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(レポ&写真) [全日本キック] 5.23 後楽園:最強トーナメントは豪腕・大月が制す

全日本キックボクシング連盟 "ALL JAPAN KICKBOXING 2003 全日本ライト級最強決定トーナメント〜決勝戦〜"
2003年5月23日(金) 東京・後楽園ホール

  レポート:新小田哲  写真:井原芳徳  【→大会前のカード紹介記事】 【→1回戦の模様】 [→掲示板]

<トーナメントのルール> 全試合サドンデス形式の3分3R。ヒジ・首相撲禁止の特別ルール。契約ウェイト62.00kg

メインイベント トーナメント決勝戦 サドンデスマッチ
○大月晴明(AJパブリックジム/全日本ライト級王者)
×花戸 忍(高橋道場/全日本ライト2位,COMBAT2002王者)
2R 0'37" TKO (ドクターストップ:左まぶたのカットによる)

※大月がトーナメント優勝。賞金300万円獲得

 決勝戦はデビュー以来11連勝の大月、同じく17連勝の花戸という、現在の全日本ライト級で最も勢いのある二人の全勝対決となった。大月はいつも通りの、ガードを低く下げ、スタンスを広く構えて頭を小刻みに振る独特の構えでプレッシャーをかける。花戸もアゴの前にグローブを置きやや前傾のいつもの構えで、遠い間合いから前蹴りやハイで大月のパンチを警戒する。最初にしかけたのは大月。右ローから左右フック、右ストレートをヒットさせ先制する。大月はさらに右フック、アッパーと多彩なパンチで攻め立てる。しかし打ち合いで本領を発揮するのは花戸も同様、ダッキングでかわしつつ、大月のフック系の連打に対しワン・ツーなどストレート系のパンチを当て対抗する。それでもパンチの回転の速さでは大月が上回り、花戸の顔面にその強打を打ち込むがここで花戸は驚異的な打たれ強さと気の強さを発揮し、これまで何人もの選手を沈めてきた大月のパンチをもらってもまったくひるむ様子も見せず打ち返す。打ち合いでは大月がややヒット数で上回りながらも、ペースを掴むまでには至らないまま初回終了のゴング。

 2回、ペースアップし始めた大月が意表をついた左ハイをヒットさせ一気のパンチラッシュ。右フックが当たったところで花戸が左まぶたをカットし、ドクターチェックとなった。「傷が骨膜まで達している」というリングドクターの判断で試合がストップされた。この裁定に場内から失望の声が漏れたが、花戸の傷はかなり広い上に深く、適正な判断であったのは間違いない。とはいえ、1Rのエキサイティングな攻防を目にしたばかりだっただけに、「この打ち合いをもうちょっと見たかった」と会場にいた誰もが思ったことだろう。

(編集部注:花戸は試合後カットの原因はバッティングか肘ではないかと語っていたが、仮にバッティングだとすれば下の連続写真の場面の可能性が高い)

 大月はこれでデビュー以来の連勝を13に、連続KO記録も11に伸ばした。通算成績は13戦13勝無敗12KO。これで名実ともに全日本ライト級の頂点に立った。これまでその倒しっぷりは一部に注目されてはいたが、事故や練習中の怪我、また1日8時間という無類の練習熱心さが仇になってオーバーワークで体調を崩すなどして試合間隔が空くことが多く、今ひとつスターダムにのし上がる事が出来なかった。昨年のCOMBAT・60kgトーナメント1回戦でJ-NET王者増田博正を衝撃的な1RKOに沈めた時も、怪我で2回戦の棄権を余儀なくされている。これまでツキに見放されていた大月だが、今回のトーナメントで勝因を問われて「運が良かったこと」と答えていたように、風向きは完全に変わってきている。
 ただ頂点に立った大月には今後ますます注目が集まるが、大月は「まだまだ反省点は多い。こんなんじゃタイ人とやっても相手にならない」あくまで謙虚なコメントに終始。期待されるサームコー(7月大会に来日決定・対戦相手はまだ未定)や、1回戦で小林にKO勝ちしながら怪我でトーナメントを欠場した任治彬(イム・チビン)との対戦についても「相手のほうが強いと思う。サームコーには足元にも及ばない」と言ったのには、少々物足りなさを感じた。謙虚なのはいいのだが、もっとトップに立った自信を持って、且つプロとして景気のいいコメントも聞いてみたいところ。現在の日本人選手では新日本ライト級王者の石井宏樹と並んで最も世界に通用する可能性を感じさせる選手なのだし、これまで倒してきた選手の分まで夢を背負っているという事を自覚して欲しい気もする。大月も29歳とこの世界では決して若い方ではない。本人はそうでないかもしれないが、強いタイ人と闘って「ひょっとしたら」と思わせる日本人選手はそうはいない。上を見る事が強さにつながる事もある。
 一方の花戸、リング上からワンマッチで再戦を求めて「その時は殺してやる」と気性の激しさを見せ、悔しさを隠そうとしなかった。


第5試合 トーナメント準決勝第2試合 サドンデスマッチ
○花戸 忍(高橋道場/全日本ライト2位,COMBAT2002王者)
×小林 聡(藤原ジム/WKA&WPKC世界ムエタイ・ライト級王者)
判定2-0 (30-29,30-30,30-29)


 花戸が全日本に来たのは、そもそもは「小林と対戦するため」だった。任治彬の欠場による小林の繰り上がりという意外な形ながら、今回ついに実現することになった。任との試合を見てもどこか歯車が狂っているように見える小林だが、パンフレットの識者による優勝予想では圧倒的な1番人気。やはり小林にはこういう苦境で「何か」を起こしてくれるという期待も含まれていたのだろう。

 小林が大一番で見せる、ゴング直後のローキックによる奇襲は今回なし。遠い間合いからミドルやハイを放っていく花戸に、小林はローキックを入れる。小林にはいつもの荒々しさよりや殺気は感じられないが、ローキックが的確で要所でボディやヒザ蹴りを織り交ぜ、やや小林ペースで試合は進んだが、実は「トーナメントであることを考えて前半は力をセーブしていた」という花戸が3回にスパート、得意のパンチ連打でラッシュをかける。小林も応戦し激しい打ち合いとなるが、これを制したのは花戸。左右フックや左ミドルを当てた花戸が最終ラウンドを取り、僅差判定で決勝へ進出した。
 小林はリング上でグローブをはずし、客席に投げ入れると、土下座してリングを後にし、涙を流しながら控え室へ消えた。そのまま大会終了までノーコメントのままで会場を後にしている。


第4試合 トーナメント準決勝第1試合 サドンデスマッチ
○大月晴明(AJパブリックジム/全日本ライト級王者)
×大宮司進(シルバーウルフ/ISKA世界スーパーフェザー級王者)
3R 2'21" KO (3ダウン)

 パワフルなパンチを見せる大月だが、今回は明らかに力んでおり動きが堅い。そんな大月に大宮司はジャブの差し合いからカウンターの右ストレートをヒット、一瞬後退しかけた大月だが、次の瞬間右をヒットさせダウンを奪う。試合開始から僅か30秒の出来事だった。大月はローを多用し低いガードのままプレッシャーをかけるが大宮司もスピードを生かした攻めで大月に得意のラッシュまで持ち込ませない。それでも大月がその豪腕で2回に再び右フックでダウンを奪う。これで大宮司の動きがガクッと落ちるが大月もそれほど手数が増えないまま最終回へ。ここで勝負に出た大宮司が一気に前に出るが、逆に打ち合いになったことで大月の本領が発揮される。3回開始僅か10秒、右ストレートで大月がダウンを奪い、さらに中盤以降左フックで2度のダウンをKO勝ち、決勝進出を決めた。


第3試合 トーナメント・リザーブ戦 サドンデスマッチ
×山本優弥(空修会館/新空手2001全日本軽量級王者)
○藤牧孝仁(はまっこムエタイジム/全日本ライト級3位)
判定1-2 (30-29,29-30,29-30)


<トーナメント以外のワンマッチ>

第7試合 日本・韓国国際戦 ヘビー級 サドンデスマッチ
○安部康博(建武館/全日本ヘビー級王者)
×柳 良來[ユ・ヤンレ](韓国/2003韓国ヘビー級トーナメント王者)
判定3-0 (29-28,29-28,29-28)

第6試合 ミドル級 サドンデスマッチ
×中村高明(藤原ジム/全日本ミドル級2位)
○森 知行(正道会館)
延長1R 判定0-2 (9-10,10-10,9-10)
※本戦3R 判定0-1 (30-30,29-30,30-30)

第2試合 全日本フェザー級ランキング戦 サドンデスマッチ
×竹村健二(名古屋J・Kファクトリー/1位)
○山本真弘(藤原ジム/7位)
判定0-3 (28-29,27-30,28-29)

第1試合 全日本フェザー級ランキング戦 サドンデスマッチ
○石川直生(青春塾/2位)
×村山良和(はまっこムエタイジム)
2R 2'55" TKO (ドクターストップ:カットによる)

フレッシュマンファイト第3試合 ヘビー級 3R
×Suzuki3:26(GENESIS/4位)
○出畑力也(正道会館/正道会館1999&2000全日本ウェイト制重量級優勝)
2R 1'23" KO

フレッシュマンファイト第2試合 ウェルター級 3R
○近藤高広(建武館)
×池田将之(はまっこムエタイジム)
2R 0'22" KO (右フック)

フレッシュマンファイト第1試合 ライト級 3R
○凱斗亮羽(S.V.G.)
×伊部敦雄(月心会)
3R 2'17" KO (パンチ連打)

Last Update : 05/24

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