INNOVATION 1.17 コンベックス岡山:「岡山ZAIMAX MUAYTHAI 55kg賞金トーナメント」岩浪悠弥、加藤有吾、元山祐希、壱・センチャイジム インタビュー
MARTIAL WORLD PRESENTS GYM VILLAGE
センチャイムエタイジム中野
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INNOVATION 第7回岡山ジム主催興行(1月17日(日)コンベックス岡山)の「岡山ZAIMAX MUAYTHAI 55kg賞金トーナメント」に出場する岩浪悠弥(橋本道場)、加藤有吾(RIKIX)、元山祐希(武勇会)、壱・センチャイジム(センチャイムエタイジム)のインタビューが、INNOVATIONから届いた。
岩浪悠弥インタビュー
——今回の「岡山ZAIMAX MUAYTHAI 65kg賞金トーナメント」、4名によるワンデイトーナメントは、チャンピオンクラスのトップファイターが見事に集結しましたが、圧倒的な実績からして岩浪選手が頭一つ以上抜けた優勝候補であることは異論なきところでしょう。
ありがとうございます。そういっていただけるのは嬉しいのですが目下連敗中で……。
——連敗? 昨年10月29日、NO KICK NO LIFE渋谷興行メイン、石井一成戦は、初回、岩浪選手が絶妙なインサイドワークを見せながら、第2ラウンド、石井選手が目を覚ましたかのような鮮やかな肘打ちで痛烈KO負けとなってしまいました。しかし、その前の試合、9月12日、NJKF後楽園ホール興行メイン、WBCムエタイ日本バンタム級王座決定戦は、NJKF王者の一航選手と一進一退のテクニカルな攻防の末、ドロー(チェアマンの支持で一航が新王者に認定)で、白星ではないものの実際連敗などしておりません。
一航戦、負けたとは自分でも思いませんが、はっきりと勝利を主張できるような見せ場が作れなかった反省も大きくて自分の中では黒星同然です。
——それよりも国内随一の高い防御力を誇る岩浪選手が石井戦で喫したKO負けが衝撃でした。
昔、タイ人に肘打ちでカットされてのTKO負けはありましたけれど、意識を飛ばされてのKO負けは初めてですし、だいたいあれが生まれて初めてのダウンでした。
——30戦のプロキャリアがありながら初ダウン?
はい。けど、今では前向きに捉えています。“殻(から)”を破ることができたなって。
——殻?
「生涯ダウンなし」とかアンタッチャブル的に倒されたことがないことを売りにしたいという欲がどこかにあって、無意識でもダウンしないような過剰防御をしていたかもしれないと自分で思っていたんです。もちろん、相手の攻撃を喰わないことは大切ですが、そこから即時攻撃に繋げるには、距離やタイミングなどギリギリに絞らなきゃならないところがあって、その微妙な選択で自分は安全策を取ってしまっていたんじゃないかなって。
——トップ選手だからこその微妙なミリの世界の話に聞こえます。
そのミリの違いが自分にとっては大きくて、そこを吹っ切れたことで今まで不十分だった大切な武器を手に入れることができた気がするんです。
——芸術家のこだわりのようでありながら、革命的な何かが起こる胎動も感じます。
だから、楽しみでならないんです。新しい自分をリングで爆発させる時が。
——『ドラゴンボール』で悟空がスーパーサイヤ人になるような変身が?
ワクワクします!
——そこは「オラ、わくわくするぞっ!(悟空のものまね)」では?
そ、その方向の殻はまだ破れません(笑)。
——すみません、調子に乗って失礼しました。正統派6冠王者の岩浪選手ですから、何の殻でも破ればいいというものではりありませんでした。閑話休題は終えて、そのワクワクは、今度のZAIMAXトーナメントに向けられるわけですね?
プロで30戦しながらワンデイトーナメントは初めてですが、毎回豪華で神興行連発の岡山で「あのトーナメントやばかったな!」って、こんなコロナで大変な最中、チケットを買って見に来てくれた方々に楽しんでいただけるものを魅せたいです。
——そんな意気込み高いところで、出場他3選手の寸評をいただきます。まず、同じINNOVATIONの雄、元山祐希選手。
圧倒的なフィジカルがありますよね。気持ちも強くて下がらずに前に出続けるイメージです。
——スーパーフェザー級(58.97kg)のINNOVATION王座争奪争いをしていた選手が55kgにまで落としてくるのですから相当な減量です。
それができる核心あっての参戦でしょうし、コンディショニングが上手くいけば、(バンタム級から55kgで戦ってきた)僕らの攻撃は“軽い”としか感じないかもしれません。そこに減量で損なわれないタフネスがあると想定するとやっかいです。
——今回の4名ではダークホース的存在の元山選手への警戒も怠らない?
一番無名と見られるということは「喰ってやろう」ってハングリーさが強くあると思うんです。元山選手には、ベテラン的な落ち着きも感じますが、その気持ちが空回りすることなく噛み合うのでは? なんとなく内に秘めた強さも伝わってきます。
——昨年2019年12月1日、ムエタイオープン新宿FACE興行でルンピニージャパンとMuayThaiOpenのバンタム級王座統一戦として行われた大一番、岩浪選手が1ラウンドKO勝ちで14連勝中の猛進撃を粉砕した壱(イッセイ)・センチャイジム選手は?
本当に強い選手だと思います。自分とやった約1年前は、14連勝で調子に乗った隙を突いたところもあると思っているので、舐めることはできません。昨年の壱選手は、小笠原瑛作選手にKOで敗れ(2020年9月13日、KNOCK OUT、後楽園ホール、1ラウンドKO負け)、コロナで試合もあまりできなかったので良い年ではなかったかもしれません。けど、自分と瑛作選手に倒されたことで、これまで無謀なまでにイケイケだった部分が修正されて手堅く勝つ部分を身に着けていると見ています。その分、僕が撃ち抜いた右ストレート(※1)のような不意な一発はもらいにくくなっているでしょう。それだけに次やる時は、まったく別人と戦うつもりでいます。
——最後に現在7連勝と勢いに乗っている加藤有吾選手です。
一番警戒しています。見るからに危険な一発を持っていますが、僕が怖いのは、そこに自信を乗せているであろう点です。恐れ知らずに踏み込んでくるパンチは、プラスアルファでスピードも重さも増すものです。
——14連勝中だった壱戦では、その隙を突いたのでは?
そこは紙一重で、一歩間違えば自分が沈みます。この前、石井選手にやられて、記憶もなくなっていますが、パンチアイ(※2)じゃないかなって思う症状があって。
——それは深刻な。ここで告白してよろしいのでしょうか?
悟さん(橋本道場の同門、橋本悟)に指摘されて、自分でもそうだなって感じるところもあって、そのリハビリに頑張って、今はすっかり大丈夫です。けど、加藤選手の強打は、そのパンチアイをまた呼び起こすような威力があるかもしれません。
——こうして対戦相手候補分析をお聞きするだに、岩浪選手の真摯な慎重さにこそ強さの秘密があるような気がします。
研究して相手の悪いところもインプットしますけれど、自分はそれより最強の状態を想定します。それは怖い作業でもありながら楽しい部分も確かにあるんです。
——そればかりはトップファイターにしか味わえない特権的なマインドゲームでしょう。それとトーナメントの組合せが、前日計量終了後、出場者全員がカードを引き、1枚の当たりを引いた選手が対戦相手を指名する(4名トーナメントなので、それにより自動的に全試合決定)システムを採択しています。岩浪選手が指名権を得たら、誰と初戦を戦いますか?
あえて希望を作らないようにしています。ただ、個人的な興味で壱×加藤を見たいなとは思います。
——元山選手狙いではなく?
はい、ハズレを引いて当然。誰に指名されようとされまいと全員と戦う準備をしていますので。
——初体験のワンデイトーナメントながら初戦から肘打ちが解禁される(※3)過酷な企画です。
1日2試合することに関するスタミナの不安はまったくありません。完全決着の必要からマスト判定の延長ラウンドがひとつあるので、優勝まで2試合フルであれば4回戦が2回の8ラウンドやるわけですが、師範(橋本敏彦会長)の追い込みで、その程度なら試合が終わってもピンピンしていられる鍛え方をしていただいています。その自信があるから初めてだからの不安はないです。
——今回の試合、どこに注目してほしいですか?
全体的なスペックを上げていますが、スピード、中でも爆発的な瞬発力を集中して師範にご指導いただいています。
——数年前の岩浪選手は「負けないけれども倒せない」という強くとももどかしいところがおありでしたが、2017年8月19日、INNOVATIONバンタム級王座決定戦の若月勇磨でライフルのような一撃で103秒失神KO勝ち以来、開眼したかのような殺気を纏うようになり、壱戦でのKO劇の最中には右直打で倒して膝蹴りの追撃をしてしまい反則減点を課せられる荒々しさも見せました。次々と進化していく岩浪選手が前試合で初ダウンからのKO負けという試練を受け、そこから更なるエボリューションを予告しているわけで、その実際が放たれるZAIMAXトーナメントが楽しみでなりません。ここで完全優勝したとなれば、その先には何が見えるのでしょう?
倒されながらも最高のリングと感じたNO KICK NO LIFEには、また呼んでいただき、そこから石井戦のリマッチまで辿り着くのが理想です。それとホームであるINNOVATIONは、是非とも自分の力で盛り上げたいなと。
——キャリアのほとんどで肘打ちありの純キックボクシングを戦われてきた岩浪選手ですが、53kgトーナメント開催が噂され、55kgには那須川天心を擁するRISEは?
バンタム級(53.52kg)が苦しくなっているのでRISEさんの53kgトーナメントは意識したことはありませんが「肘なしでも岩浪悠弥が見たい」と言われるような活躍をして声をかけていただければ挑戦したい気持ちは十分にあります。石井選手がそういう域にいますよね?
——少年時代のアマから実績を重ね、まだ23歳でこの落ち着き。それでいながらまだ成長中と言われるのですから、これからが楽しみです。
はい! けど、中学卒業からすぐプロデビューでもう7年目ですし、あと10年するものではないと心得ています。だからこそ、今は生活のほとんどを格闘技に集中させて自分の可能性を見極めます。そうやって培った“気持ち”が他とは段違いだということを試合で見せつけますので、よろしくお願いいたします!
※1 撃ち抜いた右ストレート 岩浪×壱は、1ラウンド、スリーノックダウンによるKOで岩浪勝利となったが、ファーストダウンの右ストレートでほぼすべてが決したような一発だった。
※2 パンチアイ 強烈なパンチによるノックダウンの後遺症で、自分に迫りくるパンチを見るだけで身体が硬直し、無意識に目を背けてしまうなど過剰な反応をしてしまうことがある。ボクシング漫画『はじめの一歩』で取り上げられ有名になった。
※3 初戦から肘打ちが解禁される 肘打ちや首相撲無制限が通常のムエタイまたは純キックボクシングルールにおいてワンデイトーナメント企画が行われる場合、序盤で裂傷を負うことを避ける必要性から、肘打ちありは決勝戦のみとする場合が多い。
リングネーム:岩浪 悠弥
フリガナ:イワナミ・ユウヤ
所属:橋本道場/Japan Kickboxing Innovation
生年月日:1998年1月6日(23歳)
出身地;東京都青梅市
身長:170cm
戦型:オーソドックス
プロデビュー:2013年10月14日
戦績:30戦19勝(3KO)9敗2分
ステータス:INNOVATIONスーパーバンタム級王者、元INNOVATIONフライ級及びバンタム級王者、元WBCムエタイ日本フライ級王者、ルンピニースタジアムジャパン認定バンタム級王者、MuayThaiOpenバンタム級王者
Facebook:https://www.facebook.com/yuya.iwanami.3
Twitter:https://twitter.com/yuya_iwanami
Instagram:https://www.instagram.com/yuya_iwanami/
所属ジム公式サイト:https://www.hashimoto-dojo.com/
加藤有吾インタビュー
——昨年10月29日、NO KICK NO LIFE、岡山ジム名うてのハードヒッター、MASAKINGを左フック一撃で昏倒させた1ラウンド88秒のKO勝利、見事という他ありませんでした。
あ、はい、ありがとうございます。
——あれだけの鮮やかなKOと朴訥とした現在の落ち着きのギャップが激しいです。
え、あ、緊張しているので……(汗)。
——あのリング上では、派手なKOに負けず劣らずピースサインに刈り込んだ後頭部が目立ちました。あれは勝利のVサイン?
あれはですね、自分、ファッションが好きなんですけど、友達が「paynestar(ペインスター/https://paynestar.com)ってブランドを教えてくれて、そこで去年発表されたベストのデザインがカッコ良くって入れてみました。
——そのベストを愛用されている?
それが販売されていなくって、あの髪型で目立てばなんか繋がらないかなーって下心もありました(照笑)。
——なんとも可愛い下心です。
それがインスタで髪型をアップしたら、ブランドオフィシャルから「いいね!」と「So fine」ってコメントをいただきまして、すっごい嬉しくて。
——今時のお洒落好きでありながらピュアな加藤選手のキャラクターが伺えます。ラジャダムナンスタジアム王者となった伝説のキックボクサー、石井宏樹の愛弟子で、NO KICK NO LIFEのプロモーターでもあるRIKIXの小野寺力会長が伝承する目黒スタイル(※1)を受け継ぐ孫世代の加藤選手。現在、7連勝中と絶好調ですが、ここまでに至る来歴をお聞かせください。
兄弟三人で自分は真ん中です。小学生時代は1年生から6年生まで野球をやっていました。割と活発な方だったと思います。
——とても誠実な受け答えのご印象からすると真面目な学生時代?
小学生まではヤンチャだったかもしれません。その後も真面目ではなかったかも。授業は全然聞いていないし、あの頃は皆がそんなでしたから学級崩壊している感じでした。
——そんな中、加藤少年が関心を持たれていたのは?
プロレスです。
——現在、21歳の加藤選手の年代からするとオカダ・カズチカなどが華やかな新日本プロレスとか?
いえ、三沢光晴とか昔のです。
——年代がまったく違うのでは?
YouTubeでずっと見まくっていました。BEST OF THE SUPER Jr(90年代に盛り上がった新日本プロレスのトーナメント企画)が特に好きで。
——当時はK-1なども盛り上がっていたのでは?
あ、はい、魔裟斗選手やPRIDEとかも見ていました。けど、なりたかったのはプロレスラーで。
——その為に何か活動を?
アマレス部が学校になかったし、まわりにその環境もなかったので、うちの近くにあった大岡山のRIKIXに中2の2月、入門しました。
——プロレスラーの第一歩としてまずはキックボクシングを?
単なる憧れだったとは思いますが、最初、ジムの階段を下る(言中のジムは地下一階)のが恐ろしくて緊張して。
——目黒ジムの伝統を引き継ぎながらも爽やかなフィットネスも盛んで瀟洒なイメージのRIKIXですがそれでも?
近所の緑道をよく先輩方が「NO KICK NO LIFE」ってプリントされたTシャツを着て走っていて凄い威圧感だったんです。
——RIKIXの選手は、とても爽やかな方が多い気がしますが?
今思えば、田中秀弥さんや前田将貴さんで、後にとても可愛がっていただいたんですけど、当時は恐かったです。
——そんなおっかなびっくりのキックボクシングキャリアのスタートですが練習は?
最初から楽しくてしょうがなかったです。自分が入った時、石井さんがゲーオ選手と試合をする(2014年2月11日/2ラウンドKOでゲーオ勝利)1ヵ月前で、その試合が初の生観戦でしたし、その凄さにやられてキックの虜になりました。
——ということはプロ志望に?
はい、ハッキリと会長に伝えました。
——そんな加藤選手のアマ初試合は?
高1の4月だったか5月だったか、鴇さん(目黒ジムOB、鴇稔之Kick Box会長)が主催された大会で、デカくてゴツい相手でビビってしまって……。
——結果は?
ハイキックが決まって倒せたんです。嬉しかったですけど、とにかく緊張したことが記憶に残っています。
——口調から察するに今も緊張されている感がありますし、相当ナーバスなタイプ?
これでもかなりましになりました。昔は終始カチッコチで。最近、その緊張を良い方向に流せるようになって、試合では冷静さと必要な緊張を共存させることができている気がします。
——そこからプロデビュー戦は?
2016年9月25日のディファ有明、M-1です(MASA BRAVERY戦/判定勝ち)。
——M-1(※2)ということは、デビュー戦から肘打ちあり、首相撲無制限?
はい、一度だけRISEルールだったことはありますが、基本的にそれ以外のルールをやったことがありません。
——それは、小野寺会長の育成方針というかポリシーに思えます。現在、肘打ちなし、首相撲禁止または制限ありのK-1ルール系の打撃格闘技が台頭していますが、RISEなどに興味は?
とっても活気があって魅力的ですが、自分が出るかというとウーンです。
——それは肘ありへのこだわり?
それがなければ自分的にキックボクシングではないと思っています。だから、自分が活躍することでそれをメジャーに引っ張れれば。
——緊張と恐怖の感想が多い中、突然の大風呂敷に驚きました。
会長についていけば必ずできると信じています。
——話は戻って、これまでに印象的な試合は?
MAIKI FLYSKY GYM選手に挑戦したタイトルマッチ(WMC日本スーパーバンタム級タイトルマッチ、2019年12月8日、判定勝ち)です。
——やはりチャンピオンベルトの獲得はキーポイントとなりますか?
それ以上にMAIKI選手は、アマ時代に自分よりも遥か上のレベルにいた選手で、まったく敵わなかったのがプロで2戦2勝できたことは成長を実感できて嬉しかったです。
——そうやって着々と積み上げた17戦、現在7連勝、そして、ZAIMAXトーナメントという大チャンスです。
岩浪選手みたいな強い選手が参戦して、本当に大きなチャンス。それを前から「肘ありの豪華なイベントだな」って憧れていた岡山興行でいただけて感謝しています。自分はダークホースだとは思いますが、必ず優勝してみせます。
——ご自身を大穴扱いされておられますが、興行パンフレットに掲載される優勝レース予想では、岩浪選手に続いて2番人気です。
凄い強い3選手なのでとてもそんな気になれません。
——その3名の寸評をお願いします。
岩浪選手は、テクニックが巧くてやりづらそう。元山選手は、VTRで見る分には噛み合いそうな気がします。ガッツがあって気持ちが強そう。壱(イッセイ)選手は、サウスポーのムエタイスタイルだけどボクシングもできますよね。とにかく、皆、強いです。
——そして、トーナメントの組合せが、前日計量終了後、出場者全員がカードを引き、1枚の当たりを引いた選手が対戦相手を指名する(4名トーナメントなので、それにより自動的に全試合決定)システムを採択しています。加藤選手が指名権を得たら、誰と初戦を戦いますか?
選択権いりません。
——優勝する為の戦略としては重要な一手だと思いますが。
そこは会長にお任せします。全員の研究をしていますから、誰に当たろうとも勝つだけです。
——閑話休題ですが、アパレル好きで今風の若者的な感じもしながら、発言やキックに対する姿勢に失礼ながら古風というか昭和を感じます。
自分、昔のキックボクシングやムエタイが好きなんです。那須川天心選手とか速くて巧くて強いことは間違いありませんが、熱いのは会長や新妻さんたちの試合の方が上だと思います。
——目黒ジムの伝説的なファイター、新妻聡(※3)ですか?
はい、うちのジムにも教えに来てくれていています。新妻さんのハンマー松井戦が最高の試合だなって。
——インタビューをさせていただいている当方が直撃世代なので、こちらも嬉しくなってしまうセレクトです。
ムエタイもアヌワット(※4)が好きで、現代ムエタイでもロッタンとか古風な感じがするファイタータイプが好きです。格闘技ってスポーツとイコールじゃないと自分は考えています。アスリートとしてゲームを勝ち切る選手は、それはそれでいいですけど、自分はファイターとして相手を倒しにいくのみで。
——オールドスクールのキックボクシングファンが痺れる断言です。
もちろん、テクニックは大切でその追及は怠りません。その点で石井さんや会長は頂点だと信じています。これを言うのは、自分程度がおこがましいと恐縮なんですけど、その上で会長と石井さんと新妻さんを足して三で割ったキックボクサーが自分の理想です。
——小野寺力+石井宏樹+新妻聡……それが成るなら目黒ジムの伝統の権化です。
自分にとって最高に強くてカッコいいのは、そういうファイターが闘い抜く純キックボクシングで、それをこのトーナメントで体現して優勝します!
※1 目黒スタイル キックボクシングの歴史は、ボクシングの名門、野口ジムが分派した目黒ジムが1966年に創設され誕生するが、正統派キックボクシングの象徴として、ムエタイではなくボクシングとキックのコンビネーションを基調としたスタイルが長年にわたり確立され、それはいつしか“目黒スタイル”と呼ばれるようになった。小野寺力がその最高の使い手の一人だが、ジャブ、ローキックを中心としながら対角線に結ばれた連続技で相手を倒しきる美しくも激しい戦法は、まさに王道である。ちなみに目黒ジムは、目黒藤本ジムと名称を変更しながらキックボクサー第1号である藤本勲会長(2020年5月、78歳で逝去)が守り続けていいたが昨年1月に封鎖され国内最古54年の門を閉じた。
※2 M-1 在日ムエタイジムの最大手、ウィラサクレック・フェアテックスジムが2004年1月27日に旗揚げした本格的ムエタイ興行シリーズ。正式名称は「M-1ムエタイチャレンジ」。ゲーオ・フェアテックスやワンロップ・ウィラサクレックなど数々の名ファイターを生み出したが現在は活動休止中。
※3 新妻聡 目黒ジム所属、90年代のキックボクシングを代表するソウルファイター。ハンマー松井戦、ヘクター・ペーナ戦など名勝負多数だが、勝敗に関わらず見る者の魂を震わせる迫力が特徴。それ故、“肉体言語”と呼ばれ尊敬を集めている。
※4 アヌワット 2000年代、ムエタイを席巻した超ハードパンチャー、アヌワット・ゲーオサムリットは、技巧派とは対極の“強い”ムエタイの象徴として伝説になっている。小野寺力は、その全盛期只中、2005年10月29日の引退試合で、自らアヌワット戦を嘱望し、これを実現。結果、2ラウンドKO負けで壮絶に散るが、その興行こそが「NO KICK NO LIFE」シリーズの誕生だった。
加藤有吾のプロフィール
リングネーム:加藤 有吾
フリガナ:カトウ・ユウゴ
所属:RIKIX
生年月日:1999年9月2日(21歳)
出身地;東京都目黒区
身長:169cm
戦型:オーソドックス
プロデビュー:2016年9月25日
戦績:17戦14勝(6KO)3敗
ステータス:WMC日本スーパーバンタム級王者
Facebook:https://www.facebook.com/profile.php?id=100009417858210
Instagram:https://www.instagram.com/yugokb/
所属ジム公式サイト:http://rikix.com/
元山祐希インタビュー
——今回の55kgトーナメント、元山選手以外は、バンタム級(53.52kg)からスーパーバンタム級(55.34kg)で試合をしている中、フェザー級(57.15kg)からスーパーフェザー級(58.97kg)をホームとしてきたわけで、減量やコンディショニングにどうしても注目が集まります。
普段、ほとんど減量らしい減量してませんからねー(笑)。
——えっ? トーナメント出場の他3選手は「60kg近い階級から落としてくる元山選手のフィジカル」を警戒されていますよ。
通常体重が61kgとかですからねー。背丈だって164cmで高くもないし、むしろ55kgあたりを適正階級とするが普通でしょう。
——それは驚きました。何故あえて減量により少しでも優位な階級で戦おうとしなかったのでしょう?
減量キライですもん(笑)。
——直球シンプルな理由です。
僕は生まれて30年、ずっとこの調子できたので、今更“しんどいことが嫌い”主義を変えれません(笑)。
——そんな元山選手がそれでもこのトーナメント出場を決めた理由は?
——自分がどこまで強くなれるのか? それを知りたくてここまでやってきました。葵拳士郎選手のタイトルに挑戦した時(2018年7月1日/INNOVATIONスーパーフェザー級タイトルマッチ/5ラウンド判定負け)なんかは「出し切った!」って充実感が気持ち良かったけど、その一方で「もっとアレができていれば」といった物足りなさもあって、それがある限り歳がいくつになろうと強くなれるから、その限界まで自分を引っ張り上げたい。それには強い相手と厳しい舞台が必要で、このトーナメントほどの高い山が目の前に現れたら「登らなきゃ損じゃないか」って思うんです。
——格闘家、アスリートと言うより求道者の面持ちです。
だけど、その正体はものすごいダメ人間なんですよ(笑)。
——それを探る為にも来歴を教えてください。
三兄弟の長男に生まれて、親父は自営業でと鳶職人です。小さな頃は、友達と外で遊ぶのが好きでしたけど、しんどいことがイヤで、運動なんか大嫌いでした。
——それでも部活などは?
中学でサッカー部に入部しまして。
——体育会デビュー?
すぐ辞めました(笑)。
——あら。
先輩後輩の挨拶とか上下関係の強要とかやってられなくて(笑)。
——すると仲間とつるんでバイクで走りだすなどの方向には?
ワルいわけでもなかったんですよ。フツーに仲間と遊ぶ毎日。
——将来の夢は?
なし! そんな中2時代がずーっと続けばいいのにって思っていました(笑)。
——前進止まず不撓不屈を感じさせる元山選手のファイトスタイルからは連想しづらい少年時代です。
それじゃあマズいと思われちゃったんでしょうね。中3の11月、親父に武勇会今治支部に連れていかれたんです。当時、日本ランカーだった河野雄大さん(後のMA日本ライト級王者)が知り合いだったようで。
——そこから一転してキックボクサー元山選手が誕生するわけですね?
いえ、イヤイヤやらされたんで、適当にやりよって、すぐにやめました(笑)。
——それにしてもそれが近く武勇会本格入門のきっかけとなるわけですね?
いやー、そこまであと7年以上かかります(笑)。
——その間は何を?
高1の夏にバイクで事故って右足が削れるほどの大怪我を負ったんです。半年は歩けないわ、親父に借金して買った新車がオシャカだわで散々でした。そこからもう乗ることのできないバイクローンの為にバイトの毎日。なんとか完済した高3の秋、親父に迫られたんです。「高卒で働くか? 大学に進学にして遊ぶか?」って。そりゃあ人生夏休みが4年延長するようなキャンパスライフを選ぶじゃないですか(笑)。
——大学はどちらに?
大分県にある日本文理大学です。
遊んでばかりいたようで受験勉強に抜かりはなかった?
——そんなわけないじゃないですか(笑)。「普通にテスト受けて入るなんて無理ぞ」って、ラグビーをやる名目で指定校推薦をいただいて。
——部活などされていなかったのでは?
まったくしてません!
——よりによって名うてのハードスポーツ、ラグビー部にどうやったら無経験者が推薦されるのか不思議ですが、そこで元山選手の強靭なフィジカルが基礎作られた?
いや、ラグビーなんて無理でした!(笑) 今でもラグビー部の仲間で友人はいますし、試合の応援に来てくれますが、社会人選手権で全国大会出たり、ジャパンラグビートップリーグの東芝ブレイブルーパスに入団したりしてる凄いヤツらです。まー、半年は頑張ってみたんですけど、身体が違いました(笑)。
——スポーツ推薦なのに退部してしまうと大学中退しなくてはならないのでは?
それがなんとかなったんです(笑)。
——その後の大学生活は?
だらだーらのダメ人間ライフを満喫です。なんの目標もなく何も生み出さない(笑)。
——そんな元山選手が、その後、ジムに入会するのは?
大学卒業後、身体もだらけ切っていたのでダイエットしようと地元の武勇会西城支部を尋ねました。すると、河野雄大さんが支部長になられていて。
——今度は、すぐに飽きたり放り出したりしなかった?
一生分遊んだんで、もうキッチリしようと気持ちを入れ替えて。すると、心を鍛える意味でも一度は試合をしてみたくなって。それでアマの試合をしたらキャリア10戦くらいの相手だったとはいえドローだったんです。その不完全燃焼が許せなくて勝ちきるか、負けきるかまでしっかりやろうと。
——極端な反転です。
そうしたら次の試合に勝って、また勝ってと続いて、2014年、グローブ空手の大会で大倉渉選手ってRISEで小宮山夕介選手とやったり、地元(武勇会主催INNOVATION認定興行)で先輩の櫻木崇浩(元INNOVATIONフェザー級王者)さんと試合した相手にトーナメントの決勝戦で負けて物凄く悔しくて。
——グローブ空手のトーナメントにバリバリの現役プロが?
プロ・アマ制限がなかったので、出場者の半分くらいプロキックボクサーだったりしていました。
——なら、まだアマの元山選手が決勝進出しただけでも相当の成果なのでは?
そこで悔しく思えた自分がいたから「ここで終われない」って、以前からいただいていたプロデビューのお話を受けることにしました。
——それが2014年夏の武勇会興行の勝利のプロ初試合になるわけですね。プロのリングの感想は?
人前で勝って褒められる気持ち良さ、頑張ったら称えられる快感に痺れました(笑)。
——成人過ぎの競技生活開始でプロになれる運動神経の良さがあり、練習もできるのですから中高生から何らかのスポーツをしていればとっくに知っていた快感のような気もします。
遅咲きながら“見つけた!”感がハンパなかったです(笑)。
——そこからは電車道でチャンピオンなりメジャーなリングへの渇望が芽生えた?
いえー、プロキックボクサーとしての具体的な目標っていうのはないです。
——INNOVATION王座に何度も爪までかけながら?
そういった懸かものがある試合なら相手のレベルも上がれば、リングの熱もあがるから、そこで「自分がどこまで強くなれるか?」と確かめたいだけなんです。
——それが冒頭の今回のトーナメントへの参戦理由へとつながるわけですね。その志はともかく、昨年10月23日、地元、愛媛県西条市で行われたドージョーチャクリキ興行のメインでBRO.RYOに判定勝利して ICO認定インターコンチネンタルフェザー級王者となりました。
あれは全然勝ったと思ってないです。応援に来てくれた皆が喜んでくれるのは嬉しいけど。だからマイクで「地元だから勝てただけです」って言わせていただいたし、機会があれば彼とはもう一度やってもいいと思っています。
——こうしてお話を聞くうちに、ダメ人間時代の長さで心配になりながらも独自の哲学と男気を持つ元山選手の魅力がムクムクと起き上がってきました。そんな元山選手が挑むZAIMAXトーナメント、出場メンバー3名の寸評をお聞かせください。
まず、岩浪選手が強いですよね。彼の試合はずっと見ていました。何でもできる優勝候補筆頭だと思います。壱(イッセイ)選手は、僕の勝手なイメージですが、ムエタイタイプよりボクサーだと捉えています。パンチがそういう質ですよね。加藤選手、一番怖いです。身体もパンチも頑丈で、とにかく“硬い”って感じがします。一発ですべてをひっくり返す強打もあるし。
——そして、トーナメントの組合せが、前日計量終了後、出場者全員がカードを引き、1枚の当たりを引いた選手が対戦相手を指名する(4名トーナメントなので、それにより自動的に全試合決定)システムを採択しています。当たって指名権を得たら、誰と初戦を戦いますか?
加藤選手です!
——即答ですが、今さっき「一番怖い」と言われていたのでは?
だからですよ。
——なんて男らしい選択なのでしょう。
それは優勝する為の戦略でもあるんですよ。岩浪選手と初戦で当たったら、序盤でKOしない限り勝っても疲弊してボロボロになって決勝戦に上がらなくちゃなりません。加藤選手となら、勝つ時にスコンと倒せるイメージなのでダメージも少なければ波に乗ってファイナルに臨めるなって。その選択ができる確率は4分の1。まあ、そんなに上手くいくわけないのが真剣勝負の醍醐味なので、相手が誰であろうと全力を尽くすのみです。
——ここで優勝すれば、更にプロとしての展望が拓けますが、何か希望は?
舞台が大きいにこしたことはありません。岡山興行なんて毎年豪華で凄い舞台。そんなリングにメイン企画で呼んでいただいて光栄です。けど、それよりも強い奴とやりたい。自分がどこまで通じるのか確かめたいです。その為ならルールにもこだわりはありません。和製ムエタイの頂点、梅野源治選手だって(肘打ちなし、首相撲制限ありの)RISEやK-1をやったじゃないですか。まったくやったことがないMMAは流石に今から練習しませんけど、シュートボクシングまでならOKです。負けるのは嫌。けど、勝ち負けは自分の心の中にあります。そんな自己満足が満たされる勝ち方にこだわって、どこでだって力を出し切りたいです。
——好漢ここにありといった爽やかさです。
ギリギリの勝負が大好きです。そこで全力を振り絞るのが一番気持ちいい。それがあるから大嫌いな減量だって我慢するし、あんなメンバーの中に飛び込むの怖ろしいったらありゃしないけど、この感じ、ワクワク、たまりません!
リングネーム:元山 祐希
フリガナ:モトヤマ・ユウキ
所属:武勇会/JAPAN KICKBOXING INNOVATION
生年月日:1990年10月22日(30歳)
出身地;愛媛県西条市
身長:164cm
戦型:オーソドックス
プロデビュー:2014年8月31日
戦績:18戦12勝(2KO)6敗
ステータス:ICO認定インターコンチネンタルフェザー級王者、INNOVATIONスーパーバンタム級3位
Facebook:https://www.facebook.com/profile.php?id=100011326320148
Twitter:https://twitter.com/musxgbod0d1s3xp
Instagram:https://www.instagram.com/yuanshanyouxi/
所属ジム公式サイト:http://www2.plala.or.jp/hiroto/buyuukai/
壱・センチャイジム、インタビュー
——“職業・イケメン”とのキャッチコピーが打ち出され、チャラさを自ら強調する壱(イッセイ)選手には、非常な向上意欲を感じます。
チャラいのもイケメンもそのままでしかないですし、実は、今が一番モテてないくらいですよ(笑)。
——一体どれほどモテられていた?
物心ついた頃からモテてましたが、小学校低学年なんかモテすぎて女の子たちに囲まれて恐くなって泣いてたくらいですからね(笑)。
——幼少期からモテてもいたということですが、沖縄県那覇市で生まれ育った与那覇壱世(本名/ヨナハ・イッセイ)選手は、兄弟でジュニア空手の相当な強豪だったと聞いております。
空手も物心ついた頃には、すでにやってましたからね。従兄3人が習っていて、それで3才から自分もやりたがったらしくて、でも、そんなちびっ子を受け入れてくれる道場がなくて、5才になってようやく真樹道場沖縄支部に入れてもらえました。
——空手道場でもあり、キックボクシングジム(真樹ジムオキナワ)でもある名門ですね。
そのうち弟(与那覇主門)も一緒に始めて、極真系の県大会で優勝とか色々しました。空手だったらむしろ弟の方が凄かったかも。けど、どうしても好きじゃなかったらしくて、小学校卒業からすっぱりやめて、今じゃ東京に住んでるのにオレの試合の応援にも来ないくらいです。まあ、空手はオレも小学生でやめちゃいましたけど。
——それは何故?
ずっと道場通いだったのが飽きたのか、チームスポーツがしたくなって中学バスケ部(沖縄はバスケットボールが相当盛ん)に入りました。けど、すぐにスタメンになれないから退部してヤンチャ方面にいっちゃいます。
——リング上で見受けられる壱選手の屈託ない自由な様子からして、小さな頃からヤンチャで目立ちたがり屋?
それが幼稚園児の頃はハジカサー(沖縄語:恥ずかしがり屋)で人前に立って日直ができなくて泣いていたりしました。
——それがどこかで変化する?
空手です。ケンカじゃ負けようないわけで、特に小5でイジメっ子を叩いてヒーローになると目立ちたがりの自分も全開になって、モテ全盛期に突入です!(笑)
——恐いもの知らずの10代、派手なオキナワン青春を満喫といったところでしょうか。
調子に乗ってばかりいるので小中時代は、しょっちゅう髪を刈られて坊主でした(笑)。
——それでもモテる?
坊主にされるってチョイワルの証みたいなところがあって、余計モテるんですよ(笑)。
——中卒後は?
仲間と一緒にボクシングやったろうって陽明高校(浦添市のボクシング名門校)に入りました。
——成績は?
高3で県大会優勝からの高校総体ベスト8が最高位です。バンタム級(アマボクの場合、52-56kg)でした。
——高校卒業後は?
プロのジムからも誘われたし、推薦入学で大学だって行けましたけど、そこから夜の歌舞伎町でテッペン獲ろうと男仲間5人で乗り込みます。
——『新宿スワン(※1)』の世界?
詳しくは話せないですけど、ほぼそのまんまですね。新宿周辺に住み込もうってことでオレは高円寺にいました。
——那覇で遊び人だったとしても当時の歌舞伎町は驚きの世界だったのでは?
松山(那覇市の繁華街)の居酒屋でオードブルを配達するバイトをしてた時、シャレにならない喧嘩に巻き込まれることがしょっちゅうだったんで、むしろ歌舞伎町の方が治安が良いように思えました(笑)。
——そして、夜のテッペンに届くことはできましたか?
良い時はありました。けど、そっからクズに堕ちちゃいます。その当時の彼女を泣かせるだけ泣かせて、遊び続けて、金もない。大好きだった彼女に去られて我に返りました。そして、呆然としつつ、自分に残ってるものって格闘技だけじゃないかって。
——まるでドラマです。そこからジムに?
もう何年ぶりかって久しぶりに真樹道場の安里支部長(真樹ジムオキナワの安里昌明会長)に電話して、高円寺だったら近くの中野にセンチャイムエタイジムがあると紹介していただきました。
——また、独特に硬派な名門ジムに出会ったものです。近代設備が整った瀟洒なキックボクシングジムだってインターネットで選べたはずです。
いや、そこは「これで決めた!」って、安里支部長を信じるこのやり方で頭から特攻しました。下調べなし、見学なし、体験なしでセンチャイジムに突入して「プロになります!」って、最初に入会金や初期費用を払ってしまって退路を断ちました。19歳の8月に。
——尋常ならぬ意気込みが伝わります。センチャイ会長も喜ばれたのでは?
「ナニかやってたのー?」って言われて胸を張って「ボクシングをやっていました!」からの「ボクシングとムエタイはちがうからねー、シャドーしてみてくださーい」でどうだとばかりにシャドーしたら10秒もしないうちに「はーい、もーいーよー」って。いきなり鼻っ柱を叩き折られた気分でした。
——なんとも肩透かしな。
ジムあるあるで「最初からプロになるって意気込んでくる奴、だいたいすぐやめる」っての、オレ、あれだと思われてたんだろうなーって(笑)。
——その空気はずっと?
いえ、入門1週間後、突然「はーい、タカくんとスパーしてー」って、貴さんと肘ヒザありのガチスパーをすることになって。
——貴・センチャイジム(タカユキ・センチャイジム)と言えば、軽量級五冠王の強豪で、2016年7月17日、今回のトーナメントの優勝候補筆頭、岩浪悠弥選手にも勝利しています(判定2-1)。
そんなの入って1週間のチャラ男が知るわけないっすからね。肘があろうが膝だろうが、パンチでぶっ倒してやろうって気合入りましたよ!
——大体、スパーでガチの肘ヒザがあること自体、珍しいです(理由:危険すぎるので)。
肘は流石にパットを付けました(笑)。
——そして、どんな内容に。
ズッタボロボロです! 鼻はひん曲がるし!
——自慢のイケメンが?
角度によっては前より高くなったからアリですけどね(笑)。
——その後のセンチャイ会長は?
その貴さんとのスパーの後に初めて褒めてくれたんですよ。「いーショウブだったねー」って。今でも忘れません。メチャメチャ嬉しかったです!
——そんな荒っぽい歓迎を括りぬけてからここまでどんな具合に?
アマの試合はすぐに出ました。6戦6勝5KOです。
——空手とボクシングの下地があるにせよ、恐ろしいまでの快進撃です。
中国でやったアマの試合は痺れました。相手は絞った上でゴツい60kg。オレはノー減量で通常体重の58kg程度。どうしようかってオロオロしてたらセコンドの会長が「イッセイくーん、ハイキックけりなさーい」って。それで試合開始早々に上段蹴ったらばっちりダウンさせて……「この人の言う通りにすれば間違いない」って確信が芽生えた試合でした。
——そこまで凄まじいアマ戦歴を刻んでからのプロデビューは?
入門から4か月後、2017年の冬にカクタニ戦です。
——NEXTLEVEL渋谷ジムの角谷祐介選手ですか……(試合結果記録を紐解く)これ、MuayThaiOpen&ルンピニースタジアムジャパン認定スーパーフェザー級ランキング戦と銘打たれているじゃないですか?
そうなんですよ! いきなりランキング戦ですから期待されてたかなー?
——ランキング戦もですが、契約体重スーパーフェザー級(58.97kg)で?(壱の試合契約体重は現在でも55kg前後)
そうなんですよ、相手デカかったー(笑)。
——結果、判定負けではありますが、さもありなんです。
会長、タイ人なので新人の勝ち負けなんてあんま気にしないんじゃないですかね?(笑)
——壱選手もそれを傷と思ってないようですが、その後、怒涛の14連勝を記録します。
そのまま「テッペンまで一気だな」っておごり高ぶってしまいましたよ。それが昨年末、岩浪選手に倒されてから悲劇の3連敗ですからね!
——14連勝の間には、HIROYUKI選手(元日本フライ&バンタム級王者)や小嶋勇貴選手(WPMF日本バンタム級王者、ルンピニージャパン認定同級、J-NETWORK同級王者)といった強豪が含まれています。
それにしても岩浪戦のKO負けはショックでした。
——岩浪選手の研ぎ澄まされた右ショートストレートも見事でしたが、そこでマットに頭を下したところに膝蹴りの追撃が反則打(倒れた相手への打撃)として直撃する事件もありました。
あんなの普通ですよ。完敗です! その代わりですよー、ZAIMAXトーナメント決勝戦では、たっぴらかします!(沖縄スラング:ボコボコにする)
——岩浪選手も前試合(2020年10月29日)、石井一成選手に衝撃的なKO負けを喫し、リニュアル・パワーアップしての優勝を誓っています。
岩浪戦からちょうど1年くらい経つわけですよね? まー、オレ成長の速さは光なんで、もう追い越して差が開いちゃってます!
——説明不足で説得力がありません。
23年生きてきて、今が一番モテてないんですよ!
——それは何の関係が?
昨年12月に入寮したんです!
——センチャイジムの寮に?
タイ人トレーナーのコーチと同居ですよ。心機一転、毎朝走ってます!
——それは、夜の世界に生きてきた壱選手にとっては画期的なことかもしれませんが、トップファイターなら当たり前の練習です。
大切なのは意識です! 今まで連勝していた時、正直、「練習よりも酒と女」な選択だってしていました。それが真面目を絵に描いたいようになったらどんだけ爆発的に成長するか? 今、練習以外にすることと言えば、鏡を見つめることとネコタと遊ぶことだけですよ!
——ネコタ?
沖縄から連れてきたうちのニャーさんです(笑)。
——しかし、そこまで転換させたほど岩浪戦のショックは大きかったのですね?
いいや、それだけじゃないっすよ! その後、ルンピニースタジアムで負けた(2020年2月14日、判定敗)のもだけど、エイちゃんですよ!
——エイちゃん……昨年9月13日、後楽園ホール、KNOCK OUTの小笠原瑛作戦(1ラウンドKO負け)ですね?
あれにとどめを刺されました。岩浪選手は、今回、倒して優勝するからいいけど、エイちゃんだけは許しません!
——ともかく、デビュー戦で黒星からの14連勝からの3連敗で昨年12月6日に鈴木貫太戦を判定勝利で復活し勢いをつけて岡山に乗り込むわけです。ここでトーナメント参戦ほか3選手の寸評をお願いします。
岩浪選手、今、3つの勝ちパターンが見えるんです。どんなに脳内シミュレーションしても勝利しか見えない。「オレ、なんで負けたんだろ?」って(笑)。
——寸評ではありませんでしたが、次は元山祐希選手。
身長165cm以下で60kgくらいで試合してるんですからガッチリ体格のパワーだよりですよね? それは得意なタイプだわー。スピードで余裕です!
——最後に加藤有吾選手。
何度か(試合を)見ました。連打をまとめるのも巧いし、なかなかじゃないですか? 相手に合わせて戦術を変えるとか必要ない自分の確かなスタイルを持ってますね。けど、今あるオレのスキルで問題なく勝てます。岩浪選手みたいに特別な作戦はいらないなと。
——そして、トーナメントの組合せが、前日計量終了後、出場者全員がカードを引き、1枚の当たりを引いた選手が対戦相手を指名する(4名トーナメントなので、それにより自動的に全試合決定)システムを採択しています。当たって指名権を得たら、誰と初戦を戦いますか?
決勝で岩浪選手を倒して劇的なリベンジ成功アンド優勝する為には、それ以外。つまり、元山選手か加藤選手ってことですよね。そうしたら、そりゃあ岩浪×加藤で削り合っていただきましょう! オレは得意なパワフル元山選手をシュシュシュっとやっちゃいます!
——そこまで勝負を見越しておられるなら、その先もすでにご予定済みなのでは?
当然です! とにかくエイちゃん! ただ、いつどこでやっても勝てばいいってことじゃないです。恩返し。それがパワーワードです!
——恩返し?
オレの試合を組んで育ててくれたイベント、MuayThaiOpenやKNOCK OUT、REBELSに金の雨を降らせたい! エイちゃんには、KNOCK OUTでやられたんだから、KNOCK OUTのリングで最高のタイミング、そこで倒します!
——最高のタイミングとは?
この前の大晦日のRIZIN、メインの堀口恭司と朝倉海、凄かったですよね? そして、また3度目の対決がもっと盛り上がりそうなわけで、そういうのがいいですよね! それには、オレの価値をブチ上げとかなきゃならないわけで、今回のトーナメント、その重要な栄養とさせていただいて美味しくいただきます!
——ポジティブオーラのキラキラが天井知らずに舞い上がっているようです。
もうね、ガンガンいきますよ! 試合以外、YouTubeチャンネルとかもやりたいなぁ。会長いじりが許されるなら、とんでもない大爆笑の神回を連発できるんだけど、許してくれるかな……「イッセイくーん、それはダメですー」って言われたりして(笑)。
——そんな壱選手がどこまでいくのかこれからも楽しみにしています。
23才って若いようでそうでもないです。オレは、30才まで格闘技をやる気はありません。今はどこまでだって強くなれる確信しかないけど、成長が止まったことを悟ったら、その次の試合で終わります。魔裟斗さんもそうだったし、わったー(沖縄語:われらが)安室奈美恵がそうじゃないっすか。オレについてきてくれれば、それ以上のもの魅せますよ! とにかく注目してください!
※1 新宿スワン 『週刊ヤングマガジン』に連載されドラマ・映画化もされたヒット漫画。新宿歌舞伎町のスタウトマンを通して描かれる裏社会ドキュメント的作品。
リングネーム:壱・センチャイジム
フリガナ:イッセイ・センチャイジム
所属:センチャイムエタイジム
生年月日:1997年8月15日(23歳)
出身地;沖縄県那覇市
身長:172cm
戦型:サウスポー
プロデビュー:2017年11月26日
戦績:20戦15勝(7KO)4敗1分
ステータス:元ルンピニースタジアムジャパン認定バンタム級王者
Facebook:https://www.facebook.com/profile.php?id=100010730835917
Twitter:https://twitter.com/ikemensugi3150
Instagram:https://www.instagram.com/issei_saenchai_gym/
所属ジム公式サイト:http://www.saenchai-gym.com/
対戦カード
岡山ZAIMAX MUAYTHAI 55kg賞金トーナメント準決勝(第3・4試合)、決勝(第10試合) 3分3R(延長1R)
壱・センチャイジム(センチャイムエタイジム/元ルンピニー日本(LPNJ)バンタム級王者)
岩浪悠弥(橋本道場/INNOVATIONスーパーバンタム級王者・元同バンタム級&フライ級王者、ルンピニー日本(LPNJ)&ムエタイオープン・バンタム級王者、元WBCムエタイ日本統一フライ級王者)
加藤有吾(RIKIX/WMC日本スーパーバンタム級王者)
元山祐希(武勇会/INNOVATIONスーパーバンタム級3位、国際チャクリキ協会(ICO)インターコンチネンタル・フェザー級王者)
※優勝賞金30万円、KO賞3万円。組合せは前日計量終了後に抽選で決定
第9試合 INNOVATIONバンタム級王座決定戦 3分5R
白幡裕星(橋本道場/INNOVATIONスーパーバンタム級4位、MuaythaiOpenスーパーフライ級王者)
平松 侑(岡山ジム/INNOVATIONフライ級8位)
第8試合 INNOVATIONスーパーウェルター級王座認定試合 3分5R(延長1R)
吉田英司(クロスポイント吉祥寺/INNOVATIONスーパーウェルター級2位、REBELS-RED同級王者)
喜多村誠(ホライズン・キックボクシングジム/元新日本ミドル級王者)
※吉田が勝利した場合のみ王者として認定される。
第7試合 54kg契約 3分3R
HIROYUKI(RIKIX/元新日本フライ級&バンタム級王者)
MASAKING(岡山ジム/INNOVATIONスーパーバンタム級8位)
第6試合 ライト級 3分3R
紀州のマルちゃん(武勇会/INNOVATION 5位)
翔貴(岡山ジム/INNOVATION 8位、元LPNJ(ルンピニー日本)フェザー級王者)
第5試合 75kg契約(肘無し) 3分3R
RYOTA(一神會館)
馬木樹里(岡山ジム)
第2試合 53kg契約(肘無し) 2分3R
黒田直也(ハーデスワークアウトジム)
平松 弥[わたる](岡山ジム)
第1試合 INNOVATIONフライ級新人王トーナメント一回戦(肘無し) 2分3R(延長1R)
琉聖(井上道場)
風太(岡山ジム)
概要
大会名 JAPAN KICKBOXING INNOVATION 認定 第7回岡山ジム主催興行
日時 2021年1月17日(日) 12:30開場 13:30開始予定
会場 コンベックス岡山・大展示場(岡山市北区大内田675番地)
チケット料金 全席指定8,000円(指定席が埋まり次第、立見)
チケット販売 岡山ジム、出場各ジム各選手
お問い合わせ 岡山ジム 086-441-5563 http://kick-innovation.com