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(レポ&写真) [PRIDE武士道] 9.25 有コロ:ウェルター決勝はブス×ダン

ドリームステージエンターテインメント "PRIDE武士道 - 其の九 - 〜PRIDE GRAND PRIX 2005 ライト級トーナメント〜 〜PRIDE GRAND PRIX 2005 ウェルター級トーナメント〜"
2005年9月25日(日) 東京・有明コロシアム

  レポート&写真:井原芳徳  【→カード紹介記事】 【→掲示板スレッド】


■PRIDE GRAND PRIX 2005 ウェルター級(-83kg)トーナメント (ライト級は別ページに掲載)
 

第2試合 一回戦 1R10分・2R5分
○郷野聡寛(日本/GRABAKA/パンクラス・ライトヘビー級2位/82.9kg)
×ダニエル・アカーシオ(ブラジル/シュートボクセ・アカデミー/81.9kg)
判定3-0 (三宅=郷野/ヒューム=郷野/木村=郷野)


有言実行。郷野が初戦突破

 序盤、ボクシングの攻防でアカーシオが優勢。左フックで郷野がダウン気味に尻餅をつく場面も。だが1R中盤から郷野の右ローが当たりだし、左のボディブローと膝蹴りで挽回。パンチの打ち合いでも優位に試合を運ぶ。
 2Rも打撃主体だが、郷野はテイクダウンも奪い優勢。右ローを効かせると、苦し紛れにタックルに来たアカーシオを組み潰して上に。最後はマウントから腕を狙ったところでゴング。「判定上等」の郷野が理想に近い展開で見事勝利をおさめた。
 

第3試合 一回戦 1R10分・2R5分
○ダン・ヘンダーソン(アメリカ/チーム・クエスト/リングスKOK初代王者/82.9kg)
×長南 亮(日本/チームM.A.D./82.9kg)
1R 0'22" KO (右フック)


ダンヘン、ウェルターでもやっぱり強い!

 開始早々、ダンヘンが右肩を下げた独特の姿勢で距離を詰めると、パンチラッシュで右フックを当て、あっさりKO勝ち。準決勝に体力を温存する見事な勝利だった。
 長南はこの階級のエースに期待されながら2試合連続の短時間KO負け。もちろん優勝候補のダンヘン相手という不運もあったが、上の階級から落としてきた選手とのパワー差が改めて浮き彫りとなってしまった。
 

第4試合 一回戦 1R10分・2R5分
○美濃輪育久(日本/フリー/82.6kg)
×フィル・バローニ(アメリカ/ハンマーハウス/82.9kg)
判定3-0 (大城=美濃輪/足立=美濃輪/ヒューム=美濃輪)


“追い風ダッシュ”の助走? 美濃輪が堅実ファイトでリベンジ

 ウェルター級選手で会場人気が抜群なのは美濃輪。紹介VTRの富士山特訓の映像で、何度も笑いが起きる。入場するとその頭はスキンヘッド。試合前の構え等、リングに上がってからの一挙手一投足ごとに、会場からどよめきが起こる。相撲でいえば高見盛のようなポジションに達しているといえよう。陣営には石井、柳澤、窪田の元パンクラシスト、さらに近くの席には須藤元気の姿も見える。
 開始すぐ、バローニのパンチをかわして美濃輪がテイクダウンに成功。ハーフガードからアームロックを狙い続ける。長い時間この攻めを続けたが、時折体勢が変わるため、ブレイクはかからない。終盤にリバースされたが、バローニの踏みつけを足関に捕らえようとする場面もあり、終始攻め続けている印象を与える。

 2Rも美濃輪は同様の試合運び。カード発表記者会見でもほのめかしていた通り、バローニの打撃に一切付き合わない勝ちに徹した戦法だ。終盤には極まらなかったものの、パスガードから一気に腕十字を狙い、文句無しの判定勝利をおさめた。
 大会後の会見で美濃輪は「前回負けたバローニに勝って、トーナメントも勝つと決めてたので、相手の弱い所弱い所を突いて、這いつくばってでも勝とうと思ってました」とこの試合を振り返った。バローニは美濃輪の打ち合わない戦法に対し、「前回の対戦の後は彼に敬意を持っていたが、今回の後は無くなってしまった。かなり失望した」と不満を露にしていた。だが勝ち残ることが大事なトーナメントの戦いということを考えれば、美濃輪のタックルとグラウンドに全く対応できないバローニの方に問題ありだろう。
 

第5試合 一回戦 1R10分・2R5分
×須田匡昇(日本/CLUB J/修斗ライトヘビー級世界王者/82.9kg)
○ムリーロ・ブスタマンチ(ブラジル/ブラジリアン・トップチーム/元UFCミドル級王者/82.9kg)
1R 3'20" レフェリーストップ (腕ひしぎ十字固め)


修斗王者・須田、奇襲成功もその後が…

 ブスタマンチが序盤からテイクダウンに成功。倒されるたび、須田は防御してスタンドに戻すが、ストレートの連打を浴びて早くもピンチだ。しかし起死回生のバックブローを放ったところ、反則ではあるが肘が見事クリーンヒットし、ブスタマンチがダウン。須田はそのまま上になり流れを引き込む。だが下になっても強いのがBTT。須田を速攻の腕十字で捕まえ、きっちり勝ちをもぎ取った。
 

第11試合 準決勝 1R10分・2R5分
×郷野聡寛(日本/GRABAKA/パンクラス・ライトヘビー級2位/82.9kg)
○ダン・ヘンダーソン(アメリカ/チーム・クエスト/リングスKOK初代王者/82.9kg)
1R 7'58" KO (右フック)


郷野流、無傷のダンヘンには通じず

 試合開始すぐ上になったダンヘンは、パウンドを落とそうとした時に郷野とバッティング。ダンヘンもダメージがあったが、一回戦のアカーシオ戦で右目を腫らしていた郷野は、その箇所に当てられたことでさらにダメージが膨らむ。スタンドで再開すると、その右目近くに左フックをもらいダウン。一回戦と全く同じ苦境に序盤から立たされ、腫れも一層大きくなる。
 一回戦で15分戦った郷野と、22秒しか戦わなかったダンヘン。両者の体力消耗の差も大きい。ダンヘンはパウンドとボディへの肘、スタンドでも郷野をコーナーに押し込みテイクダウンを狙う。有効な攻撃は少ないが、じわじわと郷野を消耗させる嫌らしい攻めだ。
 それでも郷野はキックボクシングの攻防で、鋭い左のミドルとハイをヒット。さらには右ローも当て、じわじわとダンヘンを痛めつける。だがローを当てた直後、郷野のバランスの崩れるのを見計らっていたというダンヘンのワンツーパンチがクリーンヒット。後ずさりした郷野はコーナーに詰められ、最後は右フックでマットに沈んだ。
 

第12試合 準決勝 1R10分・2R5分
○ムリーロ・ブスタマンチ(ブラジル/ブラジリアン・トップチーム/元UFCミドル級王者/82.6kg)
×美濃輪育久(日本/フリー/82.9kg)
1R 9'51" KO (サッカーボールキック)


美濃輪の追い風、非情な師匠がストップ

 郷野が敗れ、残った日本人は美濃輪のみ。観客の美濃輪への期待度はいっそう高まるが、一回戦フルラウンド戦った日本人と、短時間で試合を終わらせた外国人という構図は、郷野×ダンヘンと一緒。ラウンド終盤の体力と集中力のキツいところで、隙を突かれて敗れるという点でも、美濃輪は郷野と同じ道を辿ることとなる。
 やはりこの試合でも先に上になったのは外国人のブスタマンチ。ハーフからのアームロック狙いや、一旦立ち上がっての踏み付け狙い等の攻めに対し、美濃輪は防戦一方だ。膠着を誘発する動きとみなされ、島田レフェリーからグリーンカードをもらってしまう。
 だがスタンドでの再開後、ブスタマンチがテイクダウンを狙うと、美濃輪はギロチンに捕まえることに成功。ブスタマンチの苦しそうな表情が会場のスクリーンにはっきりと映し出され、満員の会場はヒートアップする。しかしロックが浅く、ブスタマンチは脱出成功。美濃輪はこの試合最大のチャンスを逃してしまう。

 以降はBTT修業時代の先生・ブスタマンチから、みっちり柔術の手ほどきを受けるような展開に。ブスタマンチはハーフから肩固めを狙いながら一気にマウントへ。さらにバックを奪い、いったんガードに戻されるが、再び肩固めにつかまえ、そのままパスして必勝パターンへ。極まったようにも見えたが、美濃輪はブリッジでかろうじて脱出に成功する。
 スタンドに戻ったが、美濃輪は高山病の病み上がりの影響も相まって、反撃の余力がない。あっさりと三たび下のポジションに。ブスタマンチは関節技では終わらないと見たか?猪木アリ状態で立ち上がると、美濃輪のボディへカカトを一発。すると一瞬美濃輪は頭を上げてしまい、サッカーボールをこめかみ付近にモロにもらってしまう。最後はパンチラッシュとサッカーボールキック3連打。いずれも後頭部に当たり反則だったが、美濃輪の動きが止まったため、慣例通り美濃輪のKO負け扱いとなった。
 試合後はブスタマンチだけでなくBTT勢が総出で、敗れた美濃輪の健闘を讃えた。美濃輪がいかにBTTで愛された存在だったかを示すような光景だった。しかし勝負は非情だった。ブスタマンチは「偉大な選手。私も凄く好きで、戦いたくなかった」と振り返ったが、最後は情け容赦なく頭を蹴りまくった。美濃輪は「優しすぎました。情がリングに出てしまって。これが壁ですね」「人間としてもっと成長しないと」と反省していた。

 決勝は下馬評どおり、実績で他の6選手より勝っているダンヘンとブスタマンチが残った。両者は2年前、PRIDEミドル級GPの決勝トーナメントのリザーブマッチで激突しており、その時はバッティングも災いし、わずか53秒でブスタマンチが敗れている。勝ったダンヘンも「10日前に試合が決まって、まともな準備ができなかった」と振り返る一戦で、両者とも大みそか決戦に意欲的だ。もしブスタマンチが勝てば、UFCミドル級(-83.9kg)とPRIDEウェルター級(-83kg)の2大王座制覇の快挙となる。だがダンヘンは2試合連続右フックによるKO勝利で決勝進出。「これまでの試合と違い、自分より大きい相手のプレッシャーで体力を消耗することが無く、非常にやりやすい階級だった」とも振り返っており、その破壊力とパワーはブスタマンチの脅威となりそうだ。

ウェルターも外国人天国? いや、光ったのは彼らだ!

 元UFC王者と元KOK王者の対決。昔から2人を知るマニアにはたまらない組合せだが、視聴率命の大みそかのテレビ中継において、この渋いカードがまともにオンエアされる可能性は低そうだ。ライト級が日本人同士の対決となり、コントラストがよりはっきりとする。榊原信行DSE社長と高田延彦PRIDE統括本部長は、ライト級の五味隆典らの活躍には最大級の賛辞を送ったが、4人も揃えたにも関わらず一人も日本人が残らなかったウェルター級に対して出て来る言葉は厳しかった。一夜明け会見で高田本部長は「ウェルター級の日本人選手の現実を見せられました。日本人ナンバー1を決める大会も視野に入れながら、ウェルター級でも勝てる強いファイターを作る必要があると強く感じました」と語り、大会直後の会見で榊原社長は「ミドル級の日本人選手達は階級を落としてきて欲しい」と話した。

 とはいえこの展開は、郷野が8月のカード発表記者会見で予言していたもの。その時の発言はこんな内容だった。
「下手な鉄砲数打ちゃ当たる、じゃないけど、日本人選手に勝ち残って欲しい組合せになっている。次やるならK-1 MAXみたいに日本人トーナメントをやって、世界大会に日本人は2名ぐらいでいいんじゃないか。今回はリザーブマッチを含め、2強・3中・5弱。5弱は日本人ね。でも日本人トーナメントをやれば、俺が一番だと思っている」
 「5弱は日本人」はハズれたが、あくまで郷野流の辛めのスパイスであり、郷野&美濃輪以外の3人があっさり負けたことを考えれば、かなり的確な読みといえよう。しかも郷野は「日本人トーナメントをやれば、俺が一番」と思わせるファイトを、しっかりやってのけているのだから恐れ入る。

 そしてウェルター級でビッグマウス郷野とともに観客の大声援を浴びたのはリアルプロレスラー美濃輪だった。ライト級では五味・マッハ・川尻・三島の修斗ウェルター〜ミドル級新旧トップ選手が存在感を示したが、ウェルター級ではシューターでもなく、DEEPのエース格でもなく、二人の旧パンクラシストの個性が最も光を放っていた。最近は専門誌でも危機説を煽るような特集が組まれてしまっているパンクラスだが、この大会では改めて、パンクラス・ライトヘビー級(90kg)の充実ぶりを思い起こさせられた。王者・近藤有己もPRIDEウェルター級参戦に意欲的で、今後もますます新旧パンクラシストたちがこの階級をにぎやかにしていくだろう。


第1試合 リザーブマッチ 1R10分・2R5分
×桜井隆多(日本/R-GYM/DEEPミドル級王者/82.9kg)
○パウロ・フィリォ(ブラジル/ブラジリアン・トップチーム/82.9kg)
1R 3'49" レフェリーストップ (腕ひしぎ十字固め)


 開始すぐ、隆多が膝とハイで威勢良く攻めるが、フィリォは組み付いてテイクダウンに成功。いったんスタンドに戻されるも、またも組み倒すとハーフからマウントへ。パンチを落としてバックを取ると、そのまま腕十字を極めた。

Last Update : 10/05 23:25

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