99･8･1 PANCRASE 1999 BREAKTHROUGH TOUR GAORA NEO BLOOD TOURNAMENT DAY&NIGHT 後楽園ホール メイン・イベント トーナメント決勝 15分1本勝負 ○ 　 美濃輪育久 　 2分57秒 チョークスリーパー × 　 豊永稔 　 　美濃輪がトーナメント優勝 　 　１８０センチ・８７キロの豊永稔。１７５センチ・８２キロの美濃輪育久。身長体重共に優位にある豊永。しかしここまでハードな闘いをしてきたのも、どちらかと言えば豊永。逆に美濃輪は、実力で自分の身体を守ってきたわけである。トーナメントも決勝まで来ると、けっして対戦者同士はイーブンの条件ではない。だがそのハンディが、逆にメンタルな粘りを生むことはよくある。ただでさえ粘って粘って勝ち上がってきた豊永だ。最後までこのトーナメントは分らない。 　 ゴングの後、最初に出たのは豊永の左ミドルだ。続く掌底の打ち合い、美濃輪の左・右のワンツー。それに応える豊永・・・しかし美濃輪はここでタックルっ！尻の下を両腕でしっかり刈って、豊永の脇にピッタリと頭をつける完璧なタックル。これを可能にしているのは、美濃輪の本気の打撃である。美濃輪の掌底がフェイクなら、豊永も本気では返さない。もらったらタダでは済まない掌底だからこそ、豊永も必死に返すのだ。打撃に腰を入れてしまうのだ。そこに美濃輪はタックルをかますのだ。つまりここでの美濃輪の武器は、打撃からタックルに素早いモードチェンジを可能にする足腰と、安定した上体ということになる。けっして見た目から思うような力に任せて、押し倒しているのではない。 　 倒して美濃輪はハーフ・マウント。ガードを取りたい豊永の足が絡んでくる。その足を美濃輪は振りながら追い抜き、ニー・イン・ザ・ベリーで一呼吸置いてからサイドポジションを取る。さらに豊永の頭の上を回って反対側にポジションを移すと、豊永は小さな隙間を利用して亀になる。相手の下になるより亀を選ぶのは桜庭流。危険と言われる亀の体勢からでも、まだ出来ることはいろいろあると、豊永は教えられている。しかし、それは美濃輪には通用しなかった。難なくバックから両足を豊永の股に滑り込ませ、瞬く間に亀を潰し、右前腕を豊永の喉に刺し込む・・・豊永、痛恨のエスケープっ！ 　 パンクラシストは得てしてバックマウントが下手である。バックから相手に両足を差し込むことが出来ないのだ。この日の美濃輪はレガースもニーパットも着けていない。それとこのバックマウントの成功は無関係ではあるまい。つまり試合が進んでもレガースは汗をかかない。だがレガースがなければ、足と相手の腹にある汗で滑りはいい。それがこのバックマウントを可能にしたとは考えられないだろうか？そうだとすれば、パンクラスマッチにおけるレガースの着用規定は、考え直さなければならないだろう。 　 スタンドに戻って豊永は、掌底から左ミドルに繋げる。しかしこの蹴り足を美濃輪にキャッチされてしまう。その足を持ったまま押し倒す美濃輪。足を伸ばしたガードをとる豊永。それを振り払ってサイドポジションを取る美濃輪。腕を絡めたり、足を差し込もうとする豊永。しかし美濃輪はサイドポジションを崩さない。その体勢からサイドチョークを試みる。また豊永は小さく出来た美濃輪との隙間から、身体を反転させて逃げる。追う美濃輪は、また亀になった豊永のバックを取る。今度はうつ伏せに潰される前に横向きに崩す豊永。しかし美濃輪も、ピッタリと豊永の背中に貼りつく。豊永の胴に美濃輪の両足が絡み付く。上体を起こして美濃輪との密着を解消したい豊永。しかしその度に美濃輪の太い腕が、豊永を連れ戻す。逃げては戻され、逃げては戻されるその度に、豊永の身体はエビ反りに伸ばされていく。もうこれ以上反らない、そうなったとき、美濃輪の太い腕は豊永の首を捕らえていた。もう外すことも、あごを引いて耐えることも出来ない。落ちるか・・・そう思われたとき、タップっ！豊永、タップっ！沸き上がった歓声の中、会場に高らかにコールされる。勝者、美濃輪育久っ！試合タイム、２分５７秒、チョーク・スリーパー。ネオブラッド・トーナメント優勝は、美濃輪育久っ！ 　 四方のトップロープに登ってガッツポーズを見せる美濃輪。表彰の後、息を切らしながら優勝者は挨拶をした。『ええと・・・今日はどうもありがとうございました。・・・・・・最っ高です。今度はランキング、目指します。そんで、よろしくお願いします。どうもありがとうございましたぁっ！』 　 おめでとう、美濃輪選手。本当に、最っ高でした。 （誉田徹也） 　 昼の部 夜の部 ［1］渡辺vs井場→→ ［1］美濃輪vs渡辺→→ ［2］美濃輪vs高瀬→→ ［2］須藤vs豊永→→ ［3］窪田vs須藤→→ ［3］デルーシアvs山田→→ ［4］石井vs豊永→→ ［4］ダイクvs柳澤→→ ［5］伊藤vsライトル→→ ［5］渡辺vs須藤 ［6］近藤vsゴドシー→→ ［6］美濃輪vs豊永 ＜全試合結果に戻る＞ 　 取材：誉田徹也　カメラ：大場和正