[File 0012] 佐藤光留「生で見て『あいつおかしい』って言ってくれ」
■ もう誰を見てもデカいと思わなくなった
−−バウトレビューはご覧になることはあるんですか? 光留「あんまり格闘技のサイトは見ないようにしてるんですよね。あんまり僕のこと良く書かれないじゃないですか」
−−掲示板、気にしてますか(笑)
光留「でもバウレビさんは、北岡によく『○○の試合の結果知らない?』と聞かれるんで、僕が調べてメールを送り返したりしますね。あと、インタビューのコーナーがあって、(前田)吉朗のは見ましたね」
−−今回はあのコーナーのインタビューなんですよ。注目を浴びつつある選手に話を聞くコーナーでして…
光留「吉朗と同じところに載ったら、パンクラスの秩序が崩れちゃいますよ(笑)完全実力主義のパンクラスで俺は負け越してるからなぁ…」
−−いやいや、結果しか評価しないで取材するわけじゃないですから。 光留「でも掲示板を見たけど、ちょっと見ただけで嫌になったのでやめました。俺が竹内戦断るわけねえじゃん」
−−なぜか最近話題なってましたねぇ。 光留「なんかいろんなところに出てて。向こうはミドル級ランキング1位でベルトまで挑戦する人ですよ。僕はランキング入ってないですから、向こうがやりたいとも思わないでしょうし、やる必要性もないでしょう。僕が竹内選手の立場なら佐藤光留とやろうとは思わないですよ。楽な試合がしたいと思うなら別ですけど(笑)。ランキングの他の選手もみんな1位の竹内選手と闘いたいですよね。」
−−光留選手は無差別の試合が多いので、ミドル級のベルトは興味無いのかなぁ、と思うのですが。 光留「いやいや。(小声で)まぁ、興味はないなぁ」
−−ぶっちゃけた話(笑)
光留「だってジョシュ・バーネットの持つ無差別級のベルト目指すのでさえ大変なのに、ミドルも獲ろうなんで滅茶苦茶ですよ。まあ、今僕が毎回やってる相手が無差別のベルトに近づいているかというとハテナマークなんですが」
ーーベルトというより価値観が無差別になっているような気がします…。 光留「やってるうちに楽しくなってきちゃってねぇ。もし無差別のベルトを持ってるのが吉朗だったら、僕はフェザーの選手とばっかりやってますよ」
−−それはありえないでしょうけど、例えばの話ですね。 光留「たまたまデカいバーネットが無差別のベルトを持ってるからであって、ベルトに近づく試合ってことで会社に頼んだら、デカい奴をどんどん連れてきやがったんです(笑)。まあ、7月に小椋選手(=198cm、140kg)とやったから、もう僕の格闘技人生でこれ以上大きい人とはやらねぇだろう、とは思ってるんですが…。ボブ・サップとはやらないだろうし、まさかジャイアント・シルバ…、でもシルバだと、何か間違ってありそうだなと思ったんですけど」
−−大みそか3日位前にシルバの相手が怪我して、『誰かやれる選手いませんか?』ってパンクラスに電話かかってくるとか(笑) 光留「僕は小さいことが昔からコンプレックスで。小学校高学年は学校で一番デカかったんですけど、中学で伸びなくて、20代になったら平均身長よりも低くてですね(※現在、光留の身長は174cm)。でもパンクラスに入ったら鈴木(みのる)さんも國奥さんも美濃輪さんもデカい奴とやってて、むしろ小さいことが有利になる場合もあると気づいたんですね。こないだ大阪大会でアンソニー“辰治”ネツラー選手を見ても、デカいと思わなかったんですよ。もう誰を見てもデカいと思わなくなっちゃってねぇ。自分が怖くなってきました」
−−その、小さくても戦えるというのはどういう部分で感じますかね? 光留「今まで大きい人とやっても、前に突っ込んで来る人って意外といなかったんですね。小椋選手も相撲だし突っ込んで来ると思ったんで、股の間を抜けようとか、横にかわしてバックにつこうとか考えたんですけど、様子を見てきたんですね。そうなると体格差がどんどん気にならなくなるんですよ」
−−逆に小さいと標的が小さくなるとも考えられますね。 光留「僕は困った時、昔のパンクラスのビデオを見るようにしてるんですよ。昔、鈴木さんがシュルトとやった時、カール・ゴッチさんの『立ったら何十cm差があっても、寝かしたら数センチだ』というアドバイスを参考にしてましたけど、小椋選手、寝てもデカかったですけどね(笑)」
美濃輪さん、変わってねぇな
−−それほどまでして無差別のベルトにこだわる理由はなんでしょう? 光留「昔のパンクラスには無差別のベルトしか無かったわけですよね? 今いろんな階級が出来て、もっと細分化するかもしれないですし、女子もそのうちできるでしょうし。でもそういう他の価値観に左右されないのが、無差別なんですよ。ずっと変わらない価値観が大事だと思うんで」
−−その辺、変わらない価値観ということで言うと、佐藤選手はパンクラス的な価値観に凄くこだわりがあるなぁ、と感じます。 光留「むしろみんながこだわりが無さ過ぎるんですよ。格闘技に限らず世の中に関してもそうですけど、流行に一番近い人間が正しいと思われるのなら、それはちょっと違うと思いますね。だって今90年代のトレンディドラマ見たら恥ずかしいじゃないですか。女優さん眉毛濃いし」
−−前髪がニワトリみたいになってたりね(笑) 光留「でも当時はあれが流行だったわけじゃないですか。今、格闘技界で、裸足でスパッツ履いて、パスガードやった、ポジションとった、って、今のお客さんは喜んでくれるかもしれないけど、10年後はわかりませんよ。自分の中で『これで一生喰っていく』と思っているものがね、あんまり打ち上げ花火のようになるのは納得できないですね。こだわりのない入場曲、コスチューム、ファイトスタイルであったり」
−−まあ、佐藤光留の価値観と、パンクラスの価値観が、全部一緒というわけでもないですよね。 光留「ちょっとシンクロしてるんですよ。僕の考えている元々あったパンクラスってのは、美濃輪さんが言うところの『リアルプロレスラー』なんですよ(笑)。こないだ美濃輪さんと話したんですよ」
−−そういや8月の後楽園大会に見に来てましたよね? 光留「会場でも少し話したんですけど、あの大会で渡辺(大介)さんが怪我して、入院先に見舞いに行ったら、美濃輪さんもいらっしゃって。僕、美濃輪さんがパンクラスを辞めて以来、初めて美濃輪さんと話し込んだんですよ。僕、連絡先も知らなくて。で、『リアルプロレスラーって、何なんですか?』って話になって」
−−うん(笑) 光留「僕はリアルプロレスラーってのは、本当にプロレスラーになれなかった人の『逃げ』の言葉だと思ってたんですよ。みんながリアルプロレスラーって言葉を使うのも嫌だったんですけど、美濃輪さんが言い出しっぺですよね。で、本人に聞いたら、この人が言ってるリアルプロレスラーは、そんな生易しいもんじゃねぇな、って。『現在進行形』なんですよ。あの時見たプロレスラーに近づきたくて、なりたくて、ずーっとやってるんですよね。そこにねぇ、なんていうか、美濃輪さん、変わってねぇな、っていう…(なぜかどんどん小声に)。冴夢来プロジェクトで見て、あこがれて良かったなぁって」
−−冴夢来プロジェクトって、インディープロレスの。 光留「剛竜馬選手とタイガージェットシンがメインで、まだ美濃輪さんが誠ジムにいて、リング設営もやりながら異種格闘技戦もやって。今アジアンスポーツプロモーションにいる菅沼修選手が相手で。…ってバウレビの読者、今ぜんぜんわからないと思いますけどね」
−−いいですよ、続けて下さい(笑) 光留「美濃輪さんがレガースとスパッツ姿で、掌底と関節技で戦ってるのを生で見て、衝撃的でしたね。そのプロレス会場で、美濃輪さんのファイトスタイルって、明らかにおかしい人だったんですよ。一人だけUWFで。相手の選手、地下足袋を履いていましたからね。他にも怪奇派レスラーとか。でも美濃輪さんはパンクラス入ってからも変わらなかったですし」
−−でも佐藤選手は、美濃輪選手がパンクラスを離れてからの言動に違和感を感じていましたよね。 光留「PRIDEに出てお客さんと一緒に手を上げてるのが、ちょっとね…。周りは遊園地の絶叫マシーンに乗る感覚で見てるんですよ。その真ん中にいる美濃輪さんが違う人に見えたんですよ。でも会ってみたら美濃輪さん自体は何も変わってなかったんですよね」
−−単に面白い人としか思われていないのが不満だと。 光留「それでも結果としてお客さんの支持を得ているからいいんですけど、あれ、面白がってますけど、美濃輪さん真剣ですからね。あの真剣なところがね、僕が憧れて、とんでもない人だなあ、と思った美濃輪さんなんですよ。そういう面白がるだけのお客さんがいるのでね、僕はPRIDEさんの事がね…」
−−まあ、単純にアマノジャクですよね(笑) 光留「自分の好きなアイドルがメジャーになるとね、なんか寂しくなるもんなんですよ(笑)。雑誌とかに出てきて、みんな周りが『いい』と言ったら、それが良く見えて来るんですよね。僕はそんなものになりたいんじゃない」
−−流行ってること自体は構わないけど、みんな自分の価値観なり美学のフィルターを通してから、『いい』と言ってるの? ってことですよね。 光留「格闘技なんだから、パンツ一丁で殴り合うんだから、なんで人と同じことをしなきゃいけないの?ってのは思いますね」
−−単に目立つのが目的じゃないと。 光留「だって、価値観を歪めてるプロレスラーなんて、誰も見ないじゃないですか。格闘家に限らず、今、プロレスラーも、どっかで見たことあるような選手ばっかりですよね。でも鈴木さんは変わらないですよ。始め新日本出た時よりも技が減ってるぐらいですけど、支持が衰えるどころか、どんどん盛り上がって。あれはやっぱり信念があるからだと思うんですよ。パンクラスでも近藤さんが出てきたら、やっぱり信頼度が違うじゃないですか。凄い他団体で強い奴が出ても、信頼度が無いですよね。そこが近藤さんが一貫してやってきたことだと思うんですよね。まあ、僕の場合は鈴木さんや近藤さんと違って、全く結果が追いついていないんで色々言われることがあるんですけど(笑)」
−−ある種、鈴木さんのフィルターを通してのパンクラスだったり、近藤さんのフィルターを通してのパンクラスだったりと一緒で、佐藤さんのフィルターもあると。照らす角度は違うけど…。 光留「そうなんです。向いている所は一緒なんですよね」
光留の出稽古不要論
−−ただ、現状、パンクラスismに対する風当たりは強いですよね。 光留「こないだ松井大二郎選手に渡辺さんが負けた時、『何やってるんだ?ism!』って言われたんですよ。でもよく考えたらパンクラスism、今年パンクラスのリングで負けたの初めてなんですよ」
−−それは意外です。 光留「そういうの調べて文句言ってるのか?っていう。ただ、ネットで匿名であれこれ言われても聞く気になれないんですけど、会場でなら構わないんですよね。別に面と向かってじゃなくてもいいから、俺の試合中に『竹内とやれ』とでもヤジってくれたらいいんですよ。『出稽古やれ』とか(笑)」
−−実際、全然してないんですか? 光留「前は週1回、廣戸先生のバランストレーニングに行ってたんですけど、玉海力選手も来てたんで。そしたら玉海力選手が来なくなって、僕だけ来て玉海力選手が来ないのは卑怯だと思ったんで、廣戸先生に『決着つくまで行きません』って断って。それ以降はismだけですね。でも出稽古をすれば強くなるのなら、誰でもしますよ。うちのアマチュア会員で3つジムを掛け持ちしている奴がそのうち最強になっちゃいますよ。もちろん本当に自分に必要な技術だったら、頭を下げて行くことが大事だとは思うんです」
−−佐藤さんの場合は、わざわざ外に出て学ぶ必要のある技術が無いと。 光留「うちにはプロのキックボクサーがいますし(伊藤)、柔術の茶帯がいますし(北岡)、レスリングなら大石がいますし、PRIDEに出てる近藤さんはいるし、あと何が必要なんだ?って。僕はアマチュアの人と夜、ずっと教えながら練習してるんですけど、みんなプロとスパーリングするとなると、3分間だから、必死で力出して来るんですよ。あれはいい練習になりますよ」
−−スタミナが無い人でも3分間ガーッと次々来られると… 光留「ずーっと和田良覚という感じですよ(笑)。雑誌やネットを見て、出稽古行くのが当たり前と思ってるようですけど、格闘技界見渡して、行っている人はそんなに言うほど多くはないと思いますよ。だいたい自分の拠点となる場所は持ってるし。『強い人はやってる』という意見もあるけど、じゃあ強い選手が強くなるまで出稽古してなかったのは何で?って言い返したいですね。拠点でしっかり練習を積んで強くなって結果出してから、仕事もしなくて済むようになって、時間ができたから出稽古行ってるんじゃない?って。」
−−僕らメディアも、普通に自分の道場で練習してる人よりも、出稽古してる人の方が記事にしやすいですから。どうしてもそういう記事が目立っちゃうのも影響してるのかもしれません。 光留「要は出稽古するしないじゃなく、頭の使い方なんですよ。よく話すことなんですけど、昔、鈴木さんが夜に道場に来てる時、必ず僕が晩飯を作らなきゃいけなくて、『鶏肉とチャンコの材料だけしか使わず、毎回違うものを作れ』と言われて、ずーっと違うものを作り続けて、200種類近くできたんですよ。中には同じ物なんだけど、『ちょっとここ変えました』と言ったこともあるんですけどね(笑)。まあ、鈴木さんは単においしい料理を作って欲しいだけだったかもしれないけど、僕がそれで感じ取ったのは、『同じ材料でも、作る人間の心構え次第で、何にでもなるんだ』ということなんです」
−−自分の頭を使って工夫をしろと。 光留「鈴木さんの教えは今、僕が練習生にもアマチュアの会員にも言ってることで。僕の授業はしんどいと思いますよ。毎回同じ事ばっかりやって、キツくて、精神的にもプレッシャーがかかって。でも技術をあれこれ覚えても、試合で使えなきゃ意味無いんですから」
−−どんなに頭に入ってても、使いこなすにはある程度ヒラメキも大事でしょうね。 光留「しっかり練習した技術を出すのも楽しいでしょうけど、予定外の技が当たっちゃうのも楽しいですよ。何が起こるのかわかんないのが試合の楽しさなんだから。僕がパチンコをあんまりやらなくなった原因もそれですから」
−−やめたんですか? 光留「やめてはいないんですけど、2年半位前からあまり熱心じゃなくなりましたね。練習とか試合で予定外の技が出てきた時の喜びとは比べ物にならないですよ」
生で見て、『あいつおかしい』って言ってくれ
−−単純にリング上がって大勢の人前で戦うことの快楽も、パチンコとは比べ物にはならないですよね。佐藤選手の場合はマイクアピールも気持ちいいと思いますが(笑) 光留「熊本のパンクラスZは4000人ぐらい入ってましたからね。初めてですよ、自分のマイクで酔っちゃったのは(笑)」
−−4000人の前でマイクは気持ちいいでしょうね。そういう意味で、佐藤選手が東京のPRIDEやHERO'Sの舞台で吠える姿も見てみたい気がしますが。 光留「でも近藤さんが最初PRIDEに出た時、『日本人最後の砦がPRIDEに出場』って言われたじゃないですか。何かおかしいなあ、この感覚と思って。で、しばらくたってわかったんですけど、PRIDEが格闘技の世界標準なんですよね。仕方ないですけど。近藤さんはうちのチャンピオンなわけじゃないですか。うちのチャンピオンじゃ、納得してもらえなかったんですね。僕も一時期ありましたよ、『PRIDEに出たら有名になれる』って。でも近藤さんでそれじゃあ、僕が出る隙がねえなぁ、って。じゃあパンクラス見に来ないと佐藤光留が見られないのでもいいかな、って思って。僕は鈴木さんにパンクラスのリングを任せられたんだから、僕のやることはパンクラスのリングで己の信念を貫き通すことだと。辛いですけどね(笑)。でもそういう生活ができるってことは幸せなことですよ」
−−なかなか理解はしてもらないでしょうし、暗中模索は続くでしょうね。 光留「でもね、こんなこと言ってますけどね、僕の価値観もね、どんなにアピールしても人と一緒になることはないですから。ハハハハハ!(突然高笑い)。もういいっすよ」
−−ある種、生まれついての病気のようなものだと。 光留「ほんとそうですよ。小さい頃はコンプレックスでしたけど、もういい、売り物になるから、って。いろんなところで言ってるけど、ほんと僕、プライベートが無いですから。朝から晩までずっと道場いて。寝る間を潰して、夜中みなとみらいで釣りしてますけど(笑)。でも別にいいんですね」
−−自分の趣味がそのまんま職業なってるわけですから、苦痛は無いですよね。僕もバウレビの記者の仕事して、取材ばっかりで休みは無いですけど、元々好きでしたから、苦痛では無いですよ。 光留「こんなに楽しいことは無いですよ」
−−無いですよね(妙に意気投合)。 光留「学生の頃は俺がプロレス好きで、格闘技好きで、って友達に話してたら、『佐藤っておかしいよね』って言われてたけど、今は違いますから。本当に生きてるって感じがしますね。もちろんネットで僕を見るのもいいんですよ。ネットでしか見られない環境の人もいるんですから。でも僕を『ネット上の生き物』にしないで、ちょっとでも会場に来て、生で見て、『あいつおかしいな』って言ってくれれば、最高ですね」
−−うちの話になっちゃいますけど、バウトレビューはただの速報の媒体だと思われてる向きがあるんですけど、ちょっと違うんですよね。もちろん速報も含めたバウトレビューですけど、本筋は『格闘技の何が面白いか』を伝える媒体なんですよ。 光留「そうですね。速報だけだったら友達のメールと変わらないですから」
−−『もっと格闘技を好きになりましょうよ』『もっと格闘技の楽しみ方がありますよ』ってのを伝えたいんですよね。 光留「これだけインターネットが広がってるわけですし、僕も好きですから、ネット使って自分たちをアピールしていかなきゃいけないですけど、掲示板とかで人の意見を見るのは好きじゃないですね。出稽古の話もそうだけど、『佐藤光留、モサい』とか書かれると本気で傷つきますから(笑)。事実を書かれるのはいいんですよ。こないだね、近所のTSUTAYAのAVコーナーで15分ぐらいずっと選んでたら、出る時、コーナーにいた男に『握手して下さい』って言われたんですよ」
−−その右手で(笑) 光留「焦って『玉海力対策です』とか言っちゃって(笑)。でもそれをネットで書かれるのはいいんですよ」
−−笑えるからいいですよね。笑えないのは嫌ですよね。 光留「今だに『ismは出稽古禁止』とか書かれて。鈴木さんも別に出稽古行っちゃダメとは言ってなかったんですよ。実際北岡とか行ってるんですから」
−−人によって格闘技やパンクラスについて知ってる度合いは違いますから、掲示板上で見当違いな批判が出ちゃうのはある程度しょうがないですけどね。もっと知名度が上がれば、もっと見当違いな批判も増えるでしょう。けど、それを逆手に取って、誤解を恐れず問題提起していって、批判が増えるぐらいの方が、ある意味面白いと思いますね。裸になって、自己主張しまくるのが許されている職業なんですから。 光留「何もしなくて、ただ格闘技やるだけだったら、パンクラスいる意味が無いですから。試合の結果ってのは、単純に白星や黒星だけじゃなく、その後インタビューをどれだけ受けるかとか、街や他の大会の会場でどれだけ声をかけられるかとか、そういうのも含めて結果だと思うんですよね」
−−さっき話の出た美濃輪選手なんて、その典型ですよね。負けも多いですけど、会場人気は抜群ですから。最近は公開練習で富士山登って高山病になってしまいましたが(笑) 光留「昔、美濃輪さんと佐々木(有生)さんが試合の時、美濃輪さんと僕、公開練習でプロレスやったことがあるんですよ。3分一本勝負で、デスバレーボムとか喰らって。僕らの後に佐々木さんが、普通にタックル行って、ガードから三角とか十字やってるのを見て、美濃輪さんが興奮しながら『よし! こ、こ、こ、これ、俺たちの、か、勝ちじゃね??』って(笑)」
−−勝ち負けの問題じゃないんですけどね(笑) 光留「勝ちでしたけどね(笑)。でも、それでも、同じ大会であった鈴木さんとライガーさんの試合を越えられなかったんですよ。その後、郷野さんがあの試合の文句言いましたけど、僕らがあれを越えられなかったのは確かですから」
−−ただ、佐藤選手の価値観とは違うでしょうけど、ああやって郷野選手が文句を言うこと自体、さっき言った自己主張、問題提起として素晴らしいですよね。 光留「アイスマンと戦った菊田さんのことを、郷野さんは何も言わなかったのは、じゃあ何?って思いましたけどね(笑)。けど、郷野さんは僕のインタビューとか読んでくれてるんですよ。もうパンクラス離れられたんで会わないですけど、よく『パチンコの話が多すぎるよ』ってダメ出しされて」
−−彼もこないだの武士道のウェルター級GPの会見で、ラインナップを見て『2強・3中・5弱』って… 光留「あれは偉いですよ。言えないですよ、普通。言うんだったら2強に自分を入れるんでしょうけど、それを言わないところに、郷野さんの格闘技に賭ける真剣な態度ってのを本当に感じますね。だから『郷野信者』って呼ぶのかわかんないですけど、そういう人がいるのもわかりますよ」
−−単なる文句じゃなく、自分の立場や立ち位置も考えてますし、それに、そう言ったほうがお客さんも盛り上がりますよね。郷野選手は『リアルプロレスラー』では無いですし、考え方も違いますけど、自分の価値観に忠実に生きて、そのことでお客さんをワクワクさせるという点においては、美濃輪選手や鈴木さんや佐藤さんとも相通じるものを感じます。また一方で近藤選手や大石選手のように寡黙なのも一つの自己主張でしょうし。 光留「そういう意味ではパンクラスって面白いと思うんですよね。歴史が長いし、いろんな選手がいて。昔いた人たちも面白い。そういう楽しみ方をしてくれるとうれしいんだけどなぁ。まあ、こっちも、もっと面白い人間にならんとね」◆◆◆
(2005年9月20日(火) 東京・広尾のパンクラス事務所にて収録 聞き手:井原芳徳)
◆ 佐藤光留出場!近藤有己×金原弘光も実現! パンクラス 10/2(日) 横浜文化体育館大会 会場で、スカパーPPV生中継で、佐藤光留にヤジれ!
Last Update : 09/30 14:54
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