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(レポ&写真) [K-1 MAX] 4.5 代々木:魔裟斗・コヒ・佐藤ら決勝大会へ

FEG "エステティックTBC K-1 WORLD MAX 2006 世界一決定トーナメント開幕戦"
2006年4月5日(水) 東京・国立代々木競技場第一体育館  観衆:10800人(満員:主催者発表)

  レポート&写真:井原芳徳  【→カード紹介記事】 【→掲示板スレッド】

第7試合 トーナメント開幕戦 3分3R(延長1R)
○魔裟斗(日本/シルバーウルフ/MAX '03 世界大会優勝)
×レミギウス・モリカビュチス(リトアニア/リングス・リトアニア)
2R 1'56" TKO (タオル投入:パンチ連打)


 試合後、インタビュースペースに現れた魔裟斗は安堵の表情でこう話し始めた。
「今日は倒せる予感が物凄くしてた。あと、紹介VTRを見て、行かざるを得なくなった。めちゃ刺激になった。最初から行くつもりだったけど、あのVTRが最後の一押しになった」

 TBSの作った魔裟斗の紹介VTRは、現状の魔裟斗について多くの人が感じていたことをストレートに突く内容だった。
「男はKO連発。K-1の魅力を体現し、最も有名なK-1ファイターとなった。しかしそれ以降、負けられないプレッシャーからか、試合はディフェンス重視の安全運転。男の戦績からはKOの文字が消え、王座の肩書きも失った。『昔の俺の試合は面白かったんじゃないですか?強引だから(魔裟斗)』。失うものなど何も無い、ガムシャラに攻めまくったあの頃。カリスマ、原点回帰。なぜ俺が特別なのか、この試合で教えてやる!」
 積極的に攻めることを試合前から公言していたとはいえ、「教えてやる!」とまで(ある意味勝手に)言わされ、「魔裟斗」というキャラ付けをされてしまえば、もう行かざるを得なくなるだろう。だが、並大抵の選手なら、行くことはできても、途中で挫折するか、引き下がってしまう。

 実際序盤、魔裟斗はレミーガのハイキックや飛び膝やパンチの猛ラッシュを浴び、後退を余儀なくされた。しかし「特別」なこの男は、「予想通り。俺の予想を上回るのを予想していた」とこの場面を振り返る。次第に距離の取り方をつかみ猛攻を防御。魔裟斗は「1〜2分で見切った。1Rが終わった時点で勝てる」と確信した。
 その後は公約どおり前に出て左フック、右ストレートをヒット。実は準備不足だったというレミーガは「1R終盤に僕のスタミナが切れたのを魔裟斗も感じたのではないか」と振り返り、魔裟斗もレミーガの消耗を感じ取った。それでもレミーガの攻撃をもらう場面もあったが、魔裟斗はひるまず攻撃をヒット。朝武孝雄ジャッジは終盤の魔裟斗の反撃を評価し魔裟斗に10-9のポイントをつけたほどだった。
 2Rの序盤こそレミーガのペースだったが、1Rほど長持ちしない。魔裟斗は左フックを当てるとすぐ攻勢。膝やミドルも交えじわじわと痛めつける。最後の決め手はボディへの前蹴り。うずくまったレミーガに膝とパンチの連打を畳み掛けると、レミーガ陣営からタオルが投げ込まれ試合は終わった。

 やや荒削りでもいい。まずは心を折って勝つこと。今の魔裟斗にとって、その事が一番必要だった。
 「あの選手は気持ちが弱いのはわかってた。久しぶりに心を折って勝った」
 インタビュー前半、試合内容を回想するコメントの続いた魔裟斗だったが、自ら「心」という言葉を口にした途端、一気に己の心についても語りだした。
「2月にあんな試合をしていて、引退したほうがいいと思った。崖っぷちだった。昔、ヘビー級の試合を『糞みたい』と言ってたのに、その俺がヘビー級と同じ試合をしてたんですよ。だから覚悟を決めて行った」

 だがその覚悟は、単に己のプライドを取り戻すためだけのものではない。「今までの経験上、トーナメントは1試合はKOで勝たないと優勝は難しい」という、合理的な判断も下地にあった。実際、過去の優勝者の4人とも、3試合のうち最低1試合はKOまたは相手の負傷によるTKOで勝利を得ている。
 とはいえKO狙いはリスクを伴う。魔裟斗は神妙な面持ちで言う。
 「あの7人の中で戦うのは厳しい。消耗戦ですよ。本当に6/30は過酷ですよ」
 レミーガを下した直後の閉会式での魔裟斗は、横に並んだブアカーオと談笑し、初参戦の佐藤嘉洋からの握手にも応じる等、ギラギラした様子が感じられなかった。つかの間の安堵。今月いっぱいは休養し、来月から再びギアを入れる。攻め重視か、守り重視か。きっと魔裟斗の心はまだ揺れている。
 

第6試合 トーナメント開幕戦 3分3R(延長1R)
○ブアカーオ・ポー・プラムック(タイ/ポー・プラムックジム/MAX '04 世界大会優勝)
×ヴァージル・カラコダ(南アフリカ/スティーブズジム)
4R 判定2-1 (御座岡9-10/大成10-9/シャルリー10-9)

3R 判定0-0 (御座岡29-29/大成29-29/シャルリー29-29)

 今年から「膠着を誘発するつかみ」に対する規制が厳しくなったK-1。この試合ではキックボクシングでは珍しいこのルールの運用の難しさが露呈する事に。
 ボクサーのカラコダは前に出て距離を詰めパンチを当てるスタイル。ブアカーオは上体をカラコダに預けロープに押しつけ、両手でつかまない状態のまま膝を連打する。時折つかんで膝やパンチを放つが、すぐさま放してまた押し込んで膝。岡林章レフェリーはタイ語で組み付きを注意するが、ルールスレスレの攻めのため止めることができない。
 1R終盤にはブアカーオが離れて左ミドルを連打し、右フックもクリーンヒット。ジャッジ3者から10-9のポイントを得る。2Rもブアカーオが押しつけ膝を当てるスタイル。右ハイも当て、カラコダのパンチをバックスウェーする場面には場内からため息が漏れる。
 だが3Rにはパンチをもらい、やや疲れを見せるように。クリンチが増え警告1。1Rにポイントを取ったことを意識してか、左ミドルを多用し、ムエタイ式に最終ラウンドの相手の攻めを受け流すスタイルに移行したとも考えられる。とはいえ後ずさりしてパンチを浴び、すぐに組み付く展開の方が目立ってしまい、ポイントを五分にされてしまった。
 延長ラウンドになると、ブアカーオは上体を相手に預けるスタイルは変わらないが、パンチを振り回すスタイルに移行。マストシステムの延長戦では有効な攻めだ。カラコダもパンチを返すため、頭を付けて打ち合うような格好に。ヒット数もダメージも大差がなく判定も割れたが、ブアカーオに軍配。辛うじて決勝に残ることができたが、谷川貞治K-1イベントプロデューサーは「カラコダが勝ってた。判定は微妙。延長はつかみの反則を取ってもよかった」と話し、ブアカーオの勝利に疑問を投げかけた。
 

第5試合 トーナメント開幕戦 3分3R(延長1R)
○アルバート・クラウス(オランダ/ブーリーズジム/MAX '02 世界大会優勝)
×アリ・グンヤー(トルコ/アル・フィッドジム)
判定3-0 (朝武30-29/岡林30-29/大成30-28)


 クラウスが右フックと左ボディを当てるが、蹴り主体のグンヤーはコーナーに詰められてもうまく外に回って決定打を許さない。2Rも同様の展開。そこまでは1Rに大成ジャッジが10-9でクラウスにポイントを与えただけで差がつかなかったが、3Rになるとようやくクラウスがパンチのヒット数で圧倒。ジャッジ3者が10-9を付け、勝利を決定づけた。
 

第4試合 トーナメント開幕戦 3分3R(延長1R)
○小比類巻貴之(日本/チーム・ドラゴン/MAX '04 '05 日本大会優勝)
×イム・チビン(韓国/ソウル・テウンジム/MAX '06 韓国大会優勝)
3R 2'46" KO (3ダウン:右ローキック)


 3Rまで途中までお見合いの時間の長い展開。パンチを当てるチビンに対し、コヒはカウンターの膝を狙うが、チビンに研究されてしまっている。2Rには両者に注意計2回。それでも試合はほとんど動かず、ついに3Rには両者に警告が出される。
 とはいえコヒが2Rまでに出していた右ローは、しっかり威力を発揮していた様子。3Rになるとイムはサウスポーにスイッチ。警告後に両者が積極的な攻めになり、イムは左ミドルをクリーンヒットさせると自ら足を痛め、コヒのローの連打を浴びついにダウンを喫する。コヒはその後もダウンを重ねKO勝ち。土壇場で強味を発揮し決勝トーナメントに駒を進めた。
 

第3試合 トーナメント開幕戦 3分3R(延長1R)
○佐藤嘉洋(日本/フルキャスト/MAX '06 日本大会優勝)
×マイク・ザンビディス(ギリシャ/メガジム)
判定3-0 (朝武30-28/黒住30-29/大成30-28)


 佐藤がローと膝蹴りで手数多く攻める。ザンビディスはリーチ差に手こずるが、1R終盤、左フックで佐藤をぐらつかせ、パンチの連打で反撃する。佐藤はゴングに救われる格好。1Rのジャッジは3者とも10-10の五分に。
 2Rは佐藤のローと、ザンビディスのフックの凌ぎ合い。終盤には佐藤が手数で押し、ジャッジ2者が佐藤に10-9のポイントを付ける。
 ザンビディスのダメージは大きく、3Rは完全に佐藤のペース。何発もローと膝を当て、3者から10-9のポイントを得て完勝した。
 実は1Rのパンチで記憶が飛んでいたという佐藤。「2Rか3Rに倒さないとダメ。自分では不合格。トーナメントだと早めにKOした方が有利になる」と決定力不足を反省していた。
 敗れたザンビディスは「個人的な問題で練習ができず、本来の力が出せなかった。理由は言いたいけど言えない」と無念の様子で語っていた。
 

第2試合 トーナメント開幕戦 3分3R(延長1R)
○ドラゴ(アルメニア/チーム・イッツ・ショータイム)
×オーレ・ローセン(デンマーク/Untamed)
判定3-0 (黒住30-27/大成30-27/シャルリー30-28)

※2Rパンチ連打でローセンに1ダウン

 1Rはローセンがパンチとローの手数で上回り攻勢。1Rは「緊張で硬かった」というドラゴだが、2R序盤、右フックをクリーンヒットさせると、パンチラッシュでスタンディングダウンを奪取する。その後も右フックを中心としたパンチのコンビネーションで優勢をキープ。まだ荒削りながら、時折蹴りの大技も絡める積極ファイトで、文句無しの判定勝ちをおさめた。敗れたローセンは「HERO'S以降の準備時間が短かった」といい後半はスタミナ切れ。HERO'Sの須藤元気戦が評価されたことから、今年は総合中心にやっていきたい考えだという。
 

第1試合 トーナメント開幕戦 3分3R(延長1R)
○アンディ・サワー(オランダ/シュートボクシング・オランダ/MAX '05 世界大会優勝)
×SHINOBU・ツグト・アマラ(モンゴル/チーム・ハードコア)
4R 判定3-0 (御座岡10-9/大成10-9/シャルリー10-9)

3R 判定1-1 (御座岡30-30/大成29-30/シャルリー30-29)

 体格差の心配されたSHINOBUだが、サワーと真っ向から打ち合い時には優勢に。計量体重68.2kgの動きは軽快で、カカト落としや胴回し蹴りといった大技も絡めつつ、パンチの連打を当てる。2Rには背中を向けた時に連打を当てられたサワーが怒り、左ボディや右ローの猛ラッシュ。3Rにも右ハイ、右ローでSHINOBUを追い詰める。
 ところがSHINOBUは前に出ることで蹴りの距離を潰し、右フックを返し決定打を与えず。昨年大会覇者相手に延長に持ち込む。大成敦ジャッジは2Rに10-9でSHINOBU、エリック・シャルリー・ジャッジは3Rにサワーに10-9をつけるだけの配点だった。
 延長戦のSHINOBUはさすがにローのダメージの蓄積が大きく、手数で押され敗れたが、わずか1試合でMAXのファンに覚えられる好ファイトを繰り広げた。
 

オープニングファイト第2試合 スーパーファイト 3分3R(延長1R)
○TATSUJI(日本/アイアンアックス/MAX '06 日本大会準優勝)
×ニック・ゴンザレス(アメリカ/バスケズ・アカデミー)
判定3-0 (川上30-26/勝本30-26/ゴメス30-26)

※3Rクリンチによりゴンザレスに減点1

 パンチ戦ではほぼ互角のゴンザレスだが、TATSUJIの右ローを数発浴びただけで足が流れるように。次第にパンチでもTATSUJIに押されるようになり、防御のクリンチが増え、3Rにはイエローカード(減点1)をもらう。ダウンこそ奪えなかったTATSUJIだが、3Rは減点も加えれば実質10-8の攻めで圧倒した。
 

オープニングファイト1試合 スーパーファイト 3分3R(延長1R)
×ソーレン・キング(オーストラリア/NTGジム)
○木浪利幸(日本/フリー)
判定0-3 (川上27-30/黒住28-30/ゴメス28-29)

※2R右ストレートでキング1ダウン

 木浪にとってソーレンは、04年9月のNJKF時代にKOで敗れた相手。木浪は蹴りをほとんど使わず、左フックと左ボディ主体のファイト。2Rにはソーレンのコンビネーションをブロックした後、右ストレートでアゴを打ち抜きダウンを奪う。その後はソーレンの左ミドルや左ストレートを浴びたが、一歩も引かずパンチを当て続け、リベンジに成功した。
 

Last Update : 04/06 13:41

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