99.5.22 リングス Rise 3rd. 有明コロシアム［総評］リングスの危機と即効薬

99･5･22 Rise 3rd. 有明コロシアム
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＜大会総評＞
・リングスの危機と即効薬　山名尚志

　rAwチームとのマッチメイクが流れた。
　リングス側の発表によれば、ギャラ交渉の決裂、正確に言えばrAw側からのギャラ引き上げ要求をリングスが蹴った、ということが原因であるとのこと。仕方のないことではあるが、それでも目玉の興行が流れるというのは痛い。
　来日中止の発表は直前。従って、こまめにネットをチェックしているファンを除けば、殆どの観客は、この報を知らずに会場に来たことになる。一歩間違えばかなり危うい事態である。
　だが、混乱は起こらなかった。
　大会開始前のマッチメイク変更のお知らせの時も、形ばかりのブーイングはあったものの、観衆の多くは何の反応も見せなかった。目玉カードが飛んだにも関わらず、である。
　
　要するに、会場に来ていたそもそものリングス・ファンにとっては、rAwとの対抗戦など、それほどの価値はなかった、ということだ。逆の見方をすれば、せっかくrAwとの提携を正面に押し出したにも関わらず、バーリに興味を持つ人々を、リングスは、結局集められなかったということでもある。　
　　
　これをして「バーリには集客力がないのだから（ファンに支持されていないのだから）やる必要はない」と決めつけるのは早計である。　
　バーリ・トゥード・ジャパン・オープンの熱気を見ても、なんだかんだ言われながらＰＲＩＤＥシリーズが続いているという状況を考えても、そこに確実に「市場」があることは疑いを入れない。そして、リングスが新しい市場を必要としていることは、上３分の１が空いてしまった客席が見事に証明している。　
　常連だけに頼り切るマーケティングは危ない。　
　常連は優しい。新しい企画を次々とぶちあげなくとも、世間を騒がすような事件が起こらなくとも、次の大会のお知らせが来れば、自動的にチケットを買い、また会場に来てくれる。　
　しかし、それが永遠に続くわけもない。　
　段々と櫛の歯が抜けるように常連の姿は減ってきている。　
　どう考えても新陳代謝は必要だ。そして、そのためには、新しいビジョンを、今までとは違う試みを打ち出していかなければならない。　
　
　そのための一つのトライアルがrAwの招聘だった。　
　だが、それは、開始早々から頓挫してしまった。　
　
　rAwが起爆剤にならなかった理由はいくつかあるだろう。だが、敢えて「即効性」という点に限って原因を考えれば、何より、rAwの選手達自体に興味をもっている層、ファンがあまりに少なかったという点につきる。　
　それは他の外国人バーリ・トゥーダーについても同様である。　
　ヒクソンやホイスなどのごく少数の例外を除いては、目に見えるほどの集客力は、やはり望めないに違いない。それでも修斗のバーリがＮＫを満杯にするのは、ルミナやマッハが闘うからである。ＰＲＩＤＥが２回も東京ドームで興行を打てたのは、結局のところ、高田がいたからである。　
　そうした主役がいて、その主役に何度も絡むことによって「キャラが立つ」。それで始めて飯の種となっていく。　
　ランディ・クートゥアやトム・エリクスンで客を呼べるようになるためには、少なくとも、後、１年は必要だった。それだけの期間があれば、リングス独自のＶＴの世界も確立していただろうし、ＶＴファンもリングスのプロモーションを強く意識するようになっていただろう。　
　
　残念ながらそういった猶予期間を設定することは難しくなったようだ。　
　そうなると、やはり、「即効薬」が欲しくなる。　
　
　本大会で二人の選手が注目すべき発言を行った。　
　一人目は成瀬。　
　90kg以下のミドル級で団体の枠を越えた闘いをやっていきたいという。そのためには他団体への参戦も辞さない、と。禁句とも言えるパンクラスの名までだして、成瀬は、アピールした。　
　もう一人は山本。　
　こちらは小川を名指しした。　
　そうして、全試合終了後前田は、二人のアピールを認める発言をした。　
　
　今後の成り行きがどうなるかはわからない。団体、プロモーションごとに利害がある。その調整は一朝一夕でなされるものではない。　
　だが、ともかく、アクションを起こすという宣言はなされた。　
　各選手がリングスの現状への危機感から行った提言。その提言を具体化させていく責務を負っているのは、前田日明代表が率いるリングスのフロントである。　
　手腕に期待したい。　

（山名尚志）

［第１試合］サラ・ウーマー×滑川康仁　→→

［第２試合］V. オーフレイム×金原弘光　→→

［第３試合］成瀬昌由×ヴォルク・ハン　→→

［第４試合］I. ミーシャ× Y.カステル　→→

［第５試合］山本宜久×高阪剛　→→

［第６試合］田村潔司×ビターゼ・タリエル　→→

＜全試合結果＞

取材：山名尚志・岩田貴宏・薮本直美　カメラ：井田英登
HTML編集：井原芳徳