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(レポ&写真) [修斗] 12.14 代々木:川尻&菊地、新王者に

サステイン "クリムゾン・プレゼンツ プロフェッショナル修斗公式戦 15th Anniversary"
2004年12月14日(火) 東京・国立代々木競技場第2体育館
認定:インターナショナル修斗コミッション

  レポート:井原芳徳、若葉り子、永田遼太郎  写真:小林秀貴  【→カード紹介記事】 【→掲示板スレッド】


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メインイベント 世界ウェルター級チャンピオンシップ 5分3R
×ヴィトー・“シャオリン”・ヒベイル(ブラジル/ノヴァ・ウニオン/王者)
○川尻達也(チームTOPS/1位)
2R 3'11" TKO (レフェリーストップ:グラウンドパンチ)

※2R右ストレートでシャオリンに1ダウンあり
※川尻が第8代王者に

 1R、最初の脇を差し合っての攻防は、互いに膝を当てる程度で大きな動きが無く、ブレイクがかかる。離れると今度はシャオリンがタックルで突進。だが川尻が倒れずに踏みとどまると、シャオリンは後ろから抱きついて倒しにかかる。それでも持ちこたえる川尻。宇野戦でも見せた腰の強さを発揮したとも言えるが、シャオリンのパターンを十分研究してきていることが伺える。そしてシャオリンと正面に向き合うと、顔面に膝一撃。川尻も「効いた」と振り返る攻撃で一瞬相手をひるませ、いいリズムのまま2Rに持ち込む。

 2Rも序盤から川尻が打撃で主導権。得意の寝技に持ち込めず、焦りの色の見え始めたシャオリンが前進してきたのに合わせ、川尻は左フック。するとシャオリンは力無くロープ際まで後ずさりし、川尻は右ストレートでダウンを奪うことに成功する。まさかの展開に場内は大歓声。さらにパンチで追いつめると、十分回復していないシャオリンは強引にタックルで倒しにかかる。川尻は難無く組み潰すと、ハーフガードの体勢からパンチの雨。シャオリンは力なく顔をそむけ、場内は「オイ!オイ!」とのかけ声に包まれる。さらに川尻がパウンドを落とし続けると、シャオリンの動きが止まり、レフェリーストップとなった。

 宇野、五味、ハンセン、シャオリン。世界に名だたる強豪達の巻いたベルトを奪い取る快挙を成し遂げた川尻。うれしさだけでなく驚きも隠しきれない。「みなさんに質問していいですか?これ夢じゃないですよね?みなさんの応援のおかげで勝てました。他の団体の奴でもこのベルトが欲しかったら、この修斗のリングに上がって来て下さい。もちろん誰にも渡しません。尊敬するマッハさんの言葉だけど、打投極なら修斗が一番。柔術なんかには負けません。日本の修斗が一番です」
 さらに川尻はバックステージでこう語った。「プロモーターが許してくれるなら、他のリングに上がって、修斗のすばらしさ、強さをアピールして、お客さんを後楽園とか代々木に連れて来たいです。修斗を一般層に認知させるのが僕の使命だと思います。」
 川尻は明言しなかったが、修斗を一般層に認知させるために上がる他のリングとは、PRIDE武士道かROMANEX(K-1の総合部門)のことだろう。この日、会場入り口にはDSEの榊原信行代表と加藤浩之専務から贈呈された花輪が飾られており、川尻獲得競争ではPRIDE側が先手を打っているようだ。

 この日の15周年記念大会の開会式では、修斗草創期から現在までの写真や映像が年代順に紹介されるVTRが流れた。創始者の佐山聡に始まり、エンセン、宇野、マッハ、五味、KID。残っている有名選手はルミナぐらい。修斗の歴史は「離脱」の歴史でもあったことを、皮肉にも痛感させられた。
 だが2004年からは「還流」の兆しが見え始めた。宇野が戦列復帰し、受太郎、桜井隆多もDEEPで、タクミはKOTCでベルトを獲得。アマ修斗を経験していない中原太陽も自ら修斗ライト級を戦場に選び、修斗側もそれを受け入れる環境を整えた。
 そして2005年、川尻は70kg前後の世界最高峰と言って過言ではない「修斗世界ウェルター級王座」を保持したまま、外部への戦いに打って出る。修斗の逆襲が、ついに始まりそうな気配だ。(井原)

◆川尻「相手は立ち技が弱いんで、左ロー、右アッパー、そして左右の動き、この3つを重点的にやってきて、ドンピシャでしたね。前に戦った時は力強く感じたんですけど、今回は『倒そう倒そう』と向こうが焦ってて、勝手にやらせようと思ったら、相手のスタミナが切れてきてるのがわかりました。僕の基本は桜井マッハ速人なんで、あの人の教えをいつまでも心に留めてやってきて、今日リングで見せることができました。」

セミファイナル 世界ミドル級チャンピオンシップ 5分3R
×ジェイク・シールズ(アメリカ/シーザー・グレイシー・アカデミー/王者)
○菊地 昭(K'z FACTORY/1位)
判定0-3 (菅野27-30/横山29-30/鈴木28-30)

※菊地が第7代王者に

 1R終盤、菊地はシールズのパンチをかわしてタックルで倒すと、バックに回り込んでパンチを当てる。2Rも菊地がバックを奪い主導権を握り、王者にチャンスを作らせない。会場からは“アキラ”コールも巻き起こるようになり、菊地のイケイケムードに。
 3R序盤、菊地は鼻血を出してしまうが、どうも鼻血が出やすい体質のよう。試合後「照明でのぼせたのかも?」と振り返っており、特にダメージは無く、逆にこれで「吹っ切れた」という。
 その後シールズに上を取られる場面もあったが、ハーフ止まりでパスガードは許さず。残り1分、膠着ブレイクがかかると、右ストレートを当ててからパンチラッシュ。さらに倒れたシールズに「前に負けた時の倍返し」というマウントパンチの雨を降らせると、会場は大歓声。勝利を決定づけた。
 唯一の黒星の相手へのリベンジ&念願の王座取りに成功した菊地。試合中とはうって変わって、勝利者インタビューでは素のボケキャラを発揮する。「10日ぐらい禁酒していたんで、今日は呑みたいです」と打撃アリの格闘技選手の禁句を口にし、周囲をヒヤヒヤさせていた。(井原)

第3試合 環太平洋ライト級王座決定トーナメント準決勝 5分3R
×戸井田カツヤ(和術慧舟會トイカツ道場/世界8位・環太平洋6位)
○佐藤ルミナ(K'z FACTORY/世界9位・環太平洋7位)
2R 1'21" KO (右フック)


 ルミナのライト級65kgギリギリまで鍛え上げられた肉体には感心させられる。気負い無くリングに上がると、自然体で対戦相手を迎え入れる。対する戸井田。久しぶりの大会場での入場。静かなイントロが流れるにつれ、会場内の緊張感も高まる。トレードマークの白衣の上下を脱いだ戸井田の身体は以前に比べて分厚くなっている。「修斗のカリスマと戦いたい」と語った4月の北沢大会のマイクアピールで自分を奮い立たせたのだろうか、この一戦への意気込みが見てとれる。
 まずはトリッキーにジャンプをしてみせる戸井田。彼流の宣戦布告だ。ルミナがタックルから組み付いて、テイクダウンに成功し上からパンチを落とす。ハーフガードの戸井田は下肢を上手く使ってルミナを蹴り上げながらスタンド状態へ戻し、青コーナー際で組み合う。
 戸井田がフロントチョーク狙い気味に引き込むが、ルミナは押し込んで上になるとパンチを肩・後頭部に落としていく。戸井田も再び下から組み付いてスタンドに戻す。スタンドからルミナが投げようとするが簡単に戸井田も倒れない。投げられながらルミナの足を獲ろうとしている。

 2度目の投げでテイクダウンに成功すると、がっちりクローズガードの戸井田に対して側転してパスを狙うルミナ。ルミナが上でポジションを次々変えれば、戸井田もそれに呼応するように下からルミナの足を狙いながらめまぐるしく動く。ルミナが上からアグレッシブにパンチを入れる中でゴング。
 とにかく速い。両者とも相手の動きの先の先の先を読むような高度な攻防に、場内からは拍手が送られる。
 2R、戸井田の打撃に対してルミナがタックルで組み付いていく。ほどけると戸井田はオープンガードでルミナを挑発。立ち上がりルミナが再び投げようとすると戸井田は足を獲ろうとし、また立ち上がる。ルミナが右のローを繰り出すと、トイカツは軽く飛び膝のアクション。すると直後に一瞬できた空間の際を切り裂くように、ルミナの右フックが戸井田の顔面に炸裂。マットに倒れ伸びきってしまった戸井田にトドメを刺そうとするルミナを、レフェリーが制している最中、10カウントが数え上げられた。

 会場中がふいを突かれた様な鮮やかな右フック。レフェリーが制止しても
まだなお襲いかかろうとするルミナの姿は、猛獣そのもの。それだけ“勝ち”
に飢えていたのだろう。試合後のインタビューでは、実に晴れ晴れとした表情で「やっと若い頃の勝ってた頃の自分の感覚が戻ってきた」と答えていたのが印象的だった。
 試合前のVTRで「ルミナの10年は修斗の10年」とあったように、文字通り修斗の象徴であるルミナ。そして同じくデビュー以来、修斗を主戦場にいくつもの名勝負でファンを沸かせてきた戸井田。試合後「何故修斗のリングに上がり続けるのか?」との質問に「修斗が好きだから。修斗がいちばん楽しいから」と答えてくれた。
 スタンド主体、パウンダー、柔術…と修斗に上がる選手のファイトスタイルやベースが多様化する中、そして、このリングを離れ他の戦場を選ぶファイターが多い中、二人は実に“修斗に一途”である。「オールド修斗ファン」という表現が相応しいかどうかはわからないが、この修斗に一途な二人の日本人が見せてくれた第3試合に特別な感情、“This is SHOOTO”という気持ちを抱いたのは、筆者だけでは無かったのではないだろうか。(若葉)


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第5試合 ライト級 5分3R
○アレッシャンドリ・フランカ・ノゲイラ(ブラジル/ワールド・ファイト・センター/世界王者)
×門脇英基(WKシューターズスクール/世界10位・環太平洋8位)
1R 3'34" フロントチョークスリーパー


 ペケーニョが門脇の周りをステップで回転。お互い距離を見ながら、張り詰めたテンションの中で一瞬の隙を狙う。まずペケーニョが軽く左のハイで距離を解こうとする。門脇は打撃勝負に応じ、顔へボディへワンツーを放つが、待ってましたとばかりにペケーニョはパンチを振ってからの光速タックル。門脇は抱え込んで下になり、空間を作らないように上半身を起こして身体を密着させていく。
 しかしペケーニョは強引に身体をほどいて優位なポジションに持って行こうとする。膝頭や足裏の下肢を効かせて防ぐ門脇だったが、完全にオープンの状態になり、上ってきたペケーニョの腕がするりと首に絡みつくと、早くもキャッチのコールが。ペケーニョは体重を前にかけて下にいる門脇の首を必死に絞り上げるが、門脇はなかなか陥落しない。必死の形相で体勢を入れ替えつつ脱出して、ペケーニョの上になってみせる。奇跡のムーブに場内は歓声につつまれる。
 だがここで力尽きたか門脇。朦朧とした表情の中で下にいるペケーニョに対して次のムーブに移ろうとした瞬間、自ら首を差し出すような体勢に。それをペケーニョが見逃すはずはない。再びキャッチが入ると、2度目の脱出劇は無くタップアウト。1年ぶりの日本での試合も、ペケーニョの勝利の方程式は不変だった。
 5度の防衛を続けているペケーニョ。どんな競技においても言えることだが、長い間表舞台に立つ一つの技術に長けたスペシャリストであれば、後に続くものから研究され尽くし対策を練られ続けるのは避けられない。門脇の1度目の脱出にしても、6月の植松戦での敗北後の緻密なフロントスリーパー対策と練習の成果と言えよう。試合後のインタビューで本人も「自分はギロチンだけでなくパンチ、キック、足関節など他のスキルも見せて行きたい」と語っていたが、“ペケーニョ=ギロチン”の公式が崩れる日が来るのかもしれない、と感じさせる一戦だった。(若葉)

第4試合 ライト級 5分3R
×高谷裕之(格闘結社田中塾/世界1位・環太平洋1位)
○ギルバート・メレンデス(アメリカ/シーザー・グレイシー・アカデミー)
判定0-3 (横山28-29/菅野28-30/鈴木28-30)

※3R右ストレートで高谷に1ダウンあり

 高谷はジョン・ホーキ戦等と同様、タックルを切りスタンドで打撃を当てる試合運び。1,2Rに1度ずつ倒されるが、2,3Rには右フックと右ローを効かせ、メレンデスを苦しめる。
 このままのペースで高谷の判定勝ちかと思われた3R中盤。メレンデスは高谷のローにストレートを合わせるようになり、ついに右ストレートが高谷の顔面に炸裂。一瞬腰が落ちた高谷にダウンが宣告される。それほどダメージは無かったが、その後の高谷はタックルを切るのが精一杯で、反撃の糸口が見いだせず、まさかのプロ修斗初黒星を喫してしまった。高谷は右膝をテーピングで固めていたが、その痛みも試合運びに何らかの影響を与えていたのかもしれない。
 とはいえ無名の新鋭・メレンデスの実力はホンモノ。高谷に蹴られた左足を冷やしながらインタビュースペースに登場すると「なかなか倒すのが大変だったけど、僕のリーチの方が長いので、蹴りに合わせてパンチを打とうと思った」と、捨て身の戦法でダウンを奪ったことを明かし、1位の高谷を敗ったことで、王者ペケーニョへの挑戦権が自分にあることをアピールした。(井原)

第2試合 67kg契約 5分3R
×阿部裕幸(AACC/ライト級世界4位・環太平洋4位)
○石川 真(PUREBRED大宮/ライト級世界6位・環太平洋5位)
3R 0'40 TKO (レフェリーストップ:口の中の出血)

※1R右フックで石川に2ダウンあり

 3R序盤、石川のハイキックの直後、激しい口内出血した阿部にドクターチェックが入った。その直後、ドクターから試合続行不可能が宣せられると勝者、石川はどこか行き場のない表情で顔を曇らせた。
 ダウン・ポイントでは試合開始早々に阿部の左右のストレートをもらい2つのダウンを喫し阿部が優位に立っていた。しかし1ラウンド中盤からは巻き返しを図った石川がパンチのコンビネーションで阿部を再三、コーナーサイドやロープ際に追い込むなど押し気味に試合を進めていた。それだけに、すっきり倒して勝ちたかったというのが石川の本音だったろう。試合中はコーナーへ連打で押し込んだ後、ツメを謝った感のある石川にセコンドから「ひざ、ひざ」と何度も指示が飛んでいた。そこが今後の課題とも言えるが、まるでリミッターが取れたかのように鬼気迫る連打で一気に畳み掛ける石川の剛術スタイルこそ彼の真骨頂。
 ランキングでは上位に位置する阿部を相手に、互いに得意とする打撃戦を制したことで急成長する姿を今年最後にアピールすることは出来た。そして次は『見えない右フック』という新技を見せKO勝ちを収めた『復活のカリスマ』佐藤ルミナが相手だ。この日の試合前から環太平洋トーナメント決勝の対戦相手として彼の名前を挙げていた石川。初のタイトル奪取だけでなく、これ以上ない舞台での対戦に早くもテンションは最高潮に達している。3年前、大手菓子製造業社を退社し選手生活に人生を賭けた男がプロ七年目にして大輪の花を咲かせられるか今からゴングがなるのを待ちきれない。(永田)

第1試合 54kg契約 5分2R
○藤井 恵(ガールファイトAACC)
×ナディア・ヴァン・デル・ウェル(オランダ/タツジン・ドージョー)
1R 1'43" 腕ひしぎ十字固め


 当初52kgのフライ級を予定していたが、前日計量の一回目でナディアは55.2を記録。3.2kg落とすのは難しいため、54kg契約に変更して行われた。予定どおり51.9kgだった藤井に対し、ナディアは53.9kg。だが藤井は体重を全く問題にしない試合ぶりだった。
 藤井がスタンドでプレッシャーをかけると、ナディアは腰が引けたような状態で後ずさり。藤井はすぐさまタックルでテイクダウンに成功すると、ハーフからパスガードを狙いながら腕十字へ。しばらくナディアば防御するが、藤井はじわじわ極めの状態に持ち込み、最後は一本。全く隙のないままの完勝だった。なお、この試合では両者ともG-SHOOTOから採用されたカラーグローブを着用していた。(井原)

Last Update : 12/20 12:45

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