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(レポ&写真) [パンクラス] 4.9 ディファ:野地、杉浦をKO。金原敗退

パンクラス "SEGA SAMMY Presents PANCRASE 2006 BLOW TOUR"
2006年4月9日(日) 東京・ディファ有明  観衆:1,800人(超満員:主催者発表)

  レポート&写真:井原芳徳  【→カード紹介記事】 【→掲示板スレッド】

第8試合 ヘビー級王者決定トーナメント一回戦Bブロック(2) 5分2R
○野地竜太(パンクラスGARO/2位)
×杉浦 貴(プロレスリング・ノア)
1R 3'25" KO (顔面の踏みつけ)


“進化した空手”へ。野地が成長ぶりアピール

 開始すぐ杉浦に倒された野地だが、杉浦と同じレスリング出身の浜中和宏や中尾芳広らと普段から練習しているため「落ち着いていた」といい、ニュートラルコーナーを背中にしながら起きあがる。杉浦はそれでもタックルで倒すが、その度に野地は立ち上がり、コーナー際の攻防で膝蹴りと右フックを当て反撃の火ぶたを切る。
 杉浦が後ずさりすると、野地は右の前蹴りで追撃。腹にもらった杉浦はうずくまる。それでも姿勢を直すが、野地はもう一発前蹴りをお見舞い。再びうずくまった杉浦の頭に、今度は左ハイをクリーンヒットさせる。最後は押し倒して顔面を踏み付け、戦意を無くした杉浦に拳を叩き付けたところでレフェリーが試合を止めた。

 野地は総合の選手としての成長ぶりをこの一戦でアピール。本人も「倒されてからも打撃になっても練習していたことが出せた」と満足げだった。ベースとなる空手の打撃技が存分に活きており、このトーナメントを通じ、ようやくこの新天地でブレイクを果たしそうな予感がした。

 6/6 後楽園大会の準決勝では、総合のベテランの金原弘光を下したアルボーシャス・タイガーと激突する。野地は「激しいドツき合いになる。お互いの武器をちらつかせる、緊張感のある試合になる」と語る。士道館のアルボーシャスも空手をベースにうまく総合に適応しており、“進化した空手”がこの一戦で見られそうだ。

 一方の杉浦はテイクダウンの技術や倒してからのパウンド等、序盤の試合運びは良かった。だがいったん劣勢になり歯車が狂うと泥沼に。バックステージに戻ると「練習と本番は全然違った」と何度も口にした。総合デビューのダニエル・グレイシー戦はもう4年も前の出来事。前回のジャイアント・シルバ戦からも2年が経過している。「ノアの巡業の合間に練習の時間を作らせてもらって、周囲にも迷惑をかけて戦ったので、僕一人の負けじゃない。こんなんじゃまた総合をやる気にはなれない」と落胆。“二足のわらじ”で成功するのは厳しい。

第7試合 ヘビー級王者決定トーナメント一回戦Bブロック(1) 5分2R
×金原弘光(U.K.R.)
○アルボーシャス・タイガー(リトアニア/ラトビア士道館)
判定0-3 (廣戸18-20/梅木18-20/岡本17-20)


35歳の春、プロレスと総合の交差点で…

 先手を取ったのは金原。右フックでアルボーシャスをぐらつかせると、ハーフガードからボディにパンチを連打し、パスガードしてからアームロックを仕掛ける。だがアルボーシャスは防御しスタンドへ。金原は「じっくり行き過ぎた。あのまま十字に行くか他の技を出すか迷っていたら、パワーで返された」とこの場面を反省する。
 その後はアルボーシャスの猛反撃。右フックで金原をぐらつかせ、バックスピンキックも豪快に繰り出す。ダウンした金原にアルボーシャスはサッカーボールやパウンドで追い打ちをかけることなく、スタンド勝負を望む。

 1Rのポイントを取られ、残すラウンドは1つのみしかなくなった金原。1R終了時点での「ダメージは無かった」が、「相手はタックルとカウンターに警戒しているのがわかった。間合いを詰められなかった。作戦がモロバレだった」といい、思い通りにならない。タックルで上になるが、下からアルボーシャスもパンチを返し、圧力に押される。
 残り2分、スタンドに戻された金原には、またも打撃地獄が待っていた。アルボーシャスはうまく右のストレートを当て、たびたび金原をダウンさせる。1R同様スタンド勝負を望むスタイルは変わらず。まるで金原のミルコ戦を思い起こさせる展開のまま試合終了。

 判定が読み上げられた瞬間、レフェリーの手をふりほどきコーナーに戻る金原の表情には、悔しさだけではなく、寂しさ、心苦しさ、空しさ、いろんな感情が入り交じっているように見えた。
「今日は前の日から寝られないぐらいに緊張した。こんなことは過去の記憶にない」
 1ヶ月の準備期間があったとはいえ、HERO'S韓国大会以来約5ヶ月ぶりの試合。
「フリーなので、コンスタントに試合が無いし、オファーがいつ来るかもわからない」
 金原の口調はいつもとさほど変わらないが、さすがにリングス活動休止後8連敗は堪えるのだろう。言葉の一つ一つは深刻だった。最後に今後の展開を聞かれると、「うーん、なかなか…」と言ったまましばらく考え込み、心の奥底をさらけ出す。

「辞めようかな、って気持ちもあるし、でも、ここで辞めたら情けないし。ここで辞めるというのは簡単でしょうけど、ここで終わるのは嫌だし…。勝って無いですよね。闘志落ちてるのかなぁ。わからないですよ。色んな思いがあり過ぎちゃって。僕は究極のマイナス思考ですからね」

 そう言った後、金原は苦笑し、アゴをさすりながらゆっくりと言葉を続ける。
「考える時間は必要ないんでしょうけど、いろんなことがありすぎて、乗り越えるのが大変ですね。直前に弱気な自分が出たりとか。いい人生勉強してますよ」

 「杉浦選手とも試合したかったんですけどね」とも話していた金原。全く違う道のりを歩んできた二人だが、1970年愛知生まれの35歳という共通点だけでなく、総合の選手としての境遇も似ている。
 幾多のプロレスラーが総合に挑み散って行った中、二人はかなり適応できた方で、メジャーイベントのPRIDEで同じ時期に大観衆の喝采を浴びた。とはいえプロレスと総合の異分野の狭間で、存分に素質を発揮できる環境を得られない日々を過ごすうち、新世代の波に飲まれる年頃に差し掛かってしまった。
 結局二人はリング上で交差できなかった。しかし、すれ違いの場所が、プロレスと総合の交差点で、今やこの業界で“老舗”の域に差し掛かりつつある14年目のパンクラスだったというのは、単なる偶然なのだろうか。
 

第5試合 フェザー級 5分3R
○志田 幹(パンクラスP's LAB東京)
×ダマッシオ・ペイジ(アメリカ/ジャクソンズ・サブミッション・ファイティング)
判定3-0 (和田30-26/岡本30-28/廣戸30-28)


“アメリカの吉朗”バカ負けしても光る

 3月の大阪大会での前田吉朗のパンクラス初黒星により、混沌の様相を呈してきたパンクラスのフェザー級戦線。今年後半、初代王座を巡るトーナメントが計画されているが、また一人、面白い選手がその渦の中に飛び込んできた。
 ダマッシオ・ペイジ。アメリカのKOTCを主戦場とし、総合6戦全勝の23歳。勝利は全て一本かKOで、アグレッシブでタフな選手だと想像はついたが、その顔面毛むくじゃらの風貌も相まって、そのワイルドなファイトで一気に観客のハートをつかむこととなる。

 開始早々やってくれる。大振りの右フックで突進し、志田をヒヤリとさせる。志田は何度も北岡式ギロチンを試みるが、一瞬の防御とパワーでことごとく対処。アリ猪木状態では豪快に踏み付けを狙い、志田も呼応するように同じ技を返し、試合は白熱の一途をたどる。

 2R後半は志田がバックマウントからのパンチで苦しめ、3R序盤には右フックをもろにもらい鼻血を出すが、心は折れない。残り1分には渾身の右フックをぐらつかせ、試合後志田に「危なかった」と言わしめる反撃も見せた。
 2Rの志田のギロチンは「完全に極まっていた」というペイジだが「絶対にタップしたくなかった」と振り返る。1Rに志田はアームロックを極めたかに思えたが、志田の話によると「猿腕で効かなかった」という。見た目やファイトに留まらず、体質も野生児のようだ。

 セコンドについた北岡悟のブログに、大石幸史の話として「勝った志田さんより負けたペイジの方が印象に残る試合だった」という言葉が載っていたが、まさにそういう試合だった。志田も「気持ちがすごいアグレッシブなところとか吉朗と似ていた」「日本人にないパワフルなファイターで勉強になった」とペイジを讃える。

 連勝記録の止まったペイジだが、気持ちは前向きだ。「負けは認めるが、僕はまだ若くて野心も希望もある。経験を積んでまた志田とやりたいし、キング・オブ・パンクラスにもなりたい」
 吉朗が負けた。“アメリカの吉朗”も負けた。だが、負けから這い上がる二匹の野生児が、フェザー級戦線をさらに面白くする。
 

第6試合 ミドル級 5分3R
×渡辺大介(パンクラスism)
○久松勇二(和術慧舟會TIGER PLACE/9位)
判定0-3 (廣戸27-30/和田28-30/梅木29-30)


久松、春のパンクラスマットを桜色に染める

 渡辺がフック系のパンチ、久松が右ミドル中心の蹴りで攻める展開だが、久松のストレートで渡辺は1Rから額と鼻より血を流す。2Rにはドクターチェック。2Rと3Rには久松がテイクダウンに成功。ジャッジのポイントにばらつきはあったが、随所で攻勢をアピールした久松が文句無しで白星を得た。試合後は弟分のピンク軍団をリングに上げ勝ち誇り。渡辺はミドル級初戦で痛い黒星を喫してしまった。
 

第4試合 ミドル級  5分2R
△中西裕一(フリー/6位)
△瓜田幸造(掣圏会館)
判定1-0 (梅木20-19/岡本20-20/和田19-19)


2R制と空しいドロー

 1Rは中西が2度テイクダウンを奪うが、瓜田は立ち上がってサッカーボールキックを放ったり、下から腕十字を狙ったりと積極的な攻め。2Rは中西がバックを取り3分ほどチョークを狙い続けるが、決め手に欠きドローに終わった。

第3試合 ウェルター級 5分2R
△小路伸亮(KILLER BEE)
△和田拓也(SKアブソリュート/8位)
判定0-1 (廣戸20-20/梅木20-20/岡本19-20)


 小路のタックルを和田が切り続ける展開。小路は何度か上になるが、ロープ際に行くことが多く、その先の攻め手に欠いてしまう。和田もスタンドパンチで小路の鼻から出血を誘うが、決定的な攻めが無くドローに終わってしまった。

 この後の中西 vs. 瓜田もそうだったが、ランカークラスの試合になると、ある程度お互い防御を知っており、体力もあるため、攻勢に持ち込むことはそう簡単ではない。2R制だと1Rは赤コーナーの選手、2Rは青コーナーの選手がポイントを取るというように、ドローになることが多い。ランカーの試合は3R制で固定したほうが、決着が付きやすいのではないか。このことはまた機会があれば深く考察したいが、引き分けた4選手が、力を出し切れず結果を受け入れる時に見せた空し気な表情が印象的だった。
 

第2試合 フェザー級 5分2R
○山本 篤(KILLER BEE)
×村田卓実(和術慧舟會A-3)
2R 1'37" TKO (レフェリーストップ:チョークスリーパー)


 1Rはスタンドでほぼ互角の打撃戦。2R、村田がアームロックのままグラウンドに引き込むが失敗。脱出した山本はガブりの状態から鉄槌を効かせると、怒濤の攻めでバックを奪いチョークを極め白星をもぎ取った。

第1試合 ミドル級 5分2R
○金井一朗(パンクラスism)
×山田護之(チームPOD)
1R 2'11" KO (失神:チョークスリーパー)


 大会パンフレットの独占インタビューに初登場した金井。「理想は極めて勝ちたいですね。相手が眠るように試合を終わらせたい」と話していたが、パンチで山田をダウンさせると、ハーフから袖車のようなチョークで山田を絞め落とし、有言実行を果たした。

Last Update : 04/13 12:37

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