KNOCK OUT 2.12 大田区総合体育館:那須川天心、タイの強豪スアキムに判定勝ち。スーパーライト級王座決定トーナメントは不可思とマサ佐藤が準決勝へ
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KNOCK OUT FIRST IMPACT
2018年2月12日(月/祝) 東京・大田区総合体育館
那須川天心はタイの2階級上のトップ戦線で活躍中の強豪スアキムと対戦。序盤にスピードの違いで攻勢を見せ、後半は膝をもらって少し苦しんだが、反撃を封じ判定勝ちすると「ギリギリで勝てたんですけど、2階級上の格上のチャンピオンを倒したので、僕が最強で良いのかなと思います」とアピールした。
レポート&写真:久保与志
第7試合 55.7kg契約 3分5R
○那須川天心(TARGET/Cygames/RISE&ISKAオリエンタルルール世界バンタム級(55kg)王者/55.7kg)※TARGETから所属表記変更
×スアキム・シットソートーテーウ [Suakim Sit.Sor.Thor.Taew](タイ/ルンピニー認定スーパーフェザー級8位、元ルンピニー・チャンネル7・プロムエタイ協会スーパーバンタム級王者/55.5kg)
判定3-0 (大成50-48/北尻49-47/岡林50-48)
1R、試合開始から腕狙いの強い右ミドルでしかけてくるスアキム。那須川はミドルを被弾するとすぐに左インローをリターンし、逆にスアキムのバランスを崩して三日月蹴りをヒット。スアキムの意識が下に向くと左ストレートをヒットし、ハイキックも狙っていく。スアキムはパンチをもらうとすぐに距離を詰めてプレッシャーをかけ、近い距離から右ハイを狙うが、これは那須川がスウェーでかわす。記者採点は10-10、オープンスコアも3者10-10のイーブン。
2R、那須川は三日月蹴り、左ストレート、その左のフェイントから右フックと、多彩な攻撃をボディ一点に集中させると、顔面への左ストレートもヒット。スピードのギアを上げてスアキムを翻弄しようとする。スアキムはパンチをもらうと連打を阻もうと前に出て右ストレートを狙う。タイミングが合ってヒヤリとする場面もあったが、那須川はスリッピングを駆使して間一髪でかわしていく。被弾しても全くひるまず圧力をかけるスアキムに、那須川は右フックから手をついてセンチャイが良く見せるような左ハイを繰り出す。記者採点は10-9、オープンスコアも3者10-9で那須川。
3R、強烈な左ボディストレートを打ち込む那須川だが、スアキムのプレッシャーは弱まらない。那須川は詰めてくるスアキムに左フックを被せつつ回ってコーナーには詰まらず。スアキムが右ミドルを蹴るとインローのリターンとキャッチからの足払いで対応する。ラウンド終盤、スアキムがこれまでほとんどなかった首相撲の攻防から那須川のみぞおちに膝蹴りを突き刺し、那須川が尻餅をつく。那須川は頭を気にしてレフェリーはバッティングと判断して中断。那須川は首のあたりも気にしており、バッティングではなく首相撲の攻防でどこか痛めたか。再開後、一段と圧力を強めたスアキムはパンチと肘でインファイトに持ち込もうとする。記者採点は10-9で那須川、オープンスコアも3者共に那須川につける。
4R、3R最後の膝蹴りで腹を効かされたか?那須川は少し苦しげな表情を浮かべて失速。スアキムが詰めて何度かパンチをヒットさせるが、完全なクリーンヒットは許さず、スアキム得意の肘はスウェーでしっかりと外す。要所で左ストレートを顔面、ボディにヒットする那須川だがスアキムは動じず前に出る。厳しい展開になってきた那須川だが、ラウンド終了間際に左ストレートをクリーンヒットするとついにスアキムがぐらつきを見せる。記者採点は10-10、ここまでのトータルスコアは40-38で那須川。
5R、オープンスコアからしてもダウンを取らないと判定を覆せない状況になったスアキム。ここも前に出てパンチと肘で逆転を狙う。華麗にスアキムの攻撃をかわしていた浅いラウンドとは違い、疲れが明らかでロープに詰まり始める那須川。何度か右のパンチをもらうも、ビッグヒットは許さず要所で左ストレートを当てる。最後はスアキムの圧に少し根負けしたか、タックル気味の組み付きや胴回し回転蹴りでスアキムに攻防をさせずにタイムアップ。試合が終わると那須川は疲労困憊といった様子で大きく口を開ける。
5R記者採点は9-10、トータルスコアは49-48で那須川。ジャッジの判定も3-0で、序盤にスピードの違いで攻勢を見せた那須川に軍配。キックのキャリアでは初めてといっていい劣勢を強いられる場面もあったが、最後まで手に汗握る消耗戦を制してタイの“本物”スアキムに競り勝った。
マイクを持った那須川は「久々に5R戦って、本当にスアキム選手マジで強かったです。今までの選手とはレベルが違いました。いつもは試合が決まるとワクワクするんですけど、今回は正直ワクワクできませんでした。ギリギリで勝てたんですけど、2階級上の格上のチャンピオンを倒したので僕が最強で良いのかなと思います。どうですか皆さん?(会場から大歓声)本当は今年初の試合をKOで飾りたかったんですけど、スアキム選手が本当に強くて。良い経験が出来て本当に良かったです。KNOCK OUTは本当に強い選手を僕に当ててくれて、今回僕が負けると思った人もいると思いますけどしっかり倒しました。これからどんな敵が来ても必ず勝って、自分の最強を証明して、最高目指して頑張っていきたいと思います」とマイクアピールした。
今までのような圧倒的なKO劇ではなかったが、キャリア最強の相手に繰り広げた15分間一瞬も気を抜けない5Rの攻防は、ミスマッチのKOよりはるかに価値のある一戦だった。
第6試合 KING OF KNOCK OUTスーパーライト級王座決定トーナメント一回戦Aブロック 64kg契約 3分5R
○不可思(クロスポイント吉祥寺 REBELS/RISEライト級(63kg)王者/64.0kg)
×健太(E.S.G/WBCムエタイ日本統一ウェルター級王者/64.0kg)
判定2-0 (岡林50-49/小川49-49/北尻50-49)
1R、互いに右ローを飛ばしながら右のオーバーハンドを狙うがビッグヒットはない。着実に右ローを当てていく不可思に対し、健太は左ジャブ、インロー。さらに蹴り足をキャッチしての崩しも駆使して自分のペースを作っていく。記者採点は10-10、オープンスコアも3者10-10のイーブン。
2R、徹底してローを蹴っていく不可思に、健太は右ストレートを合わせていく。徐々に距離が近くなり、健太が不可思の同門・T-98とも渡りあった首相撲で主導権を握る。健太が組みの攻防から離れ際に右肘をヒットして目の下をカットする。記者採点は9-10で健太、オープンスコアは2者が10-10、1者は9-10で健太につける。
3R、圧力をかけて押し込み、首相撲に持ち込んでいく健太。離れての攻防は互角だが、首相撲では健太が少し上回る。不可思はローを蹴りつつ、健太の入り際に左右の肘を合わせ始め、健太も右目尻をカット。ラウンド終盤は健太が首相撲から振り回しショートレンジでパンチを当てる。記者採点は10-10、オープンコアは3者ともに10-10のイーブン。
4R、前に出て左右のフック、左肘を見舞う健太。不可思は少し後手に回りながらも左ボディと右ローで応戦する。我慢強く蹴ってきた右ローがようやく功を奏してきたか、健太の出足が鈍り始めるが、健太は首相撲から膝ではなく、押し込んでの肘にシフトしてロープに詰める。残り10秒で、不可思の飛び膝に合わせて健太が左フックをヒット。さらにショートの連打を叩き込んでラウンドを終える。記者採点は9-10、ここまでのトータルスコアは38-40で健太。
5R、互いの右クロスが交錯し、不可思は右ハイをヒット。ローのダメージで踏ん張りが効かなくなってきたか、健太は主導権を握っていた首相撲の攻防でも、何度も転倒させられる。終盤はもみ合いながらの至近距離でのパンチ、肘の打ち合いとなり、互いに明確なクリーンヒットはなく試合終了のゴング。
5Rの記者採点は10-9で不可思、トータルスコア48-49で健太。判定は2-0、粘り強くローを蹴り続けたことが5Rに実り、不可思が僅差の判定をものにしたが、健太も5Rを通して1ポイントも獲得出来ないような試合ではなかったように思える。
第5試合 KING OF KNOCK OUTスーパーライト級王座決定トーナメント一回戦Bブロック 64kg契約 3分5R
×水落洋祐(はまっこムエタイジム/REBELS 65kg級王者/63.8kg)
○マサ佐藤(名護ムエタイスクール/英雄伝説アジア64kgトーナメント’16優勝、蹴拳ムエタイライト級王者/63.8kg)
3R 1’02” TKO (ドクターストップ:肘打ちによる眉間のカット)
1R、佐藤が右ローを蹴りつつ右ストレート、ハイで距離を取ろうとするが、水落はローで応戦しつつ、徐々にプレッシャーを強めて佐藤をロープに詰めると、左右パンチでラッシュをしかけ、何度も佐藤をロープ際に釘付けにして連打を浴びせる。記者採点は10-9で水落、オープンスコアも3者水落につける。
2R、なおも攻勢をしかける水落に、佐藤も右ストレートで応戦するが、水落の強烈な圧力に押されて守勢を強いられる。連打を浴びつつも耐え続ける佐藤はカウンターで肘打ちを合わせて水落の眉間をカット。すぐにドクターチェックが入り、かなり出血がひどく傷口も深い。再開後、ストップの可能性が高いと見たか、水落はガードをかなぐり捨てるようにして打ち合いにいく。記者採点は10-9で水落、オープンスコアは10-10、10-9、9-10と大きく割れる。
3R、なおも強引に打ち合いに持ち込む水落に、佐藤も右ストレートと肘打ちでしっかり応戦する。一段と出血がひどくなり2度目のドクターチェック。ストップ寸前の水落は顔面血塗れになりながら猛然と倒しにかかり、佐藤も応戦して激しい打ち合いに。ここで3度目のドクターチェックが入り、ついに試合がストップ。初参戦の佐藤がトーナメント本命とも見られていた水落をTKOで破るアップセットを果たしたが、敗れ方も含めて、水落も存分に“らしさ”を発揮した一戦だった。
第4試合 61.5kg契約 3分5R
△宮越慶二郎(拳粋会/WBCムエタイ・インターナショナル・ライト級王者/61.4kg)
△重森陽太(伊原道場稲城支部/元新日本キック日本フェザー級&バンタム級王者/61.5kg)
判定1-1 (小川49-48/大村49-49/大成48-49)
1R、重森が立ち上がりから鋭い前蹴りを連発して宮越を寄せ付けない。重森はさらにボディを狙った低い左ミドルで意識を下に向けてから、右ストレート、左ハイと顔面への攻撃をヒットさせる。宮越も飛び込んでのパンチを狙っていくが、重森の蹴りと入り際を狙った右ストレートに阻まれて詰めきれない。記者採点は9-10で重森、オープンスコアは2者が10-10、1者が9-10で重森。
2R、宮越は右ロー、左ミドルと蹴りも増やして打開しようとするが、重森は左ミドルを蹴りつつ、宮越の蹴りをキャッチして足払いで転倒させる。左ボディから右オーバーハンドで距離を詰めようとする宮越に、重森は左ミドル、ハイを連打すると、宮越の入り際に縦肘を合わせて目の下をカットする。記者採点は9-10、オープンスコアも3者9-10で重森。
3R、重森のカウンターを警戒しつつも、プレッシャーを強めて右フックでのけぞらせる宮越。重森は蹴りの数が減り、圧力に押され始めるが、要所でカウンターの右ストレートを当てて宮越に連打は許さない。記者採点は10-10、オープンスコアは2者が10-10、1者は10-9で宮越につける。
4R、盛んにスイッチも交えて飛び込んでのパンチを狙う宮越。詰めてショートレンジの打ち合いに持ち込もうとするが、重森は左ミドルを連打して右ストレートで押し返す。重森が左ハイを側頭部にヒットして宮越が耳から出血。少し距離が詰まり、宮越のパンチも徐々にヒットし始めるが、重森が終盤に左ミドルを連打してラウンドを終える。記者採点は9-10、ここまでのトータルスコアは37-40で重森。
5R、左インローで宮越の出鼻を挫いていく重森。宮越がバランスを崩しながらも詰めようとすると、右ストレートもヒットさせる。宮越は崩されながらも我慢強く前に出続け、宮越の右と重森の左、互いの肘打ちが交錯し、まともにもらった重森が大きくぐらつく。逆転のチャンスが訪れた宮越はパンチでしかけるが、重森が組みついて凌ぎタイムアップ。
記者採点は10-9で宮越、トータルスコアは47-49で重森。判定は49-48、49-49、48-49と3者3様のドローに終わった。
第3試合 51.5kg契約 3分5R
○石井一成(東京KBA/元タイTrue4Uフライ級王者/51.5kg)
×ノンロス・バーンジャロンスック [Nongros Banjaroensuk](タイ/ラジャダムナン認定スーパーフライ級7位/51.5kg)
2R 2’15” KO (左ボディフック)
1R、立ち上がりから力強い左右のミドルを蹴るノンロスだが、石井はしっかりとカットして右ローをリターンしていく。石井のリターンをまともにもらうノンロスは早くも足が流れ始め、石井は右ストレートからパンチの連打、右ローと攻勢を強めてラウンドを終える。記者採点は10-9、オープンスコアは2者が10-10、1者が10-9で石井。
2R、ミドルをカットして徹底して右ローを蹴っていく石井。完全に足の止まったノンロスはボディ、顔面への左のダブルをまともにもらうと、腹を効かされたかコーナーに後退。石井がすかさず詰めて強烈な左ボディを打ち込むと、苦悶の表情を浮かべながらダウン。何とか立ち上がったもの、再びコーナーに追い込まれると、石井のボディの連打を浴びてマットに沈んだ。
会心のKOで異色のタイ人ランカーを撃破した石井は、「フライ級が盛り上がっているので、KNOCK OUTでトーナメントをやっていただきたいです」と、自身の階級でのトーナメント開催をマイクアピールした。
第2試合 女子49kg契約(肘無し) 3分5R
○小林愛三(NEXT LEVEL渋谷/ムエタイオープン女子フライ級王者/49.0kg)
×キル・ビー(台湾/アイアンボクシングジム/49.0kg)
判定2-0 (北尻49-48/小川48-48/岡林48-47)
1R開始からビーがパンチで飛び込んでショートレンジに持ち込み、小林は組みついて凌ぐ場面が目立つ。ビーは組みの展開でもショートアッパーをヒット。小林も離れるとミドルを蹴っていくが手数でビーが教えていく。2Rも小林はビーの突進に苦しみ、ラウンド終盤には右ストレートをもらってコーナーに後退し、パンチの連打を浴びる。記者採点は1R10-10、2Rは9-10でビー。オープンスコアも1Rに2者が、2Rは3者共にビーにつける。
3R、序盤はビーが押し込んでいたが、長く続いた首相撲の展開で消耗したか急激に失速する。クリンチのブレイクはかなり早いKNOCK OUTのレフェリングだが、この試合はブレイクが極端に遅かった。口を開けて呼吸をし始めたビーに、小林は右ミドルから右ストレート、ハイキックと一転して攻勢に。ビーはまともに手を返せずマウスピースを吐き出す場面も。4Rも同様にスタミナ切れのビーを小林が蹴りで攻め立てて圧倒。記者採点は3、4R共に10-9で小林。
5Rはビーが意地を見せてパンチの連打で前進するが、小林も左右のミドルで応戦し、拮抗した展開でタイムアップ。記者採点は49-48で小林、判定は2-0、後半に巻き返した小林が逆転で僅差の判定勝ちを収めた。
第1試合 61.5kg契約 3分5R
×町田 光(橋本道場/WPMF世界スーパーフェザー級王者、REBELS 60kg級王者/61.5kg)
○高橋一眞(真門ジム/NKBライト級王者/61.5kg)
判定0-3 (岡林47-50/北尻46-50/小川46-50)
※2R右ストレートで町田に1ダウン
“怒突き合いお兄ちゃん”というキャッチコピーをつけられた高橋3兄弟の長男・一眞だが、この日はクレバーな戦い振りで町田を完封する。
1Rから丁寧にジャブ、ローを差しつつ、町田が極端に斜構えをするとすぐに右ミドルをヒットさせる。1Rこそポイントはつかなかったものの、2Rもミドルのヒットを重ねると、町田の飛び込みに合わせて右ストレートを何度もヒットし、終了間際にクリーンヒットしてダウンを奪う。
3Rも高橋が再三に渡り右ストレートをヒットしつつ、距離が詰まると膝蹴りを突き刺す。町田は居合いパンチも放って飛び込んでいくが、高橋は冷静にスウェー、ダックでかわして右をうちこむ。4Rも高橋が主導権を握り続け、ラウンド終盤には右ストレートの連打を浴びてフラフラに。
5Rは町田のローが効いてきたか足が流れ始めるが、そのローに右ストレートを合わせて町田の前進をストップ。そのまま高橋が大きな反撃を許さず大差の判定勝ち。今や王者となった森井へのリベンジに向けて幸先の良い勝利を挙げた。