ムエタイ 6.15 ルンピニー:大崎一貴、ルンピニー王座初挑戦は大差の判定負け
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格闘技医学会
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スック・ギャットペット
2018年6月15日(金)タイ・バンコク・ルンピニースタジアム
Photo & Text 早田寛 Hiroshi Soda
ルンピニースタジアム認定フライ級タイトルマッチ 3分5R
○キアオ・パランチャイ [Kiew Paranchai] (タイ/王者)
×オーサキ・オオイシジム [大崎一貴(かずき)](OISHI GYM/挑戦者、ルンピニー日本(LPNJ)&WMC日本王者)
判定3-0 (49-47/49-46/50-47)
※キアオが防衛
大崎一貴がルンピニーフライ級タイトルマッチに挑んだ。大崎は、これまでルンピニースタジアムで8連続KO勝利中だったことやルンピニー日本(LPNJ)の推薦などもあり、今回のタイトル挑戦が実現した。
対戦相手のキアオ・パランチャイジムは今年5月に、それまで14連勝中だったコムペット・シットサラワットスアからルンピニーフライ級王座を奪ったばかり。現在ルンピニー王座の他にタイ国フライ級王座も保持する。今回はルンピニーフライ級の初防衛戦で大崎を迎え撃つ。
試合は初回、大崎は前に出ながら左フックとローキックで流れを掴んだ。キアオは下がりながら時おりミドルやハイキックを返すが、大崎はさらに距離を詰めると、得意の左ボディーフックを連射しバックキックへつなぐ。このバックキックが、キアオの腹に鋭く刺さる。キアオは不意に一撃を食らい一瞬ガードが下がる。キアオとしては普段闘ってきたタイ人選手に、初回からバックキックを喰らう事などなかっただろうから、相当焦っただろう。大崎はさらに距離を詰め、効いてる(?)であろう脇腹に左ボディーフックを叩き込む。大崎の回転の速いパンチは続く。今度は顔面に右ストレートをヒットさせ、さらに二度目のバックキックを当てた。このバックキックが、2発ともしっかりと急所を捉えていただけに、キアオ陣営は相当なプレッシャーを感じたに違いない。
2ラウンド、開始ゴングと同時に大崎はバックキックを放ち、これがヒット。するとキアオはこれ以上、大崎と離れた距離で打ち合うのは危険と感じたのだろう。テンカオ(膝蹴り)から距離を詰め組んだ間合いに持ち込んだ。大崎はキアオのテンカオに左フックを合わせるが、これを凌いだキアオは徹底して組んできた。キアオは初回ほど大崎をパンチを食らわなかったものの、体力の消耗は相当なものだっただろう。キアオ陣営は「大崎の首を組んで振り回せ!」と激を飛ばした。
3ラウンド、大崎はパンチを振って前に出るが、キアオはすかさず組んできた。大崎のパンチは時おりキアオの顔面や脇腹にヒットするも、キアオはミドルキックを決めてから素早く距離を詰め組んでくる。大崎はキアオの細かい膝でダメージを負う事はなかったが、それでも判定になれば確実に不利となってゆくだろう。大崎も膝を返すが、組んだ状態ではキアオが有利な体勢となってゆく。
4ラウンド、大崎はパンチを当てるかバックキックでKO勝ちしなければルンピニー王座奪取は無いだろうという状況だ。大崎は度々大きなパンチを振るが、すぐに組まれ細かい膝を食らう。このラウンドは組まれている時間が長かったため、キアオ有利の声が高まり場内の賭けも終了してしまう。
最終ラウンドも、キアオは組みに徹し大崎のパンチ攻撃を凌ぐ。大崎としては、もう少し自分の打撃技に繋ぎたかっただろうが、キアオの勝ち逃げ作戦に捕まってしまう。両者は終了ゴングを聞き、ジャッジ判定は3者ともキアオを勝者とした。
今回は負けた大崎だが、大崎のパンチやバックキックが決まる度にルンピニー王者のガードも下がり、“これは、ひょっとしたら奇跡が起こるのか!”という期待を持たせたほどのものであった。
キアオが所属するパランチャイジム陣営は「防衛戦の相手が日本人となった事で、勝って当たり前と思われているから、ジム中みんな凄いプレッシャーだった」といった言葉を残した。そして何より無事に王座防衛を果たしたキアオ自身が、試合後ずっと放心状態な様な表情を見せていた。5ラウンドの間、大崎の重いパンチを食らい続け記憶が飛んでいた様でもあった。
そしてしばらく時間が経ってからキアオの方から「大崎に挨拶がしたい」と言い、大崎の控室を訪れ両者は健闘を称え合った。今後KNOCK OUTへの参戦が決まっているが、タイの関係者らに忘れられないうちに、またタイのリングで闘ってほしいものだ。