(レポ&写真) [パンクラス] 3.19 大阪:DJ旋風に吉朗まで…
パンクラス "SEGA SAMMY Presents PANCRASE 2006 BLOW TOUR" 2006年3月19日(日) 大阪・梅田ステラホール 観衆:800人(超満員・主催者発表)
Photo & Text 井田英登 【→カード紹介記事】 【→掲示板スレッド】
第7試合 メインイベント フェザー級 5分3R ×前田吉朗(パンクラス稲垣組) ○DJ.taiki(K.I.B.A.) 2R 0'35" TKO (レフェリーストップ:スタンドパンチ)
大会前から「前田の打撃は眼中に無い」と豪語していたDJ.taikiの煽りが、奇しくも実現してしまった。
序盤のハイキックを振り出しに、打撃で距離をつめていく前田。コーナーに追い込んで、組み付くと足払いでテイクダウン。抱きついてくるtaikiにバスターを三連発で浴びせ、豪快なパウンドを降らせる。いつもにも増して“潰し合い”を体現する試合運びだ。
対するtaikiは、下からのサイクリングキックで蹴り上げ、得意のスタンドに戻す。打ち合いに応じた前田だったが、振り回す前田のパンチをかいくぐって、taikiの左が的確に前田の顔面を捉えるシーンが見られる
組みから飛びつき十字を仕掛け、スタンドだけではない所を見せようとしたtaikiだが、あっさり自爆して墜落。アリ猪木状態へ。すぐ立ち上がったtaikiは、前田のタックルを切り、バックに回る。カメになった前田のサイドから何発もパンチを落とすtaiki。動きの止まった前田の姿に、勝負あったかという気配もあったが、ここはゴングに救われる。
だがラウンド間も後ろ向きでコーナーにもたれ掛かり、セコンドの注意も耳に入っていない様子の前田の姿は、非常事態を感じさせる。
この悪い予感は的中する。2R開始直後、舌を出してノーガードでtaikiを挑発する前田だったが、乱打戦になると再び1Rの再現となる。空を切る前田のパンチと、それをかいくぐってクリーンヒットを重ねるtaiki。止めの左が前田のアゴにぶち込まれ、その足がふらついた瞬間に、レフェリーが前田に抱きつくようにして試合をストップ。
前田はレフェリーに抗議し続けるが、判定は覆らず、taikiはコーナーに駆け上がって客席に勝利をアピール。納得できない前田はその姿を真似るように、自らも対局のコーナーに駆け上るが、レフェリーはリング中央でtaikiの腕を差し上げる。ようやく師匠の稲垣に押えられて観念した様子の稲垣だが、試合後の挨拶にコーナーに来たtaikiにさっそく「5月再戦」を要求したという。
一方、taikiは前田敗戦に怒号飛び交うアウェイ状況を顧みずマイクを握り「こんな事を言っても聞いてもらえないかもしれないけど、HERO'Sでレミギウス・モリカチュビスと闘いたいです」とアピール。
試合後も「絶対まぐれっすよ。向こうは14連勝もしてるし、僕は3つですよ。ランカーに勝っただけなんで。気持ち的に最初からどうせ負けるだろうと思ってましたから。五月にもう一回やってくれって言われましたけど、絶対負けるんで、受けません。前田選手はタックルするじゃないですか? 次やったら十字で負けますよ。キックルールだったらやりますよ。KIBAはサークルみたいなもんで、レスリングの練習できる環境じゃないんですよ。だから受けません。レミギウスはタックルしないでしょ? 」と謙遜しまくる、持ち前のへなちょこトークに終始。
「いや、別に油断したつもりは無いですよ。クソッ、クソッ…練習が足りなかった。自分が負けたってことはなにか足りんかったということですね。今三月やないですか、四月に誰か倒して、それを手みやげに。勝手に五月にって言ったんですけど。(再戦を)受けないなら、俺がパンパンに美味しくなるしかない。あいつがもう一回やりたいって言うようにするしかない。それが出来んかったら前田吉朗もおしまいやな、って思ってもらって結構なんで」時に涙を浮かべ、時に絶句しながらもコメントした前田。控え室を見舞った尾崎社長にも「身体は全然平気なんですよ、でも心が痛い」と語っていたといい、ショックのほどが伺われる。
あまりに対照的な勝者と敗者の光景だった。
第6試合 セミファイナル ウェルター級 5分3R ○北岡 悟(パンクラスism/1位) ×田中達憲(和術慧舟會兵庫支部/9位) 2R 0'53" ギブアップ (フロントチョーク)
井上とのタイトル戦を不本意なドローで終えた北岡にとって、この戦いは再戦に向けての再起戦にあたる。
石毛を下した勢いのままに上位食いを狙う田中は、アグレッシブにパンチで攻め込むが、ことごとく受け流していく北岡。組み倒しては上のポジションを終始支配する。下からの仕掛けを狙ってくる田中に対しても、十字を釣り上げて腕を抜き、チャンスを与えない。フィニッシュも、タックルに来た田中の首を抱え込み、抗う田中の動きに乗じて逆にチョークを深く捉える形で極めたもの。
横綱相撲で新鋭を下した試合後も「次の井上戦まで試合をしないで待ってるのもいいんですけど。それはしたくない。強くなって、もっと違う試合ができるようになってからしたいと思ってます。会社もそれを望んでるだろうし。興行として盛り上がる形でやりたいなと思ってるんで。とりあえずはよそ見をしないでパンクラスのベルトを目指したい。軸をぶらしちゃいけないと思うんですよね。石毛戦? 見たいですか? 望まれるならやりたいですけど。僕は石毛選手に勝った田中選手にも勝ったんですけど、格闘技に三段論法じゃないと思うし、だから全然。石毛選手は大石に勝ってるし、やる意味はあるとすごく感じてるんで。ただ、僕は一位で王者とも引き分けてるんでそこは頭に入れておいてほしい」と、井上戦以外に眼中には無いという心境を口にしていた。
第5試合 ミドル級 5分2R ○佐藤光留(パンクラスism/7位) ×花澤大介13(コブラ会) 2R 2'01" ギブアップ (アンクルホールド)
コブラ会総崩れの流れの中で、唯一圧倒的な内容をみせて試合を支配したのが花澤だった。着実なタックルでテイクダウンを重ね、肩固め、スリーパー、パウンド、スタンドでのパンチと佐藤を圧倒し続ける。このまま判定まで行けば間違えなく花澤の勝利と見えた試合だったが、バックを奪われた状態からの足関節攻撃を繰り返した佐藤が、再三のアタックで花澤の足首を捉え、タップを奪った。
花澤は練習中に敗因となった左足の腓骨を損傷していたというが、勝負所に畳み込めない甘さを突かれたこの逆転負けは、言い訳のしようがないもの。年末のDOGでの井上克也戦でも見られた悪癖だが、前半の優位を守ろうとする意識が相手につけ込む油断を作ってしまう。今回に至っては九割九分優位に進めていた試合を落とし、コブラ会の危機(3敗2分)を救う事が出来なかった。そろそろ抜本的な意識改革を行わない限り、永遠の“善戦マン”で終わってしまうかもしれない。
試合後「今年に入ってismの初勝利じゃない?。ともかく今日はもう出場自体が粘って粘って出してもらったんで。花澤選手って名前が出たんだけどウェルターだっていうんで。で、花澤選手が当日計量ならぜひミドルでって話で。ランキングとかじゃなくて、とにかく今日は勝ちが欲しかった。とにかく勝ちたかった。もうismの現状でとにかく一個勝ちが欲しかったです。次の目標? (セミでの)北岡の勝利です」と喜色満面に語った佐藤。この勝利への執着と“餓え”の度合いの差が両者の明暗を分けた気がする。
第4試合 ライト級 5分2R △宮崎祐治(コブラ会) △吉村直記(K.I.B.A.) 2R 2'10" 負傷判定1-0 (松宮20-19/廣戸20-20/梅木19-19)
1Rはタックルで奪った上のポジションを支配、パウンドを浴びせて優位に試合を運んだ宮崎だったが、2R序盤にコーナーでのテイクダウンの際に体を入れ替えられ、バックを奪われてスリーパー葬の危機に。粘ってブレイクを勝ち取った宮崎は、再度タックルを仕掛けるが、これが勢い余って両者もみ合ったままロープから飛び出してしまう。サブレフェリーがキャッチしようとするも、試合前宮崎に投げられた紙テープの山でスリップして、二人ともが場外転落。これで押し込んだ側の宮崎が、床に腕を突いてしまい右肩を脱臼してしまう。アクシデント段階までのスコアが集計され、ドローの裁定となった。
第3試合 ミドル級 5分2R △ザ・グレート浪速(夢想戦術) △三原秀美 (コブラ会) 判定1-0 (廣戸19-19/小菅20-19/松宮19-19)
ADCC日本代表を経験、昨年秋のゲート戦も抜群の内容でクリア、驚異のスピードでプロデビューまで漕ぎ着けた三原だが、パンクラス大阪大会のゲートキーパー的存在であるグレート浪速の粘り腰の前に、苦い洗礼を受ける事に成ってしまった。
1R目はTDこそ先行されたものの、浪速がパウンドに逸るタイミングに乗じての“めくり”で体制逆転。バックに張り付くとロデオのような動きを見せると、浪速の側頭部にパンチを叩き込み続け、その天才ぶりを垣間みさせてくれた三原。
しかし2Rではスタンドに付き合いすぎて、無駄にパンチを貰いスタミナ切れを起こす。なんとか気力を振り絞って放ったハイキックやバックブローも功を奏さず。黒星こそつかなかったものの、試合後の佇まいは三原の消耗ぶりが著しく目立つものだった。
第2試合 パンクラスアテナ -56kg契約 3分3R ○伊藤あすか(パンクラス稲垣組) ×YUKAЯI(BB doll) 3R 2'45" ギブアップ (腕ひしぎ十字固め)
タックルで着実にTDを重ね、ポジション支配でポイントを重ねて行く伊藤だが、YUKAЯIは下から足を跳ね上げ、上四方になった伊藤の首を取る“洗濯ばさみ”で抵抗。お返しとばかりに、顔を膝で踏みつけ、肘でぐりぐりと嫌がらせをしていく伊藤だが、なかなかフィニッシュに持ち込めず消耗戦となった。ようやく試合終了ま近に、バックマウントからの回り込みで腕十字を奪取。伊藤が黒星なしの三連勝をマーク。アテナ主役の地位にまた一歩近づいた。
第1試合 スーパーヘビー級 5分2R ○小椋誠志(パンクラス・チーム玉海力) ×カリム・バイロン(カナダ/パンクラス稲垣組) 不戦勝 ※バイロンが試合前の練習中に肩を負傷
◆パンクラスゲート
第4試合 P's LAB大阪 vs. コブラ会 3対3対抗戦 大将戦 ミドル級 5分2R ○鳥生将大(P's LAB大阪) ×国本起一(コブラ会) 1R 0'05" KO (ハイキック)
第3試合 P's LAB大阪 vs. コブラ会 3対3対抗戦 中堅戦 ライト級 5分2R ○富田浩司(P's LAB大阪) ×ハニーハンターリキマル(コブラ会) 2R 3'58" ギブアップ (腕ひしぎ十字固め)
第2試合 P's LAB大阪 vs. コブラ会 3対3対抗戦 先鋒戦 フェザー級 5分2R ○江崎賢二(P's LAB大阪) ×パンチィー山内(コブラ会) 2R 3'51" TKO (レフェリーストップ:腕ひしぎ十字固め)
第1試合 フェザー級 5分2R ○上畑哲夫(谷柔術) ×佐野 博(闇愚羅) 1R 0'27" ギブアップ (腕ひしぎ十字固め)
Last Update : 03/20 01:05
|