ランキング一位。いまやパンクラス最強外人の地位を手に入れたシュルト。そして、船木を破ってかつて一度キング・オブ・パンクラシストを戴冠したことのある近藤。第八代のキングの座を巡ってランキング一位と二位での決定戦が行われる。

　グラウンドにも自信を深めてきたシュルトは、開始早々から、思い切ったミドルをうっていく。そこにタイミングを見計らってタックルで突っ込む近藤。がぶって受け止めるシュルト。だが、近藤はさらに押し込み、シュルトに尻餅をつかせる。

　座った状態のまま粘るシュルト。完全にテイクダウンしたい近藤。

　しばらくの押し合いのうちに、ようやっと近藤が完全にシュルトを倒しきり、サイド・ポジションを取る。腕十字を狙うべく体勢を探る近藤。そうはさせじと下から首に腕を回して押さえつけるシュルト。一瞬腕十字の体勢に入るが、切られてしまい、再びサイドでの体勢争い。このまま５分以上が経過し、ブレイクとなる。

　試合は、基本的に、この繰り返しとなった。

　スタンドでの打撃合戦。そこから近藤はタックルを狙う。タックルへのカウンター、あるいは膝で押し込んで近藤が体勢を崩した後の立ち上がり鼻に蹴りを合わせようとするシュルト。反則すれすれの危ないキックが何度も近藤の顔面をかすめる。

　しかし、近藤は、タイミングを完全に掴み、シュアにテイクダウンしていく。だが、グラウンドでのシュルトのディフェンスは非常に固い。サイドでの腕十字狙いは下から首を押さえて防御し、マウントを取られると、手首を掴んで動かない。結局、ブレイクがかかるのをひたすら待つことになる。

　そしてスタンドでまたカウンターを狙う。

　だんだん狙いが危険になっていく。

　終了間際、両手をつきながら立ち上がろうとした近藤の顔面にまともにシュルトのローが入る。近藤、たまらず昏倒。「格闘技ということでは僕の油断です」と試合後近藤は語ったが、結局、この蹴りが反則に取られ、ポイント差での判定勝利を近藤が拾うことになった。

　攻めている時間は長かったが、決してすっきりした勝利とは言えない。

　「これからを見ていて下さい。貫禄のあるチャンピオンになります」という近藤の言葉通り、キング・オブ・パンクラシストとしての権威は、今後の防衛戦にかかっていると言っていいだろう。

「ボクシングでも何でも一回しか防衛できないというのはそうないですよね。５回、６回防衛していってこそベルトに重みがつくと思うんですよ。」

「パンクラスの20世紀問題って言われているじゃないですか。船木さんが一線を退いたらどうなるのか。僕たちでやっていかなきゃならない。」

「今日だって、話題としては、船木さんのパンクラチオンが一番だったと思います。でもメインはキング・オブ・パンクラシスト戦だった。それは会社のプライドだと思います。それに答えるためにもしっかりやっていかなければならない。」

「今日とったらベルトを賭けてやろうと国奥さんと話してきました。国奥さんも上がってくると思います。」

　先の戴冠は、「次代」のエースの顔見せ、といった感が強かった。しかし、今度の場合、近藤は、「本命」の位置に置かれている。ここで踏ん張り、長期政権を作れれば、パンクラスの未来がはっきりしてくる。

　これからの防衛戦こそが正念場である。

（山名尚志）