新極真会 10.14-15 東京体育館(レポ):4年に一度の世界大会。入来建武、ヴァレリー・ディミトロフを決勝で破り男子優勝。女子は鈴木未紘が父・国博に続く世界制覇
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全世界空手道連盟 新極真会「第13回全世界空手道選手権大会」
2023年10月14日(土)~15日(日)東京体育館
レポート&写真:井原芳徳
フルコンタクト空手の大手・新極真会の4年に一度の体重無差別の世界大会が開催された。世界103カ国・地域の選手が参加し、男子は132名、女子は37名がエントリーした。強豪国のロシアは不参加だった。2日に渡って争われ、初日は1回戦から3回戦まで、最終日の2日目は4回戦から決勝まで行われた。男子は最大で8試合、女子は最大で6試合を勝たなければ優勝できない。(試合時間は男子は5回戦以上は本戦3分。それ以外のラウンドは2分)
男子:入来建武、決勝でヴァレリー・ディミトロフに4年前のリベンジ果たし初優勝
準々決勝Aブロック
×岡田侑己(日本)
○ヴァレリー・ディミトロフ(ブルガリア)
本戦0-5
4回戦の第1試合から、ゼッケン1番の有力候補・エヴェンタス・グザウスカス(リトアニア/2022世界ウエイト制大会重量級優勝)が岡田侑己に本戦0-4で敗れる波乱が起こった。5回戦で岡田は後藤優太と対戦し、本戦では後藤に押され気味だったが、延長で巻き返して追い詰め5-0で勝利した(上写真)。
2019世界大会4位で10月24日で42歳になるベテラン、ヴァレリー・ディミトロフは4回戦で鳥原隆司に延長5-0で勝利。5回戦ではアンタナス・クリバヴィシウス(リトアニア)に本戦5-0で勝利した。準々決勝はディミトロフが岡田に対し、ボディ狙いの前蹴りで技ありを奪い勝利した。岡田はここで散ったが、5位に入賞し、敢闘賞に選ばれ、今後に期待の持てる世界大会での戦いぶりだった。
準々決勝Bブロック
○アントン・ジマレフ(カザフスタン)
×渡辺優作(日本)
再延長4-0 延長0-0 本戦0-1
5回戦ではアントン・ジマレフがマレック・ヴォルニー(ポーランド)に本戦4-0で勝利。渡辺優作は平木楓を本戦5-0で下した。ジマレフと渡辺の準々決勝は一進一退の激闘に。延長はジマレフがバックスピンキックを当て優勢だったが、中盤から渡辺がローキックで挽回し再延長へ。だが再延長ではジマレフが顔面への左飛び膝を度々当て好印象を作り勝利した。
準々決勝Cブロック
×遠田竜司(日本)
○エドガー・セシンスキー(リトアニア)
本戦0-5
初出場の17歳・遠田竜司は3回戦でマシエ・マズール(ポーランド/2019世界大会準優勝)に本戦3-0で勝利し、初日最大の番狂わせを起こした。4回戦で遠田は後迫龍輝に本戦4-0で勝利。5回戦ではラウリナス・ヴァイシカウスカス(リトアニア)を左ロー、ボディ主体で追い詰め本戦4-0で下した(上写真)。
エドガー・セシンスキーは5回戦で多田成慶に本戦4-0で勝利。準々決勝ではセシンスキーが遠田に対し少しずつヒットを増やし、至近距離からの右ハイキックで倒し、技ありを奪い勝利した。7位入賞の遠田は技能賞に選ばれている。
準々決勝Dブロック
×落合光星(日本)
○入来建武(日本)
本戦0-5
落合光星は4回戦でパウリウス・ジマンタス(リトアニア)に延長5-0で勝利。5回戦ではダヴィット・ムスカラゼ(ジョージア)に本戦4-0で勝利した。
最終ゼッケン132番の入来建武は全日本大会20~22年3連覇(通算4度優勝)をした選手で、今回の世界大会でも優勝候補だ。15年の世界大会では島本雄二に決勝で敗れ、前回19年の世界大会では5回戦でヴァレリー・ディミトロフに敗れている。今年の初日、1回戦はシード、2回戦は不戦勝、3回戦はパラグアイの選手で本戦5-0で勝利した。2日目初戦の4回戦ではカロヤン・タシェフ(ブルガリア)に本戦4-0で勝利。5回戦では渡辺和志を右ローキックで追い詰め本戦5-0で勝利し、順調に勝ちあがる。落合との準々決勝では、入来が序盤からサウスポーでの左ローを効かせ、終盤に突きを連打し続け本戦で勝利した。
準決勝
○ヴァレリー・ディミトロフ(ブルガリア)
×アントン・ジマレフ(カザフスタン)
本戦5-0
ディミトロフが使いだしたことで知られる、足裏でのローキック“ヴァレリーキック”を自ら多用しつつつ、右のインローを当てていると、終盤にはインローが効き目を発揮する。ジマレフの足が流れるようになり、審判も評価し、ディミトロフが決勝に進んだ。
準決勝
×エドガー・セシンスキー(リトアニア)
○入来建武(日本)
本戦0-5
ベスト4に日本人でただ一人残った入来が磐石の強さを見せる。体格で勝るセシンスキーが前に出るが、入来が回って距離を取りつつ、左右のローと右のヴァレリーキックを当てる。中盤を過ぎるとセシンスキーも攻撃が返せなくなり、入来が何発もローを当てて圧倒し、決勝に進んだ。
3位決定戦
×アントン・ジマレフ(カザフスタン)
○エドガー・セシンスキー(リトアニア)
0’49” 合わせ一本
準決勝でローキックをもらい続けて敗れた選手同士の3位決定戦は、ローが決め手に。ジマレフは準決勝までの足のダメージの蓄積が大きかった模様で、セシンスキーが序盤から右のインローを効かせつつ、突きで技ありを奪い、さらに右インローで技ありを2度獲得し、合わせ一本で勝利し3位に入った。
決勝
×ヴァレリー・ディミトロフ(ブルガリア)
○入来建武(日本)
本戦0-3
ついに迎えた決勝でも、入来が安定感のある戦いを見せる。開始すぐから入来がローを当てて先手を取ると、中盤からは左のローを何発も当てて圧倒。副審3者から評価され勝利し、悲願の初優勝を果たした。
勝利者インタビューで入来は「小さい時から夢だった舞台で優勝できて本当にうれしいです。日本の主将として日本人が最後まで残ると決めて戦いました。みなさんの応援のおかげで日本が勝つことができました。本当にありがとうございました」と、喜びと感謝を述べた。
入来にとってディミトロフは、前回19年の世界大会の5回戦で敗れた相手だった。バックステージでのインタビューで入来は「4年前に負けて悔しくて、それから4年間頑張れる原動力になれました。ヴァレリー選手のおかげで強くなれたと思います」と、決勝で戦ったディミトロフを称えた。試合中には海外からの来日選手や応援団が集まる席からはディミトロフへの大声援が飛び続け、その後の緑代表の元への両選手の挨拶の際には、多数の海外勢が立ち上がって「ヴァレリー」コールを続け、ベテランのディミトロフの健闘を讃えていた。
優勝 入来建武(東京城南川崎支部)
準優勝 ヴァレリー・ディミトロフ(ブルガリア支部)
第3位 エドガー・セシンスキー(リトアニア支部)
第4位 アントン・ジマレフ(カザフスタン支部)
第5位 岡田侑己(和歌山支部)
第6位 落合光星(和歌山支部)
第7位 遠田竜司(東京江戸川支部)
第8位 渡辺優作(世田谷・杉並支部)
敢闘賞 岡田侑己(和歌山支部)
技能賞 遠田竜司(東京江戸川支部)
女子:鈴木未紘が父・国博に続く世界制覇
準々決勝
×ブリジタ・グスタイタイテ(リトアニア)
○網川来夢(日本)
再延長0-3 延長0-1 本戦0-0
グスタイタイテは2022世界ウエイト制大会重量級優勝者。網川との準々決勝の本戦はお互いパンチと蹴りを激しく終始打ち合い、どちらも譲らず0-0で延長へ。延長もほぼ同じような攻防が続き再延長へ。最後まで接戦が続くが、途中に胸への右の突きの連打でやや好印象を作った網川が勝利し、優勝候補を退けた。
準々決勝
○藤原桃萌(日本)
×漢 藍理(日本)
再延長5-0 延長2-1 本戦1-1
漢は初日の3回戦で全日本選手権3度優勝の久保田千尋に再延長5-0で下し女子で最大の番狂わせを起こした。準々決勝では藤原桃萌と対戦し、激しい打ち合いが続き、再延長で体格の勝る藤原が手数差をつけ勝利した。漢はベスト4入りできなかったが、技能賞に選ばれている。
準々決勝
×水谷 恋(日本)
○目代結菜(日本)
本戦4-0
体格で勝る目代が手数で上回り勝利。水谷はつかみの反則もあり、差をつけられた。
準々決勝
×冨村日花(日本)
○鈴木未紘(日本)
本戦0-4
鈴木未紘(みひろ)は全日本2022優勝、JFKO全日本2023軽重量級優勝者で18歳。2003年世界大会優勝の鈴木国博氏の長女としても知られる。準々決勝まで順調に勝ち進み、体格で勝る鈴木が手数多く攻め、最後は試合場際まで冨村を下がらせ差をつけた。
準決勝
○網川来夢(日本)
×藤原桃萌(日本)
再延長1-0 延長0-0 本戦0-0
胸を近づけての突きの攻防が続き、藤原の手数が若干多いが、長身の網川も左膝蹴りを絡め抵抗し延長へ。延長も同様で再延長へ。それでも差がつかず体重判定に。8kg以上の差があれば軽いほうが勝者となる規定で、網川63.4kg、藤原72.5kgで、9.2kg差があり、網川が勝者となった。
準決勝
×目代結菜(日本)
○鈴木未紘(日本)
延長0-3 本戦0-0
接近戦の中で鈴木が突きを連打してから蹴りにつなげる動きを繰り返すが、目代も攻撃を返し、最後は突きを増やして巻き返す。延長も鈴木が上回る状態を続け、終盤には左ローと膝蹴りを増やして差を印象付け勝利した。
3位決定戦
×藤原桃萌(日本)
○目代結菜(日本)
延長0-4 本戦1-0
体格で勝る藤原がパンチ、ローのヒットでやや上回るが、大差なく延長へ。同様に藤原が若干優位だったが、終盤、押しの反則を取られ、これが響き目代の勝利となり、目代が3位となった。
決勝
×網川来夢(日本)
○鈴木未紘(日本)
延長0-5 本戦0-1
鈴木が突き、ロー、膝と多く攻めるが、網川も崩れず突きを返す。延長、鈴木は突き主体となり蹴りが減り、網川の膝蹴りが目立つように。網川も攻撃を返し、差は縮まってきたが、次第に鈴木が重みのある突き等でやや優位に。審判は5人とも鈴木を評価し、鈴木が勝利し、優勝を果たした。
優勝 鈴木未紘(厚木・赤羽支部)
準優勝 網川来夢(福岡支部)
第3位 目代結菜(東京城南川崎支部)
第4位 藤原桃萌(福岡支部)
敢闘賞 網川来夢(福岡支部)
技能賞 漢藍理(佐賀筑後支部)
長渕剛さんが「新極真会の歌」「乾杯」を披露
準決勝の前には歌手の長渕剛さんのライブパフォーマンスが行われた。世界中の新極真会の会員の間にも定着しているという「新極真会の歌」や、ヒット曲の「乾杯」を歌った。最後は長年の会への貢献を称えられ、緑健児代表から新極真会賞を授与された。
また、今大会の初日では型部門のトーナメントが行われ、組手の決勝の前には男女の優勝者(男子・渡邊大士、女子・田中利奈)の演武が披露された。
大会の模様は10月29日(日)15:00~16:00にBS日テレで、11月4日(土)午後9:00~深夜0:00にJ SPORTS 1で放送される。中継のゲスト解説を元キックボクサーの武田幸三氏と小比類巻貴之氏、元極真会館所属でMMAに転向した上田幹雄が務めた。上田は場内アナウンスの際に極真会館の世界大会の優勝者として紹介された。