無駄な凹凸がまるでない頑強なコンクリートの壁のような船木の体。ライトがわずかな窪みに陰影を彫り込む。対するブラガは、ブラジリアンらしい、幾分ひょろっとしたしなやかそうな体躯。事前に報道された「凶暴」さは感じられず、寧ろ、スマートな印象を受ける。

　パンチの打ち合いから差しにいくブラガ。閂に取る船木。膝の打ち合いからブラガがロープ際に押し込むが、船木がうまくブラガの差した腕を切る。

　再び打ち合いから差すブラガ。今度はすぅっと船木をテイクダウンしてしまう。船木、ハーフガード。ブラガは頭突きを放ち、上体を起こして、はやくも船木の顔面にパンチを打ち込む。ガードに入る船木。コーナーにずり下がる。逆立ち状態となり、パンチが届かなくなる。ストンピングを狙うブラガ。さらにコーナーから引きずりだしに入り、肘を船木の膝に何度も落とし、パスの機会を狙うが果たせない。船木は足でコントロールしてブラガの体勢を崩しにいく。

　遂にブラガの足首を取る。

　アンクルもしくはヒールを狙おうとする船木。座り込むような姿勢で引き込みを許さず、肘を落とし、自由な方の足で蹴り、暴れまくってそれを防ぐブラガ。息詰まる攻防が続くが、結局、すべりやすい裸の足首を取りきることはできず、また上のポジションを奪われてしまう。

　コーナーに押し込むブラガ。クローズド・ガードの船木。

　ブラガの有効打が何度も何度も船木の顔面を襲う。しかし船木の目は死なず、ブラガもラッシュには入れない。隙を見て顔面をブラガが殴り、また殴る状況が続く。

　そのまま上にのってまたもやガード・ポジションに。だが、今度は密着してしまったため、下から船木が猛然と殴りにいく。殴り返すブラガ。ロープに押し込みながら、有利なポジションを探る。

　両者とも上体がマットからはみ出た状態で殴り合う。

　ここで20分の時間が過ぎた。

　そのままマイクを要求する。

「もう一回やります。今日の自分のベストを尽くしました。天国の長谷川。最後までギブアップしなかったのは君が見ていてくれたおかげだ。長谷川、ありがとう！！」

「またこのリングに戻って来たいと思います。船木選手は優れた選手でした。でも、自分には、神様がついてくれている。神様が僕に力をくれる。パンクラスはいい団体なのでまた呼んで下さい。ドウモアリガトウ」

（山名尚志）