RISE 10.17 後楽園ホール:小林愛三から小林愛実へ 不世出の女子キックボクサーが選ぼうとしている第2の人生(文:布施鋼治)

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RISE 202(10月17日(日)後楽園ホール)での引退式を控える、元RISE QUEENフライ級王者 小林愛三の最新インタビューを織り交ぜたコラム記事がRISEクリエーションから届いた。引退発表時の記事はこちら。
小林愛三引退コラム
小林愛三から小林愛実へ。 不世出の女子キックボクサーが選ぼうとしている第2の人生
文:布施鋼治
久しぶりに会う彼女はすっかり優しい顔つきになっていた。
「最近よくそう言われます。(試合から離れた)最初の頃は運動もなかなかできなかったので、太ったりしていました。いまはやっと走ったりして、少しは元の状態に戻れたかなと思います」
初代RISE QUEENフライ級王者の小林愛三から本名の小林愛実へ。
正確にいえば10月17日の引退セレモニーを迎えるまでは「小林愛三」のはずだが、目の前にいるのは紛れもなく小林愛実だった。
「この間、姪っ子からいきなり″愛三″と呼ばれたんです。今までそんなふうに呼ばれたことはなかったのに。その子からの手紙にも愛三と書いてくれたりして衝撃でした。『まだ愛三っているんだな』と実感しました」
このリングネームは長年チーフトレーナーを務めた牧裕三氏の名前の一文字を譲り受ける形で名付けられたものだ。ただ、のちに判明したことだが、このリングネームにはもうひとつ深い意味が含まれていた。
「兄弟はみな東京出身なんですけど、わたしだけ母方の祖父母が住む愛知県豊川市で生まれたんですよ。東海三県は愛三岐(あいさんぎ)と呼ばれていると聞き、何か縁があると思いました」
最後のリングはRISE 189(2025年6月29日・ 後楽園ホール)で組まれた王者テッサ・デ・コム(オランダ)に挑戦したRISE QUEENフライ級タイトルマッチだった。結果は5R判定負け。テッサとは過去2戦2敗という戦績だったので必勝を期した一戦だったが、その願いは叶わなかった。
小林は「その試合映像をしっかり見返したかといえば、そんなに見返せていない」と話す。「しっかりと試合を振り返り、『あのときどうするべきだったか?』と反省したり、自分の感情と実際外から見た動きをリンクさせたりはしました。自分の目で外から見た評価をいえば、『もっとできたんじゃないか?』という気持ちも少なからずあります。でも、すごく万全な状態で試合に臨めた日だったんです。自分がやりたいスタイルを決め、それを実行する日でした」
試合が思わぬ方向に進んでいったのは、1R中盤過ぎ、テッサの左ハイキックが小林の左まぶたを捉え、時間が経つにつれその周辺が腫れ始めたことがきっかけだった。
2R以降、テッサは遠い距離を保ちながら強烈な左のミドルやストレート、さらにはハイを繰り出し、小林の左目周辺をさらに腫らしていく。小林は必死に前に出てパンチをヒットさせようとするが、王者の巧みなステップと手数と前に思うように試合を進ませることができなかった。
そんな試合展開を小林は振り返る。
「結果として自分の力をすごく出せたかといえば、そうではなかったですけど、いまはやり切ったなと思っています」
テッサとの初対決や再戦のときと比べても、そういう思いが強かった?
「気持ちの面で出し切ったという思いが強かったですね。でも最初のラウンドでもらったハイキックなど、想定外の攻撃もありました。『ああいう攻撃をもらっていなかったら、その後の試合展開はどうなっていたのか』と考えることはありました」
通算戦績は33戦20勝(3KO)9敗4分。特筆すべきは5回戦をフルで闘った多さで、実に8回も5ラウンドを闘い抜いている。キャリア前半をムエタイやヒジ・ヒザありのキックで闘っていたせいもあるが、少なくともワンキャッチワンアタックのルールを主戦場にしてきた女子の中では突出した回数ではないか。
その件を確認すると、小林は「そういう目線で見ていただいたのは初めて」と驚きの表情を見せた。「まわりからいただく言葉で多いのは『最後まで諦めないで闘う姿に心を打たれた』というものです。仮に倒せなかったり負けてしまった試合でも、『愛三は最後までずっと諦めていなかったよね』と言ってもらうことが多かった。振り返ってみると、自分でもそうだったかなと思うところもある」
5回戦で最も好きなラウンドは?
「5ラウンド目です。自分の理性が働かなくなって、自分の本能が出るラウンドだと思うからです。だから想像すらできなかったことができたり、今まで積み重ねてきたものが出たりする。その瞬間は他のラウンドと同じ一瞬でも濃い一瞬だと思いますね」
テッサとの3度目の闘いを終え、引退を発表するまで1年以上の月日を要した。それはそうだろう。「もう一丁!」という前向きな気持ちと「ここが限界」という思いが激しく交錯していたのだから。
その後、後者の方に気持ちが傾いていったのは、それなりの理由があった。「いつもだったら、試合を終えた直後に『やってやるぞ』という気持ちが湧き出てくるけど、今回はそういう炎がシュンとなってしまったような感じだったんですよ」
もちろん、すぐ諦めたりはしなかった。小林は「もう一度、炎をつけるためにはどうしたらいいか」と自分に問い続け、その場で思いを紙に記したりした。
「私は本能や直感で動くタイプ。試合も私生活も全部そうなので、ちょっと難しかった。『どうしたら、もう一回選手として頑張れるのか』と思っても、なかなかそういう気持ちになれない。だから(結論を出すまで)時間をかけようと思ったんですよ」
所属するNEXT LEVEL渋谷の成田保裕代表やトレーナーのグレイシャア亜紀とも根を詰め話し合った。「もともとやっていた『49㎏級に階級を下げたらどうか?』という提案もしてくださいました。それも一度受け止め、自分の向き合った末に、すいませんという形になりました。時間をかけ、今回の結論にたどり着いたことになります」
先日、小林は長野県に足を運んだ。第二の人生の足がかりを掴むため、『しっかり稼げる農業』を旗印にあげる会社に「体験させてもらえませんか」と直談判し、1週間ほどレタス栽培に従事したというのだ。
「そこは日本で有名な飲食店にも野菜を卸している会社でした。体力的には大変でしたけど、太陽の下で自然と対話しながらの作業は楽しかったですね」
それにしても、なぜ農業を?
「実はキックを始める前から農業に携わりたいと思っていたんです。母方の祖父母が農家をしていて、季節の野菜やお米を作っていました。その姿を見て、憧れがありました。自分が80歳まで生きるとしたら、田んぼの中で自転車をこいでいるようなおばあちゃんになりたい(微笑)」
以前から小林は人間の口に入る食べ物について人一倍興味を抱いていたことも大きい。「人のお腹に入るのは食べ物で、いいものが入ってくれれば元気いっぱい健康に過ごせる。そういう食べ物を生み出せる農家さんはすごいと思っていました」
10代の頃から農業に興味を抱いていたにもかかわらず、キックと向き合ったのは「いま農業をやらなくても」という気持ちが頭をもたげたからだった。ちょうど20歳のときの選択は正解だった。女子キックは愛三を中心に回っていた時期もあったのだから。
現在小林は30歳、ちょうどキャリア10年というキリのいいところで現役生活に終止符を打つ。「いま自分がやりたいことに向き合ってみて、農業の方に少しずつシフトしていこうと思いました」
四角いリングでスポットライトを浴びるキックボクサーから陽の光を浴びる農業女子へ。すぐ転向するわけではないが、着々と準備は整えている。近い将来、小林愛実は充実した笑顔とともに田んぼの中を自転車で走っているのだろうか。
対戦カード
第11試合 第7代RISEフェザー級(57.5kg)王座決定戦 3分5R(延長1R)
大森隆之介(EX ARES/1位、バンタム級(55kg)1位)
中嶋愛樹斗(OISHI GYM/2位、元DEEP☆KICK -55kg王者)
第10試合 RISE QUEENフライ級(52kg)タイトルマッチ 3分5R(延長1R)
テッサ・デ・コム[Tessa De Kom](オランダ/ファイトチーム・フラールディンゲン/王者、Enfusion&IFP世界ストロー級(52kg)王者、ICO K-1 世界53kg級王者)※4度目の防衛戦
YAYAウィラサクレック(ウィラサクレック・フェアテックス幕張/2位、元J-GIRLSスーパーフライ級王者)
第9試合 ミドル級(70kg) 3分3R(延長1R)
髙木覚清(RIKIX/3位、Bigbangミドル級王者)
宮城寛克(赤雲會/5位)
第8試合 ウェルター級(67.5kg) 3分3R(延長1R)
琉樺[るか](タイガームエタイ/LA GYM JAPAN/8位)
惺也[せいや](OISHI GYM/9位)
~初代RISE QUEENフライ級王者・小林愛三 引退セレモニー~
第7試合 バンタム級(55kg) 3分3R(延長1R)
松下武蔵(フリー/10位)
福井萌矢[ともや](建武館/11位)
第6試合 スーパーフェザー級(60kg) 3分3R(延長1R)
SEIDO(LARA TOKYO/10位)
岩城悠介(RIKIX/元WPMF世界スーパーフェザー級王者)
第5試合 スーパーフライ級(53kg) 3分3R(延長1R)
酒寄珠璃(XAP/スーパーフライ級8位)
正木翔夢(OISHI GYM/フライ級6位)
第4試合 オープンフィンガーグローブマッチ 62.5kg契約 3分3R
金ちゃん(K style)
寺坂哲伸(TEAM TEPPEN)
第3試合 フライ級(51.5kg) 3分3R
谷田貝海吏(CYCLONE GYM)
河野文太(直心会)
第2試合 フライ級(51.5kg) 3分3R
王希(EX ARES)
天翔人(TARGET SHIBUYA)
第1試合 フェザー級(57.5kg) 3分3R
加古大晴(team Bonds)
各務壮祐(XAP)
概要
大会名 RISE 202
日時 2026年10月17日(土)開場・17:00 開始・17:15
会場 後楽園ホール
中継 ABEMA
チケット料金 VIP席 40,000円 SRS席 20,000円 RS席 10,000円 S席 8,000円 レディースシート 8,000円 A席 6,000円 小中高生シート 2,000円(当日のみ) ※未就学児は保護者膝上に限り無料
チケット販売 LINEチケット イープラス チケットぴあ
お問い合わせ RISEクリエーション 03-5980-7409 https://www.rise-rc.com/







