DEEP☆KICK 2.9 大阪 176BOX(レポ):女子-46kg初代王座決定トーナメント準決勝は坂田実優×桃花・シンデレラ、百花×花田麻衣に。-53kg王座決定戦は山田貴紀×棚澤大空に。-57.5kg 松山瞬、-55kg 保井広輝が王座戦進出
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DEEP☆KICK ZERO 18 & 19
2025年2月9日(日)大阪・176BOX
記事提供:DEEP☆KICK実行委員会(レポート・布施鋼治 写真・石本文子)
DEEP☆KICK ZERO 19
ニューヒロイン誕生の予感。『DEEP☆KICK ZERO 19』で行なわれた『DEEP☆KICK QUEEN -46kg初代王座決定トーナメント』Bブロック準決勝では桃花・シンデレラが倒せるボクンシグを武器に山﨑愛琉を圧倒して判定勝ち。一躍優勝候補に躍り出た。その他-57.5㎏王座決定トーナメント準決勝や-60㎏挑戦者決定トーナメントが組まれるなど、盛り沢山なマッチメークが光った大会のリポートをお届けする。
第8試合 メインイベント DEEP☆KICK-60kg挑戦者決定トーナメント準決勝 3分3R 延長1R
○上野コウキ(直心会)
×金剛駿(Reborn kickboxing gym)
TKO 2R1分5秒 レフェリーストップ
※上野コウキがトーナメント決勝に進出
メインとセミではDEEP☆KICK-60㎏第9代王者になった“ノーダメージ”GUMP(TEAM TEPPEN)への挑戦権をかけた挑戦者決定トーナメント準決勝が行なわれた。
メインでは同級2位の上野コウキ(直心会)と同級6位の金剛駿(Reborn kickboxing gym)が激突。両者は2022年9月の『DEEP☆KICK 63』で初めて拳を交わし、壮絶な打ち合いの末上野が1RKO勝利を収めている。それから3年の歳月が流れお互い成長しているだけに、前回の対決は参考程度にしかなるまい。とはいえ、勝った上野に精神的なアドバンテージがあるのは確かだろう。
しかし、今回は2RKOで上野が金剛を返り討ちにした。1R開始早々、上野は左ミドルを軸に攻め込む。対する金剛は右フックで対抗するが、じわじわと後手に回っている印象があった。そうしたさなか、上野は左ボディフックを効かせるや、一気にスパート。左のミドルとヒザ蹴りでダメージを負わせ、金剛をコーナーに追い込むやパンチを連打して先制のスタンディングダウンを奪う。
「ここが倒すチャンス」と察知したのだろう。その後も攻撃の手を休めず、金剛をコーナーに追い込むや2度目のダウンを奪う。金剛はラウンド終了のゴングに助けられた格好だ。続く2Rになっても上野の攻勢は続く。組んでからのヒザ蹴りの連打で注意を受けるが、それに動揺することなく、ヒザ蹴りで3度目のダウンを奪うや、最後は左のボディフックで粘る金剛に引導を渡した。
試合後、上野は「健真選手と闘うのは2回目。この前はしょっぱい試合をして勝ったけど、今回は白黒ハッキリさせたうえで勝ちたい」と内容が伴う必勝を誓っていた。
第7試合 セミファイナル DEEP☆KICK-60kg挑戦者決定トーナメント準決勝 3分3R 延長1R
×津留純平(FASCINATE FIGHT TEAM)
○健真(BLACK☆Jr)
判定 0-1(30-30、29-30、30-30)
延長 0-3(9-10、9-10、9-10)
※健真がトーナメント決勝に進出
健真(BLACK☆Jr)といえば、本職はたこ焼屋でジムの後輩の子供たちと一緒に『元祖たこやきのうた』に合わせて踊りながら入場するコテコテの関西流のパフォーマンスで知られているが、試合の方はいたって堅実。いずれの試合もキッチリと調整したうえでリングに上がっていることがわかる。
対する津留純平(FASCINATE FIGHT TEAM)はプロ戦績8戦6勝4KOを誇る倒し屋。プロデビュー直後は4連勝をマークするなど、ジムのプレーイングマネージャーでもある原口健飛(FASCINATE FIGHT TEAM)の期待も大きい。
健真はこのところ2連敗を喫しているだけに、戦前の予想では「津留が有利」という声の方が大きかった。
案の定、1R試合を優勢に進めたのは津留の方だった。右のカーフキックを効かせるなど、健真の動きをよく見て仕掛けている。対蹠的に健真は手数こそ多いものの、適正打が少ない。
2Rになっても、津留の攻勢は続き、右フックで健真がバランスを崩す場面も。しかしながら3R中盤以降、スタミナに自信を持つ健真は猛然と反撃を開始。ワンツーやハイで攻勢に出る。
判定は1-0(健真)で勝負は延長戦へ。ここまでも健真は左フック、あるいは右のテンカオ+左ストレートを決めるなど、試合を優勢に進め、3-0の判定勝ちを収めた。
試合後は「去年僕は上野選手に負けている(3月31日の『DEEP☆KICK 69』で敗退)。しっかりとリベンジを果たす」と宣言した。勝利の女神は努力家の存在を忘れてはいなかった。
上野が勢いで健真を再び呑み込むのか。それとも健真が“ウサギと亀”ではないが、最後は着実な一歩で上野越えを果たすのか。王者GUMPにとっては気になるトーナメント決勝になりそうだ。
第6試合 DEEP☆KICK-57.5kg王座決定トーナメント準決勝 3分3R 延長1R
○松山瞬(TEAM TEPPEN)
×安部宏聖(EX ARES)
判定 3-0(29-27、29-28、30-27)
※松山瞬がトーナメント決勝に進出
DEEP☆KICK-57.5kg第4代王者の啓斗(ALL-WIN GYM)が王座を返上。それに伴い、昨年12月からスタートした挑戦者決定トーナメントが王座決定トーナメントに繰り上がることとなった。すでにもうひとつの準決勝では牧野騎士(FASCINATE FIGHT TEAM)が一足先に王座決定戦に駒を進めている。
そんな牧野が待つ決勝戦進出をかけ、この日松山瞬(TEAM TEPPEN)と安部宏聖(EX ARES)が拳を交わした。松山は勝っても負けてもKOが多いことで知られるファイターで、RIZINへの出場経験もある。対する安部はアマチュア修斗関西大会で準優勝の実績を持つ二刀流ファイターで、昨年9月にキックボクサーとしてはデビューしたばかりだ。
試合が動いたのは2R終了間際。松山が右ストレートで先制のダウンを奪った。安部が倒れた刹那、ダウンかスリップかを迷ったレフェリーは一瞬判断を躊躇したかのように見えたが、ダウンを宣告した。
続く3R、窮地に立った安部はワンツーを主体に自ら仕掛ける展開に。リングジェネラルシップと手数では明らかに安部のラウンドだったが、ダウンしたポイントが響き、松山が3-0の判定勝ちを収めた。
試合後、リングに立った牧野は「このトーナメントは僕が優勝するために開催されたものだと思っている。しっかり倒して王者になって、その1週間後に試合がある(ジム代表の原口)健飛さんにつなげたい」と語った。
負けじと松山も「DEEP☆KICKは(プロ)デビュー戦からやらせてもらっていて、自分の中でも思い出のある舞台。そこで王者になって自分の力で盛り上げたいという気持ちは強い。決勝まであと1か月、しっかりと仕上げて王者になる」と宣言した。KO決着必至の王座決定戦になるか。
第5試合 DEEP☆KICK QUEEN -46kg初代王座決定トーナメント Bブロック準決勝 2分3R 延長1R
○坂田実優(FASCINATE FIGHT TEAM)
×Sero(NJKF健心塾)
判定 1-1(30-29、30-30、29-30)
延長 3-0(10-9、10-9、10-9)
※坂田実優がトーナメントBブロック決勝に進出
「今日のみぃは過去一強いですから」
試合前、筆者の元に坂田実優(FASCINATE FIGHT TEAM)のセコンドを務めるRISE QUEENミニフライ級王者の小林愛理奈(FASCINATE FIGHT TEAM)が訪れ、不敵な微笑とともに坂田の勝利を予告した。競り合う試合をしながら判定勝負になると負けることが多い。ジャッジに印象点を認めてもらうのが下手といってしまえばそれまでだが、過去の坂田にはそんなイメージがある。
しかし盟友・小林に引っ張られるかのように実力の方は少しずつアップしてきたのだろう。RISEの予想屋・一馬がプッシュするほどの選手になった。一方、開幕戦で対峙したSero(NJKF健心塾)はNJKF健心塾所属の16歳。拠点とする同塾の伊勢支部は女子の選手が多く、その中で揉まれて強くなってきた選手だ。まだプロでは結果が出ていないが、ポテンシャルは高いといわれるだけに初戦を突破して勢いに乗りたいところだ。
1R、坂田はいつになく積極的に攻めに出る。サウスポーからタイミングよく繰り出す左ミドルを軸にインローやフックもヒットさせていく。ラウンド終了間際にはインローでSeroのバランスを大きく崩した。
ところが2Rになると、Seroが反撃に出る右のテンカオからバックハンド。さらに右の連打で攻勢に出る。案の定、2Rまでのオープンスコアは二者がイーブン、一者が10-9でSeroを支持していた。
劣勢を余儀なくされた坂田は3R、左ボディフックの連打で反撃に出る。この攻撃によってSeroは後退を余儀なくされる。ここぞとばかりに坂田はさらにボディフックを打ち込んだ。明らかに坂田が優勢なラウンドだったので、スコアは三者三様のイーブン。
試合は延長戦へと突入した。ここで14戦目(坂田)と4戦目(Sero)の差が如実に現れた。3Rの勢いをそのままに坂田はボディフックで勝負をかけると、Seroは下がる以外に選択肢はなかった。ひとり目に続きふたり目ジャッジも坂田の勝利を支持すると、Seroは泣き崩れた。このトーナメントにそれだけ懸けていた証左だった。
試合後、桃花・シンデレラとともにリングに上がった坂田は「自分はこれが3年ぶりの勝利で、ここまで支えてくれた小林選手とジムのみんなに感謝したい」と涙ぐんだ。続けて「今日の出来のままだと全然なので、準決勝までの1か月ちょっとで仕上げて勝ちたい」と冷静に語った。みぃの意地か、桃花の勢いか。
第4試合 DEEP☆KICK QUEEN -46kg初代王座決定トーナメント Bブロック準決勝 2分3R 延長1R
○桃花・シンデレラ(山口道場)
×山﨑愛琉(TEAM TEPPEN)
判定 3-0(30-28、30-29、30-28)
※桃花・シンデレラがトーナメントBブロック決勝に進出
この日行なわれたDEEP☆KICK QUEEN-46㎏初代王座決定トーナメント開幕戦で勝ち上がった4名の中でMVPをあげるとするならば、“もうひとりのモモカ”こと桃花・シンデレラ(山口道場)で決まりだろう。これまでのプロのキャリアはわずか1戦ながら、そのパンチ力は女子キックボクサーの新人の域を超えているのだ。開幕戦を争った山﨑愛琉(TEAM TEPPEN)も決して悪い選手ではない。伸びのある前蹴りやハイキックには高いポテンシャルを感じずにはいられない。
案の定、1R、山﨑は桃花を相手に右のクロスやカウンターの左を決めようとするなど果敢にやり合う。しかし山﨑の善戦もここまで。2Rになると、桃花の切れ味抜群のワンツーの前に後退を余儀なくされ、ロープやコーナーを背にする時間が増えていく。
ラウンド終了間際、桃花は左ローでダウンを奪うも、インターバル中にミスジャッジと判断され、スリップダウンと訂正された。それでもオープンスコアは三者とも20-19で桃花。3Rになっても、桃花の手は止まらず、ワンツーやストレートで追い込んでいく。終盤になると、ボディフックも駆使して山﨑を追い込んだ。判定は三者とも桃花を支持。キャリアだけをみれば、まだ新人ながら開幕戦が終わった時点で桃花は優勝候補に躍り出たといっていいのではないか。
坂田実優がSeroを破り準決勝進出を決めると、桃花はもう一度リングイン。石川県で祖父母が震災に遭遇したことを打ち明け、「このトーナメントをとるのは私。みんな桃花・シンデレラという名前を覚えてほしい」と力強く優勝を宣言した。
第3試合 DEEP☆KICK-65kg契約 3分3R
○竹市一樹(MA二刃会)
×溝口裕也(TEAM BEYOND)
判定 3-0(30-26、30-26、30-26)
※溝口に「バッティング」、「組み付き」×2で減点1
竹市一樹(MA二刃会)と溝口裕也(TEAM BEYOND)の“タトゥー対決”は竹市に凱歌が上がった。1Rから竹市は左のストレートやカーフキックで勢いよく攻め込む。左がクリーンヒットすると、溝口の足が止まる場面も。ラウンド終了間際にはパンチの連打で先制のダウンを奪った。竹市のKO勝ちは時間の問題かと思われたが、2R以降の溝口の粘りはすさまじかった。竹市に攻め込まれても倒れる素振りを見せない。逆に竹市が攻め疲れしているようにも見えた。
3R、溝口は組み付きで減点1を課せられ、竹市のヒザ蹴りでフラつくも、残り30秒になると、どこにスタミナが残っているのか、果敢に打ち合った。判定は三者とも30-26で竹市を支持したが、溝口のタフネスぶりも光った一戦だった。
第2試合 DEEP☆KICK-53kg契約 3分3R
○大輝(DK9)
×ゆいら(NJKF健心塾)
TKO 1R2分51秒 レフェリーストップ
※ゆいらが300gオーバー。両陣営と主催者の協議の結果、減点1とグローブハンデを与え試合を行う
ゆいら(NJKF健心塾)は計量で300gオーバー。規定時間内にクリアできなかったため、協議の結果、ゆいらに減点1とグローブハンディを課したうえで試合は成立することになった。1R開始早々、大輝(DK9)は左ハイを連打してゆいらの右腕を殺しにかかる。
さらに左の三日月をボディに突き刺したかと思えば、続けざまにテンカオを決めるなどボディへの攻撃も忘れない。その後も左の攻撃を畳みかけ、とどめは左ストレート。なんとか立ち上がってきたゆいらだったが、足元がフラついていたので、レフェリーは試合を止めた。1R2分51秒、大輝のTKO勝ちだ。
第1試合 DEEP☆KICK-57.5kg契約 3分3R
○荒川ルシファー大夢(NJKF心将塾)
×クレイジーハスキー尚吾(REVOLT)
判定 3-0(30-29、29-28、30-29)
ルシファーvsクレイジーハスキー。リングネームだけで判断すれば単なる色モノ対決ながら、そうならないところにマッチメークの妙味はある。1R、サウスポーの荒川ルシファー大夢(NJKF心将塾)は左のミドルやミドルハイ(肩口を狙った打点の高い蹴り)を連打して相手の右腕を殺しにかかる。しかしそんなことはお構いなしにクレイジーハスキー尚吾(REVOLT)は十八番の右フックを打っていく。2Rになると、ルシファーの攻撃はさらに加速。左ストレートやテンカオを織りまぜながら、ハスキーを攻略しにかかる。
しかし、九州からやってきたハスキーの根性はホンモノ。顔色ひとつ変えず右ストレートをヒットさせ、ルシファーがよろめく場面も。2R終了した時点でのオープンスコアはふたりが19-19、20-20とイーブンで、残るひとりが20-19でルシファーを支持するという僅差だった。
こうなると、3Rが勝負だ。ルシファーはさらに左のミドルやミドルハイを打ち込んでいく。これまでガードすることなくカウンターを狙っていたハスキーだったが、さすがに腕にダメージが蓄積してきたのだろう。ラウンド終盤にはコーナーに釘付けにされたうえでパンチを連打を許し試合終了のゴングを聞いた。
判定は文句なしに3-0でルシファー。この試合のテーマに挙げていた「圧倒」はできなかったが、相手の利き腕を殺すという仕事ぶりはきちんと遂行していた。敗れたハスキーもきちんとガードすることを覚えたら、もっと勝率が高くなるタイプだろう。
〈オープニングイベント〉
NEXT☆LEVEL提供試合
OP第3試合 -30kg契約 1分30秒2R
○石塚虎之介(一心会)
×鍵山翔生琉(ツクモジム)
判定 3-0(20-18、20-18、20-18)
※鍵山に「組み付き」×2で減点1
OP第2試合 -47kg契約 1分30秒2R
×甲斐田虎我(BKジム)
○山崎金太郎 (フリー)
判定 0-3(19-20、19-20、19-20)
OP第1試合 -52kg契約 1分30秒2R
○山田十魂(山口道場)
×山脇仁汰(PSKムエタイ大阪)
判定 3-0(20-18、20-17、20-18)
※山脇に「組み付き」×2で減点1
DEEP☆KICK ZERO 18
殺気もあれば、オーラもあり。2月9日、大阪府豊中市の176BOXで関西圏では年間最多大会数を誇る『DEEP☆KICK』が新春第一戦として『DEEP☆KICK ZERO 18』を開催した。この大会では注目のDEEP☆KICK QUEEN-46㎏初代王座決定トーナメントも開幕。4月29日のトーナメント準決勝には百花と花田麻衣が勝ち抜いた。
第7試合 メインイベント DEEP☆KICK-53kg王座決定トーナメント準決勝 3分3R 延長1R
×中田史斗(究道会館)
○棚澤大空(TEAM TEPPEN)
判定 0-3(28-30、27-30、28-30)
※棚澤大空がトーナメント決勝に進出
今大会のベストバウトを挙げるとするならば、文句なしにメインで行なわれた中田史斗(究道会館)と棚澤大空(そら=TEAM TEPPEN)だろう。何が凄かったかといえば、テクニック云々ではなく、最初から最後までともに「チャンスがあれば、絶対ぶっ倒す」という殺気を漂わせていたことだ。
その殺気は90年代の殺気を漂わせていたキックボクサーに相通じるものがあった。説得力のない言葉より万人を納得させる殺気。そんな試合を18歳の中田と17歳の棚澤が魅せてくれたのだから、関西キックの明るい未来を感じずにはいられなかった。
1R、両者とも間合いをとりながら攻撃するチャンスをうかがう。中田がバックハンドを繰り出せば、棚澤はパンチの4連打を返していく。1分30秒過ぎ、中田の左テンカオがヒットすると、試合が動いた。棚澤も右フックを返して追撃を許さない。
2Rになっても、スリリングの一言では片づけられないシーソーゲームは続く。中田がワンツーを出せば、棚澤も同じ数だけパンチを返していく。そうした中、試合の流れを握ったのは棚澤の方だった。ワンツーからのハイ、さらに右ストレートをねじ込んでいく。さらに左右のボディストレートを打ち込んでいくと、中田は防戦一方に。明らかに棚澤がとったラウンドだ。
あとがない中田は3Rになると左右のフックや右のテンカオで反撃を試みる。そんな相手の出方を棚澤はしっかりと見極めながら、右ボディストレートやアッパーを返す。中盤左フックがヒットすると、中田が下がる場面も。結局、判定は28-30(二者)、27-30で棚澤。試合後、決勝へと駒を進めた勝者は「先日おじいちゃんが亡くなりました。そういうことがあった中で最高の舞台で最高の結果を残すことができて本当によかった。僕よりKOが多いからといって、山田選手は僕のことを下に見ている。決勝ではしっかりとぶっ倒します」と時折言葉を詰まらせながら勝利の余韻に浸っていた。
第6試合 セミファイナル DEEP☆KICK-53kg王座決定トーナメント準決勝 3分3R 延長1R
○山田貴紀(山口道場)
×横山大翔(拳心會館)
判定 3-0(30-27、30-27、30-27)
※山田貴紀がトーナメント決勝に進出
セミファイナルとして組まれたDEEP☆KICK-53㎏王座決定トーナメント準決勝では山田貴紀(山口道場)vs横山大翔(拳心會館)という好カードが組まれた。ふたりをよく知る関係者は「両者はほぼ同じスタイル。昨年はともに星憂雅(IDEAL GYM)に負けているところも一緒。試合結果は想像もつかない」と興奮気味に語っていた。
案の定、1Rから山田と横山は激しいデットヒートを繰り広げる。山田が右ミドルで攻め込むと、横山は蹴り足を掴んで前に出てワンツーからアッパーを叩き込もうとする。反対に横山がテンカオで攻めようとすると、山田はカウンターの左フックを狙う。お互い譲らない、互角の展開が続いた。
そうした中、2Rになると、山田はガードを上げて前に出て、左のテンカオに活路を見出そうとする。中盤、山田が左のカーフをヒットさせると、横山は明らかにイヤな素振りを示す。山田はさらにカーフで追撃してラウンド終了のゴングを聞いた。
オープンスコアは三者とも20-19で山田。こうなると、山田の勢いは止まらない。攻撃目標を横山の足に絞り込み、さらにカーフで追い打ちをかけダウンを奪う。しかし、横山は根性のあるキックボクサーだった。効かせられながらも左右のフックや右のテンカオで反撃するなど逆転のチャンスをうかがう。
しかし、ダメージという観点から見ると、試合全体を通して山田の有利は動かない。案の定スコアは三者とも30-27で山田を支持。3月23日の大会で予定されているトーナメント決勝へと駒を進めた。
全試合終了後、決勝を争う棚澤大空の横に立った山田は「棚澤選手はメチャクチャ強かったけど、まだ僕の方が強いと思っている。もっと練習してきてください」と挑発した。
第5試合 DEEP☆KICK-55kg王座決定トーナメント準決勝 3分3R 延長1R
○保井広輝(LoTgym)
×弘樹(Y’ZD GYM)
判定 3-0(30-28、30-28、30-28)
※保井広輝がトーナメント決勝に進出
第8代王者・中嶋愛樹斗(OISHI GYM)の王座返上を受けスタートした、DEEP☆KICK-55㎏王座決定トーナメント。その準決勝で、保井広輝(LoTgym)と弘樹(Y’ZD GYM)が激突した。1R、王座奪取を目論むK-1ファイターの保井は左右のボディブローを武器に攻略にかかる。対する弘樹は抑揚のある動きから右フックを繰り出す。筆者の採点ではイーブン。マストなら、やや沖縄出身で現在は大阪在住の弘樹が優勢な展開だったか。
続く2R、リーチの長い保井は左をクリーンヒットさせるも、弘樹も左のテンカオを返して決定打を許さない。それでも諦めない保井は左を追撃さらに左ストレートと右カーフをつなげ、試合の主導権を握る。その後も右のカーフを浴びせていくと、弘樹は足元がフラフラに。
このチャンスを逃す手はない。3R、保井は粘ろうとする弘樹に左右のパンチの連打やカーフで追い打ちをかける。最後はテンカオで押し切り、試合終了のゴングを聞いた。
判定は三者とも30-28で保井。もうひとつのトーナメント準決勝は3月大会で行なわれる井上大和(NJKF TOKEN KICKBOXING GYM)vs駿希(BKジム)。その一戦について試合後マイクを握った保井は「昔からお世話になっているBKジムの駿希君とできたらいい」とアピールした。
第4試合 DEEP☆KICK QUEEN -46kg初代王座決定トーナメント Aブロック準決勝 2分3R 延長1R
○百花(魁塾)
×上田樹那(山口道場)
判定 3-0(30-29、29-28、30-28)
※百花がトーナメントAブロック決勝に進出
今大会、もうひとつの女子王座決定トーナメント開幕戦は百花(魁塾)vs上田(こうだ)樹那(山口道場)。百花は元NJKFミネルヴァ日本アトム級王者で、この日がキャリア49戦目を迎えるベテラン。実績からすると優勝候補ながら、昨年はRISEで結果を残せなかっただけに、捲土重来を期しての参戦だ。
対する上田は「山口道場でキックをするため」に、両親とともに兵庫県淡路島から大阪に移住してきたガッツの持ち主。まだ勝ち星には恵まれていないが、いまはまだ土の中から芽が出ていない状態だろう。
入場するだけで百花はメジャーなリングで闘ってきた唯一無二の華やかなオーラを出しまくる。お腹まわりを見ても、いつになく締まっていることがわかった。1Rはお互い見合う展開が続く。セコンドに就いた従兄弟の政所仁(魁塾)から百花には「自信を持ってやれ」というゲキが飛ぶ。上田も百花の動きを見ながら、右のローやワンツーを繰り出していく。
2Rになると、試合が動き出す。前に出てきた上田に対して百花はワンツー。さらに右ローで上田の下半身を削っていく。しかし百花より15歳年下の上田はスタミナも十分。右ストレートをスマッシュヒットさせ、試合の主導権を渡さない。その刹那、政所から百花に「下がるな」という厳しい指示が飛んだ。
オープンスコアは19-19(×2名)、20-19(百花)とほぼイーブン。3R、決定打がほしい百花は右フックを何度もクリーンヒットさせ、勝負の流れをグイッとたぐり寄せる。上田もなんとか食らいついていこうとするが、反撃の糸口を掴むまでには至らない。結局、ジャッジは29-28、30-28、30-29と三者とも百花を支持。4月29日の準決勝で百花は花田麻衣と闘うことになった。試合後、次戦でキャリア50戦目を迎える百花は「女子で8人のトーナメントを組むということは(キック界にとって)大きいこと。初戦は圧勝で勝ちたかったけど、(そうはならなかったので)帰ったらみんなに怒られると思う。しっかりと練習し直して絶対ベルトを獲る」と締めくくった。
第3試合 DEEP☆KICK QUEEN -46kg初代王座決定トーナメント Aブロック準決勝 2分3R 延長1R
○花田麻衣(GROUND CORE)
×林美菜(FORWARD GYM)
判定 3-0(30-27、30-27、30-27)
※花田麻衣がトーナメントAブロック決勝に進出
ここ数年ずっと白星から見離されている選手vsプロデビュー戦。ややもするとさほど注目されない一戦になりそうだったが、想像を遥かに凌ぐ熱戦となった。理由はひとつ。試合の冠として『DEEP☆KICK QUEEN-46㎏初代王座決定トーナメント』がついていたからだろう。
連敗脱出を目論む花田麻衣(GROUND CORE)は1Rからワンツーを中心に積極的に前に出る。対する林美菜(FORWARD GYM)は今回がプロデビュー戦とはいえ、元実業団9人制バレーボールで活躍。アマチュアではK-1の『K-1 AWARDS 2023』でアマチュア最優秀選手賞を受賞した経歴を持つアマチュアエリート。
身体能力では林が上と思われたが、花田はセコンドからの「足を止めるな」という指示を背に攻撃の手を休めない。1R終了間際にはワンツーの連打を浴びせ、ポイントを奪った。
2Rになっても、花田は攻撃の手を休めず右フックをクリーンヒットさせるや、ワンツーで先制のダウンを奪った。林は左のテンカオで必死の反撃を試みるが、花田の勢いは止まらない。3Rには右ストレートを乱れ打ち。林の追撃を断った。判定はジャッジ3名とも30-27で花田。
次の百花vs上田戦後、再びリングに上がった花田は「大きな手術をして3年経ったけど、(それから)負けとドローが続いていた。今日は3年ぶりの勝利なので、メチャクチャうれしい。(準決勝で当たる)百花選手は時々一緒に練習もさせてもらっていて、強いことはわかっている。いまのわたしのままだと勝てないこともわかっている。これから練習の質の上げ、尊敬している百花選手を誠意を持ってぶっ倒したい」と宣言。場内からやんやの歓声を受けていた。
第2試合 DEEP☆KICK-60kg契約 3分3R
○平尾一真(Blaze)
×チェ・ヒョクジェ(エキスパートジム)
判定 3-0(30-28、30-29、30-28)
同門のブラックハイエナ(エキスパートジム)の欠場を受け、エキスパートジムで同門のチェ・ヒョクジェ(韓国/エキスパートジム)が漢気を見せて急遽ピンチヒッターとして参戦。学校の教師を辞めキックに懸けているという平尾一真(Blaze)と対戦した。1R、平尾は構えをスイッチしながら右ロー、左ハイなど多彩な蹴りを繰り出していく。お互いスリップダウンを喫する場面もあったが、2Rが終わった時点でのオープンスコアは2者が20-19と平尾を支持した。
もうあとがないチェはボディフックで場内を湧かせるが、あとが続かない。逆に平尾は終盤右ストレートを決めて試合終了のゴングを聞いた。判定は3-0で平尾。これで平尾はプロ戦績を7戦6勝(2KO)1敗とした。現在はノーランカーながら、この勝利でランキング入りは確実。DEEP☆KICKの-60㎏戦線に割って入るか。
一方、チェも適正体重は55㎏の選手。DEEP☆KICK事務局は今回階級が上の試合を自ら買って出てくれたチェの漢気を受け、4月29日のDEEP☆KICKに適正体重でオファーすることを約束していた。
第1試合 DEEP☆KICK-65kg契約 3分3R
×加古稟虎(NJKFteamBonds)
○ナム・ジェヨン(RAON GYM)
TKO 2R1分16秒 レフェリーストップ
昨年12月、『DEEP☆KICK 2024 YEAR AWARDS』で新人賞を受賞した加古稟虎(NJKFteamBonds)が第1試合に登場し、ナム・ジェヨン(韓国/RAON GYM)と激突した。ジェヨンのセコンドには3月に志朗との一戦が決まっている同門のユン・ドクジェ(RAON GYM)が就く。ジェヨンはこの日がプロデビューという身とはいえ、連日イ・ソンヒョン(RAON GYM)やチャンヒョン・リー(RAON GYM)にボコボコにされているのだろう。まるで水泳選手のような後背筋を活かした左ハイや左フックは破壊力を抜群。加古も右フックやワンツーで観客席を湧かすが、2R1分過ぎジェヨンの痛烈な左ハイで大の字にさせられた。ジェヨンはKOで初陣を飾った。まだ23歳。181㎝という長身も魅力的だ。“RAON GYM第4の男”として台頭するか。
〈オープニングイベント〉
NEXT LEVEL提供試合では、塚本望夢の妹・塚本心歩(しあ=NJKFteamBonds/上写真)が目立っていた。まだ14歳ながら、石丸杏奈(VALIENTE)から右ハイでダウンを2度奪ってKO勝ち。大きなインパクトを残した。兄の背中を追いかけるように、今後プロを目指すのか?
また韓国のアマチュア選手パク・ヒョンジョン(韓国/エキスパートジム)も登場。試合前から吠えまくって会場を湧かせていたが、試合開始のゴングが鳴ると山田悠喜(TEPPEN GYM 大阪)の右のロー、ミドル、テンカオの前に次第にトーンダウン。2R終盤にはパンチの連打を食らってついにダウンを喫し、判定負けを喫した。それでも、アマチュアレベルでの日韓交流には大きな意味がある。今後もチャンスがあれば、韓国アマチュア勢には積極的に出場してほしい。
NEXT☆LEVEL提供試合
OP第4試合 -65kg契約 1分30秒2R
○山田悠喜(TEPPEN GYM 大阪)
×パク・ヒョンジョン(エキスパートジム)
判定 3-0(20-17、20-18、20-17)
OP第3試合 -51kg契約 1分30秒2R
×長谷川心(TEPPEN GYM 大阪)
○志水唱乃介(魁塾 中川道場)
判定 0-3(19-20、18-20、19-20)
OP第2試合 -45kg契約 1分30秒2R
×石丸杏奈(VALIENTE)
○塚本心歩(NJKFteamBonds)
TKO 1R54秒 レフェリーストップ
OP第1試合 -22kg契約 1分2R
○加賀柚花(一心会)
×木内りり菜(風吹ジム 木内會)
判定 3-0(20-18、20-18、20-18)