ONE Championship バンタム級キック王座獲得の秋元皓貴「しんどかったけどあと2Rは行けた」「あと100倍は強くなれる」「世界に出て本当の王者になりたいと思う若い世代が出てきたらうれしい」
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ONE Championship「ONE X」3月26日 シンガポール・インドアスタジアム大会でのONEキック・バンタム級(65.8kg)チャンピオンシップで王者・カピタン・ペッティンディーアカデミー(タイ)に完勝し、新王者となった秋元皓貴の、試合3日後の3月29日に収録されたインタビューが、ONEから届いた。(写真:(C) ONE Championship)
カピタン VS 秋元皓貴 ハイライト:
秋元皓貴 勝利後インタビュー:
―― 改めて、チャンピオンになっての気持ちは、率直に。
秋元「試合前にチャンピオンになっても、そこからだって言っていたので、そこまで気持ち的には変わらないのかなって思いましたが、やっぱりタイトルを取ってコーチの顔を見たら泣けてきました。一人で掴んだものじゃないので、コーチとチームと掴んだものなのでとても嬉しかったです。」
―― ラウンド間のインターバルでもコーチから熱い言葉があったようですが。
秋元「チャンピオンになるんだ、チャンピオンになるんだ、って繰り返し言われていました。1ラウンドから結構激しい感じで、本当に追い込みの練習をしてたのと同じような感じになったので、そのトレーニングのインターバルで言われていたことを、そのまま言われてた感じでした。試合でしたけど、そのトレーニングと同じような感覚でやっていました。」
―― コーチの存在は非常に大きな存在ですか。
秋元「選手によっては自分で色々なことをやる選手もいますし、対策を立てたり考えたりをする選手もいると思いますけど、僕の場合は、相手選手の対策を練るとかをやりませんし、あまり得意でないので。そういった部分はコーチに任せています。自分はしっかりと100%以上のコンディションを作って、テクニックをしっかり吸収して、という感じなので、僕にとってはコーチの存在はとても大きいですね。」
―― 今回の試合で、警戒していたことや作戦について可能な範囲で教えてもらえますか。
秋元「試合前のインタビューでも言っていたのですが、やっぱり右のパンチ、右のストレートとローキック…。パンチがやっぱり強い選手でパンチからローキックに繋げてというのが他の試合では多く見られましたね。あとは前に前に来るプレッシャー。それをさせなようにというのが一番でしたね。アドバンテージで言うと、大体は僕がリードしていると思います。フィジカル的なところも。過去の試合も見ましたけど、古い映像なのであまり参考にしていないです。」
―― 試合前におっしゃっていた通り、ガンガン来る相手なので噛み合うって言っていましたが、その通りの試合でしたよね。
秋元「そうですね。本当にガンガン来たので、僕としては早いラウンドでもカウンターを狙っていたので倒しにいけるかなって思っていたのですが、やっぱりディフェンスもうまくて、カウンターを合わせに行こうと思ってもなかなかできず。早いラウンドでローキック嫌がっているなって思っていたんですけど、なかなか決め切るまではさせてもらえなかったなと思いました。相手のディフェンスのうまさもあったかと思いました。」
―― 相手のタフさもありましたよね。当たっても中々倒れずでしたよね。
秋元「そうですね。あと一歩とか。良いのが当たって、その後一発か二発当てれば倒せたかなと思ったのですが、また時間があいてという感じだったので、回復されてしまったのかなって思いました。 」
―― ご自身のディフェンスについては。
秋元「最初は自分がプレッシャーをかけていこうと思ってて、それが出来なかったら下がりながら距離を取りながらっていうのがやりたくなかった。その次にハードな方法を選びました。スピードに関しては自分の方に分があるなって思っていました。パンチも蹴りも全部見えましたし、しっかりそこは対処できたと思います。」
―― どのタイミングで自分の勝利が見えましたか。
秋元「勝ったなっていうのは、やっぱり最後まで思わなかったですね。やっぱり一発のある選手なので、それはしっかり頭に入れてやっていました。ラウンドとしてはフルラウンド取ったとは思っていましたけど、一発だけは気をつけて、なんなら自分が倒しに行くっていうつもりでやっていました。」
―― 最終ラウンドは、他のラウンドと比べて被弾しましたかね。
秋元「そうですね。5ラウンド目は本当に自分も倒したいって気持ちが強かったので、その分被弾しましたね。あそこで引いていたら一発もらっていたかもしれないので。」
―― 手数とスタミナが素晴らしかったです。日頃の成果ということでしょうか。
秋元「スタミナが完全に切れたことが今までの人生であまりなくて、スタミナには結構自信があります。この間の試合もしんどかったですけど、あと2ラウンドは行けたなと、そのくらいのスタミナの余裕はありましたね。本当にすごい子供の頃から負けず嫌いで、下校中の通学路とかでもとにかく一番前を歩きたいし、誰かが歩いてきたら後ろを歩くのが嫌だから抜かすとか、そういうところから始まっているのかもしれませんね。小学校はサッカー部だったんですけど、シャトルランとか持久走とか走るものとかは負けたくなくて常に一位を狙っていました。遊びでも部活でも空手でもトレーニングでも、全てに関して一人で勝手に頑張っていたというのがこういうのに出たのかもしれないです。」
―― これからの自分の伸び代についてはどう思いますか。
秋元「伸び代に関しては、かなりあると思っています。自分は格闘技をやっているのは長いですけど、キックボクサーとしてはまだ3年ちょっとだと思っていますし、パンチの技術なんてほとんどないといって良いくらいだと思います。パンチの技術、ボクシングのテクニックとかをもっと取り入れていったらもっと良くなると思います。蹴りは、ローキックとかであれば大分効かせることができるようになったなって思います。ハイキックとかも精度を上げていけば、一発で倒せるようになると思いますし、技一つ一つもそうですけど、動き方、ステップワークとかもまだまだ改善できることはたくさんあります。あと100倍は強くなれると思います。」
―― 試合を終えて、ご家族の反応はいかがでしたか。
秋元「みんな喜んでくれていて、結構試合が終わるとダメ出しをされるっていうのが多かったのですが、今回はそういうのがなくて。もちろん僕がまだ未熟な部分があるっていうのは皆んなわかっていると思うんですけど、両親にしても空手の師範たちにしても、みんな褒めてくれましたね。両親もそうですし、空手の先生たちのグループLINEがあるんですけど、試合後にあそこはこうした方が良かったとかよく言われて、勝ってもシュンってなることがありました(笑)今回はそういうのもなく、良かったってみんな言ってくれました。」
―― ご両親も空手を?
秋元「僕が始めた1年後に父が初めて、その1年後に母が始めました。今は空手の支部を暖簾分けしてもらって父と母で道場を持っていて教えているという感じですね。」
―― 空手についてはどう思っていますか。キックボクシングの中で空手が活きているなって思うことはありますか。
秋元「今回の試合でいえば、一番はローキックかなと思います。あのローキックは完全に空手の蹴り方で。それをキックボクシングに対応させた形です。どうやったらキックボクシングの競技の中で使えるのかを試行錯誤しながら、今回それがハマった感じです。今回は空手の蹴りですね。本当はもっともっとやりたいことがありましたけど、いっぱいいっぱいでしたが、今回は空手の蹴りが活きたかなって思いました。」
―― キックができなかった6年間があったと思うんですが、それを振り返ってみての思いはどうでしょうか。
秋元「本当に変わった経歴、すごい特殊な経歴だと思うんですけど、自分としては全く後悔はなくて。あの時キックボクシングを離れたからこそ、僕は今シンガポールにいると思います。これだけ吸収できるというか、言われたことを素直に吸収できるというか。あのままキックをやっていたら、自分のスタイルができちゃっていて、言われたことを素直に吸収できない部分があったのかなとも思います。周りから見たらフラフラしているって見えるかもしれませんが、自分としては一つ一つを真っ直ぐにやってきたので、良かったなと思います。評価される場所に来れたっていうのは嬉しいですね。」
―― 空手とキックボクシングでいうと、キックボクシングの方が華やかさがあるように見られたりしますが、空手に戻った時に何か気持ちの動きみたいなのはありましたか。
秋元「確かに空手もムエタイとかと一緒であまり評価されないですけど、自分がムエタイをやっていた時は正直試合をしていて楽しくなかった。相手が強いって感じなかったんですよね。空手に戻った時に強い選手がたくさんいて、自分としてはそれが楽しいと思いました。自分より強い相手と純粋に戦いたいという気持ちでした。」
―― カピタンのパワーやタフさ についてはどう感じましたか。
秋元「タフさはあったと思います。でも最初のラウンドでローキックを効かせられたっていうのが あると思いますが、パワーは正直ほとんど感じなかったですね。強いなー、重いなー、というのはあまり感じなかったです。でも、ディフェンスのうまさはすごく感じました。」
―― チャトリCEOが秋元選手の試合を大会のベストバウトと話していましたね。
秋元「自分としてはやっている時は一杯一杯だったので、正直ボーナスも貰えるって考えていませんでしたし、本当にベルトを獲れて嬉しいという感じでした。ホテルを戻って試合を見た時に、自分が思っていたより良かったなと感じました。これだったら評価してもらえるような試合をできたなって思いました。」
―― 他の試合も見ましたか。印象的な試合はありますか。
秋元「面白かったなというか、フェザー級キックボクシングのタイトルマッチ、スーパーボンとグレゴリアンの試合。自分はグレゴリアンが勝つのかなって思っていたんですけど、ただあのプレッシャーをスマートにかわしながら、しっかりと攻撃を当てていたスーパーボンは印象的でした。」
―― ボーナスの使い道は?
秋元「本当に物欲がないので、貯金になるのかなって思います。多分自分のことに使うことはないかなって思います。奥さんにプレゼントとか、両親にプレゼントとか、そういったことに使おうかなって思います。サプライズとかは苦手なので、欲しいものがあれば、と思います。」
―― 特別ルールの試合がありましたが、MMAへの挑戦とかは興味があったりしますか。
秋元「MMAは、チームのみんながMMAなので一緒にトレーニングをしてて、ウォーミングアップまでは一緒にやっていますね。レスリングの日も、BJJ(=ブラジリアン柔術)の日も一緒にやっています。興味は正直ありますね。ただ引退してからで良いかなって思います。今はしっかりキックボクシングに集中して、引退したらやればいいかなって思います。エコ・ロニは階級は一つ下ですけど、パンチのパワーは結構あるなって思いますね。ストライキングの時間とかもペアを組むことが多かったので、その期間にめちゃめちゃ技術が上がったなって思いますね。これからが楽しみですね。自分が普段の普通のトレーニングでも気を抜くのが嫌いで、常にピリピリした集中した感じでやるので、彼もそれについてくるという感じですね。」
―― 絶対的なチャンピオンになりたいってタイトルマッチ前に仰っていましたけど、今はどんな気持ちですか。
秋元「絶対的なチャンピオンになるためには、一番は基礎だったり本当にみんなが嫌がるような地味な練習。そういったことをコツコツやる選手が一番強いと思うので、そういったことをもっと集中してやっていきたいと思います。パンチのテクニックもしっかり上げていきたい。ボクシングのコーチについてもらったり、一つ一つレベルアップしてきたいです。」
―― スタミナで負けた試合っていうのはないですか。
秋元「スタミナが切れて負けたっていうのは、ないですね。」
―― 最初のチャレンジャーは誰が相応しいと思いますか。スタミナで負けた試合っていうのはないですか。
秋元「僕は誰でも良いかなって思います。やってみたい選手は….どうですかね。レベル的にいったらリマッチになるのか、もしくはチュー・ジェンリャンとカピタンが試合をしてその勝者とかなって思います。やりたい選手っていうのは本当にないです。組まれた試合を完璧にしたいです。」
―― 久々に大勢のファンが会場にいましたね。かなり盛り上がっているようにも見えました。
秋元「すごく盛り上がっていたなとは思いました。空手の試合は周りがうるさくて、その中から小さいコーチの声を聞くっていうのを空手の時から意識をしていたので、ほとんどコーチの声しか耳に入っていなかったと思います。空手の場合は多いと8面とか同時にやって、その周りにお客さんもいて、その中で師範たちのこえをこぼさないようにしていたので。僕の耳にはコーチとセコンドのジンナンの声しか入っていなかったですね。二人の声だけは聞こえましたね。相手のセコンドの声は全くでしたが(笑)。コーチが言っていたことは、この試合に向けて練習してきたことの中からさらに絞っていって、その中のコンビネーションについて話していたり、あとはプレッシャーかけてけ、倒せとかシンプルな言葉でしたね。セコンドが言っていれば相手もわかるじゃないですか、そのセコンドの声をフェイントにできるというのもあった。それも自分としては楽しんでいましたね。」
―― チャンピオンになってからの反響は。
秋元「まだ家から出ていないので、あまりわからないですが、SNSだったり友人からのメッセージだったりは物凄くきましたね。今までの比じゃないくらいでした。何件来たかもわからないですが印象的だったのは、ストーリーでタグ付けされたもので “彼氏がチャンピオンになりました”って書いてあって、それは面白かったですね。あ、彼女できたって(笑)」
―― ご家族、奥さん、お子さんからの反応はいかがでしたか。
秋元「奥さんは会場まで応援に来てれて、家でも喜んでくれましたし、娘は僕が次の日に家に帰ってきたとき、ベルトを見せたら喜んでいましたね。ベルトの意味を分かっているかはわからないですが、僕の仕事が格闘家だってのは理解していますね。」
―― 家族サービスは何か考えていますか。
秋元「シンガポールの周りの島とか。隔離なしで行けるところが出てきているので、そういったところに家族と旅行に行けたらいいなって思っています。」
―― 改めて、家族の存在っていうのは改めてどうですか。
秋元「家族がいて、小さい頃から両親がこの環境を作ってくれたっていうのもそうですし、妻が支えてくれたっていうのもそうですし、娘が毎朝、パパがんばってねって言ってくれるのとかもそうですし。ちょっと今日疲れたな、身体重いなっていうときも、そういうのが力になるなって思います。それが結果につながったかなって思います。」
―― 日本人ファイターが日本を出て戦う意味というのは秋元選手にとってどういうものでしょうか。
秋元「世の中にはたくさん世界タイトルだったり、日本の中でも日本のタイトルが物凄いたくさんあって、正直そのチャンピオン、タイトルの重さというのがどの程度あるのかっていうのが僕はちょっとわからない。世界で評価された舞台で戦うっていうのは、すごい価値のあることだと思いますし、日本の中で戦って世界チャンピオンと言っている選手もいると思うので、ぜひ世界に出てきて本当のチャンピオンになりたいって思うような若い世代が出てきたら嬉しいなって思います。」