QUINTET 7.16 大田区総合体育館:エディ・ブラボー率いる10th Planetが優勝。桜庭チームのハイサム・リダ、4本奪取の大活躍
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QUINTET.2 -Grappling Team Survival Match-
2018年7月16日(月/祝)大田区総合体育館
レポート&写真:井原芳徳
桜庭和志による新しいチーム対抗グラップリング大会「QUINTET」。4月の両国国技館での旗揚げ大会・QUINTET.1では世界のグラップリングシーンで活躍するダン・ストラウス、グレイグ・ジョーンズ、マーチン・ヘルド擁するTEAM POLARISが優勝した。6月9日のディファ有明でのQUINTET FIGHT NIGHTは日本人の軽量級中心の大会だったが、今回はいわゆるナンバーシリーズで、第1回同様、チーム5人の総体重は430kg、中~重量級主体、国際色豊かな顔ぶれとなった。
ルールは記事最後のQUINTETルール概要参照。主な特徴は、打撃技無し・絞め技と関節技のみのグラップリングルールによる、5対5のチーム同士による勝ち抜き戦。4チームが参加し、1日で一回戦と決勝が行われる。試合場はレスリングマット。1試合8分一本勝負(20kg以上の体重差のある場合は4分)。
グラップリング競技やブラジリアン柔術に馴染みの薄いMMAファンを意識し、一本決着を促すルールとなっており、膠着を誘発するクローズドガードは禁止。柔術のような判定やポジショニング等のポイント差による決着は無く、引き分けの場合は両者が退場し次の選手が登場する。なお、1回戦を勝ち上がったチームは、決勝戦では1回戦で戦わなかった選手から優先的にオーダーを組まなくてはならない。
一回戦 1st Match
×TEAM TIGER MUAY THAI クリストフ・ヴァンダイク(ベルギー)、タレック・スレイマン(シリア)、バイキング・ウォン(香港)、アレックス・シルド(米国)、スチュアート・クーパー(英国)
○TEAM Reebok ユン・ドンシク(韓国)、所英男、ハイサム・リダ(ガーナ)、桜庭和志、中村大介
桜庭率いるReebokは所、中村、ユンと、これまでの大会にも出ている旧縁の選手たち主体。出場予定だったジョシュ・バーネットの穴を埋める役割となるリダは、6月のQUINTET FIGHT NIGHTで優勝したCARPE DIEMに所属する196cm、95kgのガーナ出身の24歳。今大会にも協力しているJBJJF(日本ブラジリアン柔術連盟)の全日本選手権アダルト茶帯ウルトラヘビー級で昨年優勝している。
対するタイガームエタイはタイのプーケットにあるジム。ムエタイに限らずMMA、柔術の練習環境も充実している。ジムの柔術ヘッドコーチを務める、柔術ヨーロッパ選手権3位の実績のあるスチュアート・クーパーがリーダーだ。
(1) △ヴァンダイク(時間切れ)ユン△
桜庭の元同門のユン・ドンシクが桜庭のチームの先鋒に登場。下になる展開が繰り返されるが、ユンも倒され際にアームロックをカウンターで仕掛けたり、リバーサルを決め、場内を沸かせる。終盤、お互い疲れて来たところでヴァンダイクがギロチンを仕掛けるが、ユンは抜いて時間切れとなった。
(2) △スレイマン(時間切れ)所△
20kg差があるため、試合は4分。体格で勝るスレイマンに、下から腕十字や足関を果敢に狙い観客を楽しませるが、スレイマンがパワーとリーチで潰し続ける。膠着を誘発したとしてスレイマンに指導1が入りスタンドに戻った後、スレイマンが足関や、バックからの裸絞め狙いで一気に攻め込むが、所がしのぎ切り時間切れとなった。
(3) ×ウォン(0’23” アンクルロック) リダ○
ウォンが頭髪への塗布物があり、その除去のため時間が使われ指導1。試合が始まると、ウォンが寝ころんで足関を取りに行くが、リダが立ったままカウンターでアンクルを極めタップを奪った。
(4) ×シルド(0’34” 膝十字固め)リダ○
時間は4分。リダが相手の手をつかみながら寝ころび、最初から足関を取りに行き、シルドが防御するが、リダは最初に狙った足とは違う足に狙いをすかさず切り替え、膝十字を極めてタップを奪った。
(5) ×クーパー(3’20” 裸絞め)リダ○
序盤、先にリダが下になり、両者膠着し、注意が入る。今度はクーパーが下になるが、リダがパスして素早く背後に回り込み、ガッチリとバックマウントで捕獲。フェイスロックで苦しめ、アゴが上がったところで裸絞めに移行しタップアウト。リダが一人で3人抜きし、チームに勝利をもたらすと、桜庭らチームメイトも大喜びした。
一回戦 2nd Match
○TEAM 10th Planet PJバーチ(米国)、リッチー・ブギーマン・マルティネス(米国)、ジオ・マルティネス(米国)、アミール・アラム(米国)、アダム・サックノフ(米国)
×TEAM VAGABOND クリシェック・スチョラスキー(ポーランド)、ジョアオ・アシス(ブラジル)、石井慧、アンドレイ・カズショナク(ベラルーシ)、ミカエル・ドピッツ(ジョージア)
今大会本命が、ラバー・ガードの発明者として知られるエディ・ブラボー氏(上写真右端)推薦の柔術黒帯選手が集まる10thプラネット。ブラボー氏がチームのナンバー1だというジオ・マルティネス、兄のリッチーら精鋭を集めた。
対するは第1回大会にも出場した石井が、世界各地の修行先で出会ったグラップラーを集めたチーム。2013年の世界サブミッション選手権(通称アブダビコンバット)99kg以下級優勝のジョアオ・アシス(ブラジル)が比較的注目されていた。東欧のサンビストも個性を発揮し、大将同士の戦いも引き分けまでもつれ込んだが、10th Planetが総合力の差で勝ち残ることに。
(1) △バーチ(時間切れ)スチョラスキー△
序盤こそ劣勢だったスチョラスキーだったが、バックマウントからの裸絞め、マウントからの肩固めでバーチを追い詰める。だが膠着するとブレイクがかかり両者に指導が入る。再開後がバーチが腕十字、アームロックで挽回。終盤は両者とも足関を狙うが、時間切れとなった。
(2) △リッチー(時間切れ)アシス△
開始すぐからリッチーが、ブラボー氏直伝のラバーガードから果敢に関節技を仕掛けアシスを追い詰める。アシスも足関を狙うがリッチーは防御。残り1分、両者膠着し指導が入る。結局お互い極められず終わった。
(3) △ジオ(時間切れ)石井△
20kg以上差のため4分。リッチーの弟・ジオが下から展開を作ろうとするが、石井はパワー差を活かして潰し、サイドでガッチリ押さえ、アームロックを仕掛けジオを追い詰める。ジオはタップしそうになる場面もあったが、耐えしのぎ時間切れに持ち込んだ。
(4) ×アラム(0’56” 膝十字固め) カズショナク○
カズショナクがビクトル投げからの膝十字という、サンボの伝統的なスキルで秒殺。サンボ世界選手権優勝のスキルをいかんなく発揮。抜擢した石井も大喜びした
(5) ○サックノフ(2’44” 裸絞め)カズショナク×
カズショナクが開始すぐからアキレス腱固めを仕掛けるが、サックノフは防御し、上体を上げてカズショナクの背後に回りこみ、バックマウントから裸絞めを極めてタップを奪った。
(6) △サックノフ(時間切れ)ドピッツ△
試合時間は4分。体格で勝るサックノフが終始攻めこみ、背後から裸絞めを狙い続けるが、ドピッツが耐えきった。
大将同士が敗れたため、規定により、大将の指導数が比較され、同数。チームトータルの指導も同数。審判3人の旗判定となり、3者ともトータルで主導権を握る時間の長かった10th Planetを支持した。
決勝
×TEAM Reebok 中村大介、桜庭和志、ハイサム・リダ(ガーナ)、所英男、ユン・ドンシク(韓国)
○TEAM 10th Planet PJバーチ(米国)、リッチー・ブギーマン・マルティネス(米国)、ジオ・マルティネス(米国)、アミール・アラム(米国)、アダム・サックノフ(米国)
(1) △中村(時間切れ)バーチ△
一回戦に出ていない中村、桜庭が先に出場しないといけない規約で、中村が登場。開始すぐからバーチの素早い動きに捕まり、バックマウントから裸絞めを狙われる。だが中村もMMAで多くの選手を仕留めて来たアームロックにつかまえ反撃する。膠着ブレイクで両者に指導。再開後、またもバーチが背後から裸絞め、腕十字を狙う。終盤、バーチが相手のお株を奪うようなアームロックで追い詰めるが、中村が逃げ切り、両者脱落に持ち込んだ。
(2) ×桜庭(5’24” ダースチョーク)リッチー○
桜庭が最初からサイドを取りアームロックを狙うが、リッチーも足関で挽回。膠着ブレイク後、リッチーにだけ指導が入る。桜庭も足関を狙うがリッチーはサムアップして平気だとアピール。ハーフガードからダースチョークを極めタップを奪った。
(3) ○ハイサム(1’23” 腕ひしぎ十字固め)リッチー×
一回戦で3人抜きしたハイサムが登場すると、場内は大歓声。既にこの日10分以上戦い疲れた様子のリッチーが、座って下から攻めようとするが、まだ元気なハイサムはパスガードし、いったん上四方に回り、逆サイドに動き、素早い動きで翻弄してから腕十字を極めタップを奪った。
(4) ×ハイサム(0’45” フロントチョーク)ジオ○
試合は4分。リッチーの弟・ジオが足関を狙ってチャンスを作るが、ハイサムが脱出すると、立ち上がり際にジオがギロチンを仕掛け、マウントから搾り上げタップを奪取。ジオが30kgもの体格差を跳ね除け、兄・リッチーの敵討ちを果たすと、場内は大歓声に包まれた。
(5) △所(時間切れ)ジオ△
ジオが足関、ギロチンを果敢に狙い、所は守勢が続く。所が立ち際にジオは追いかけ、バックマウントで捕獲し、裸絞めを狙う。だが所が脱出すると大歓声が起こる。次第にジオの疲れが目立つようになり、寝ころぶ場面が増えるが、所も上からパスガードできず、なかなかチャンスに持ち込めない。所が残り30秒に足関を狙うが極められず、両者脱落となった。
(6) ×ユン(1’43” 裸絞め)アラム○
アラムは一回戦でカズショナクに右膝を極められ、直後は足を引きずっていたが、決勝で登場するとそれを感じさせない足取りで、最初から柔術式のポジショニングで圧倒し、バックマウントで捕獲し、裸絞めを極めタップアウト。桜庭陣営の大将・ユンを即効で仕留め、チームに優勝をもたらした。総合力で勝る10th Planetが下馬評通り優勝。ブラボー氏のずっと途切れない細かいアドバイスも、選手たちには心強かったのではないだろうか。
なお、大会冒頭にはブラボー氏、AbemaTVの中継の解説者の中井祐樹氏によるラバーガード、ジャバニーズ・ネクタイ等フロントチョーク系の技の技術解説が15分ほど行われた。これまでの大会同様、一本決着の直後にはスロー映像と共に、なぜ極まったかを中井氏が解説する音声も流れ、グラップリングにまだ馴染みの薄いファン層にもわかりやすく伝える工夫が随所に盛り込まれている。
さらに実践者向けにも、9月23日に東京都墨田区総合体育館において、JBJJFとの共催で「Amateur QUINTET.1」を開催。QUINTETはUFCファイトパス、Huluでも世界中に配信されており、10月にラスベガス、12月にロンドンでの大会が開催され、競技の裾野を広げる取り組みが今後は続く。4月の両国国技館は観衆4039人、今回は1850人(いずれも主催者発表)と、動員的にはまだ苦戦が続いているが、AbemaTVの無料中継の効果で、大会自体の認知度は今回のQUINTET.2でさらに上がった印象だ。チーム編成や出場メンバーの工夫次第で化ける可能性を秘めており、“IQレスラー”桜庭和志が、プロデューサーとしての“IQ”をどう発揮していくか注目していきたい。
QUINTETルール概要
◆禁止行為(重大な反則=失格負け)
ヒールフック
スラム及びスパイキング(頭部に直接ダメージを与えるような攻撃)
ネッククランク(頸椎のみをねじる行為)
かに挟みによるテイクダウン(スタンド)
ジャンピングクローズドガード
◆違反行為(軽微な反則=指導)
膠着を誘発するクローズドガード
ポジションをキープするだけで攻撃の意図が見られない場合
スタンドでテイクダウンを狙わずディフェンシブに動き回る行為
故意に対戦相手を試合場から転落させようとする行為
故意に試合場から逃避する行為
主審及び2名の副審全員が消極的と判断した場合
噛み付き、歯を押しつける
頭髪、体毛、鼻、耳を掴む
性器または目への攻撃または圧迫
一度に3本以下の指を掴む
意図的なあらゆる種類の外傷的打撃(パンチ、肘、膝、頭突き、キックなど)
対戦相手に触れていない状態で座る行為
「指導」を受けた選手は試合場中央で四つ這いになり、対戦相手は上から腰に両掌を置いた状態で、審判の合図により試合を再開する(レスリングのパーテールポジション)
両者「指導」の場合は試合場中央でスタンドの状態から試合を再開する
「指導」3回で「失格負け」
違反行為により、相手に相当のダメージを与えたと審判が判断した場合は、1回で「失格負け」になる場合がある
◆禁止事項
シューズの着用
ファウルカップの着用
クリーム、オイル、ジェル、または滑りやすい物質を身体に塗る
指輪やネックレス、ピアスなどの貴金属類の着用
◆試合時間
8分一本勝負(体重差が20kg以上ある場合は4分一本勝負)
◆勝敗の決着
サブミッション
失神
失格(指導3回)
試合時間内に上記の決着が付かない場合は引き分け
判定(大将同士の試合のみ)「指導」の数の少ない方が勝利。数が同じ場合はチーム全体の「指導」の数が少ない方が勝利。それも同じ場合は大将同士の試合の優劣を審判の旗判定により決定。
◆試合場
12メートル四方のレスリングマット。場内場外のエリアは設けず、試合場から転落しそうな場合は審判の判断により試合を中断し、安全な位置から両者同じ態勢のまま試合を再開する。
◆「勝ち抜き」システム=Winner stays on
勝者は対戦チームの次の相手と闘う
引き分けは両者退場
大将が負けたチームが負け
◆1dayトーナメントシステム
1回戦を勝ち上がったチームは、決勝戦では1回戦で戦わなかった選手から優先的にオーダーを組まなくてはならない。