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(レポ) [K-1] 8.7 ラスベガス:マイティー・モー、GP開幕戦進出

FEG "アルゼ K-1 WORLD GP 2004 世界最終予選トーナメント in Las Vegas "
2004年8月7日(土) 米国ネバダ州ラスベガス:ベラージオ 観衆:4,930人(満員)

  【→大会前のカード紹介記事】 【→掲示板スレッド】


第1試合 トーナメント一回戦(A) 3分3R(延長1R)
×カーター・ウィリアムス(アメリカ/チーム・ブードゥーUSA)
○ブレック・ウォリス(ベルギー/サイアムジム/スウェーデン予選優勝
3R 0'55" KO (左ハイキック)


 1R、カーターはローから首相撲に来たウォリスの腕の上から右フックかぶせる。これがテンプルに決まり、ウォリスがダウン。カーターはこのラウンドでの勝負をかけて速いパンチで襲い掛かるが、ウォリスも踏みこたえ2Rへ。
 カーターは左右のフックを振って前に出て、首相撲にはアッパーとペースを握る。だがこのラウンド中盤以降、カーターはカウンター狙いかペースダウン。
 最終ラウンド、カーターは時折早いストレートを顔面に打ち込むだけで、様子見の動きが続く。ところがここで大逆転が発生。スローなパンチしか見せなかったウォリスが、右ジャブからいきなり左ハイを一閃。これがカーターの頭を打ち抜いた。無名の大型新人が、昨年優勝者で今大会のスポーツベット(賭け)でも一番人気のカーターを、一撃で葬ってしまった。


第2試合 トーナメント一回戦(B) 3分3R(延長1R)
○ユルゲン・クルト(スウェーデン/ヴァレンテュナ・ボクシング・キャンプ/イタリア予選優勝
×ロニー・セフォー(ニュージーランド/ファイトアカデミー)
判定3-0 (30-27/30-27.5/30-27)


 突然の代打起用もあって動きの鈍いロニーに対し、クルトはリズムのいい動きでステップを踏み、ロニーを誘いながらリングを回る。鋭いミドル、ハイを放つクルト。瞬間の組みからの膝の鋭さも衰えてはいない。
 様子見に終始した1Rだが、続く2Rは組んでの膝、伸びのいいストレートを序盤から放ち、エンジンがかかり始めた気配。最終ラウンド、積極的にパンチで出てくるロニーだが、着実に同じくパンチを返し、左ミドルを打ち込んでいくクルトのペースは変わらない。ロニーも終盤はスタミナ切れの感があり、攻め切れないままゴング。手数、有効打ともに上回ったクルトが順当に準決勝に駒を進めた。


第3試合 トーナメント一回戦(C) 3分3R(延長1R)
×ヤン・“ザ・ジャイアント”・ノルキヤ(南アフリカ/スティーブズジム)
○アレクサンダー・ウスティノフ(ロシア/シブタイ/スペイン予選優勝
判定0-3 (28-30/28-29/27-30)


 サウスポーのジャブから前に出るノルキヤ。下がりながらローを返すウスティノフ。2メートル級の巨漢対決は、お互いのペースの読みあいから幕を開ける。だがよく伸びるハイに飛び膝という武器をちらつかせたウスティノフに、若干ノルキヤは出足を止められた印象が残る。
 最終ラウンドに入って若干ペースの落ちたノルキヤを、ウスティノフはステップを使いながら引き回す。ストレートを顔面に浴びて鼻血を流すノルキヤだが、この日は勝利への執着が強く、積極的に左を振っていく。確実にそのパンチはウスティノフの顔面にヒットしているのだが、不思議なぐらいダメージが感じられない動きを続ける。
 飛び膝を見事にヒットさせたこともあり、判定はウスティノフに。ただしこの試合終了時にウスティノフは左スネに大きな裂傷ができており、準決勝進出が困難となった。


第4試合 トーナメント一回戦(D) 3分3R(延長1R)
○マイティー・モー(アメリカ/シャークタンクジム)
×セルゲイ・グール(ベラルーシ/チヌックジム/フランス予選優勝
判定3-0 (29-27.5/30-26/30-26)


 今年4月のアメリカ予選でカーター・ウィリアムスを倒して名前を売ったサモア人のマイティ・モー。会場人気は抜群だ。
 序盤からケンカ腰の豪快フックを振り回してくるモーを、グールは裁きながら確実にローを打ち込んでいく。闘牛とマタドールの戦いを思わせる展開。意外なほど緊迫感が感じられる一戦に。
 グールがこつこつと重ねてきたローが利いてきたか、2Rになると若干モーの動きが鈍ってくる。しかし攻め時と見たグールがパンチで出た瞬間に、モーのパンチがクロスカウンターでテンプルにヒット。同時に放っていたミドルのバランスが崩れたこともあり、グールはスリップ気味ながらマットに崩れてしまう。しかし案外ダメージがあった様子で、起き上がれないグールにダウンカウントがコールされる。
 最終ラウンド、その勢いのままモーは単発ながらも再び強烈なパンチを振り回すように。逆にグールはダウンのダメージがあったか、若干目つきが怪しい。それほど差は無かったが、2Rにダウンを奪ったモーが準決勝進出。ベット2位のグールも姿を消すことになった。


第5試合 スーパーファイト 3分3R(延長1R)
○レイ・セフォー(ニュージーランド/ファイトアカデミー)
×マービン・イーストマン(アメリカ/ルイス&ペデネイラス・バーリトゥード)
1R 1'32" TKO (レフェリーストップ:右ストレート)


 ローの打ち合いから、強烈はフックの連打でいきなりイーストマンをぐらつかせたセフォー。お得意のノーガードでの挑発も飛び出し、絶好調振りを印象付ける。だがハイキックがかすった瞬間、イーストマンの左目に指が入り、ドクターチェック。再開が命じられたとたん、イーストマンの視界の復活しないうちに、セフォーの右フックがヒット。レフェリーストップとなった。
 試合終了後も負けていないとアピールするイーストマンに、セフォーがかかってこいと挑発。イーストマンが感情的になって飛び掛ったところに、パンチを見舞うセフォー。リング上はセコンドも巻き込んだ乱闘となり、警官もリングに上がる。試合的にはセフォーの勝利。再開の判断が甘かったネバダ州のジャッジ陣に混乱の原因はありそうだが、場内は地元の人気選手イーストマン支持のブーイングが鳴り止まず、どうにも後味の悪い試合となってしまった。


第6試合 トーナメント準決勝 3分3R(延長1R)
×ユルゲン・クルト(スウェーデン/ヴァレンテュナ・ボクシング・キャンプ/イタリア予選優勝
○ブレック・ウォリス(ベルギー/サイアムジム/スウェーデン予選優勝
判定0-3 (28-30/28-30/28-29.5)


 クルトはガードを固めながら、ローで距離を見る若干慎重な出足。ウォリスが一回戦で優勝候補のカーターを沈めた勢いを感じているのか。単発でミドル、ハイを振ってみるものの、倒しにいく気配はない。ウォリスの方は、一回戦よりパンチにスピードが増しており、試合の中で成長している感もある。
 2Rも相互のパンチが交錯する展開となったが、お互いに慎重が過ぎて踏み込みが甘い。場内からはブーイングも飛ぶ。ようやくクルトにエンジンがかかったか、パンチで接近戦に出てくるが、この距離になるとウォリスには膝がある。ウォリスのジャブがヒットしていることもあって、クルトの目尻にアザが刻まれ始めた。左右フックに飛び膝と本来の攻めダルマぶりを見せたクルトが、最終1分に攻撃を畳み込む。いいストレートがウォリスの顔面を捉えるシーンもあり判定は微妙な印象に。しかし、圧倒的な打たれ強さと着実に重ねたパンチで、ウォリスにジャッジは傾いた。


第7試合 トーナメント準決勝 3分3R(延長1R)
○マイティー・モー(アメリカ/シャークタンクジム)
×スコット・ライティ(アメリカ)
1R 1'29" KO (右ストレート)


 やはり一回戦のスネの裂傷が祟って、ウスティノフはドクターストップ。この日既にリザーバー戦をKOでクリアしたライティが進出を果たした。ガードを固めて相手の出方をうかがうモー。ライティはその周りを回りながら、早いローを打ち込んでいく。ローが利いているように見えたが、モーはそのローのカウンターに右フックをかぶせて、見事に一発でノックアウト。豪快な勝利で決勝に駒を進めた。


第8試合 スーパーファイト 3分3R(延長1R)
×曙(日本/チーム・ヨコヅナ)
○リック・ルーファス(アメリカ/フリー)
判定0-3 (25-30/25-30/25-30)


 鳴り物入りのK-1転向から早10ヶ月経つも3連敗。そろそろ元横綱の肩書きの威光を失った感がある曙。まして会場人気抜群のベテラン・ルーファスとの対戦は精神的にもキツい。案の定満員の観衆から曙へブーイングが飛ぶ。
 ベッタリと足を付けてノシノシと前に出る曙に対し、圧倒的な体格差もあって、ヒットエンドラン作戦か、ルーファスは軽いステップでパンチをかいくぐる。ルーファスがロープを背負ってのオーバーハンドパンチを放つと、曙はアッパーを返す。若干場慣れした印象が感じられなくもない。双手突きとも言いたくなるようなダブルハンドのプッシュで、ルーファスがロープに飛ばされると、審判のチェックが入る。
 2Rも曙はこのプッシングで注意を取られる。だが曙はとにかくロープに詰めてパンチをぶち込む作戦。ルーファスのロー、オーバーハンドパンチなどは功を奏したようにはみえない。キック流のステップより、確実に相手を追い込むこのスタイルのほうが、曙のスーパーヘビー体格には向いているのだろう。
 ルーファスは最終ラウンドもヒットエンドランのスタイルを崩さず、ボディにパンチを打ち込みながら、リングを有効に使ったステップワークで逃げ回る。隙を見て渾身の右フックもミドルも、曙の規格外の体格には利かない。
 レフェリーのファイト宣告に対して、プッシングもあって更に曙には注意減点が重なる。どちらも決定的な攻撃はないが、既に判定で曙に勝ち目はない。ロープに詰めての後頭部へのパンチもさらに注意減点の対象となった。
 判定はルーファスに。これで曙はK-1 4連敗。この競技への適性自体に疑問符が付く内容となってしまった。


第9試合 トーナメント決勝戦 3分3R(延長2R)
○マイティー・モー(アメリカ/シャークタンクジム)
×ブレック・ウォリス(ベルギー/サイアムジム/スウェーデン予選優勝
2R 2'55" KO (右フック)
※モーが優勝。GP開幕戦出場権獲得


 決勝はキャリア1年足らずのマイティ・モーと、柔道ベルギー代表からの転進、K-1転向後6戦全勝中のウォリスという組み合わせとなった。モーには大振りながら威力抜群のフックがあり、ウォリスにもカーターを一撃で沈めたハイや組んでの膝がある。フィジカルの強さを生かして派手な勝利で駆け上がってきた両者の対決は、過去ラスベガスで行われたトーナメントの中でも、内容の充実度からいって一二を争う好カードとなった。
 ウォリスは序盤からハイを降り、短期決戦を画した攻め。一方モーは大振りが鳴りを潜め、若干コンパクトなパンチになっている。一回戦二回戦でもらったローのダメージもあってか、ラウンド終了直前にローを重ねられて、その表情がゆがむシーンも見られる。
 ガードが固く、首の安定が抜群のウォリスはやはり打たれづよい。パンチをガードしながら膝を打ち込んでいく。バッティングもあってか、ウォリスの額から流血がみえる。勝負を急いだウォリスは右ストレートとハイという伝家の宝刀で攻め込むが、モーはまたもや大逆転の奇跡を起こす。ウォリスの左ミドルをボディで受けながら、右フック一発でウォリスを沈めてしまったのだ。そこまで優勢気味に試合を進めていたウォリスは、この一発で大の字にダウン。ボクシング出身の必殺のパンチを武器に、脅威のサモアン戦士が武道館へと歩を進めた。
 無名選手が多かったトーナメントではあるが、逆にそれが初期K-1を思わせる倒しあいに徹した戦いを呼び込んだ感がある。「原点回帰」にのりだしたK-1にとって、幸先のいい内容となったのではないだろうか。


第10試合 スーパーファイト 3分3R(延長1R)
○ゲーリー・グッドリッジ(トリニダード・トバゴ/フリー)
×デューウィー・クーパー(アメリカ/ワンキックス)
判定2-1 (28-28.5/28-29/29-28)


 ラスベガス大会の常連となったクーパーは、地元在住ということもあって会場人気抜群。ブレイクダンサーによる派手な導入もあって、ファンの歓声が大きい。一方グッドリッジは今や盟友となったトム・エリクソンを従え、セコンドにはスティーブ・カラコダ氏もつく。
 メインらしい睨み合いで開けた1R。グッドリッジの突進プレッシャーに対し、クーパーは足を使ってサウスポーからローとパンチを着実に当てる。終了間際には、クーパーのパンチの連打を、グッドリッジが両手を広げてノーガードで受け続ける一幕も。早くもショーマンぶりを発揮する。
 2Rも同様の展開。クーパーが回し蹴り、飛び膝で観客を湧かせる。グッドリッジはやや突進力が落ちた様子。だが残り30秒、クーパーが左ストレートを放った時に、グッドリッジの右フックがクロスし、クーパーは腕を巻き込まれ尻餅。グッドリッジのフックは当たっていないにも関わらず、レフェリーはダウンを宣告する。クーパーの抗議は聞き入れられず、場内からはブーイングが飛ぶ。
 3R、グッドリッジが右ボディを連打し攻勢。苦しそうに息をするクーパーだが、着実にローとジャブを返し、反撃の糸口を探ろうとする。最後まで果敢に攻めるが、グッドリッジも慎重で、決定打を与えず。判定は割れ、グッドリッジが勝利を拾ったが、2Rのダウンが無ければクーパー勝利の内容だった。クーパーにもGP開幕戦出場のチャンスが転がり込んでもおかしくはない。

Last Update : 08/09

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