DEEP☆KICK 6.2 テクスピア大阪(レポ):古宮晴、1R KO勝ちで-63kg王者に。佑典&啓斗、揃って逆転KO勝ちで9月の-57.5kg王座決定戦進出
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株式会社アドバンス presents DEEP☆KICK 70
2024年6月2日(日)テクスピア大阪
記事提供:DEEP☆KICK実行委員会(文・布施鋼治/写真・石本文子)
6月2日、ナンバーシリーズで70回目を迎えたDEEP☆KICKが本拠地といえるテクスピア大阪で『株式会社アドバンス presents DEEP☆KICK 70』を開催した。
タイトルマッチ1試合、王座決定トーナメント準決勝2試合、挑戦者決定トーナメント決勝1試合、さらにはAyakaの復帰戦と豪華なマッチメークが揃っていたが、期待に違わず後半3試合はいずれもKOで決着がつくなど、インパクトの強いKO決着が続出。
また試合の合間には「布施鋼治とRISE WORLD SERIES 2024 OSAKAを盛り上げる会」が2部制で行われ、6月15日のRISE大阪大会に出場する主要選手が熱く抱負を語った。(※こちらは別記事でお伝えします)
古宮晴、1R KO勝ちで-63kg王者に
第10試合 メインイベント DEEP☆KICK -63kgタイトルマッチ 3分3R
×足利也真登[やまと](FightClubRush.)
○古宮 晴[ふるみや はる](昇龍會)
1R 2’17” TKO (パンチ連打)
※古宮が第6代王者に
ダブルセミファイナルはいずれも逆転KOで決着がつくという興奮覚めやらぬ空気の中、メインイベントに出場する両者が入場してきた。王者・足利也真登(FightClubRush.)に挑戦者決定トーナメントを勝ち抜いた古宮晴(昇龍會)が挑戦するDEEP☆KICK-63kgタイトルマッチ。
1R序盤こそ、お互い調子を見るような静かな展開だったが、古宮の右前蹴りを足利がキャッチしたあたりから試合はいきなりヒートアップし始める。古宮は右前蹴りからワンツーで試合の流れを掴む。一度ローブローで試合が中断する場面もあったが、それでも古宮の勢いは衰えない。
足利も相手の攻撃によく反応しているように見えたが、古宮はワンツーから右ボディストレート。さらに右ストレートでアゴを打ち抜いて先制のダウンを奪う。ここで勝負ありかと思ったが、足利には王者として意地とプライドがある。なんとか立ち上がってきたものの、ダメージが残っていることは明らか。この好機を古宮は見逃すはずもなく、連打をまとめ足利に引導を渡した。
電光石火の王座交代劇。自分の勝利が確定するや、古宮はコーナーポストに駆け上がって雄叫びをあげた。自らの名を誇示するかのように晴れて第6代-63kg王者になった古宮は、控室に戻ると、初戴冠の喜びとともに、耳のハンディ(感音性難聴)について語った。
「いまはホッとしているというのが一番。結果を残せてよかった。僕、生まれつき難聴で、補聴器をとったら何も聴こえません。以前活躍していた郷州(征宜)さんという難聴ながら(Krush)王者になった選手に僕は夢と希望を与えてもらいました。僕は郷州さんを見てプロのリングに立ちたいと思いました。いまはもう郷州さんも引退してしまったので、そのあとは僕が先頭に立って、(難聴の人たちに)夢と希望を与えていきたい」
リングサイドで声援を送るファンを見る限り、女性が多かった。DEEP☆KICKに、またひとり魅力的なチャンピオンが誕生した。
佑典&啓斗、揃って逆転KO勝ちで-57.5kg王座決定戦進出
第9試合 ダブルセミファイナル2 DEEP☆KICK -57.5kg王座決定トーナメント準決勝 3分3R(延長1R)
×松山 瞬(TEAM TEPPEN)
○啓斗(ALL-WIN GYM)
2R 1’17” TKO (左フック)
山川賢誠vs佑典の余韻を引きずるかのように、もうひとつの-57.5kg王座決定トーナメント準決勝も荒れに荒れた。
松山瞬(TEAM TEPPEN)はグリーンボーイながら、RISEやRIZINにも上がるTEAM TEPPEN期待のルーキー。今年3月のRIZIN神戸大会ではプロデビュー戦で辛酸を舐めさせられた櫻井芯(TeamFIST)に先制のダウンを奪われるもその後奪い返してリベンジを達成したばかりだ。対する啓斗(ALL-WIN GYM)は勝利=KOというK-1スタイルを絵に書いたような豪腕ファイターとして知られている。
1R、試合を流れを掴んだのは松山の方だった。序盤から右フックを軸に啓斗を攻め込む。松山のローキックで啓斗がバランスを崩す場面も。そして残り10秒を切ったところで左をジャストミートさせ、先制のダウンを奪う。
ところが2Rになると、あとがない啓斗は打ち合いに持ち込む中、左フックをクリーンヒットさせ、ダウンを奪い返す。ダウンカウントが進む中、松山は立ち上がってきたが、しっかりとファイティングポーズをとれなかったため、レフェリーは試合をストップさせた。2R1分17秒、啓斗の逆転TKO勝ちだ。
第8試合 ダブルセミファイナル1 DEEP☆KICK -57.5kg王座決定トーナメント準決勝 3分3R(延長1R)
×山川賢誠(Kickboxing Academy Sapporo)
○佑典[ゆうすけ](月心会チーム侍)
3R 2’34” TKO (バックハンドブロー)
昨年12月、DEEP☆KICK-57.5kg第3代王者に輝いたKING龍蔵(ROYAL KINGS)が返上したベルトを懸けた-57.5kg王座決定トーナメントが開幕。いずれの準決勝も逆転KOで決まるという波乱の幕開けとなった。ダブルセミファイナル1に登場したのは山川賢誠(Kickboxing Academy Sapporo)と佑典(月心会チーム侍)。DEEP☆KICK初参戦となる山川は北海道を拠点とする選手で、地元札幌で組まれた試合では2018年以降6戦全勝という驚異的な勝率を誇るキックボクサーだ。ちょうど1年前、札幌で開催されたRIZINでもKO勝ちを飾っている。
対する佑典は勝っても負けてもKO決着を信条とする、関西を活動の拠点とするベテランだ。1R、試合の主導権を握ったのは佑典の方だった。動きに固さが見られる山川に対して、右ローで下半身を削って行き、左右のフック、さらにはボディフックを当ててく。山川も右フックやワンツーを返していくが、手数が少ないことは否めない。
しかしながら2Rになると、山川はようやく緊張が解けたのか、見るからに重そうなワンツーで佑典の機先を制す。そして右フックで先制のダウンを奪う。明らかにダメージが残っていそうな佑典に対して、山川はさらに追撃し、ワンツーで立て続けに2度目のダウンを奪う。ここで勝負あったかに見えたが、その直後から佑典は反撃を開始。右フックで山川の足元をフラつかせる。
そして3R、あとがない佑典は右フックを軸にラッシュを仕掛ける。相手の猛攻をなんとか凌いでいた山川だったが、2分過ぎ佑典が放ったバックハンドがクリーンヒットするとそのままダウン。ダウンカウントが進む中、レフェリーは動きがギコちない山川を試合続行不可能と判断し試合を止めた。3R2分34秒、佑典の逆転KO勝ちだ。
「こんなこともあるんだ」。あるジムの会長が放った一言がこの一戦の全てを物語っていた。やはり勝負の世界は最後まで何が起こるかわからない。山川は「ホームでは圧倒的に強くても、実はアウェイ(東京)では弱い」という汚名を、大阪でも払拭することができなかった。
この結果を受け、9月8日の「DEEP☆KICK 71」で組まれる予定の王座決定戦(トーナメント決勝)の組み合せは啓斗vs佑典という、K-1グループ同士の一騎討ちとなった。
◆佑典「啓斗選手とは同じK-1グループ出身で同じ階級なのでいつかは当たると思っていました。でも、まさかDEEP☆KICKの王座決定トーナメント決勝で当たるとは思わなかった。でも、俺がベルトを獲るから。」
◆啓斗「いろいろ(佑典に)お世話になっているところもあるんですけど、試合になったらそんなことは関係なし。先輩だけど、いっちゃいます。9月は僕がチャンピオンになります。みんな応援してください。」
第7試合 DEEP☆KICK -60kg挑戦者決定トーナメント決勝 3分3R(延長1R)
×上野コウキ(直心会)
○GUMP(TEAM TEPPEN)
判定0-3 (28-30/29-30/28-30)
DEEP☆KICK-60kg第8代王者・大樹(HAWK GYM)への挑戦権を懸け、トーナメントを勝ち上がってきた上野コウキ(直心会)とGUMP(TEAM TEPPEN)が激突した。両者は2020年7月「DEEP☆KICK 44」で初対決。そのときには上野が判定勝利を収めている。
西日本統一ライト級王者の肩書を持つ上野は一発の破壊力には定評のあるキックボクサーで、健真(BLACK☆Jr)との準決勝を際どい判定で制して決勝に進出した。昨年6には大樹に挑戦し惜敗しているだけに、虎視眈々とリベンジする機会を伺っている格好だ。
対するGUMPの性格は典型的な三枚目ながら、リングに上がったらテクニシャンに変身。その試合巧者ぶりには定評がある。TEPPENに移籍後、那須川会長からGUMPというリングネームを授けられ、階級をひとつ上げると覚醒。GUMPを名乗りだしてからは4連勝中といまだ負けを知らない。
試合は接戦を予想する向きもあったが、1RからGUMPがワンツーとローを軸とした持ち前のテクニックでじわじわと上野を追い詰めていく。タイミングよく放ったハイが上野の頭をかすめる場面も。上野の動きをよく研究しているのか、GUMPは相手のガードが空いているところをタイミングよく攻撃するという作戦を貫いていた。2Rになると、GUMPがコツコツと打ち続けてきたローによって上野がバランスを崩す場面が目立って増えてきた。 続く3R、上野はついにガス欠。弱った対戦相手に対し、まだスタミナ十分のGUMPはここぞとばかりに左ボディフックや右のテンカオで追い打ちをかける。もう上野に反撃する気力や体力は残っていなかった。
試合後、大樹の本拠地である石川県で初めて開催される8月4日DEEP☆KICK石川大会に向けての抱負を聞くと、GUMPは涙ながらに語り始めた。「上野選手とはデビュー3戦目で一回負けている。そこからTEPPENに移籍して、今日は変わったところを見せられたと思っている。那須川会長に就いてもらい、トレーナーの方々にも練習をみてもらっている。これからの僕はめっちゃ強くなると思います」
DEEP☆KICK王者の中では長期政権を築きつつある大樹を食うことができるか。
第6試合 60kg契約 3分3R
○金剛 駿(Reborn kickboxing gym)
×和斗(大和ジム)
1R 2’38” TKO (右フック)
1R開始早々、名古屋の大和ジムからやってきた和斗(NJKF大和ジム)は右ストレートで金剛駿(Reborn kickboxing gym)からダウンを奪う。どうにか立ち上がってきた金剛だったが、その素振りを見る限りダメージが残っていることは明らか。このチャンスを和斗が見逃すはずもない。左右のフックを振り回し、相手をどんどん追い込んでいく。
コーナーを背に動けなくなった金剛だが、起死回生の右フックをジャストミート。ダウンを奪い返す。このときの会場の盛り上がりといったらなかった。この一撃で和斗は致命的なダメージをもらってしまったのだろう。金剛に右フックを追撃されると万事休す。逆転KO負けを喫してしまった。
試合後、マイクを握った金剛は「僕は格闘技が自分の人生の中で一番向いていないと思っているんですけど、向いていないからこそ努力して10年間格闘技をやってこれました。これもみんなの応援のおかげ」とアピール。応援団や観客から大歓声を受けていた。
第5試合 53kg契約 3分3R
○山田貴紀(山口道場)
×綱島晴都(blooM/topUN)
2R 1’17” TKO (左膝蹴り)
プロ4戦のキャリアが全てDEEP☆KICKという山田貴紀(山口道場)が第5試合に登場し、2022年西日本プロキックボクシングバンタム級新人王の肩書を持ちDEEP☆KICK初登場の綱島晴都(blooM/topUN)を迎え撃った。1R、右をかぶせるなど試合を優勢に進めていた山田だったが、ラウンド終了間際綱島の右を食らい、ダウンを喫してしまう。
しかし、山田は2R以降右ローを連打することで、終始打ち合いを求める綱島の下半身を削りまくり、ステップを徐々に鈍らせていく。そうした矢先に左のテンカオを決め、綱島からスタンディングダウンを奪う。もうこの時点で綱島に闘う気力はほとんど残されていなしかった。
再び左のテンカオを受けると、2度目のダウン。なんとか立ち上がってきたものの、すでに立っているのがやっとの状態。山田がテンカオで追い打ちをかけると、綱島は対戦相手に背中を向けてしまう。戦意喪失。その刹那、レフェリーが試合を止めた。
第4試合 女子49kg契約 2分3R
○Ayaka(健心塾)
×夢空[ゆら](Croire)
判定3-0 (30-29/30-28/30-29)
かつて宮﨑小雪(TRY HARD GYM)や伊藤紗弥(尚武会)を破った実績を持つAyaka(NJKF健心塾)が1年半ぶりに復帰戦に臨んだ。かつては美少女っぽい出で立ちで一部のマニアから熱い視線を注がれたAyakaも23歳。すっかり女性っぽくなったが、リングインする前にはセコンドに「神奈川と金沢と香川の差がわからない」と呟くなど、トンパチぶりは相変わらず。案の定、試合のブランクが響いたのか、試合開始されても動きは固い。
それでも、KROSS×OVER 3戦全勝の実績を引っさげDEEP☆KICKに乗り込んできた夢空(Croire)が前に出てくるタイミングに右フックを合わせると、試合の勘が戻ってきたのだろう。得意の右で試合のペースを掴む。
2R、試合の流れを変えたい夢空は積極的に前に出るが、Ayakaはカウンターのワンツーを合わせ、相手に付け入る隙を与えない。その後完全に自分のリズムに乗りかけたが、この日はスタミナがいまひとつ。3Rには痛烈な右で夢空のアゴを上げる場面もあったが、倒すまでには至らなかった。
スコアは3-0でAyakaの完勝ながら、課題が少々残る復帰戦となった。スタミナを十分つけたうえでの復帰2戦目に期待したい。敗れた夢空もフィジカルに優れ、フレーム(骨格)も大きいだけに今後期待できる選手だ。
第3試合 55kg契約 3分3R
×弘樹(Y’ZD GYM)
○駿希(BKジム)
判定0-3 (27-29/28-30/27-29)
1R、先制のダウンを奪ったのは駿希(BKジム)の方だった。3R、駿希はワンツーを武器に弘樹(Y’ZD GYM)をコーナーに詰め、再び試合の流れをたぐり寄せる。最後はヒザ蹴りに活路を見出そうとした弘樹だったが、連打してしまいレフェリーから注意を受けるなど攻勢に転じるまでには至らない。結局、3-0で駿希が勝利した。イケメンの駿希は、これでプロ3戦全勝となった。
第2試合 女子55kg契約 2分3R
×加藤乃々夏(全真会館)
○RINA(TEAM TEPPEN)
判定0-2 (28-29/30-30/28-29)
お互いDEEP☆KICKデビュー戦となった女子の一戦。1Rから組みにくる試合巧者・加藤乃々夏(全真会館)の動きに合わせ、RINA(TEAM TEPPEN)は右フックを合わせるなど対策は十分。さらにチャンスと見るや、相手の懐に入ってワンツーを打ち込むが、加藤は左フックや右ミドルでジャッジに好印象を与える。2Rになると、RINAはタイミングのいいフックを浴びせるなど、一進一退の攻防が続く。2Rまでのオープンスコアは19-19(2者)、20-20と全くのイーブン。続く3R、勝負をかけたRINAは左右のフックをブンブン振り回す。加藤は左の前蹴りで距離を保とうとするが、押されている印象は否めない。結局、3Rを自分のものにしたRINAが2-0の判定勝ちを飾った。
第1試合 65kg契約 3分3R
×洸児[こうじ](TeamFIST)
○加古稟虎[りんと](teamBonds)
1R 2’05” TKO (レフェリーストップ)
高1でNJKFteamBonds期待の加古稟虎(NJKFteamBonds)のプロデビューを果たした。対戦相手は自分より10歳年上の洸児(TeamFIST)。こちらも今回がDEEP☆KICKデビューという新人だったが、試合開始早々加古は16cmという身長差を活かすかのように軽快に右ローをコツコツと打ち込んでいく。そのタイミングが絶妙なのか、洸児はカットできない。案の定、スリップダウン→足が揃うという悪循環を経て、最後は苦悶の表情を浮かべながらダウン。レフェリーは試合続行不可能と見なし、試合をストップした。
1R2分5秒で、加古は初陣を飾った。-65kg戦線に楽しみな逸材が現れた。