ONE Championship チャトリCEO 独占インタビュー「来年3月に日本大会。将来は年4大会」「那須川天心もマニラ大会を見に行きます」「日本をPRIDEの全盛期を超える格闘技市場にするのが夢」
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東日本大震災が起こり、FEG体制のK-1、DREAMの最後の大会が行われた2011年に、シンガポールで産声をあげたONE Championship(旧称ONE Fighting Championship)。以降、着々とアジア各国に開催地を広げ、2017年には15大会を開催。日本からも青木真也、内藤のび太、今成正和、横田一則、朴光哲、V.V Meiらトップ選手が数多く参戦。欧米の実力者と切磋琢磨する中で、MMA発展途上国だったフィリピン、シンガポールなどからも強豪選手を輩出するようになった。2018年に入り、キックボクシング部門の創設、日本でのトライアウト実施、新興のインターネットテレビ局AbemaTVとの大型提携発表など、日本の格闘技ファンにとっても気になる話題が増えて来たが、その狙いは何なのか? ONE Championshipのチャトリ・シットヨートンCEOに話を聞いた。
――先日、AbemaTVとの新たな提携が発表されました。4月20日(金)のフィリピン・マニラ大会からの生中継の再開だけでなく(※AbemaTVの番組ページ)、かなり大がかりな物になっている印象ですが、その狙いは何でしょうか?
チャトリ 日本進出の第一歩で、これから日本の格闘技界を復興させるためです。1か月後には大きな発表ができそうですし、来年3月には日本大会を予定しています。
――AbemaTVからは「格闘代理戦争2ndシーズン」(4月29日(日)夜11時から放送スタート。AbemaTVの番組ページ)の優勝者と5試合契約し、最大1000万円が支給されると発表されました(※1試合出場で100万円、勝った場合はプラス100万円。プラス、AbemaTVからは300万円の賞金も授与される)。日本の新人選手に支払う金額としては非常に多額ですね。
チャトリ 我々はUFCに並ぶ報酬を選手に支払います。王者、トップ選手に、その価値にふさわしい金額を支払っていますから、新しい選手にもそれにふさわしい金額を支払うのは当然です。
――AbemaTVからは「各大会に日本人ファイター2名の出場が確約」と発表されましたが、本当ですか?
チャトリ はい。最低でも2名が出場します。私は日本人とタイ人のハーフですので、日本には特に思い入れがあります。日本は重要な市場です。日本進出は本気ですよ。
――現状、毎大会2名以上出るほど、ONE Championshipに日本人選手が出ていませんが、今後発掘するということでしょうか?
チャトリ はい。今、いろんな選手と新たに契約しているところです。
――マニラ大会から「ONE Super Series」と題したキックボクシング部門をスタートされますが、日本人契約選手にはキックボクサーも含まれていくことになるのでしょうか?
チャトリ はい。ムエタイ、キックボクシング、ラウェイといった立ち技競技から、ヨードセングライ、ジョルジオ・ペトロシアン、コスモ・アレッシャンドレといった最高の選手を世界中から集めているところです。
――チャトリさんが経営するシンガポールのイヴォルブ(EVOLVE)ジムに那須川天心が練習に来ていますが、彼とも会いますか?
チャトリ 会いますよ。イヴォルブに約1週間滞在し、タイ人の世界チャンピオンたちと練習します。20日のマニラ大会も私と一緒に見に行きます。日本のキックボクシングのレベルも高いですが、タイはもっと高いです。今も既に伊藤隆(RISE&TARGET)代表の元、素晴らしい環境で練習していますが、イヴォルブの強豪と練習することで、大きな刺激を得るでしょう。
――ONE Super Seriesは今後どう展開されますか?
チャトリ 世界から強豪を集め、世界最高峰の立ち技大会にします。
――ONE Super Series単独の大会の可能性もありますか?
チャトリ はい。その予定もあります。
――2月にONE Super Seriesのスタートを発表された後、日本のKNOCK OUTの木谷高明オーナーが会見で「RIZINやK-1は怖くないです。正直、一番怖いのはONEです」と話していましたが、そのことはご存知ですか?
チャトリ 初めて聞きました。
――日本に進出する際、日本のプロモーターとの協力はありうるでしょうか?
チャトリ もちろんです。日本のプロモーターもリスペクトしています。ONE Championshipは136ヵ国、17億人規模に試合放送を発信していますが、既にGLORYを超えており、キックボクシングでは世界最高峰の舞台になります。世界中の団体と協力し、このスポーツを大きくしたいです。
――日本進出にあたり、大会に使える会場が少なく、使用料が高いことは障壁にならないでしょうか?
チャトリ 幸運なことに、日本には強力なパートナーがいますので、特に心配はしていません。
――AbemaTVの格闘チャンネルの北野雄司プロデューサーとお話しした印象をお聞かせください。
チャトリ キタノサンが頑張ってくれたおかげで今回の契約が実現しました。彼はワールドクラスなビジネスマンです。彼は7~8年キックボクシングを経験していますし、総合格闘技もよく理解しています。ビジネスと格闘技の両方を理解できる人と日本の格闘技を盛り上げられると思うと、これからが楽しみでしょうがないです。
――AbemaTVとは今後どのような提携プランがありますか?
チャトリ 今回の契約は第一歩です。これからわかりますよ。とにかく、来年日本大会を開催することを100パーセント約束します。今年は各国で24大会を開催しますが、将来は52大会に増やし、北京、上海、東京、ソウル、マニラ、ジャカルタ、シンガポールといったアジア中の都市で、毎週末開催するつもりです。その時には日本で年に4大会を開催し、大阪などの地方都市でも開催することになるでしょう。今、136ヵ国で放送していますが、3年以内に194ヵ国、つまり全ての国で放送されるようにします。日本のMMA・キックボクシングのプロモーター・ジム・選手の皆と協力し、PRIDEの全盛期を超えるような、日本の格闘技史上最大のマーケットにするのが夢です。
――1月の日本でのトライアウトを通過した5選手の今後の起用はどうなりそうでしょうか?
チャトリ リアリティショーを収録中ですので、まだ詳しくは明かせませんが、1~2人がONE Championshipへの出場権を獲得することになると思います。
――今、マーチン・ヌグエン(ライト級&フェザー級王者のベトナム系オーストラリア人。横田一則にも勝利)、エドゥアルド・フォラヤン(前ライト級王者でフィリピン人。青木真也にも勝利:上写真)といった、東南アジア系の選手の成長や人気拡大が目覚ましいです。彼らの躍進の理由はどこでしょう?
チャトリ 我々はケージの中での格闘技の技術だけでなく、ケージの外でのライフストーリーを伝えることも重要視しています。それによってファンも感情移入し、選手に愛着を持ちます。フォラヤンは9人きょうだいですが、貧しい家庭で育ち、そのうち5人が亡くなっています。フォラヤンの親は文字の読み書きができません。そういう過酷な環境からでもチャンピオンになれたことが、ファンの感動を呼んでいると思います。
――日本でも同じような戦略になりそうですか?
チャトリ もちろんです。UFCは選手同士の憎しみを煽る演出を好み、選手の犯罪や薬物使用といったトラブルが話題になりがちです。ONE Championshipではマーシャルアーツ、カクトウギ(※チャトリ氏は日本語でこう発音した)の本来持つ素晴らしい価値観である、謙虚さ、誠実さ、人を敬う心を伝えることを大事にしており、そこがUFCとの大きな違いです。
――ONEは今、アジア各国で大会を開催していますが、将来は欧米にも進出したいですか?
チャトリ いいえ。世界最大のスポーツコンテンツであるアメリカンフットボールのNFLが米国で年商750億ドルです。世界人口の75億人に対して、アジアの人口だけでも既に44億人います。今後の経済成長も見据えますと、アジアにターゲットを絞るほうが、将来的に世界一のスポーツコンテンツになる可能性が高く、欧米の市場に進出する必要は無いという考えです。
――最後に日本のファンにメッセージをお願いします。
チャトリ これから日本のヒーローたちと一緒に、日本のブシドースピリット、格闘技の美しさの本質を世界中に発信していきます。ぜひ私たちの仲間になってください。ドウモアリガトウゴザイマス。