99･8･1 PANCRASE 1999 BREAKTHROUGH TOUR GAORA NEO BLOOD TOURNAMENT DAY&NIGHT 後楽園ホール 第2試合　トーナメント１回戦10分1本勝負 ○ 　 美濃輪育久 　 7分59秒 三角絞め × 　 高瀬大樹 　 　小路晃を伴って入場した高瀬の右目尻には白いバンソコウが。ＵＦＣでの傷が癒えぬままの参戦となってしまった。数針縫う傷だったはずだが、それをおしてでも出場すると、高瀬大樹は言ったのだ。この参戦に対してパンクラシスト及びパンクラスファンは、無条件に敬意を表するべきだろう。間違ってもこの日の彼に、ブーイングはしてはならないのだ。 　 対する美濃輪は優勝候補の筆頭。デルーシアや渋谷といったランカー常連を相手に一歩も引かないファイトをしてきたこと。大道塾のＷＡＲＳに参戦し、他流試合を立派にこなしてきたこと。リング上の立ち姿、視線、一挙手一投足・・・どれを取ってもすでにネオブラッドの域ではない。ちょうど去年のタナーのような立場だ。観客からも優勝を望む声が多い。 　 序盤、掌底を数発交わしてからのスタンドレスリングの攻防。美濃輪の腰の落し具合が実に重い。高瀬の揺さ振りをものともしない。ならばと離れてフェイント気味に高瀬が掌底を放てば、それを逆にかいくぐっての両足タックル。見事にテイクダウンしてみせる。２分半頃である。 　 高瀬もただ寝かされたわけではない。ちゃんとクロスガードは取っている。そして美濃輪の左腕を腕絡みに取ろうとする・・・しかしっ！美濃輪はあえてこれを左腕一本で耐えてみせ、挙げ句に徐々に立ち上がっていくのだ。『いいよ、あげるよこの腕は。取れるならね・・・』と美濃輪の背中は言っている。高瀬の尻が、マットから浮いていく。プロレスが相手の技を受けるものだとするならば、美濃輪はこのシュートファイトの、他流試合の、トーナメントの場でそれをやってのけたことになる。しかも、今後相手が自分の技を受けてくれるわけもないのに・・・ 　 結局諦めた高瀬の身体と、気迫を見せた美濃輪の身体の間には、その心模様と同じだけの開きが出来ていた。膝立ちでピンと背筋を伸ばす美濃輪。背中をべったりとマットにつける高瀬。それでも腕が欲しい高瀬は、何度も上半身を捻りながら起こして、今度は美濃輪の右腕に手を伸ばす。その度に美濃輪は高瀬の頭部を叩き落とすような掌底を放つ。それで高瀬がまた寝ると、美濃輪はクロスガードを解こうと、腰にある高瀬の足首に手を回す。その手を取りに、高瀬が起きる。また美濃輪が叩き落とす・・・この展開が何度も何度も続いた。５分経過と同時に膠着ブレイク。 　 また激しく掌底を打ち合う両者。その連打の中、またもや美濃輪の両足タックルが決る。今度はサイドポジションを取る美濃輪。サイドチョーク、掌底と、細かい技を仕掛けながら、高瀬の足を取りに行く・・・アンクルっ！しかしこれを高瀬は蹴って外してしまう。これが反則となって、ブレイク。イエローカードが高瀬に出される。 　 再開後、また激しく掌底の打ち合い。今度はかなり美濃輪の有効打が高瀬に入っている。ダメージもある。打ち合いを嫌って、美濃輪の腰にしがみつく高瀬を押し倒して、美濃輪のマウントポジション。そこから美濃輪は腕十字っ！これは高瀬が抜くっ！しかし、美濃輪はここでは諦めない。普通腕十字の失敗の後には、大方不利な体勢が待っているものである。しかし美濃輪はまだ自分にチャンスを見出す。いや、作り出す力を持っているのだ。今度は反対の左腕を巻き込んでの三角絞めっ！徐々に高瀬の上体がマットに伏せて行く。タップが早かったか、レフェリーのホイッスルが早かったか？７分５９秒、見事な一本勝ちであった。 （誉田徹也） 　 昼の部 夜の部 ［1］渡辺vs井場→→ ［1］美濃輪vs渡辺→→ ［2］美濃輪vs高瀬 ［2］須藤vs豊永→→ ［3］窪田vs須藤→→ ［3］デルーシアvs山田→→ ［4］石井vs豊永→→ ［4］ダイクvs柳澤→→ ［5］伊藤vsライトル→→ ［5］渡辺vs須藤 ［6］近藤vsゴドシー→→ ［6］美濃輪vs豊永→→ ＜全試合結果に戻る＞ 　 取材：誉田徹也　カメラ：大場和正