 嘉浩[ゴ ガコウ](中国/伊原道場本部)
×古山和樹(エスジム)
判定3-0
第2試合 アマチュア 女子34kg契約 1分30秒2R
△西田永愛(伊原道場本部)
△菊池柚葉(笹羅ジム)
判定1-1
第1試合 52kg契約 3分2R
○渡邊匠成(伊原道場本部)
×今吉勇樹(K-style GYM)
判定3-0