BoutReview
記事検索 by google
news

(レポ&写真) [修斗] 5.3 後楽園:高谷、パーリングをKO。ルミナ流血勝利

サステイン "Crymson presents プロフェッショナル修斗公式戦"
2004年5月3日(月/祝) 東京・後楽園ホール
認定:インターナショナル修斗コミッション

  レポート:若葉り子(古谷わか改め:第9,8,5,3,1試合),小林秀貴(その他試合)
  写真:井原芳徳  【→大会前のカード紹介記事】 【→掲示板スレッド】

 

第9試合 セミファイナル ライト級 5分3R
×ステファン・パーリング(アメリカ/ジーザス・イズ・ロード/世界1位・環太平洋1位)
○高谷裕之(格闘結社田中塾/世界4位・環太平洋3位)
1R 2'11" KO (左ハイキック)


 今、修斗のリングを先頭に立ってかき回している男、と言えば文句無く高谷(たかや)の名が聞こえてくるだろう。昨年2月のプロデビューから1年足らずの彼が、今年1月、ジョン・ホーキとの対戦のチャンスを得て、ドローという大金星に値する殊勲を演じたのは記憶に新しいところだ。その高谷の前に立ちはだかるのは、ランキング1位、KIDを膝蹴り一発で秒殺TKOしたことのあるステファン・パーリング。ストライカー同士の対決、風雲児・高谷の真価が問われる1戦である。
 予想通り、スタンドでのプレッシャーの掛け合いから静かに試合が始まる。高谷が左ローの牽制で挨拶をすれば、パーリングが左の光速ジャブで応える。高谷が右のロー、ミドル。静かにパーリングも右のミドルを返す。

 強烈なプレッシャーの掛け合い。いつ糸が切れるか解らぬような張り詰めた展開に対して、シビレを切らした客席からは怒号が飛ぶ。動いたのはパーリング。ほんのわずかな隙を突いて、1,2,3と左右のコンビネーションパンチを素早く繰り出して前にでる。高谷も1,2で応戦、さらに右のミドルを叩き込む。パーリングはそれに対して左のジャブで応えようと“神の拳”を繰り出した。その直後「パシッ」という乾いた音。一瞬の静寂のあと、パーリングがゆっくりとマットへ崩れ落ちる。高谷の鋭利な左ハイがパーリングの右頬付近に突き刺さったのだった。

 大の字になるパーリング。たまらず鈴木レフェリーが試合をストップする。2分11秒。あまりに強烈すぎるKO劇に、会場はあっけに取られたままだ。狂喜乱舞する田中塾応援シートと、その他の客席の温度差がその壮絶さを物語っている。高谷が勝利者のコールを受ける頃になるとようやく会場全体が事態を把握し、壮絶な勝利に対する熱い拍手に包まれた。リング上に横たわるパーリングはなかなか蘇生しない。やっと意識を取り戻したものの、記憶が激しく飛んでいる様子。セコンド陣から事の顛末を丁寧に説明されるとようやく自分の敗北に気づき、笑顔で高谷と握手を交わした。

 また一つ、でかい事を「やらかした」高谷。この次に彼が何をやらかしたとしても、もはや驚きを持って迎える人間は多くはないだろう。そしてチャンピオンであるノゲイラへの対戦要求に「無謀」という表現も不要なのかもしれない。

 
◆高谷(リング上)「いい試合ができるだろうと思っていたので今、とても気持ちがいいです。あまりパンチは痛くありませんでした。フィニッシュのハイキックはは自然に出ましたね。先生の許しが出れば、チャンピオンのノゲイラ選手に挑戦したいです(田中塾長は首を横に振っている)。また、倒す試合をどんどんやりたいと思いますので、応援よろしくお願いします。」
(バックステージ)「(試合の感想)出来すぎですねぇ〜(笑)。(東金ジムでの)キックボクシング修行の成果ですね。フィニッシュはカウンターでは無いです。ハイは狙ってなかったんです。ミドルくらいで行こうと思っていました。パーリング選手は低い構えで来ると思っていたので。
(パーリングのパンチは?)重い、というより硬いという感じでした。途中でこめかみに喰らってから、視界がブレましたね。
(作戦は?)ローを効かせて、下に意識を行かせてからパンチで倒す予定だったんですが、ハイに行っちゃいましたね(笑)

(ライト級の日本人でパーリングを倒した選手は初めてですが?[99年に倒した五味はウェルター級])外国人だから、なんて言ってられないですよ。強い人はいっぱいいますから。
(いよいよチャンピオンシップでしょうか?)出来すぎですよねぇ〜?自分でついていけないですよ(笑)。もう1試合挟むかどうかは解りませんが、ぜひノゲイラ選手とは戦いたいですね。先生に言わせると、きっと今日はまぐれ勝ちだと思うんで。本当のオレの実力はまだわかっていない!って言われると思いますね。でも自信はありますよ。倒せる自信はあります。一言、『僕と戦ってください!』って感じですかね。まぁ、誰とでも戦いますよ。今日は良い勝ち方が出来たので、先に挑戦させてもらえたら嬉しいですね。
(キックの修行、全日本キックでの敗戦は活きた?)キックのジムに通って練習した甲斐がありました。ジムのみんなも喜んでくれていると思います。あの時に負けたからきちんと通うことができたんだと思っています。「一度負け始めると負け続けてしまうんじゃないか?」ってプレッシャーを感じるようになって、それできちんと通い続けることができました。今日のフィニッシュは奇しくも先日のキックでの負け方と同じでしたしね。
(左膝外側のアイシングは?)変なところにローが当たったみたいで。明日あたりに痛くなると思います。
(キックパンツを履いたのは何故?)キックボクシングの修行を意識したこともあるし。で、掣圏道で2回戦ったときのコスチュームなんですよ。初心に帰るために履いてきました。(リラックスしてましたね?)今日のテーマはリラックスでしたから(笑)」

◆パーリング「勝ったのか、負けたのか…。でも結果は結果だから。高谷選手には素直におめでとう、と言いたいですし、敬意を表します。彼はリラックスしていましたね。とても技術があったし。そして、キックが速かった!精神的にも強い選手ですね。びっくりするようなハイキックは、予測も見切ることもできませんでした。記憶もありません。コンディションはとても良かったんです。普通にディフェンスをしてパンチとキックで攻めて行こうとプランを立てていましたが、高谷選手もディフェンスが上手くて、そしてキックが速かったので…。
(もし高谷がノゲイラに挑戦したら?)チャンスはあると思いますよ。でもノゲイラは本当のチャンピオンですからね。また、驚くような攻撃技を出せば、チャンスはあるのではないでしょうか?
 今は、すぐにハワイに帰って、まず子供の顔が見たいですね。それからまたジムに通って練習を再開します。ディフェンスの練習を積まないとね。次の試合に集中して。自分も相手をびっくりさせるような技を身につけないと(笑)。私はいつでもファイティングスピリット、そして神様とともにありますから。練習を積んで、またチャレンジしたいです。」


第5試合 ライト級 5分2R
○佐藤ルミナ(K'z FACTORY/環太平洋10位)
×エリカス・ぺトライティス(リトアニア/ティターナスジム)
2R 2'20" 三角絞め


 後楽園ホールではメインクラスの試合になると、各コーナーの選手が客席後方より登場し、観客の声援、拍手、握手を求めて差し出される手に応えながら、スポットライトを浴びて長い時間をかけてリングインすることが多い。もちろん入場テーマも別々だ。しかし今日の佐藤ルミナは全10試合中の第5試合目の登場。しかも2回戦ということもあり、赤コーナーの彼は、青コーナーのリトアニア人、エリカス・ペトライティスと同じテーマ曲に乗って、リングすぐ側の控え室入り口からごく短い入場ロードを歩んだ。違和感を覚えたファンは少なくは無かっただろう。
 それでもひとたびリングに上がれば、会場中がルミナに対する嬌声に包まれる。すっかりライト級にシェイプされた身体は強いオーラを放っている。セコンドにはキックボクサーの小野寺力の顔も見える。

 ルミナのローにペトライティスが組み付く。力比べの差し合いを制したのはルミナ。するとペトライティスは下から暴れるようにパンチを乱打し、必死の抵抗を見せる。そのパンチの豪雨が過ぎ去ると、落ち着いて片足を抜き、ハーフマウントを取るルミナ。中腰の状態から激しくパンチを落として一瞬の隙を作り、素早くサイドにつくと、ペトライティスの両腕を押さえつけてコントロールし、上四方〜逆サイドへと移動すると、とんとん拍子にマウントへと辿り着く。ペトライティスも下からエビで跳ね返して見せるが、ルミナはそれを許さずに容赦なくパンチを落としていく。
 だが突然、残り37秒の時点でドクターチェックが入る。グラウンドでのポジション争いの際のバッティングで、ルミナが左眉尻をカットしたのだ。まさかの流血に会場内は騒然とする。しかし傷に問題はなく、ルミナがマウントの状態で試合は再開。タイミングを見計らって腕を捕らえ、開きに行ったルミナだったが、スリップして外れてしまう。残り時間あと30秒あまり。カリスマの1本を嘱望する超満員の観客からは割れんばかりの悲鳴が。逃れたペトライティスが半身を起こしたところをすかさず足関節を狙うが、これもまたスリップして抜けてしまう。驚嘆とため息と地団駄にも似た轟音の中でゴング。

 2R、ルミナが胴タックルに行くとそれをガブってペトライティスがマウントを奪取する。しかし回転して、前後逆向きのマウントを奪い返すルミナ。ペトライティスの足とボディにパンチを落としながら鬼のような笑顔を見せる(右写真)。しかしペトライティスは後方から身体を起こしながらルミナのバランスを崩す。すかさず下から足を狙うが、またしてもスリップしてマウントを制されるルミナ。今度は腕を狙いながら体制を入れ替えようとするものの、追い討ちの如くつるりとスリップ。力でマウントを奪取し、パンチでルミナのガードを開こうとするペトライティス。

 しかし冷静に下から左腕を捉えると絞り上げるルミナ。激しいポジション争いでカットした傷口が開き流血は激しさを増している。おかまいなしに、両足に力を込め、ペトライティスの首に絡みつけるとがっちりとロックする。みるみるペトライティスの顔面が紅潮していく。会場のボルテージが頂点に達したところでペトライティスががっくりとマットに崩れ落ちた。

 次の瞬間、顔面を血の赤に染めたルミナが、会場中に響き渡る歓喜の声を上げ、観客はスタンディングオベーションで応える。獲物をしとめた後のマタドールのように、血を滴らせ、勝利の悦びの中でリング上を歩き回る姿からは、『カリスマの復活』というよりも、一つの戦いを制した男のシンプルで強烈な勢いを感じた。

 
◆ルミナ(リング上)「最後は後悔したくなかったので、もう後がないな、と、三角でがっちり極めました。(7月ハワイのバオ・クアーチ戦について)相手うんぬんではなくて、一人一人、一戦一戦を戦い抜いていきたいです。自分ももう31歳なんで、残りはあまりないと思っていますから、頑張って行きたい。久しぶりの後楽園ホールでの試合、今日はずいぶんやられちゃいましたが、次は一方的にぶっとばすような試合をやりたいので、よろしくお願いします。」
(バックステージ)「流れた血が耳の中に入っちゃって…(試合の感想)素直にホッとしています。やっと勝てた、って感じです。相手がワセリンかなにか滑るものを身体に塗ってたみたいで、押さえ込みに行くと滑るんですよ。そうくるか?って感じで(1Rに)わざとジャッジに聞こえるように大きい声で言ったんですけどね(苦笑)。
(流血は?)パンチでは無いです。押さえ込みに行ったときにヒジか頭が当たったバッティングですね。4,5日前に練習中のバッティングで鼻をカットしていて、その傷が開いてしまったのかと思って。そっちの方が深かったのでやばい、と思ったら違う場所だったし、2Rだからなんとかなる、と思っていました。2針縫いましたね。
(今日はだいぶ攻め込んでいたようだが?)とにかく勝ちたかったので。綺麗じゃなくてもいいから、とにかく勝ちたかったです。
(相手の印象は?)アマレスベースの凄いパワーのある選手でした。計量で身体を見た時に、化け物みたいな背筋をしていてびっくりしましたよ。あと、気持ちも強くて、押さえ込んでいた時も下から必死さが伝わってきました。腕が太くて力も強くて極めにくかったので、パンチで弱らせてから極めようと思っていました。足は何か塗っていたみたいで、つるつる滑っちゃって、極めるチャンスはあったんですが。あと気持ちが強い選手だったのでタップはしないな、と思ったのでKOか落とすしかないな、ということで、ラストは三角で落としに行きました。

(作戦は?)スタンド、打撃でぐらつかせてからグラウンドに持って行こうと思っていました。打撃の練習を凄く積んできたので。でもスペースがすぐに見つかったので組み付いていきました。作戦は成功したんじゃないですかね。
(1本勝ち、秒殺について)秒殺!ってファンの声は聞こえてましたよ。秒殺はできなかったけれど1本で極めようと。自分の中では1本取りに行く気持ち、姿勢を見せることができたと思っているので、満足しています。
(次回は7月のバオ・クアーチ戦だが?)少ししか時間がないけれど、何が何でも勝ちます。自分の身体が勝手に1本取りに動いて行ってくれると思います。見ている人の期待を裏切らない試合をできると思っています。
(久しぶりの後楽園ホールだったが?)ホールでの勝ち名乗りはやっぱり気持ちよかったですね(笑)。
(クラスB選手相手の5分2ラウンドだったが?)特に意識はしませんでしたが。時間が短い分、パワーファイターがスタミナ関係無しに来るので恐いですね。
(赤・青同時の短い入場だったが?)すぐに試合ができるから良かったですよ。他の人と同じ。前座だからどうのこうの、って気持ちはありませんね。特別扱いしないでくれた坂本さん(サステイン代表)に感謝しています。」


第10試合 メインイベント ミドル級 5分3R
×中尾受太郎(シューティングジム大阪/世界2位・環太平洋2位)
○菊地 昭(K'z FACTORY/世界4位・環太平洋4位)
判定0-2 (浦29-30/菅野29-29/鈴木29-30)


「どちらが勝っても壮絶な一本決着になるだろう」「三角か十字か」。メインは観客に熱い期待を抱かせる、極めの強い選手同士の一戦だったが、試合は予想を大きく裏切る膠着戦。1、2Rはスタンドで見合ったまま膠着、3Rは寝技で膠着と、会場は修斗には珍しくブーイングさえ起きそうな雰囲気に包まれた。
 中尾は「頃合いを見て仕掛けようと思っていた」が「仕掛けが遅すぎた」と語り、菊地は「左ストレートを警戒していた。怖かった」と振り返るように、両者ともに1、2Rはスタンドで見合ったままの状態が続いた。目立った攻防は、菊地のタックルを中尾が切り、コーナー際で差し合いとなったぐらい。その差し合いも膠着していた。
 3R、菊地は中尾に組み付いてコーナーに追いつめ、足をかけてテイクダウン。ハーフガードから時間をかけてパスガード。そして横四方固めでがっちりと中尾の上体を押さえ込む。終盤、鉄槌を嫌った中尾の隙を見逃さず、菊地がマウント、バックとポジションを奪ったところでゴング。
 判定結果は僅差で菊地。内容だけ見れば単なる凡戦だが、二人の世界ランキングは中尾が2位で菊地は4位。この試合で菊地は単なる1勝を得ただけでなく、ミドル級王座決定戦(ジェイク・シールズ vs. レイ・クーパー:7月9日・ハワイ)の勝者への挑戦という意味でも、1歩前進したといえよう。
 

第8試合 バンタム級(ノンタイトル戦) 5分3R
○マモル(シューティングジム横浜/世界王者)
×吉岡広明(パレストラ東京/世界5位)
3R 4'41" TKO (レフェリーストップ:膝蹴り)


 バンタム級チャンピオンのマモル。今回はノンタイトル戦ではあるがホビーニョ(ホビソン・モウラ)との防衛戦が噂される中で、落とすことができない大切な一戦だ。対する吉岡は得意の柔術を駆使して、チャンピオンに一矢報いることができるのか。
 お馴染み「暴れん坊将軍のテーマ」に乗って入場のマモルは、決意の程の表れかアフロヘアから巻きをキュッと引き締めてパンチパーマ姿に変身して登場。
 試合開始からスタンドでの展開。吉岡が左ローで牽制すればマモルは1,2を放ち、2度目の吉岡の左ミドルをキャッチしてテイクダウン、上を取る。吉岡は得意の柔術テクを活かして、下から身体を密着させて昇っていく。しかしマモルもそうはさせずに自ら立ち上がり、猪木・アリ状態から吉岡をスタンドに戻させる。この後、吉岡の左キックをマモルがキャッチ→テイクダウン→マモルが上を取る→猪木・アリから再びスタンドに というムーブが繰り返されることとなる。スタンドでの再開から、ロープ際での差し合いに。足をかけて倒そうとする吉岡と膝蹴りを放つマモル。残り2分、差し合いからポジションが入れ替わる隙を見て、マモルの左膝が吉岡の右アゴを砕き、ダウンを奪う。蘇生した吉岡にすぐさま組み付いて上を奪うマモルだったが、またも吉岡を立たせて両者スタンドになった中でゴング。

 2R、マモルの左パンチと飛び膝のコンビネーションが炸裂。吉岡の左膝に反応したマモルが右ハイから膝の連打を見舞う。吉岡の頬に血が赤く染まる。ここから膝蹴りに勝機を見出したマモル。途中、組み付いて吉岡を抱きかかえ上げるとバスター気味にマットに叩き付けながらテイクダウンをしてみせるものの、やはりスタンドへと吉岡を誘う。左のロー、ミドルで反撃する吉岡だったが、マモルがパンチで距離をつめると首をとらえて至近距離から効果的に膝を叩き込んでいく。
 3R、蹴りをキャッチされ、テイクダウンされた吉岡は、後がないとみて必死に下からキックを見舞っていく。しかしスタンドへと勝負は戻される。組み付いたマモルがコーナーへ押し込むと、吉岡はロープを背にしてマモルの首をフロントネックロック気味に捉えながら抱きついていく。一方のマモルはボディにパンチ、膝を叩き込む。しばらくの攻防の後、離れ際にマモルの左膝が吉岡の顔面を捉えて2度目のダウンを奪う。根性で耐え抜いた吉岡だが、たたみ掛けるように右フックでテイクダウンを奪うマモル。吉岡も渾身の力で下から左足を掴まえヒールを砕きにかかるが、マモルは逃げ切ってみせる。残り1分を切ったところでマモルが膝、右ハイのコンビネーションで一気に料理の仕上げにかかり、吉岡の首を抑えると膝を連発。たまらず吉岡は3度目のダウン。レフェリーが試合をストップし、マモルが時間ギリギリながらもTKO勝利を納めた。

◆マモル(リング上)「本当はこんなに長引かせるつもりではなかったんですけれど。行くべきときに行けない自分の悪さが出てしまいました。(膝にこだわった?)そういうわけではありません。当たりそうだったので狙ってみました。ホビーニョは目の上のタンコブなんで…。今日のような試合をしているようじゃダメですね。きっちり出直したいです。長々と引っ張ってしましたが、今日はありがとうございました。」
 

第7試合 フェザー級 5分3R
○今泉堅太郎(SKアブソリュート/世界1位・環太平洋1位)
×秋本じん(秋本道場JUNGLE JUNCITON/世界5位・環太平洋4位)
判定3-0 (浦30-27/菅野30-26/鈴木29-27)


 両者ともにフェザー級の王座に就いていてもおかしくない経歴の持ち主。秋本は02年9月、時のフェザー級王者、大石真丈から防衛戦の相手に指名され、結局実現はしなかったものの、一度はタイトル戦が決まりかけていた。一方の今泉は現王者・松根良太と2回戦って1勝1敗。昨年のフェザー級サバイバートーナメント決勝で松根に惜敗したものの、その差はわずか。今日の結果次第で今後のフェザー級王座挑戦の行方が左右される重要な一戦となった。
 1R、秋本は引き込んで下になり、足関節技、三角絞め、腕がらみと、ねちっこく関節技を仕掛ける。しかしそこはサンボで全日本を5度制している今泉が、落ち着いた表情で対処。終盤には今泉が上のポジションをとり、一発一発声を上げながら力のこもったパウンドを落とした。

 2R、またも引き込んだ秋本に対し、今泉は冷静に上のポジションをキープ。ラウンドの前半を支配した。しかし残り1分、スタンドの攻防で、秋本は力を振り絞るような左右のフックを連打。今泉をコーナーに押し込んだ。
 3R、両者体力的に消耗した中で、首投げのうち合いを制した今泉が上を取る。残り1分45秒、今泉の鉄槌を嫌がった秋本が背を向けると、今泉はするりとバックマウントを奪取。チョークで一時はキャッチを奪うが、秋本も冷静に今泉の腕のロックを解き、粘りを見せる。この攻防が決め手となり、今泉は判定勝利とともに、ランキング1位の座もキープした。
 今泉はリング上で「次はフェザー級チャンピオンの松根選手とやりたいんですけど、もし試合をしたら、きっといい試合ができると思うんで、応援よろしくお願いします!」とタイトル戦の実現を訴えた。
 

第6試合 ウェルター級環太平洋王座決定トーナメント準々決勝 5分3R
○村浜天晴(グレイシー・バッハVTチーム/環太平洋8位)
×冨樫健一郎(パレストラ広島)
判定3-0 (浦30-27/横山30-28/鈴木30-28)


 ここまで7戦負けなしの冨樫に対し、村浜はこれで20試合目。冨樫がこのまま負けなしで守りきるのか、それとも村浜が、入場時に着ていたTシャツの文字、「芸人魂」を発揮するのか、二人の試合哲学がぶつかりあう一戦となった。
 村浜はいつも通りインド映画のテーマ曲に乗って入場。しかし試合も入場曲同様景気よく、とはいかず、寝技の膠着が多い展開に。その中で、村浜は、1R、2Rともに投げや足技でテイクダウンを奪い、上のポジションをキープ。やや優勢に試合を進める。
 3R終盤、両足タックルでテイクダウンを奪った村浜が、上からコツコツとパンチを当てつつポジションをキープ。勝敗の分かれ目を制した。冨樫も下のポジションから三角絞めや腕十字を狙ったが、村浜にきっちりと防御され、持ち味を封じ込まれた。
 

第4試合 ウェルター級 5分2R
○山崎 剛(チームGRABAKA)
×アンタナス・ジャズビュティス(リトアニア/インパルサス)
1R 4'10" 腕ひしぎ十字固め


 ジャズビュティスがパンチにきたところで山崎がカウンターのタックルを仕掛け、テイクダウン。山崎は相手のガードポジションの中から力強い右のパウンドを放つ。これをジャズビュティスは密着して防ごうとするが、山崎はしっかりと上体を起こして密着を許さない。さらに山崎は足を割ってパスガード、横四方固め、上四方と、次々に有利なポジションを奪い、ラストは腕十字。ジャズビュティスも山崎が腕を取る動作には気づいていて、必至にもがいてはいたが、山崎は太腿でジワジワと上腕を固定。相手のクラッチを外すのに苦労はしなかった。1年3カ月ぶりの復帰戦を見事、一本勝ちで飾った山崎は、赤コーナーに駆け上がってGRABAKAのセコンドと喜びを分かち合った。
 

第3試合 ウェルター級 5分2R
×大河内貴之(パレストラ東京)
○鹿又智成(武蔵村山道場)
判定0-3 (横山18-20/浦18-20/鈴木18-20)


 入場セレモニーの時点で今日の鹿又は何かが違っていた。彗星と呼び称された期待の新人は、昨年の新人王決勝戦の秒殺劇で失速。あれから半年間が経った。無造作に伸びた黒い髪に痛いほどの視線。戦い、勝利への飢えたオーラが全身から発せられていた。対する大河内も本日で17戦目、ベテランの域に足を踏み入れるにあたって、クラスA昇格をかけて負けられない一戦である。
 ゴングとともに右飛び膝から突っ込み、強引にテイクダウンを奪うと、中腰の体制から半年分の鬱積を晴らすかのようにパンチ、鉄槌を落としていく。30秒ほどして落ち着くとコツコツと的確なパンチへとスイッチし、冷静に大河内のガードを開いていく。大河内は下から鹿又の腰骨に足の裏を当て、プッシュしながら押し戻す。また下から絡み付いて仕掛けようとするが、鹿又はその大河内の身体を抱きこむように抱え上げ、自分の有利なポジションに移動すること数回。負けじと大河内も下から足を鹿又の首にかけ、絞めにトライ。しかし、意地でもパスしたい鹿又は一度離れて中腰からパンチをおとすとサイド、さらに上四方、逆サイドと激しくポジションを移動し、チャンスを見出そうとする。

 2R、ゴング早々、大河内の左パンチがヒットするがカウンターで組み付いた鹿又がテイクダウン。的確なパンチを落としながらガードをパスしようと試みるが、ベテラン大河内は素早い対応でクローズガードをキープする。すると鬼の形相で「うぉーっ!」と怒号を上げながらパンチを落とし、強引にバックを奪った鹿又。しかし大河内も落ち着いて、前転、後転と自在に身体を回転し鹿又のバランスを崩そうとする。だが、意地でも大河内の胴に巻きつけた両足のクラッチを解かず、オープンガードの状態をキープする鹿又。まるで荒馬を乗りこなすロデオボーイさながらだ。
 ラスト1分半、ハーフマウントに戻されてしまうと、鹿又は素早いジャンピングパスでサイド、さらにもう1ジャンプでついぞやマウント、さらにするりとバックに回って見せる。その滑らかなムーブに会場からは唸り声が漏れる。サイド気味にバックを捉えた鹿又がくらえ!とばかりにパンチを振りかざす中で、ゴングが鳴り響き、判定3-0で若武者が完全復活の勝ち名乗りを受けた。
 

第2試合 バンタム級 5分2R
○HIRO(STF)
×塙 真一(和術慧舟会千葉支部)
判定3-0 (菅野19-18/横山19-18/鈴木19-18)


 1R3分、HIROのパンチ4連打で塙がダウン。しかしここで試合を決めきれないHIRO。塙はラウンド後半、HIROをコーナー際に押し込み、差し合いの攻防に持ち込んでダメージを回復する。
 2R、塙は両足タックルでHIROを倒し、上のポジションを取るが、塙は逆にここからの攻め手を欠く。残り40秒となったところでようやく力のこもったパウンドを連打するが、時すでに遅く、勝負は判定にもつれこんだ。コーナーでの差し合いやガードポジションでの攻防に動きが少なく、膠着が多い展開だったが、その中で1Rにダウンを奪ったHIROが僅差の判定をものにした。

第1試合 新人王決定トーナメント ミドル級1回戦 5分2R
×寿丸。(秋本道場JUNGLE JUNCITON)
○枝折優士[しおり・ゆうし](PUREBRED大宮)
判定0-3 (菅野18-20/浦19-20/鈴木18-20)


 アグレッシブなパンチの応酬からスタート。寿丸のストレートで眉尻をカットした枝折にドクターチェックが入る。再開後も激しい打撃戦から枝折がくみついて投げ、テイクダウン。上からパンチを落としていく。一度体勢を持ち直し、差し合いから足をかけて上を取った寿丸だが、枝折の下からのパワーに形成逆転され、またもパンチを被弾する中でゴング。
 2Rも打撃戦から寿丸が組み付き、コーナー際での差し合いの繰り返し。だが今度は枝折がテイクダウンに成功しバックを奪い、チョーク、あるいは胴締めを狙って攻め続け完勝した。

Last Update : 05/04

[ Back (前の画面に戻る)]



TOPPAGE | NEWS | REPORT | CALENDAR | REVIEW | XX | EXpress | BBS | POLL | TOP10 | SHOP | STAFF

Copyright(c) 1997-2004 MuscleBrain's. All right reserved
BoutReviewに掲載の記事・写真・図表などの無断転載を禁止します。
著作権はマッスルブレインズに属します。

編集部メールアドレス: ed@boutreview.com