ONE Championship 12.18 シンガポール:和田竜光、ヨッカイカー・フェアテックスに判定負け。採点基準の明瞭度に課題
MARTIAL WORLD PRESENTS GYM VILLAGE
センチャイムエタイジム中野
本場のムエタイ、教えます。初心者、ダイエット目的の方も大歓迎!まずは見学・体験を!
ONE Championship「ONE:COLLISION COURSE」
2020年12月18日(金)シンガポール・インドアスタジアム
レポート:井原芳徳 写真:(C) ONE Championship
第2試合 MMA フライ級 5分3R
×和田竜光(フリー/元DEEP王者)
○ヨッカイカー・フェアテックス(タイ)
判定1-2
和田は18年からONEに上がり、19年8月にフライ級GP準決勝で元UFC王者のデメトリアス・ジョンソンと対戦。判定で敗れたが、1Rに長時間バックキープしチャンスを作った。続く今年1月の試合で、MMA 8戦無敗のイヴァニルド・デルフィノに判定勝ちし、試合はそれ以来。対するヨッカイカーはMMAルールでONE 2連勝中の選手。
1R、開始して2人がタッチすると、すぐさま和田は組み付き、金網に押し込んで右脇を差してテイクダウンを狙う。ヨッカイカーは耐えるが、中盤、和田はオンブになり、そのまま倒れバックマウントへ。ヨッカイカーは正面を向こうともがくが、和田はギリギリでバックをキープし、時折肘や鉄槌を当てる。正味の与えたダメージは乏しいが、和田が終始主導権を維持するラウンドに。ここまではDJ戦と似たような展開だ。
2Rも和田は組み付きを繰り返すが、ヨッカイカーは突き放し続け、サウスポーからの左インローを当てる。空振りになるが左ミドル、左フックも度々出すため、和田は中に入りにくそうだ。中盤、ヨッカイカーの左インローが和田の股間に直撃し、回復時間が設けられる。再開後、和田はすぐ組み付いて押し込み、またもテイクダウンに成功する。金網際でハーフガードで押さえ、ヨッカイカーが立ってもすぐ組み付く。最後は離れると、ヨッカイカーが軽く左ミドルを当てて終える。和田がまだ優勢だが、ヨッカイカーが持ち直した感がある。
3R、最初しばらくヨッカイカーが左ミドル、左フックを当てるが、序盤から和田が組み付いて押し込む、これまでのラウンド同様の展開に。するとヨッカイカーの左膝蹴りがローブローとなり、またも回復時間が設けられる。レフェリーはブレイクで再開すると、すぐ和田は組み付くが、ヨッカイカーはムエタイ式の崩しを決め、和田はマットに手をついてしまう。それでも和田は再び組み付くが、ヨッカイカーは耐え、左の膝を和田の左の軸足に細かく当て続ける。すると今度は和田の膝蹴りがローブローとなり、またも一時中断し、これもレフェリーがブレイクで再開する。和田はじりじり距離を詰めようとするが、ヨッカイカーは距離を取り、左インローを出し続ける。残り30秒にインローを当てると、和田は少しバランスを崩してしまう。その後もヨッカイカーは和田に組ませず終える。
記者採点は和田。お互い決め手に欠く試合で判断が難しかったが、1Rにバックマウントで主導権を維持したことを評価した。ジャッジは割れ、2者がヨッカイカーを支持し、ヨッカイカーの判定勝ちとなった。判定が発表された瞬間、和田は手を広げ、信じられないといった様子だった。和田が1Rに裸絞めを極めたり、肘や鉄槌でダメージを与えていれば高く評価された可能性はあるが、そこまで持ち込めなかった。そのため、ヨッカイカーを支持したジャッジ2者は、ヨッカイカーが和田の足に与えたダメージと、テイクダウンディフェンスを高く評価したものと思われる。今回に限らずONEではグラウンド・コントロールは重視しない傾向が強い。
ONEの公式サイトの「ONE判定基準」には「ニアKO・ニアサブミッション」「ダメージ(内部、蓄積、表面)」「打撃のコンビネーションとケージの支配率(有利なポジションを獲得とグラウンド・コントロール)」「テイクダウンまたはテイクダウンディフェンス」「積極性」が評価基準として挙げられている。この記述順で重視している可能性が高いが、そうとは明記はしておらず、ONEのルールブックの全文が公開されていないため詳しくはわからない。
ONEやRIZINの採用するトータルマスト判定は、5分区切りよりも3倍以上の判断材料が生じ、それらの軽重の差が乏しいと、判定が割れる傾向が強く、この試合もその欠点が如実に出た感がある。UFC等の世界基準のMMAから差別化したルールは、団体の個性を示す要素となっているが、逆にわかりにくく、娯楽性を下げてはいないだろうか。同じトータルマストでも、RIZINは採点者の名前が読み上げられるが、ONEでは誰が採点したのかアナウンスされないため、ジャッジへのプレッシャーが軽減される分、責任の所在がぼやけてしまっている感も拭えない。日本のABEMAの中継陣は競技に精通し、丁寧に採点基準を説明しているが、ジャッジの判断と逆になることも少なくない。
コロナ禍の今、格闘技に限らずどのスポーツコンテンツも、会場観戦よりもスマホの画面や自宅のモニターで見る比重が大幅に上がった。会場観戦では声を張り上げての歓声による他の客との一体感や、派手な演出といった、試合以外のパッケージがそのコンテンツの楽しさを増幅させていた。しかし今は、それらの周辺要素の重要性が低下し、より試合を集中して見ることや、攻防についてツイートや動画のコメント欄で議論することに、ファンの楽しみの主体がシフトしている感がある。つまり選手の能力や個性、競技のゲームとしての出来の良さを、画面を通じてどれだけ明快に伝えられるかが、以前に増して大事な時代になっている。
ONEは公式サイトで「アジア最大の世界的なスポーツメディア・プロパティであり、27億人の潜在視聴者を150カ国以上に有しています」とアピールしている。その潜在視聴者を顕在した視聴者にするには、映像コンテンツとしての質を高めることが大事だ。ONEは選手層は申し分ないが、その選手たちの能力や個性、競技のゲーム性を、視聴者にわかりやすく伝えられているだろうか。2011年に旗揚げし来年、10周年イヤーに突入するONE。コロナ禍の厳しい時代において、その真価がより問われる1年となるだろう。
第6試合 ONEキックボクシング・ライトヘビー級チャンピオンシップ 3分5R
○ローマン・クリークリャ(ウクライナ/王者)
×アンドレイ・ストイカ(ルーマニア)
判定3-0
※クリークリャが防衛
第5試合 ONEムエタイ・バンタム級チャンピオンシップ 3分5R
○ノンオー・ガイヤーンハーダオ (タイ/王者)
×ロートレック[ロドレック]・PKセンチャイムエタイジム(タイ/2位、挑戦者決定トーナメント優勝)
3R 1’13” KO
※ノンオーが防衛
第4試合 MMA ライト級 5分3R
○マラット・ガフロフ(ロシア/元フェザー級王者)
×ローウェン・タイナネス(米国/5位)
判定2-1
第3試合 MMA バンタム級 5分3R
○ユサップ・サーデュラエフ(ロシア/4位)
×トロイ・ウォーゼン(米国)
判定3-0
第1試合 MMA フライ級 5分3R
×チャン・ロタナ(カンボジア)
○シェ・ウェイ(中国)
3R 1’39” TKO