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(レポ&写真) [パンクラス] 8.22 梅田:前田、ゾンビの執念にガックリ

パンクラス "Sammy Presents PANCRASE 2004 BRAVE TOUR"
2004年8月22日(日) 大阪・梅田ステラホール

  レポート&写真:井田英登  【→大会前のカード紹介記事】 [→掲示板スレッド]

メインイベント フェザー級 5分3R
○前田吉朗(パンクラス稲垣組)
×フレジソン・パイシャオン(ブラジル/グレイシー・バッハ・コンバット・チーム)
判定3-0 (30-27/30-28/30-28)


 11連勝という驚異の記録を打ち立てながら、試合を終えた前田の表情には笑顔はなかった。「思った以上に自分が弱くて、がっくりしましたね。ああいう所できっちり終わらせられない自分が情けなくて。これまでの相手やったら、あいつ試合中5回死んでますよ。あいつ、ホンマ、ゾンビですよ…」

 呆れ果てたと言った調子で、肩を落とすばかり。中井祐樹を下したパイシャオンは、あの強心臓・吉朗がそういいたくなる程のタフネス。まさに“不死身のゾンビ男”だったのである。

 序盤、スタンドでの攻防でバックに付かれた前田だったが、突き放して半身から放ったパンチをヒットさせ、ピンチを脱する。さっそく柔術系の選手らしい執拗なタックルを仕掛けて来るパイシャオンだが、前田はその頭部に向けてハイキックを繰り出す。これは空を切ったものの、続いて飛び膝蹴りを放ち、かさにかかったパンチで襲いかかる。スピード、威力ともにクラス標準を遥かに上回った、迫力満点の攻撃が続く。恒例“吉朗ショー”開幕だ。何度迎撃されても必死に組み付いてくるパイシャオンを突き飛ばし、アリ猪木状態から顔面にカカト落としをヒットさせる前田。

「あいつ顔面踏んだときも、殴ったときも、瞬間、白目剥くんですよ。でもすぐバッと戻るんですよね」という言葉通り、一瞬これでフィニッシュだなと思われたこの攻撃にも、驚異の打たれ強さで反撃に出て来るのがパイシャオンの恐ろしさ。すかさず上になってパンチを落とす前田を蹴り放し、ロープの下に頭を入れて逆に下からパンチを打ち“復活”を見せる。それではと抱き着いて来たパイシャオンを釣り上げ、バスターで痛めつける前田。だが、大きなダメージは与えられないまま、試合は進んで行く。どこでストップされてもおかしくない程、前田の攻めはエグさを極めていたというのに、だ。

 ラウンドが変わっても、パイシャオンの不死身ぶりはかわらない。タックルを切って頭を蹴り付けても、ジャストミートとも思える左フックを叩き込んでも、マウントからのパウンドをぶち込んでも、まるで「13日の金曜日」シリーズの怪物・ジェイソンのように蘇って執念のタックルを仕掛けて来る。足を、腰を、とにかく凄い執念でからみついてくる。一瞬の隙でもみせると、がぶった下からすくい上げてテイクダウンしてくる。恐るべきスタミナと精神力だ。

 膠着しそうになっても、前田のガードの足を取ってアキレス腱固めを仕掛け、立って逃げられても、さらにその足を放さずにヒールホールドを狙って来る。この異常な粘りに負けて、前田はいつもの爆裂ファイトに持ちこめない。逆にマウントを奪われて、パンチ連打を浴びるピンチに陥ってしまうが、これはゴングに救われた。

 終始「自分が情けなくて」と語り続けた前田だが、名門グレイシー・バッハの黒帯で2002,2003年と柔術世界大会を制した強豪をここまで追い込んだ事を誇るべきだろう。最終ラウンドも苦し紛れのソバットやバックブローで間合いを外しながら、執拗なタックルで粘るパイシャオンだったが、決定的な局面は作れず終い。ようやくバックを取ったところで、ゴング。試合が終了してしまった。

 これがよほど悔しかったのか、分けようとするレフェリーに従わず、なおも睨み付けるパイシャオンに、前田が拳を上げる。揉み合った両者は殴り合いそうになり、レフェリーとセコンドが大慌てで両者を分ける。判定は、終始攻勢を途切らせなかった前田に傾いた。

「終わってもまだ来るンで。リングにおる間は相手は、極端な話僕を殺しに来てると思ってるンで、僕もコイツ殺してやろうと思って」と語る前田。記念すべき団体新記録の11連勝にも「こいう勝ちの連勝やったら要りませんね。自分が楽しくなかったですから」と、喜びの色はない。「もう一度やれば負けない」と試合後のパイシャオンの言葉を伝えられると、一言「やります」とだけ短く答えて会場を後にした。

 試合直前に指の故障を負いながら、それを表には出さず闘い続けた前田を称えた尾崎允実パンクラス社長は「山本(篤:今年のネオブラッドトーナメント優勝者/前田との対戦権を保有)との試合は11月のNKホールでなくてもいいとは思います。年内にはライト級、フェザー級でランキングとベルトを決めるトーナメントをやりたかったんですが、ちょっと時間がかかりそうですね。32人ぐらい集めたトーナメントをやりたいと思って、リストアップには入ろうと思ってます」と、前田を軸にしたこの階級の最強トーナメントを行う構想を明かしている。「ホントきつかったんで、ちょっとリフレッシュしたいスね…」と珍しく弱気に今後の予定を語っていた前田だが、“11連勝男”にそんな暇も当分許されそうにはない。

セミファイナル ライトヘビー級 5分3R
○ニルソン・デ・カストロ(ブラジル/シュート・ボクセ・アカデミー/4位)
×渡辺大介(パンクラスism/5位)
2R 1'14" KO (膝蹴り)


 ニルソンの強打を警戒して徹底したヒット・アンド・アウェイ作戦を実行した渡辺だが、対するニルソンは片手で頭をグリップしてのワンハンドパンチやクリンチからの膝で対抗。それでも至近戦では引かずに撃ち合うなど、渡辺がレスラーらしいガッツを見せ、試合は一気に異種格闘技戦の緊張感に包まれる。
 2Rに入って、ローのカウンターに強烈な右のカウンターを浴びて渡辺は失速。首相撲からの膝を連打されダウンを喫してしまった。頭頂部から出血するほどのダメージを負った渡辺は、立ち上がると試合終了も認識できていない様子で、ふらふらニルソンと再び闘おうとするが、セコンドに制止されていた。
 9月のシュートボクシング主催のS-Cup横浜大会に出場が決まっているニルソンだが「既に今から闘いの準備が始まっている。肘ありのルールも、シュートボクセに参加して以来ずっとやっているので問題ない」と余裕の発言を残した。

第5試合 ウェルター級 5分2R
○アライケンジ(パンクラスism)
×男!徳岡(WATER)
1R 終了時 ドクターストップ


 ハードパンチャーとして鳴らし、修斗時代の02年にはミドル級新人王に後一歩という所まで上り詰め、昨年10月には当時世界ランク9位だった池本誠知と引き分けた徳岡だけに、パンクラス参戦でさらなるブレイクが期待されたが、この日は得意のパンチにも冴えが見られず、頭をグリップしてのワンハンドパンチ連打にぐらつかされ、アリ猪木状態からの踵落としを下腹に食う(これはローブローとなり、一時試合中断)など、アライの攻勢が目立つ。
 結局試合は、1R終了後のインターバルに徳岡の額のカットが骨膜に達した事が判明。ドクターストップとなり、呆気無い幕切れとなった。一方、アライは大石の代打としての緊急参戦ながら、修斗出身の徳岡を返り打ちにして、先月のDEEPでの中尾受太郎戦の敗北に一矢報いた形となった。

第4試合 ヘビー級 5分2R
×小澤 強(禅道会/1位)
○セハク(RJW/CENTRAL)
判定0-3 (19-20/18-20/19-20)

第3試合 フェザー級 5分2R
△亀田雅史(総合格闘技道場コブラ会)
△砂辺光久(HYBRID WRESTLING 武∞限)
判定1-0 (20-19/19-19/19-19)

第2試合 ミドル級 5分2R
○花澤大介13(総合格闘技道場コブラ会)
×ザ・グレート浪花(総合格闘技夢想戦術)
判定3-0 (20-19/20-18/20-19)

第1試合 ウェルター級 5分2R
×熊谷真尚(禅道会)
○宮崎裕治(総合格闘技道場コブラ会)
1R 3'29" チョークスリーパー

<パンクラスゲート>

第3試合 フェザー級 5分2R
△川上力也(P's LAB大阪)
△中村健太(禅道会広島支部)
時間切れ

第2試合 フェザー級 5分2R
○西川雄高(総合格闘技夢想戦術)
×小林洋祐(松坂クラブ)
1R 4'14" 腕ひしぎ十字固め

第1試合 フェザー級 5分2R
○上畑哲夫(谷柔術)
×北川幸一(松坂クラブ)
1R 3'36" アキレス腱固め

 

Last Update : 08/22

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