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Report

k-1K-1 WORLD GP 2000 in 名古屋
7月30日(日)名古屋市総合体育館 レインボーホール

第2試合 トーナメント一回戦 
× 富平辰文
(日/フリー)
2R 2'07"

TKO(2D)
ロイド・ヴァン・ダム
(蘭/ドージョー・チャクリキ)

「魂は折れず」

Text By 高田 敏洋

「打倒武蔵」を宣言、K-1Japan大会に乗り込んできた富平辰文ではあったが、相手の長所を封殺する武蔵のテクニックの前に自分の試合をすることはついぞ適わなかった。

だが勝ち星を争うゲームに敗れはしても、「殴り合い、蹴り合い」において決定的なダメージを貰ったわけではなく、屈服感や挫折感は殆ど受けなかったようだ。そんな富平に石井館長はWorld GP予選出場のチャンスを提供した。いわば「敗者復活」と言ってもいいこのチャンスであるが、当然その為のハードルはジャパン大会の時より遙かに厳しい。この機会を物にできなければ、抜擢のツケで富平の評価は地に落ちる。


初の相手は今やチャクリキの看板を背負う「殺人ローキック」のロイド・ヴァン・ダム。もしこの試合を勝ち上がっても、次に待っているのは昨年チャンピオンのホーストである。傍目には、富平の東京ドームへの可能性は非常に薄いと考えざるを得ない。


が、富平は、そんなプレッシャーももものかは、不敵な表情で試合前から対戦相手を睨み付けてみせた。まさに極真魂は死なず、である。


の視線が嘘でない証拠に、序盤から積極的に仕掛けていく富平。対してややスロースターター気味のヴァン・ダムは受けて立つ恰好。しかし相変わらずヴァン・ダムのガードは堅い。そのうえ返しの右ローは重くて速い。膝でブロックした富平の身体がローのインパクトの瞬間、回転扉のようにグルリと押しやられそうにになる。


のうえ、試合前の練習で左膝を痛めていた富平は、武蔵戦の時に見せたシャープな蹴りが出せない。

試合前は「真正面からパワーの勝負になってはまずいでしょうね」と語っていた富平だが、いざ試合が始まってみると殆ど正面からパンチの打ち合いを挑み、更に距離が縮まると掴まえながらの膝を狙っていく。踏み込み際の富平の顎目掛けてヴァン・ダムのアッパーが突き上げられる。

者の目まぐるしい攻防が続くが、それでもヴァン・ダムにしてみるとまだ本格的にエンジンが掛かりきった状態では無かったようにも見えた。一旦回転が始まると、わっせわっせとエンドレスに攻撃を続けるのが普段のヴァン・ダムだとすれば、今日の彼はまだ相手を見ながら闘っている感じだ。一方行け行けの富平はラウンド終了まで飛ばし続ける。だが10kg以上重いヴァン・ダム相手にスタミナの心配などまるで念頭にもないような、短兵急なラッシュである。

(富平-ヴァン・ダム 10-10、10-10、9-10)


1の間カウンターに終始していたヴァン・ダムが、前に出ながら先に手を出すようになってくる。スタミナ切れはヴァン・ダムにとって最大の課題だが、やはり開始早々のラッシュのツケは富平の方により多く貯まっていたようだ。ガードが甘くなったところにヴァン・ダムの右ストレートがテンプル突き刺さり、ガクリと膝が折れる。ふらつきながらロープにもたれ掛かり、何とか倒れるのは我慢したが、レフェリーはダウンを宣告。


れ以降明らかに動きの鈍くなった富平の顔面を、ヴァン・ダムの右ハイ、パンチとラッシュが襲う。それでもまだ倒れない富平。逆になりふり構わない左ハイの連打で根性を見せるが、すでにその時点で両腕のガードはガラ空き。そのまま前に出続けようとしたところにヴァン・ダムが的確な右カウンターを合わす。再び膝をガクガクと揺らしながら後退する富平。今度は我慢できなかった。富平の身体がリングに崩れた瞬間、ノックアウトを告げるゴングが場内に響いた。



れでも試合後の富平には、この結果で気持ちが折れるような様子は全くみられなかった。

「思ってたより、大したことなかった。ローも一発も効いてないし。R1終わったとこでは勝てると思った。」

しかし、率直に言えば富平とヴァン・ダムの間にはまだ力の差が歴然だ。すでに35戦のキャリアを誇るヴァン・ダムに対し、キック選手としての富平はまだキャリア4戦のルーキーにすぎない。


「負けてしまったんで、言い訳はしないですけど...。そんなにチャンスは何度も何度も来るもんじゃないと思うんで、次こそは本当に、3度目の正直じゃないですけど...、もう1回やらせて欲しいです。」

丈夫、ほどなくそのチャンスは巡ってくるだろう。

マットに大の字で延ばされたその姿に、ファンは誰も罵声を飛ばさなかった。むしろ世界の大波に正面から立ち向かった、傲岸不遜なまでの姿に感動すら覚えたのではあるまいか。そのスピリットこそが富平の最大の潜在力であり、世界への切符と言えるものなのだから。

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写真:井田英登

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