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(レポ&写真) [K-1 WGP] 9.25 武道館:バンナ&イグ、まさかの初戦敗退

FEG "アルゼ K-1 WORLD GP 2004 開幕戦 in TOKYO"
2004年9月25日(土) 東京・日本武道館  観衆・14,860人(超満員札止め)

  レポート:高田敏洋 写真:井原芳徳 取材協力:永田遼太郎  【→カード紹介記事】 【→掲示板スレッド】
 

第8試合 GP開幕戦 3分3R(最大延長2R)
×ジェロム・レ・バンナ(フランス/ボーアボエル&トサジム/推薦選手)
○フランソワ・ボタ(南アフリカ/スティーブズジム)
3R終了後 TKO (タオル投入)

※3R 判定0-1 (御座岡29-29/黒住28-29/大成28-28)
※2Rにバンナにダウン1あり

 2002年の対ホースト戦以来K-1本格参戦にストップが掛けられていた「無冠の帝王」バンナがいよいよ本格復帰。その生け贄に選ばれたのが、ボクシング3大メジャーの一つIBFの元ヘビー級チャンプとしての名を買われてK-1に招かれるも、過去4戦4敗と結果を出せずにいるフランソワ・ボタ。おそらく戦前の図式としてはそのようなものであったろうが…。
 この2年間も完全休養というわけではなかったが、正直言って消化試合のような内容ばかりだったバンナは、1R開始当初は試合勘を取り戻すかのようにやや慎重な立ち上がりを見せた。だがボタをコーナーに詰めて打ちまくるなど、試合が進むに連れてリズムに乗り、2Rには体を揺すりながらどんどん前に出始める。いつバンナがボタを仕留めるかというムードがリングに流れ始めた刹那、飛び込んできたバンナの顎にボタのカウンターの右ストレートがクリーンヒット。この一打で試合の流れは完全に変わってしまった。

 フラフラになったバンナは、ボタの追撃によろめくようにダウン。立ち上がってファイト再開したものの以後は失速し、攻撃も相手のカウンターを警戒して腰を残した手打ちになってしまった。この間ボタもだんだんとバンナの攻めが見えるようになってきたようで、飛び込もうとすればカウンターを浴びるバンナは、ますます彼らしからぬアグレッシブさの見えない攻防に終始する。
 本戦判定は辛うじてドローになったが、リング中央に背を向けたバンナは延長を前にして戦意喪失、セコンドからタオルが投入された。直後に病院に向かってしまったため現時点で詳細は不明だが、もし左腕の故障が再発してしまったのだとすれば、今後の復調には想像以上に険しい道程が予想される。

第7試合 GP開幕戦 3分3R(最大延長2R)
○武蔵(日本/正道会館)
×シリル・アビディ(フランス/ブリゾンジム)
判定3-0 (御座岡30-28/黒住30-28/大成29-27)


 昨年あたりから、攻撃性のある試合を見せることが多くなってきた武蔵。今回は昨年決勝大会での経験を踏まえ「フルラウンド徹底して動き回れるスタミナを養ってきた」。「アビディはとにかくナチュラルな変則派とでも言うか、どこで何やってくるか分からないんでその流れに巻き込まれないように」。ところが試合開始直後は、アビディのけれん味のない振り回すようなパンチを、武蔵は再三に渡って貰ってしまう。肩を入れた伸びのあるアビディのパンチは、武蔵の距離感以上に伸びてきたようだ。
 しかしそれを凌ぎつつ武蔵はミドル、前蹴り、ヒザと、アビディのボディへ効果的な攻めを加え、これが効いて徐々にアビディは失速。アグレッシブな攻撃を続ける武蔵と、それをいくら受けても倒れる気配を見せないアビディに、場内は武蔵コールとアビディ・コールで二分される。
 判定結果は武蔵の勝利で順当かと思われたが、「負けたとは思わない。延長があっても良かったんじゃないの」とアビディは不満げ。一方勝者の武蔵も倒しきれなかった自分にもどかしさを感じたか、「もっと動き回って、キックからパンチに繋げたりとか、練習でやってきたことが全然出来なくて自分の中では点数低い」と納得出来ない表情。しかし自身の闘いぶりよりも微妙な僅差判定に不満を漏らしたりすることも多かったかつての武蔵からすると、この発言は良い意味での彼の変質の証明と捉えることも出来るだろう。

第6試合 スーパーファイト 3分3R(最大延長2R)
○レミー・ボンヤスキー(オランダ/メジロジム)
×曙(日本/チーム・ヨコヅナ)
3R 0'33" KO (右ハイキック)


 リング上で向かい合うと、体重差は無論、身長差も公称値以上に大きく感じられる両者。開始後ほどなくして、曙がスリ足でボンヤスキーをコーナーに詰めて連打を浴びせる。「思った以上に強いパンチで驚いた。230kgのパンチだからね(ボンヤスキー)」。だが再度コーナーに詰められそうになった時はボンヤスキーも二度同じ轍は踏まず、巧く回り込んで左フックをクリーンヒットさせる。曙の動きがスローで、ボンヤスキーが攻撃多彩な選手だけに、一旦ボンヤスキーの攻めの流れが出来上がると、まるで巨木を相手にコンビネーション・シャドーをやっているかのような印象。曙の手数が徐々に減り、2Rにはレフェリーからもっと攻めるように注意を受けるが、今の曙は攻めたくても攻められない状態にあるとしか見えない。
 だが得意の跳びヒザも交えながらボンヤスキーが一方的に攻めても、「とにかくデカくて効かない。右のパンチのいいのが立て続けに入っても平気で立ってたのには驚いた」。このまま試合が進めば「いつもの曙の試合」の再来になる…。場内にもやや苛立った空気が。

 しかしここでボンヤスキーが昨年チャンプの面目躍如となる攻撃を見せた。顔面へのパンチやボディへの蹴りが効かないならと、3R早々に至近距離でパンチを相手の顔面に集めておいてから、いきなり死角からの右ハイキックを一閃。「インターバル中トレーナーからハイを狙えと指示されたんだ」。これが図に当たり、息が上がってガードが下がっていた曙の頸動脈を直撃。230kgの巨体が一瞬の内にリング上大の字となった。
 ここ1〜2年体格偏重の嵐が吹き荒れた感のあるK-1。「原点回帰」を謳ったこの大会で、この試合結果は象徴的な意味合いを含んでいるとも言えよう。「曙にアドバイス?正直難しいね。Kのリングはパンチだけでは闘えない。キックとのバランスが無ければ。でも彼にキックの経験は無いし、今から身に付けるというのも年齢的に言ってどうだろう…」。対する曙は、試合後インタビューブースに姿を現すことはなかった。

第5試合 GP開幕戦 3分3R(最大延長2R)
○レイ・セフォー(ニュージーランド/ファイト・アカデミー)
×天田ヒロミ(日本/TENKA 510/6.26 JAPAN GP王者
判定3-0 (御座岡30-28/岡林30-29/平30-28)


 両者のスタイルからして、派手なドツキ合いが予想されたが、その期待通りの試合に場内が沸いた。
 開始当初は比較的静かな立ち上がりを見せたが、セフォーのコンビネーションをきっかけに一転して、リング中央での激しいパンチの応酬に発展。当初天田にはやや力みがあったのか、パンチがやや大振りでスピードも普段より劣っている感もあったが、激しい攻防の中でそれもほぐれ、手数がどんどん増えてくる。
 しかしそこはやはり一枚上を行くセフォー。得意のノーガードで天田のパンチをかわしまくり、これにはさすがに天田も苦笑いを漏らす。それでも手を出し続けた天田に後半やや付き合い疲れたか、セフォーはノーガードで相手を挑発したり客席にアピールするなど派手な動きの一方で、攻撃はカウンターを主体としたものに移行する。とはいえボクシング技術には自信を持つ両者だけに、そのラフな激しい攻防の中には、クロスカウンターなど高度な技術の応酬も随所に見られた。
 「思い切り殴り合いをしようと思ってて、その通りにやれたのは良かった」と、敗れてもサバサバした様子の天田。「ポイントが2つも開いてたのは寂しいけど…。セフォーはもっと凄いかと思ってた。そう言えるのは自分が強くなってるのかもしれませんけどね。肉体改造の成果も徐々に出てきてるし、まだまだ強くなりますよ自分は」

第4試合 GP開幕戦 3分3R(最大延長2R)
○アーネスト・ホースト(オランダ/ボスジム/推薦選手)
×グラウベ・フェイトーザ(ブラジル/極真会館/推薦選手)
判定3-0 (御座岡30-28/黒住30-29/大成30-28)


 手足が長く、攻撃の多彩な、ある意味似たスタイルの両者だが、ジャブのように蹴り足を飛ばしてくるフェイトーザに対し、ホーストは一気に距離を詰めてパンチラッシュの勝負を挑む。おそらく過去のフェイトーザの試合から、その弱点を接近戦での顔面パンチと見定めていたのであろうが、フェイトーザもここ数戦は顔面の攻防に馴れ、かつてのような脆さはもう無い。ホーストの怒濤のパンチラッシュも殆どがブロックの上、Mr.パーフェクトも思ったように効果的なダメージが得られず、試合は長期戦に。その上フェイトーザのブラジリアンキックはガードの上からでも叩き付けるような衝撃で場内に鈍い音を響かせ、さすがのホーストも若干ふらつくシーンを見せる。しかしその直後にパンチラッシュで流れを引き戻すあたり、さすがにポイント戦になっても巧みさを見せる4タイムス・チャンピオン。
 3Rに入ると、こうしたホーストの再三のラッシュでスタミナを多く消費させられたフェイトーザの攻めが減り、結果ポイントはホーストの側に傾くことになった。「精密機械」の異名も持つホーストの戦略家ぶりが久々に発揮された一戦と言えよう。

第3試合 GP開幕戦 3分3R(最大延長2R)
○ピーター・アーツ(オランダ/チーム・アーツ)
×マイケル・マクドナルド(カナダ/フリー/4.30ラスベガス世界予選優勝
判定3-0 (御座岡30-29/黒住30-29/後川29-27)

※2Rにマクドナルドに膝蹴りでダウン1あり

 マクドナルドはK-1デビュー直後の99年にアーツと対戦したが、当時全盛期にあったアーツとは率直なところほとんど勝負にならなかった。しかしその後着実にステップアップを続け、ついにこのK-1本戦の舞台で再びアーツとまみえるところまで辿り着いた。
 リング上で向かい合うと、先のイグナショフvsガオグライほどではないにせよ、やはり体格差が目立つ。アーツのコンビネーションはワンツーからのローやヒザといったオーソドックスなものだが、一つ一つが的確で重く、マクドナルドにプレッシャーを与えて有利に試合を進める。2Rにはそのヒザでマクドナルドからダウンを奪取。
 しかしその後アーツの額からの出血でドクターチェックが入ると、その間にスタミナを回復させたマクドナルドはその後3R終了まで、ほぼ互角の打ち合いを演じて見せた。この自分の戦いぶりにはそれなりの自信を持っていたようで、試合後は「延長まで行くと思ってたのに凄くムカつく。アーツに勝たせなけりゃ興業的に苦しいんだろ」と毒づいたが、ダウンを奪われて「オレは負けてない」というのはさすがにやや暴走気味と言うべきか。

第2試合 GP開幕戦 3分3R(最大延長2R)
×アレクセイ・イグナショフ(ベラルーシ/チヌックジム)
○ガオグライ・ゲーンノラシン(タイ/伊原道場/7.17 アジアGP優勝者
4R 判定1-2 (後川10-9/朝武9-10/武井9-10)

3R 判定0-1 (後川30-30/朝武29-30/武井30-30)

 試合前にはあまりの体格差で危険ではないかという声すらあったこの試合。ガオグライ自身、「相手は想像以上に大きく、試合前は勝てる気がしなかった」そうだが、いざ始まってみると「力では敵わない分、テクニックで対抗しよう」と、距離を取ってのヒット&アウェイに徹する。このガオグライの距離感が絶妙で、イグナショフが前に出るとサイドステップで回り込み、時折自分から鋭く踏み込んで右ストレートをヒットさせる。イグナショフのハイを紙一重のスウェイバックで見切るなど「これがムエタイの成せる技ですよ(試合後のガオグライ談)」

 一方、常にスロースターターぶりと試合の出来不出来のムラッ気を指摘されるイグナショフだが、この試合でもその悪い所が出てしまった。観戦していたアーツに言わせれば「戦術的に誤ってる。もっと相手をコーナーに詰めるような戦い方をすべき」。しかしイグナショフ自身はこの意見には同意せず、「こちらの戦略ミスというより向こうの戦略が図に当たった。ちょっと相手を甘く見すぎていたかな…。」
 延長では焦ったイグナショフのローブローに悶絶させられ、都合2分のインターバルという“オマケ”まで貰う恰好になったガオグライだが、これで見事東京ドーム進出を決め、「相手は誰でもいいけど、もうちょっと小さい選手だといいな(笑)」

第1試合 GP開幕戦 3分3R(最大延長2R)
×ゲーリー・グッドリッジ(トリニダード・トバゴ/フリー/推薦選手)
○マイティ・モー(アメリカ/シャークタンクジム/8.7 ラスベガス世界予選優勝
1R 2'58" KO (3ダウン:右フック)


 ボクサー出身のモーがパンチで、それに対してグッドリッジが蹴り主体で試合が始まる。だが、体格に似合わず踏み込みが鋭いモーのプレッシャーがやや上回り、特に左フックが再三グッドリッジの顔面を捉える。試合後の談によれば、グッドリッジの陣営にも戦前に立てたゲームプランがあったようだが、「元々ガンガン前に出るタイプで、プランを立てて闘うこと自体あまり好きでない」というグッドリッジは、試合の流れに乗り損ねる結果を招いてしまった。
 グッドリッジの急所攻撃によるインターバルからの再開直後、モーの右ローから返しの右フックでグッドリッジが最初のダウン。このフックは当たりが浅かったようにも見えたが、グッドリッジにはそれまでのダメージの蓄積があったのかもしれない。立ち上がったものの、今度は完全にテンプルに右フックを受けて2度目のダウン、そしてロープに詰められてラッシュを受けた所でレフェリーがストップした。

Last Update : 09/26

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