「壁」という言い方が一番相応しいのだろう。　
　デビュー戦引き分け。その後は連勝街道と向かうところ敵なし状態だった滑川。だが、この半年以上、明らかに「壁」にぶちあたっている。リー・ハスデルという名の壁である。　
　１勝１敗１引き分け。数字的には５分。しかし、一戦目では攻めきれないままに時間切れ引き分けとなり、そのけじめとしての２戦目では、イェロー一つの差で勝ちはしたものの、内容的には押され続け。まるで敗者のような顔でリングを降りてきた。そして３戦目では完敗を喫してしまう。　
　今回の試合は、その完敗からの仕切直しとなる一戦である。　
　相手は、ウィリー・ピータースの弟子、サラ・ウーマー。デイブ・デ・「ポパイ」が首の怪我により欠場となったための代打。リングス一戦目、しかも身長、体重とも自分より一回り下。何としてでもすっきり勝ち、壁をぶちやぶるための第一歩にしなければならない。　
　
　開始早々、滑川の気迫が爆発する。　
　目がてんぱっていたデビュー戦を彷彿とさせるラッシュ。あっという間に掌底と膝でウーマーをコーナーに押し込んでしまう。そして肘。「固い」と成瀬に評された滑川の肘が、防具ごしではあるが、ウーマーめがけて振り回される。　
　コーナーに詰まってブレイク。ウーマーは目尻をカットし、ドクターチェックが入る。　
　再開後も滑川の勢いは止まらない。また掌底、膝のラッシュ。ウーマーも反撃に出ようとするが、それをすかして片足を取る。　
　これは押さえ切れなかったが、相手の立ち上がる動きにあわせて滑川も立ち、またロープに押し込んで打ち合い。密着してバックに回り、ウーマーをテイクダウンすると、そのまま亀を潰して裸絞め。　
　殆ど相手に何もさせなかった。　
　
　この完勝が勢いを取り戻すきっかけになるか。　
　その答えは、リングスの常連選手相手との試合で明らかになる。　
　　

（山名尚志）

取材：山名尚志・岩田貴宏・薮本直美　カメラ：井田英登
HTML編集：井原芳徳