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(レポ&写真) [PRIDE GP 開幕戦] 4.23 大阪:シウバ、吉田KOならず

ドリームステージエンターテインメント "PRIDE GRANDPRIX 2005 ミドル級トーナメント開幕戦"
2005年4月23日(土) 大阪・大阪ドーム

 Text:井田英登(第1,3,6,8試合)&小林秀貴(第2,4,5,7試合) Photo:矢野成治 【→カード紹介記事】 【→掲示板】


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第8試合 1R10分・2R5分・3R5分
×吉田秀彦(日本/吉田道場)
○ヴァンダレイ・シウバ(ブラジル/シュートボクセ・アカデミー/PRIDEミドル級王者)
判定1-2


こと格闘技において「敗戦」は、選手生活の大きなターニングポイントになる事が少なくない。

一年半前、2003年の11月吉田は、前回のミドル級GPの準決勝で初めてヴァンダレイと対戦。顔面を真っ赤に染められての、屈辱の判定負けを喫している。2002年、国立競技場「Dynamite!」で、十万人の観客の見守る中でのプロデビュー以来、戦績は四勝一分の無敗での対戦。プロ初の黒星だった。

それまでの吉田は、あくまで“現役引退した柔道家”だったと言っていい。余技とは言わないまでも、PRIDEという舞台に対して、どこか半歩引いた立ち位置で参戦していた感がある。決め技には柔道着を使った絞め技、打撃はあまり積極的には使わない。そんな異種格闘技戦的な闘いぶりにも、その姿勢は現れていたのではないか。

「総合格闘家として生きる」というよりは、「柔道家としての可能性を試す」といったニュアンスだろうか。平均レベル程度の選手であったなら、そんな中途半端な覚悟でPRIDEのリングに上がって、生き残る事などまず不可能であったに違いない。

吉田の高い柔道家としてのスキルが、なまじ総合の舞台でも通用してしまったが故に、“総合格闘家・吉田秀彦”としての進歩はスポイルされてしまっていたのではないだろうか。

だがその“オリンピックメダリストの余裕”を、ヴァンダレイは吹き飛ばしてしまった。柔道家の不器用な打撃対策をあざ笑うように、顔面をヒザで射抜き、まるでボロぞうきんの様に翻弄してみせたあの戦いぶりは、未だに胃の腑が冷えるような記憶として残っている。

世界の頂点に立った事のあるトップアスリートが、競技的にはまったく柔道に及ばないマイナージャンルである総合格闘技の選手に敗れたという事実は、吉田のプライドに一筋ならぬ屈辱を刻み込んだのではないだろうか。

今回のGP参戦に関して、吉田は極めて積極的であった。二年前のGPのように参戦に向けての逡巡はほとんど見せず、ほとんど既定事実のように参戦を決めていた。「覚悟が座った」という言い方がこの場合当たっているのかどうかは判らないが、今回の吉田は、PRIDEリングの“お客様”ではなかったと思う。

事実、その積極性は試合ぶりにも発揮されていた。

序盤からヴァンダレイの早いパンチに反応、柔道的な立ちあいにこだわらず、低いタックルを多用。ヴァンダレイの回転の速いパンチ連打にも下がる事無く撃ち合ってみせるなど、序盤の動きは通常の総合格闘家のセオリーと寸分も違わない物だった。それで通じないと見るや、ようやく膝車でテイクダウンを奪って見せたが、それも引き出しの一つと言った感じで、決して柔道技に固執したという感じでもない。その後のパスガード一つにしても、極めてスムースな動きとなっており、前回の対戦とは全く違う選手と言ってもいい印象を受けた。

一年半の間に、吉田という選手が何を身につけ、何を実現しようとイメージして日々の練習を行って来たかが、戦いの中に浮かび上がってくる。ーー言い換えるなら、吉田のその間の成長を、ヴァンダレイという「物差し」が図らずも浮かび上がらせた事になる。

一方、ヴァンダレイ自身もまた、そんな吉田の総合格闘家としての成長を受けて、普段の試合では見せない、繊細な柔術的テクニックを随所に見せていたのも面白かった。下のポジションになったヴァンダレイは、道着の襟を掴んで吉田の動きを封じ、オープンガードを駆使した三角締めや腕十字を狙って行く。

対する吉田は、逆にVTに通じたアマチュアレスラーがよくやるように、下になった相手がクロスガードにした足を中腰で釣り上げ、空間を作ってパウンドを浴びせて行く。そして下からの腕十字を狙って来たヴァンダレイを抱えあげて、バスターで叩き付けて脱出するといった“総合のセオリー”を駆使するではないか。

ヴァーリトゥーダーとグラップラー。まるで、お互いのバックグラウンドが入れ替わったかのごとき両者の戦いぶりであった。

2R以降、打撃に徹したヴァンダレイがお得意の踏みつけやパウンドを繰り出し、攻めに鋭さを増して来たこともあり、吉田は防戦一方にならざるを得なくなった。3Rに至っては、ローの連打で、何度も左右に吹き飛ばされるシーンが見られ、やはり両者の“総合格闘家”としての力量には、まだ大きな開きがある事を露呈してしまう。

だが、強烈な右フックを浴びてフラッシュダウンを喫しながらも、追い打ちの踏みつけに来た足を素早くヒールホールドに切り返し、覆いかぶさって凌ごうとしたヴァンダレインの頭をとって、さらにフロントチョークで徹底抗戦した吉田の粘りは、確実にそこに勝機が見えていたからこそ仕掛けられたもの。

一年半前、ヴァンダレイの猛攻を浴びて、まるで嵐の中の小舟のよう翻弄されるばかりだった“柔道家”とは全く違う、しぶとく、そして確実にスキルを増した“総合格闘家・吉田”がそこには居た。

特に最後のフロントチョークは「かなり入っていたと思うが、セコンドがもう終了だと言ったので逆らわずに耐えた」とヴァンダレイ自身が振り返るほど“あわや”のチャンスに満ちた仕掛けでもあったのだ。

判定では敗れたものの、吉田にはむしろ「やり切った」という満足げな表情と、悔しさのにじみ出た哀切な表情が交互に浮かんでは消えていたのが忘れられない。

大会終了後の会見には参加せず会場を後にした吉田だが、そのかわりに榊原社長が明かしたエピソードは、その印象が間違っていなかった事を立証している。

リングを降りた吉田に対し、高田統括本部長が「もう一丁行くか?」と声を掛けたという。すると、あのクールで感情を露にする事があまりない吉田が、即座に「何丁でも行かせてください」と即答したというのだ。

吉田のPRIDE通算戦績は、これで3勝3敗1分。
“引退したオリンピックメダリスト”というポジションだけなら、そろそろ進退が怪しくなってくる数値だ。

しかし、吉田のあの表情は、既にそんな“腰掛けの人”のものではないと言っていいだろう。彼が“新々気鋭の総合格闘家”として、闘い続ける覚悟であれば話は別だ。それだけのポテンシャルを吉田は、この日の戦いで証明した。

むしろ今日の彼の戦いを“総合格闘家としてのデビュー戦”と位置づけてみるなら、もう何丁でも闘って見せてもらいたい。


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第7試合 1R10分・2R5分・3R5分
×クイントン・“ランペイジ”・ジャクソン(アメリカ/チーム・オーヤマ)
○マウリシオ・ショーグン(ブラジル/シュートボクセ・アカデミー)
1R 4'47" TKO (レフェリーストップ:サッカーボールキック)


 PRIDE参戦当初、ジャクソンは桜庭の当て馬、「暴走ホームレス」という触れ込みだった。それが今やミドル級不動の「二番手」だ。対するマウリシオ・ショーグンは、PRIDE.29で実兄、ムリーロ・ニンジャを僅差の判定で下したジャクソンへの敵討ちに燃える。ショーグンの踏みつけ攻撃も強烈だが、それには上のポジションを取れるかどうかがカギとなる。戦前の予想ではジャクソンがやや優勢かと言われていた。しかし意外にも、勝負はショーグンのワンサイドゲームで幕を閉じた。
 

1R序盤から、ワンツー、右ハイと強烈なコンビネーションを駆使するショーグン。組みついては首相撲でヒザ蹴りを鋭く打ち込む。この前半の攻防で、ジャクソンが肋骨を骨折するというアクシデントに見舞われた。こうなると後はショーグンのやりたい放題。首相撲からひたすらヒザ、ヒザ、ヒザ。ジャクソンが腰をつくと、サッカーボールキックの連打。たまらず試合をストップするレフェリー。ジャクソンは赤コーナーマットに頭をつけ、力無く宙をみつめる姿を格闘技ファンの前に晒してしまった。

第6試合 1R10分・2R5分・3R5分
○桜庭和志(日本/高田道場)
×ユン・ドンシク(韓国/フリー)
1R 0'38" KO (グラウンドパンチ連打)


十ヶ月ぶりのリング復帰を果たした桜庭。
この休養帰還に、腰や膝の積年の故障もすっかりオーバーホールし、「近年で最も体調がいい」と言うまでに復調、GPの記者会見でも「(参加選手)全員から一本取れますね」と言い放つまでの自信を取り戻した。

そのリニューアルぶりを強調したいと、新学期の小学生に扮して登場したのはご愛嬌。今時、こんなふざけた入場を仕掛けて許されるのは、三島☆ド根性ノ助とこの人ぐらいだろう。当然、その背景には「やるべき時には、ばっちり決めてくれる男」という絶大な信頼感があってのこと。

対するユン・ドンシクは参戦決定以来、「楽勝宣言」をぶちあげ「桜庭に本当の柔道の恐ろしさを教える」と言いたい放題を続けて来た“ナチュラル・ヒール”。これまでの柔道での実績は国際大会47連勝と抜群であり、古賀稔彦、滝本誠ら日本代表を撃破している。


共に、自信満々の発言を繰り返している両者の対決となれば、どっちがビッグマウスか測れる物差しはただ一つ。リングの上での結果しかない。

だが、その答えはあっけなく出てしまった。

序盤、柔道家は鋭い左右のパンチの連打で飛び出す。それを、繰り出したローのカウンター気味に浴びてしまった桜庭は「絶対(打撃を)練習してきてるな」と思ったといい、様子見モードからエンジン全開に切り替えての応戦。さらにワンツーで飛び込んで来た所を突き放し、鋭いアッパーで迎撃。これは空を切ったものの、今度は自ら仕掛けた左フックをヒットさせ、俯いたところにアッパーをぶち込む。

途端にユンは身体折るようにして崩れ落ちる。カメになって頭を抱えたユンに、容赦なく左のパンチを振り子のように叩き込む。反応の消えたユンを見て野口レフェリーが試合をストップ。

「格闘技日韓対決」と大きく煽られた一戦は、たった38秒で終了してしまった。

試合後マイクを取った桜庭も拍子抜けだったらしく「僕は秒殺は好きじゃないんですけど…秒殺も気持ちいいかな」とフォローを入れるほどの、超省力ファイトであった。

ちなみに、この試合の公式結果はKO。

試合後、勝った桜庭もこの裁定には驚いたらしく「あれはレフェリーの人が止めたんで、TKOかなんかじゃないんですか? あれがKO? ホント?」といぶかしむほどだった。事実、ユンはその直後にすっくと立ち上がっており、ダメージもあまりなかったように見えたため、試合後この結果については何か抗議のコメントをぶち上げるのではないかと思われたが、「あのとき、意識が飛んでしまっていたのでフィニッシュは憶えていない」とあっさり敗戦を認めてしまった。

事前の盛り上げからは考えられないほどの空回りで終わってしまった「日韓格闘技決戦」。

桜庭自身のGP開幕は、二回戦に持ち越された形だ。


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第5試合 1R10分・2R5分・3R5分
×ダン・ヘンダーソン(アメリカ/チーム・クエスト)
○アントニオ・ホジェリオ・ノゲイラ(ブラジル/ブラジリアン・トップチーム)
1R 8'05" 腕ひしぎ十字固め


 1Rの大半は、大方の予想通り、下のホジェリオ×上のダンヘンという展開。いわゆる猪木アリ状態がしばらく続いた。しかし中盤にホジェリオが下から見せたオモプラータ(肩関節技)からの脱出に相当力を使ったのか、後半ダンヘンはガス欠状態に。不用意に両足タックルに行ったところをホジェリオに潰された。ホジェリオはサイドポジションから腕がらみ、そして腕十字と、教科書通りの攻めできっちりとチャンスをものにした。

第4試合 1R10分・2R5分・3R5分
×ビクトー・ベウフォート(ブラジル/フリー/UFC推薦選手)
○アリスター・オーフレイム(オランダ/ゴールデン・グローリー)
1R 9'36" フロントネックロック


 2月のPRIDE.29でホジェリオに敗れながらも、開幕戦出場メンバーに「滑り込んだ」感のあるアリスター。対するビクトーは、UFCが威信をかけて送り込んできた刺客。どちらも負けられない一戦は、アリスターがフロントチョークで大きな殊勲を挙げた。
 1R終了45秒前。194センチという長身から繰り出されたアリスターの右膝蹴りがビクトーのアゴをとらえた。もんどりうって倒れるビクトーを、アリスターは浴びせ倒すように上になり、そのままパウンド。ビクトーはスイープして一瞬有利になったかと思われたが、その先にはアリスターの「極め」が待っていた。深く入ったフロントチョークに、ビクトーがまさかのタップ。場内はどよめきに包まれた。


第3試合 1R10分・2R5分・3R5分
×近藤有己(日本/パンクラスism/パンクラス・ライトヘビー級王者)
○イゴール・ボブチャンチン(ウクライナ/フリー)
判定0-3


この日、裏メインと言ってもいい注目度を集めていたのがこの試合。

今やインディ格となってしまった団体の、命運を背負うエース近藤。2月の「PRIDE-29」でパンクラス前ヘビー級王者高橋義生が敗れたボブチャンチンとの対決は、「勝つパンクラス」を標榜する近藤にとって“仇討ち戦”。

パンクラスの看板を背負う者としては、避けて通れない関門である。

ここで近藤が敗れれば、それはすなわちエース陥落であり、格闘技団体としてのパンクラスの威信は地に堕ちる。興行的には中盤のカードとして位置づけられているが、食うか食われるかの格闘技業界の中では、老舗のパンクラスが一か八かの勝負に出た、まさに天下分け目の一戦である。

だが、ミドル転向でスピードを増したボブチャンチンは、多分今回参戦した16人の中でも一、ニを争うほど波にノっている選手の一人。持ち前のロシアンフックのパワーは減量の影響どころか、逆にクラス一つ下のミドル戦士には脅威の大砲として健在ぶりを示している。

対する近藤としては「僕の中の精密機械が狂わなければ勝てると思う」と分析。鋭く早いパンチの連打に勝負を賭けるつもりだったようだ。

だが、実際のリングで近藤が見せた動きは、打ち合いではなくタックルからのグラウンド戦だった。長い序盤の間合いの取り合いから、ボブチャンチンが繰り出した一発のフック。それをかいくぐっての低い両足タックルだった。「半分は作戦でしたけど、素直なタックルで距離が詰められるかどうかは実際にやってみなければわからないなと思って」と試合後語った近藤。だが、この直感的選択がこの試合の明暗を分けた気がする。

タックルを切ったボブチャンチンは、そのまま近藤を組み敷き、素早くサイドポジションを奪取してしまう。当然のようにここで早速得意の膝が近藤の頭部を襲う。これを凌いで近藤はガードに捉えるが、ボブチャンチンのパウンドは容赦がない。大振りで破壊力抜群のパウンドを躱して、下からの三角、アンクルホールドと繋いだあたりは、近藤の普段余り見せないU戦士としての引き出しが覗けた攻防だったのかもしれない。

しかし、地力に勝るボブチャンチンは、このすべてをじわじわと切り返してくる。時にガードポジションからアームロックを極めるなど、小器用なところもあり、結局近藤は押さえ込まれてパウンドを浴びる展開に。なんとかブリッジで切り返そうとする近藤だが、腰の重いボブチャンチンの、ロデオ体勢でのバランスの良さにスィープもままならない。一発一発をウィービングしながら捌こうとする近藤だが、次第にその甘いマスクがパウンドで赤く染められて行く。

結局終盤までこの構図は変わらず、近藤の“精密機械”はほとんど封を切られる事も無いままに試合終了を迎える事になってしまった。

「精一杯やって敵わなかったなと思って晴れ晴れしています。勝負にこだわる気持ちはあるんですけど、こだわりすぎて動きが堅くなるといけないなと思ってて、その点では十分出し切れた気持ちがしているんで、すっきりしています」と相変わらず淡々と語った近藤。アスリートとして達観の域に達しつつある彼のような選手ににとって、そこで感情を露にして悔しがれと言うのはもちろん無理な注文であるのは判っている。

パンクラスが、対外戦でエース陥落という事態に直面したのは初めてではない。いまや伝説となった2000年5月の「コロシアム2000」で、船木がヒクソン・グレイシーに敗れた時、船木は敗戦の直後に引退を表明。“ヒクソンに負けた男”をエースに戴いてきたパンクラスは、営業面で壊滅的なピンチに陥った。

今回の近藤の敗戦は、それに匹敵するような大ピンチなのである。
その責任の重さを、近藤自身はどう捉えているのだろう?

“やり切った”からこそ、負けて人目も憚らず悔し泣きしてしまうぐらいの、勝負への執着を見せて欲しかった気がする。

団体のエースというのは既に個人ではない。対外試合に打って出る以上、それは団体全体の命運を背負ってのこと。進退を賭けるぐらいの覚悟を、あるいは相手と刺し違えるぐらいの気概がなければ挑むべきではない気がする。そして船木は、格闘技選手としての「死」をもって購うものと位置づけた。

無論、若い近藤にその選択はあり得ない。
ならば「生き続ける」事によって、失ったものを取り戻すしかないはずだ。

それが団体の看板を背負う人間の運命であり、資格だと思う。




第2試合 1R10分・2R5分・3R5分
○ヒカルド・アローナ(ブラジル/ブラジリアン・トップチーム)
×ディーン・リスター(アメリカ/ファビアノ・サントス柔術)
判定3-0


 アブダビ・コンバット無差別級、01年王者と03年王者の決戦。選手のレベルとしてはメインイベントでもおかしくない寝技王対決。
 1R序盤、立ち技の攻防を制したのはアローナだった。3分、アローナの右アッパーでリスターが後方に倒れると、アローナがまず上に。猛烈なパウンドから相手の両足をかついでパスガードをしかける。7分、リスターはアローナの打撃で右目尻をカットしながらもタックルで上を取ると、アローナの左足首を、クロスヒールホールド気味に絞め上げる。アローナもこらえ、三角絞め、オモプラータと技をつなげる。

 2R、アローナが払い腰にいったところをリスターがつぶして上に。マウントに近い状態から関節技をうかがうが、アローナはガードに戻す。逆に下から三角絞めにいったところでゴング。

 3R、リスターが足関節を狙いに行った反動を上手く利用してアローナが上に。マウントからパウンドを落とし、バックマウントからチョークを狙う。いったん下になったアローナだったが、リスターの左足を取って反転。右サイドポジションからヒザ蹴りを放ち、マウントポジションを奪う。最後はリスターが逃れたが、挽回できずそのまま試合終了。積極性で完全に上回ったアローナが判定3-0で勝利をものにした。



第1試合 1R10分・2R5分・3R5分
○中村和裕(日本/吉田道場)
×ケビン・ランデルマン(アメリカ/ハンマー・ハウス)
判定3-0


「僕を中心にGPは回ります」と大言壮語し、さらには「このGPに限って“脱吉田”宣言します」と吉田道場のナンバー2であることも否定、このトーナメントで一気に先輩吉田を越える覚悟を見せた中村。ブラジルのマルコ・ファス道場での長期海外修行も経験した今、あとは戦いぶりでどれだけ“化け”たかを証明する以外ない。

序盤から、強打で鳴らした元UFCヘビー王者と正面からパンチで撃ち合う度胸はもちろん、失敗を畏れずに飛び膝やハイキックを見舞っていく度胸などは、確かに一皮むけつつあるメンタルの充実を伺わせる物だった。

パワーに物を言わせて、タックルを仕掛け、パウンドで中村をその上昇志向ごと粉砕してしまおうと目論むランデルマンだったが、テイクダウンしても中村の密着は堅く、パウンドに逸ると逆にスィープで上下を入れ替えられてしまう。

また、押さえ込みに回ると、中村はブラジル修行の成果である、腕を膝で押さえ込むというエグイ攻めを披露。そこからパウンド、さらにはアームロックと攻め込み、優位性をアピールする。

最終ラウンドこそ、若干スタミナ切れの気配もあってランデルマンに上のポジションをキープされる局面が目立ったが、密着してパウンドは打たせておらず、大勢に影響する事は無かった。

この日、リングサイドには柔道時代しのぎを削った井上康生らも姿を見せており、別競技で世界トップににじり寄る姿を見せつける事に成功している。

最終的にGP二回戦に歩を進めた日本人は二人。その中に師匠にあたる吉田の姿はもう無い。その意味では“脱吉田”を、すでに成し遂げてしまった事になる。総合格闘技への適応度から言えば、この逆転自体当然と言えば当然の現象と言っても言い過ぎではないだろう。

次回以降は「越える/越えない」のテーマではなく、目の前の階段を何段上に上がれるか、中村自身の“歩幅”で真価が問われる事になる。

 


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Last Update : 04/24 10:46

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